第7話 廃遺跡
---廃遺跡で兄弟揃ってのお出かけ改め素材調達中---
「はぁ。なんで父様は、お前なんかの同行を許可したんだ。」
「あはは…なんでだろうね。たまには兄弟水入らずで楽しんで来いってことじゃない?」
僕を同行させた理由か…父さんなら魂は見えなくてもこの場所の異常には気づいてるはず。
何かあっても僕なら対処できると思ってくれたのかな?
「おい、やっぱりおかしい。数が少ないとかそんな問題じゃない。気配も痕跡もねぇ。」
確かに妙だ。ディムリーサーペントは最近ここに出現するようになったから縄張りの移動にしては早すぎる。
それに魔物が見当たらないにも関わらず廃遺跡の奥から聞こえる魂の叫びはどんどん大きくなる一方だ。
「遺跡の奥には行かずに狩れれば良かったんだけど…」
まあ、魂だけなら僕が彼岸と繋がれば送ってあげられるし、生きてる魔物でも兄さんがいればなんとかなるよね。
ルセイブル学院の特別編入試験でも試験官に呪詛返しして無双してたらしいし…うん、自慢の兄だ。
「ゴーシュ。最後に奥を見て何もなければ今日は戻るぞ。」
「はい!兄さん!」
兄さんに続いて廃遺跡の奥、先日から響いている叫びの中心へと向かう。
遺跡の最奥部。石でできた崩れかけの階段を登った先の広間にそれはいた。
「ァ"…ア"ァ"ァ"」
アレは、なんだ。
「ア"ァ"…」
馬の様な脚。
錆びついた青銅の様な皮膚をした腕。
「ゴーシュ、何を突っ立ってる。行け!父様に見たままを伝えてここを封鎖しろ!」
白金の翼。
巨人の頭。
「む、無理だよ。見捨てるなんて…」
髪の1本1本が生きた大蛇。
時と場所さえ違えば幻想的な聖なる存在に見えたに違いない。けど、今のコレは…
「体が腐りきってやがるが、まだ生きてるな。これは…呪詛か。」
うん、生きてる。
けれど、もうこの魂は…
生きようとしていない。
「兄さん、あれは呪詛だよね?なんとかできたりする?」
肉体に結びついた生者の魂を強制的に彼岸へ送るようなことは今の僕にはできない。
「お前、まさかアレをなんとかしようって考えてんのか!?」
下手したら僕たち2人も無事じゃ済まないかもしれない。
けど…この魂を見捨てるなんて僕にはできない。
「うん、兄さんと僕ならできる。」
あ、兄さん呆れてる。
「はぁ…呪詛返しするにはアレに触れなきゃなんねぇ。
アレがちょっとでも暴れたら俺は潰れて死んじまうだろうな。
だから、まぁ…お前のあの妙な力で大人しくさせるくらいはやってくれよ?」
嬉しい。
兄さんが僕を頼ってくれてる。
命をかけてくれてる。
こんなに嬉しいことは無い。
生者の魂への干渉か。
ここでやらなきゃ僕も、兄さんも、この魂も、救われない。
大丈夫。
あとは…
僕が限界を超えるだけだ。
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