第6話 元許嫁
「ゴーシュ?部屋にいないのー?」
僕の部屋のある方角から声が聞こえてくる。
カインとの立ち話もほどほどに新しいお客さんが来たようだ。
しかもちょうど話題に上がってた人物。
「ロアが来たみたい。早速、作戦の準備が進みそうだ。」
僕とカインは声の方向へと歩いて行く。
「いらっしゃい!今日はソーマ様の付き添い?」
「そうよ。留守番なんかした日には継母から嫌味を言われるに決まってるもの。」
光沢のあるルビーのような真っ赤な髪を首のあたりで短めに切り揃え、愛嬌のあるくりくりとした目の少女は家庭事情を愚痴っぽく吐露した。
僕に魔力が無いとわかり父さんとソーマ様で話し合った結果、許嫁の関係は解消。
そのことで、嫁ぐこともできないとかなんとか言われてるらしい。
落ちこぼれである僕が原因なのだからロアが責められる理由は無いというのに。
「僕のせいでごめんね。ところでロア、実は今協力してほしいことがあってさ。僕のために一肌脱いでほしいんだ。」
兄さんが君主になるにはホムンクルスが不可欠。なんとか承諾してもらわないと。
「えぇっ!脱ぐって、ちょっとゴーシュったらカインもいるのにそんな…///」
なにやら顔を赤らめ、くねくねしているロア。
「はぁ、このバカップルは…ほらゴーシュさっきの作戦を説明してあげなよ」
話の腰が折れかけたところカインが本題を切り出してくれた。
「なーんだ。そんなことならお安い御用よ。」
何故か不機嫌そうにしているが返事は快諾。
「「いいの!?」」
まさかこんなにもあっさりと協力してくれるとは、持つべきものは元許嫁だな。
「帝国との戦線にウチとメラルダが合同で兵を出すんだって。だから近いうちに互いに技術交換が行われるはずよ。」
その兵というのは、アンデッドとホムンクルスのことか。
確かに、いずれ教えるなら今教えてもそこまで問題にはならないな。
「製造法と一緒に試験用に1体送るわね。あと出来ればメラルダの廃遺跡にいる蛇みたいな魔物の皮があると助かるわ。あれ希少だけど魔力伝導が段違いなのよ。」
ディムリーサーペントの皮か。弱い魔物ではあるが場所が問題だな。
ここ最近、廃遺跡の方から研究塔と同じくらいの魂の号哭が聞こえるんだよな…
「ありがとう!皮は研究塔で貰ってくるよ。」
狩りに行かなくても僕がお願いしたら少しくらい譲ってくれるだろう。
よし!やることは決まった。
ひとまずの方向性が決まって僕の自室で談笑しているとノックの音が聞こえてきた。
「ゴーシュ、その…今いいか?ロアが来てるって聞いたんだが」
「兄さん!」
僕は走って扉を開けに行く。
「急にすまない、ロアに頼みがあってな。」
まさか兄さんも僕と同じ結論に…?
「ブルーノ義兄様ご無沙汰しております。もしかしてホムンクルスのことですか?でしたら先程ゴ、ンンンンーーーー!ンー!ちょっとカイン急になにするのよ!(え、あぁ。そういうこと。わかったわ。)」
ナイス親友!!!
例え君主になれたとしても弟にお膳立てされたと知れば兄さんとの関係は今以上に悪化してしまう。
「?よくわからんが、察しが良くて助かる。ホムンクルスを1体譲ってもらえないだろうか。」
僕でさえ兄さんの呪術とホムンクルスの相性の良さに気づいたんだ。
天才の本人がこの結論に至らないわけない。
やっぱり兄さんはすごいや。
「もちろん、ご用意させていただきますわ。ただ、廃遺跡の蛇の皮を頂いてもよろしいですか?」
「ありがとう。ディムリーサーペントか。最近、数が極端に減ってるから塔に在庫が無くてな。狩りに行った後グレイス家に送るよう手配させてもらう。」
え?狩り?まずいな、今の廃遺跡から聞こえる魂の叫びは尋常じゃない。良くないことが起こってるのは確かだ。
「兄さん。その狩り、僕もついて行っていいかな?」
こうして1年ぶりの兄弟揃ってのお出掛けが決定したのである。
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