第7話円香さんと冴子さん

「冴子!Bランクってどういうつもりなの?まだ中学生なのよ!」


 私は別室に冴子を連れて来て先程の真意を問いただす…。ランクごとにノルマだったりしないといけない事が他にも色々増える為だ…。


「先輩…あんまり大声あげると豊和君に聞こえますよ?」


「いいから!早く答えて!」


「…彼に会う迄はEランクでもDランクでも正直どちらでも良かったのですが、会って話をしてその考えは変わりました。外見、内面だけでもAランク以上の男性です…。流石にがまだ来てないみたいなのでAランク以上は認定は厳しいですが…。本当は先輩も分かってますよね?」


「……それは…」


「先輩も分かっておられる様に現在日本にはBランク以上の男性が存在していません。またBランク以上の日本の男性の冷凍された精子は残り僅かなんですよ?あの子が…いえ、日本を離れた子の話は止めておきます…」


「…知ってるわ、…」


「個人的意見を言えば…彼を護りたいと…。彼の存在を隠しておきたいとも正直思いました…。会って数時間ですが1人の人間としても優れていますからね…」


「だったら…」


「…でも…男性管理局局長としての立場から言わさせて貰いますが彼をBランクに認定する事で現存する男性は彼を見習い、ランクを…男性としての器を軒並み上げて欲しいとも思っています…。そしてそれが出来る子だとも思います…」


「…何をやらせるつもり?事によっては私は貴女の敵に回るわよ?」


「いやいやいや…先輩怖い!怖いですよぉ!私が先輩を敵に回す訳はないでしょうに!ただ、手伝って貰いたいだけですよ?そうしないといずれは国…世界から人が居なくなるのですから…。女性だけでは人は増えないんですよ?」

「…豊和君に何かを課すのなら滅びていいんじゃない?駄目かしら…?」

「何言ってんっすか!?正気ですか!?年取って耄碌…『メキメキメキッ!』…っ…痛い痛い痛い痛い痛い痛い!マジ痛い!言い過ぎました!離して下さい!お願いします!無言でアイアンクローしないでぇぇー!痛いからコレをとにかく外してぇぇー!!!おねげぇ…します…しくしく…」


「失言は死を招く…わよ?」


私は冴子の額部分からゆっくりと掴んでいた手を離す…。2度目はないわよ?昔も教えたでしょうに…。


「……ぐすっ…滅茶苦茶痛いよぉ…」


「それで、豊和君に最初に何をして貰うつもりでいるの?」


「私の痛みは無視ですか!?…はい…話しますから構えた手を元に戻して下さい!?…え~と、取り敢えずは学校に通って貰います…」

「…それで?」

「…生活に慣れたら…まずは配信から始めて貰います…」

「配信!?豊和君の存在を世に知らしめるつもりでいるの!!?」

「そうです…。男性が配信するという事で引き込もっている男性にも男性としての生き方が伝わると考えています…。男性を見たことがない女性の為にもなりますしね…」


「………」


「…どうか先輩分かって下さい…。そうしないと定められた法律も変える事が出来ません。世論の力も必要なんです…」


「…確かに。こういう男性が居ると知れば間違いなく世論は動くでしょう…ね」


「だから…」

「でも…豊和君の身に危険が迫るのも分かって言ってるのよね?世界中が動くかも知れないのよ…いえ、間違いなく動くでしょう…」


「国を上げて彼の身は護ります…。それに、彼の存在を隠して存在がバレて、その時になって何も出来ないよりも、彼の存在を予め皆に知っておいてもらっておく事で出来る事の方が多いと思われます…。護ってくれる人も増えるでしょうから…」


「…………。」


「それと…」


「…何?」


「筆下ろしは私がしても?」

「…墓石に刻む文字を今すぐ決めなさい。今日が命日になるから…」

「いやいやいや…先輩私だって、その権利というか豊和君が私に惚れるかも知れないじゃないですか!私の肌を見て顔を赤くしてたんですよ?」

「変態に惚れる道理はないわよ?」

「コスプレですからね!?変態ではないですからね?誤解ですよ、それッ!?」





******



 別室に向かった2人は多分僕の事を話し込んでいるんだと思う。色々僕の分からない手続きやらなんやらある筈だしね…。僕の為に色々申し訳ないなと思いながらせめて2人の為に昼ご飯位作っておこうと思いたち台所に立って食事の準備をしておく。ついでに夜ご飯も作っておこうかと思っていたら醤油がきれた…。


「どうしようかな…。円香さんと冴子さんはまだ時間かかりそうだし…よし、買いに行くか」


 幸いにも財布は持ってたし、お金も2万円入っていた。服も柚希ちゃんが部活に行く前にズボンとTシャツを寝間着の着替えに貸してくれたしね。そうと決めれば思い立ったが吉日。昼食作ったので食べておいて下さい。醤油をちょっと買って来ますので。─と書き置きをして……っと。


 まぁ、昨日は梓希ちゃんとの勝負に負けてしまったけど何とかなるだろうと思いながら僕は買い物へと出掛けて行った…。



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