第11話「初任務の件」
魔物の沈静化の依頼へは次の日に出発することになった。
「初めまして、
付き添い役が一人来ると言っていたから男性の兵士かと思えば、女性の騎士だった。
アドレーヌと名乗った彼女は、キリッとした佇まいが特徴の赤髪の女性だった。
気品の高そうなところはウィネットさんとどこか似ているが、アドレーヌさんの方が勇ましい感じがするのは鎧をまとっているからだろうか。
「殿方の兵士はみなクライアス様の部隊に組み込まれていますので、今回は私になりますが……もしご不満があれば何なりとお申し付けください」
「コーヤです。こっちはへスタリア、商人です」
「よろしくなの」
「不満なんて……むしろ、わざわざ案内役までしてもらって助かりますよ」
「コーヤ様はお優しいのですわね……あ、あと、言葉遣いは普通にしてもらって結構です。使用人に敬語なんて使うと、却って主様に失礼になりますので。歳も近いかと思いますし」
「ああ、そういうものなんですね……わかった。アドレーヌも普通でいいよ?」
「私は従者ですので」
それはそれでやりづらいのだが……こういう主従関係みたいなのってめんどくさいな。
それで言うとウィネットさんにも敬語使わない方が良さそうかも。
「それでは出発の前に武具から支度いたしましょうか」
そう言って武器庫まで案内してもらった。
とりあえず自分にあう防具を一式見繕ってもらい、武器を選ぶことになった。
「正直、戦闘スキルがあまりないから……遠距離系で扱いやすい武器とかってあます?」
「遠距離系になると弓か魔導具になりますわね……魔導具には杖や魔導書の他に魔力が施された武器がありますわ」
「コーヤって魔法は使えるの?」
魔法……ハッキングもどうやら魔法の一種っぽいのだが、ここで言う魔法って火の玉を出したり水のないところで水遁の術を使うようなことだろう。
「多分、専用スキル以外は使えないなあ……そういえば、へスタは魔法使えたっけ?」
「当然使えないの……」
「アドレーヌは?」
「初級魔法はファイアとエアーなら。剣士ですので私も魔法は苦手ですわ」
アドレーヌはへスタに微笑みかけた。魔法が使えないことを気にしなくて良いと言いたいのだろう。
剣士のアドレーヌでも初級魔法が使えるなら、俺も訓練とかすればできるようになるのかな?
「とりあえず弓しか選択肢がないか……」
「剣は! 剣はいかがでしょう? レイピアなどは初心者でも扱いやすくておすすめでですわよ!」
「い、いや……接近戦は多分向いてないと思う……」
剣士オタクなのかな。圧がすごい。
とりあえず俺はある中で一番軽い弓を選んだ。俺の役回りとしては俺自身の火力で戦うことはほとんどないだろうしな。
準備が整ったので俺たちは魔物が巣食う森へと移動した。
◆ ◆ ◆
「そういえば、アドレーヌも冒険者なのか?」
「そうですね。騎士団の皆さんも基本的に冒険者ですわ」
冒険者って冒険する人なイメージがあるけど、単純に冒険者協会に登録している人が冒険者らしい。
「私はDランクなので、まだまだですが」
「俺はまだFランクですらないからなあ……」
Dランクでも普通に凄い人なのでは? そうすると俺が必要なのかも怪しいな。
森に入ってすぐ、人型の化け物に遭遇した。
「オークですね……」
「うわ、あれがオークか……」
端的に言ってキモいな。しかも人型っていうのもまた嫌悪感が増す。
「凶暴化した魔物は赤い目が目印ですわ。あそこにいる4体のオークは全員凶暴化しています」
「凶暴化してるつっても、別に常に暴れてるわけではないんだな」
「ええ……でも、標的が現れればいつでも襲いかかってきますわ」
「なるほど……沈静化するにはあいつらを倒せばいいのか?」
「気絶させる程度で問題ないですわ」
「オッケー、じゃあ俺があいつらのうちの一体を強調化する。そいつに一体攻撃させて、そこからはアドレーヌと2対2でいこう」
「承知しましたわ」
まずは一体ハッキングし、集団の一体を殴らせる。
一体が倒れ、混乱したオークが協調化オークを攻撃する。
「今だ、アドレーヌ」
颯爽と駆け出し、殴り合いをするオークに突っ込んでいく。
「ぐお?」
部外者の介入にさらに混乱するオークたち。一瞬にして、アドレーヌたちにのされた。
「ほ、本当に一瞬だったの……」
「やっぱり強いなアドレーヌ」
これがランクDか。全然強いじゃないか。
「コーヤ様、やりましたが……こっちのオークはどうします?」
「あ、そっか……」
そういえば、ハッキングしたオークをどうするか考えてなかった。
協調化状態で気絶させるのもなんかいたたまれないが、解除した瞬間襲われたら元も子もない。
が、迷っている間にハッキングの効果は切れてしまう。
「まずい!」
思わず声を出したが、オークはそこにぼーっとしたまま動かない。
「あれ……?」
ステータスを見るとオークは「中立」状態になっていた。
オークはしばらくすると、倒れているオークたちを引きずって森の奥へ消えていった。
「一度ハッキングすると中立状態になるのか?」
「へスタにはコーヤのスキルが難しすぎてよくわからないの」
「不思議なスキルですわね……」
「もしかしたらハッキングみたいな効果を付与されて凶暴化状態になっているから、後出しで効果が上書きされて、その効果が切れて最終的に元の状態に戻っているだけ……とか?」
「何言ってるかわからないの」
へスタは放置しておくとして、アドレーヌはちょっとだけ理解してくれているらしい。
「そうなると、俺が全員にハッキングをかけるだけでいいかもしれないな」
「逆に私が不要になりそうですわね」
アドレーヌは冗談めかしてそう言った。
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