第9話「スキルがチートな件」

「ここがの部屋だよ」


 城に帰ってくると、へスタを俺の部屋に連れてきた。

 俺の部屋、もとい、今日から二人の部屋になるんだが。


「二人の部屋なんて、ちょっと新婚夫婦みたいなの」

「そう思うのは結構だけど、あんまり外で言うなよ?」


 決して俺たちは付き合っているわけでも奴隷契約しているわけでもない。

 ただのパーティってやつだ。


 最終的に俺はへスタを「荷物持ち」として仲間にした。それが一番丸く収まる流れだと思ったのだ。

 それで仲間にしたのはいいのだが、問題は彼女を泊める場所だった。


「ウィネットさん、まだ使える部屋ってお城にあるんですか?」

「実は、コーヤさんにお貸ししている部屋は前に辞めたメイドの部屋なのです。基本的に関係者の部屋と客間しかないので、それほど部屋に余裕がなく……」

「つまり、へスタを泊める部屋はないと」

「……」


 という会話があり、今に至る。


 仲間だけ野宿しろとも言えず、俺が借りてた部屋に泊めることにした。


「だ、男女で、お、同じ部屋って、だだだ大丈夫なんでしゅか?!」


 約一名興奮している姫がいたが、もちろん何も起きないので心配ない。


「普通に考えて、助けられた王女様から借りてる部屋であれやこれやしてたらドン引きされそうだしな」


 そうなったらもう死んだ方がましだ。


「ウィネットさんが寝具は後で用意してくれるってさ」

「はいなのー……」


 いつの間にかベッドでへスタが寝ていた。

 あ、俺が床で寝る感じ?


「しかし、俺のスキル……」


 一息ついたところで、俺は今日のことを振り返った。


「ハッキング。対象のステータスをいじれるってかなり極悪なスキルだな」


 使ってみて実感した。これは普通の人間が使えて良い能力ではない。

 攻撃こそできないが、サポーターとしてこの上なく優秀だ。


「まずステータスは一人につき一つなら自由に変えられる。二つ以上ハッキングした場合は最後の変更だけが有効になる」


 これはさっき試しにへスタでやってみた。攻撃力と防御力を変更したら、後に変更した防御力だけが変化していた。


「あとは対象は一人だけ有効だったな」


 ゴロツキたち複数を対象にしたときも最後の変更だけが有効になった。その場合は自分のステータスを変更すれば良いことも理解した。


 他には、ステータス変更はできるけど、一定時間が経てば勝手に元に戻ってしまうとかもある。時間は試した限りだと、変えた対象によってまちまちだった。


「職業も変えられるけど……俺の職業を変えるのは怖いな」


 変えてもステータスは一つしか変えられない都合上、あまり意味はなさそうだし、変えて元に戻らなかったら最悪だ。

 逆に敵の職業を変えるときは注意しないと、下手な職業にしてしまえば、俺の知らない実は強いスキルが使えたりするかもしれない。


「実際、この子のスキルは優秀だったしな」


 そういう時のためにスキルの知識はしっかりつけておかないとな。


「そういえば、全然知らない職業とかにしたらどうなるんだろ? あと数値とかを極端に大きくしたりマイナスにしたらどうなるんだろう……?」


 このスキルは研究しがいがあるな。今度へスタを実験台にしよう。


「コーヤ様、いますか?」


 ウィネットさんの声が部屋の外から聞こえた。


「王がお呼びですので、一息ついたら謁見の間へお越しください」

「了解です」


 王様の用事か、なんだろう?

 用件の分からない呼び出しって怖いよなあ。

 一旦へスタは寝かしたまま俺は部屋を出た。

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