第7話 三女のなぎさ
その人と、1度デートをしたところで、友達もそのパーティに参加したことがあるといっていて、そのカップルになった人の特徴を話すと、
「うーん」
と言って、腕を組んで唸っていた。
「私の気のせいか、その人慣れているような気がするのよね」
というのであった。
「どういうこと?」
私もだいぶ前に、似たような人とカップルになったのよね。まだ、行き初めて少しの頃だったかしら? で、連絡先を交換したんだけどね。実は私その後、それから2時間後のパーティも予約していたの」
というではないか?
「1日に2回?」
とビックリして聞き返すと、
「そんなの普通よ。だって、1回千円なのよ。できるだけ参加しないとね。それでね。そこに参加すると、何とその男性がまたいるじゃない。カップルになった者同士がね。私は気まずかったんだけど、相手は、平気な顔で、初めましてっていうじゃない。しかも、最初の時と同じ自己紹介を、しゃあしゃあと言ってのけるのを見ると、呆れたという感じだったわ。それで白けて、しばらくいかなくなったの」
と、言うではないか。
「でも、また行き始めたの?」
と聞くと、
「うん、だって、せっかくの知り合う機会でしょう? 呆れたというのはあるけど、私だって考えてみれば、相手からみれば失礼なことをしているんだから。どっちもどっちよね。逆に、私を見て、別に何も言わずにいてくれたんだから、私のように、呆れることをせずに、普通に接してくれたわけだから、紳士的よね。好きになってもよさそうな人だっただけに、少しでも呆れてしまった自分が恥ずかしい。だから、それ以降は、パーティというのは、こういうものなんだって、割り切って参加することに決めたの。だから、逆にいえば、男の人の本質を知るための訓練だと思って、しかも、うまくいけば、将来結婚する相手と出会えるかも知れないということでしょう?」
と彼女は言った。
「ええ、確かにその通りね。今のお話を聞いていれば、参加者の中には、本当に真剣に考えていないような人もいるかも知れないけど、やはり特に男性は安いものではないんだから、基本的に真面目な人が多いと思えばいいのよね。だけど、男性は大変よね。女性は千円で参加できるんだから、男の物色だけを目的に行っている人もいるかも知れない」4
「目的はいろいろあるでしょうね。あまり人とコミュニケーションが取れない人が、その練習に参加するという目的だったり、友達がほしいというだけの人も中にはいるかも知れない。でも、それはそれで真面目で、その人にとっては、死活問題になっているのかも知れないしね」
と彼女がいうと。
「まさにその通りね。私もハッキリと分からないんだけど、1回千円は、授業料としては安いかも知れない」
と、かすみは言った。
「出会いって、本当はこんなことしなくても、普通にあるんでしょうけど、その機会を自分から閉ざしているような、閉鎖的な考えの人って、本来なら出会うべき人が、自分が煮え切らないために、その人も宙に浮いているということを分かっていないんでしょうね?」
と彼女はいうのだった。
かすみは、そんなパーティに、これからもちょくちょく参加しようと思っていた矢先に、マサハルから連絡を貰った。
実際に会ってみると、自分の知っているマサハルとはまるで別人のようだった。
「会いたい」
と言って呼び出しておきかなら、自分から話題を振ろうとはしない。
かすみの方も、マサハルが何も言わないのに、こっちから聞くのもおかしいと思い何も言わない。
これは、かすみがマサハルに対しての、いつものパターンだった。
「彼が何も言わない時は、私からも言わない」
という態度が自分にもっともふさわしい態度だと思うのだった。
相手に気を遣っているということなのだろうが、相手はどう思っているのだろう。
何も言ってくれないのは、それだけ無視しているということだろうか?
かすみの方としても、呼び出しておいて何も言わない相手に腹を立てないわけではない。いくら気を遣っているといっても、次第に腹が立ってくると、そうなるとかすみは、自分の感情をどこにぶつけていいのか分からず、気を遣っているはずの相手に対して、その怒りの矛先を向けてしまうことが往々にしてあったりする。
「何なのよ。呼び出したんだから、何か言いなさいよ。私だって、そんなに暇じゃないのよ」
と言ってのけた。
さすがにそれを聞いたマサハルは、背筋をぴんとして、シャキッとなったのだろうが、それも一瞬だった。次第に背筋が緩んでいって、また黙り込んでしまった。
「あなたがそんなに煮え切らない人だとは思わなかったわ。私だって、他に彼氏でも作ろうかって思ったりもするわよ」
と、思わず口から出てしまった。
「さすがに言い過ぎた」
と思ったが、ここで慰めの言葉など掛けると、却って逆効果だ。
相手をさらに惨めにさせるものであり。勘違いもさせるだろう。
ただ、かすみとしては、
「こんな態度をずっと取られたんでは、疲れるだけだわ。思い切って別れたっていいんだから」
と思っていた。
確かに、マサハルに執着しなければいけない理由はどこにもない。黙っていなければ、いくらでも話をしようと思えばできるはずだ。それができないということは、どこか、彼に対して、諦めの境地があるのかも知れない。それは今まで、
「私のような女性は、そう何度もお付き合いができる人が現れることはないんだろうな」
と感じていたからだった。
自分に自信がない。それは、マサハルに勝るとも劣らないようなことになるのかも知れない。
マサハルは下を向いて、顔を上げようとしない。まるで、顔を上げると、とめどもなくあふれる涙を隠せなくなるという心境なのかも知れないと感じたのだ。
「マサハルさん。何も言ってくれないの?」
というと、
「あ、いや、別に」
という言葉を聞いて、かすみは、
「もうダメだ」
と感じた。
最後の、
「別に」
という言葉がとどめを刺したのだった。
別にというのは、一体何が? いや、何に対して別にというのだろう?
これほど曖昧であり、しかも、腹立たしい言葉はない。これだけたくさん言葉がある中で、出てきた言葉が、一番今聞きたくない言葉ではないか。
つまり、追い詰められて、こんな言葉を発するということは、普段から自覚しているということである。
こうやって逃げれば、誰に対しても失礼にならないとでも思っているのか、そんなことを考えているのだとすれば、
「女の腐ったような人ではないか?」
と言いたくなった。
ちょっと、男女平等の世の中でコンプライアンス違反なのかも知れないが。女のかすみが思うことで、
「口に出していないのだから、別にいいのではないか?」
と感じた。
確かにかすみも、
「別に」
という言葉は使うが、絞り出した時に出す言葉ではないと思うので、それは意識の上でのことだろう。
それでも言ってしまうというのは普段からそう思っているのか、それとも、相手を傷つける言葉だという意識が欠落しているのか、もしそうだとすれば、失礼なことであり、
「自分自身も投げやりになるほど、自分に自信がないんだろうな?」
と感じたのだ。
かすみは、完全にマサハルに対して、嫌な思いしか感じなくなった。そんな時かすみは自分がどんな態度を取っているのか自分でも分かっていなかったが、この日は、それを思い知ることになる。
かすみの態度に対して、それでも煮え切らない態度を取って、曖昧に振る舞うマサハルとは、もう一緒にはいたくないと思った。
「同じ空間に存在していることも、同じ空気を吸っていることにも、嫌悪を感じる」
とまで思うようになった。
そう、かすみというのは、一つのことを嫌になると、自分でも抑えが利かないほどに、相手を毛嫌いしてしまうことがあるようだ。
ただ、それは、それまでにその相手に対して絶大な信頼を置いていたり、好きだと思っている人だったりする場合である。今回は後者なのだが、この思いは、自分の考えていることとまったく違った態度を取る相手に、
「裏切られた」
と感じるのだろう。
相手に裏切られたり、相手が自分のことを、こちらに分からないように、利用して、自分だけが、利益を得ようなどとするのが分かると、完全に敵対することになる。
相手が自分をどう感じているのかということに関しては、結構無頓着だったくせに、自分に危機感を持たなければいけないような状態に陥りそうな時だけは、よく分かるのだった。
これはきっと、彼女の中にある、
「動物的な感覚」
いわゆる、本能のようなものが働いているのではないかと思うのだ。
動物は、自分に危険が迫っていると分かった時、その防衛本能から、それぞれ、遺伝子がその力を発揮し、自分たちの種族を反映させてきたのだ。人間のような知恵を持っているわけではないが、防衛本能は、人間の知恵に勝るとも劣らないような力があるのではないだろうか?
かずみにも、そんな能力があるようだ。具体的にはよく分からないが、妹の、典子が子供の頃に話していたような気がする。
「お姉ちゃんには、何か、目に見えない力があるような気がするんだ」
というので、かすみも、
「それは典子に感じることだわ」
と、かすみは言ったが、決してお世辞やおべんちゃらをいうようなことのないかすみお言葉なので、妹も一概に疑ってはいないと思うが、それにしても、お互いに相手に見えない力を感じるというのはどういうことだろう。
と言っても、妹にどんな力が備わっているのかということはハッキリとは分からなかった。
妹も、かすみの力について言及することはなかったのだ。
「私にとって、それが何なのかということは重要ではない、私に対して、どのような影響があるのか? ということである」
と考えていた。
きっと典子も同じだろう。
ただ、そのことがあってから、お互いに意識をし始めた。
「見えない正体も分からない力で攻撃されたら、どうしよう」
という思いからか、一定の距離を保つようになった。
それは、ミサイルの射程距離から離れるという感覚に違いのだが、ミサイルがどれほどの性能かも分からないし、そもそも、見えない力がミサイルのようなものなのかというのも分かったものではない。
「ひょっとすると、お互いを助け合う力なのかも知れないではないか?」
とは思っても、どうすることもできない。
本能は、安全な場所への避難を要求している。とりあえず、少し様子を見るしかなかった。
と思いながらも、意識だけは、しないわけにはいかない。
「妹がどのように考えているのか、どうすれば分かるだろう?」
という思いを妹も抱いていたようだ。
そのことが、急に分かる時があった。
「何か二人の間で。二人のものとは違う、不思議な力が働いているのではないか?」
と思った。
「二人の間に、自分たちも知らない共通の何かがあって、その力が及ぼしているものって何なんだろう?」
と、思うと、
「親が何かを知っているのだろうか?」
と思えてならなかった。
しかし、その頃の両親は、子供たちには結構厳しく、そんなことを聞こうものなら、逆襲にあって、却って、立場が悪くなってしまう。今のところ、親に聞くわけにはいかない。それは、妹も同じように感じていることだったのだ。
だが、父親は母親と違って、何かを言いたいと思っているようだった。
一度、父親が、不思議なことを言っていた。あれは、まだ大人になっていない頃だった気がする。
「お前たち姉妹は、仲良くしていた方がいいぞ。仲良くしていれば、お互いが危機に陥った時、何かの力になってくれる。いや、力を引き出す手助けをしてくれる。お前たちでは解決できないことを、解決してもらえる足場が築けるんだ」
と、いう意味不明な話をしていた。
「何それ、意味不明なんだけど」
と気持ち悪いと思いながら聴いていたが、
「典子もまったく同じリアクションをしたぞ」
というではないか。
「典子にも同じ話をしたの?」
と突っかかるように聞いたのは、父親が自分よりも先に、妹に話をしたからだった。
姉としてのプライドが、傷つけられた気がしたのだった。
「何をそんな変なプライドなんか、持つ必要はないんだ」
と、父は言った。
「何で私の気持ち分かったの?」
「親子だからな」
と言って、笑っている。
この笑いには、何とも言えない説得力があった。それを思うと、父の言葉もまんざらでもないような気がしてきたのだった。
「一体、どうしたっていうの?」
と、かすみは、どうでも捉えられるような聞き方をしたのだが、
「そのうちに分かる時がくる。とにかく、うちの家族はお前が思っているよりも、よほど秘められた力を持っているのさ。信じられないだろうが、今はね。でも、いずれ分かる時が来る」
と、父親は言ったのだ。
「一体、どういうことなのか、もう少し分かりやすく言ってもらえれば嬉しいんだけど」
とかすみが聞くと、
「世の中には、知らなくてもいいことがあって、その方が幸せなことがある。それだけは言っておこうかな? それを知ったところで、決して得になることもないし、むしろ誰かをひどく傷つけることになる場合もある。だけど、それは、人が故意にした場合のことで、自然と知れてしまったことには、その限りにあらずだね」
という父親に、
「どういうこと?」
と聞くと、
「世の中というのは、自然現象に勝るものはないということさ。どんなに強い力を持っている人がいるとしても、それはあくまでも、個人でしかない。その力は、自然の前では無力に近いんだ。皆が信じている神だって、もし、自然が感情を持って戦ったとすれば、自然には絶対に勝てない。ただ、自然が感情を持てば、その自然は他の自然に絶対に勝てないんだけどね」
と父親はいう。
「さらに分からないだけど」
というと、
「要するに自然がなぜ強いかというと、感情がないからさ。つまり力というのは、感情が入ってしまうと、次第に力を失ってくる。逆にいえば、感情が力を持つということ。感情が強くなればなるほど、力は感情に吸い取られて、何か武器を使わないと勝てない状態になるのさ。だから、何かあって、復讐を企てたすれば、失敗してしまう例が多くなっているだろう? あれは、感情が強すぎるので、失敗してしまうのさ。人情的には、成功させてやりたいんだけどな」
と父親は言った。
「そんなものなのかな?」
と、いきなり復讐の話などされると、かすみも、戸惑うばかりだった。
だが、ここまで話してくると、何となく話している意味が分かってきた気がしてきたのだ。
父親の話はそれから、少しだけ続いたが、結局分からないまま終わった。今でも時々思い出すことがあるのだった。
最初の方は、よくある、
「姉妹関係のあるある話」
を聞いているようで、少しウンザリだった。
「聞いている」
というよりも、
「聞かされている」
と言った方がいいくらいだった。
あくまでも、親の説教というレベルの話にしか聞こえなかったので、
「どうせ、その内容も、言い訳や屁理屈で組み立てた話なんだろうな」
と、かすみが一番きらいな、説教としか思えずに。
「どうせ説教であれば、私にだって、何をいうのかくらい想像がつく」
とばかりに、言いそうなことを想像していたが、どうもその内容とはかなりかけ離れたものであり、意表を突かれたのだった。
思わず、
「もう一度今のところ、説明して」
とばかりに、いつの間にか最後の方では前のめりになっていたようで、完全に父親の術中に嵌ってしまったようだが、それでも悪いという気はしなかった。
父親の話には、説得力があった。
「もう一度確認したい」
と思えるほどの話であり、それを聞くと、次第に父親が何を言いたいのか分からないと、気持ち悪い気がしてきた。
我慢できずに。
「お父さんは何が言いたいの?」
と聞くと、
「それは、今のお前に話しても分からないことなので、話せないが、そのうちに、きっとこの話を思い出すことがあるはずだ」
というのだ。
「ここまで話しておいて、それはないだろう」
と思ったが、父親は、一度決めたら、その決意を変えることはない。
それだけ、力強い考え方だった。
ただ、父親がその時、ふと変なことを言った。
「神様ではないが、お前たちには、キチンとした守護霊がついているんだ。神様だったら、万人に平等なのだけど、お前たちの守護神は、あくまでも、お前たちだけを守ってくれているんだよ。だから、そのことを忘れるんじゃない。いずれ大人になってから、その守護神に頼ることになるかも知れないし、お前に何かがあった時、その守護神が助けてくれて、被害に遭うのを、未然に防いでくれるかも知れない」
というのだった。
「守護霊とかいうのは、よくマンガなんかにも出てきたり、話にも聞くので、私は信じている方なんだけど、でも、実際に見えるものでもないし、どんな力があるのか分からない。だから、普通なら信じろという方が無理よね。でも、私は信じたいかな?」
というと、
「そうだろうね。信じたいという気持ちがあるのは、きっと守護霊がお前の頭の中で生きているのかも知れない。表に出てこないだけでね。と言っても、入り込んでいるわけではないんだ。お前が見えているものも、霊にも分かっている。素直に信じられるというのは、きっとお前が素直に。その霊を受け入れることができたからなんだろうね。受け入れることができたというのは、きっと、お前と霊の間で、しっくり来ているのかも知れない。普通の人間だったら、信じてもらえないことを、お前は素直に受け止めた。それが、お互いの相性の良さを醸し出して、お互いに尊敬しあっているのかも知れないとお父さんは思うんだ」
というので、
「じゃあ、私を守ってくれるのは、その守護霊なの?」
「うん、そうだよ。だけどね。その存在は、お前が思っているよりも、十分に、生きている人間に近い。そのことを、感じていると、そのうちに見えてくるかも知れないし、その正体だって分かるかも知れない。そうなると、お父さんは嬉しく思う。これは、お父さんの希望だと言ってもいいだろうね」
と父親は言った。
こういう話を聞くと、
「お父さんと、守護霊は何か関係があるのかも知れないわね」
と感じるのだった。
そんなことを思い出していると、
「何か大切なことを聞いたはずなんだけど、なぜか、思い出せないんだよな」
ということであった。
ただ、その時の父親のセリフだけは覚えている。
「覚えておくといい。何か後で思い出せないような話を聞いた時、その話の中には必ず重要なことが潜んでいるんだ。その話が忘れられない間は、その重要な話をいずれ思い出すことができるんだ。だけど、忘れてしまうと、もう二度と思い出せない。それを肝に銘じておくんだぞ」
と言われた。
その顔があまりにも真剣だったので、怖い気がしたが、冷静になって考えれば、父親の話にも一理ある気がしたのだ。
まだまだ子供だった自分であるが、確かに、似たようなことは経験したような気がする。すぐに忘れてしまうことは、やはりそれだけのことでしかないのだ。どうしても忘れられないことがあり、どうして忘れられないのかを考えた時、今の父親の話のようなことを自分で感じたような気がしたのだ。
ただ。子供の自分がそんな難しいことを分かるはずがない。
「何か、自分にいい聞かせてくれる大きな力が働いているのではないか?」
と、その時は、父の話を聞く前だったのに、
「守護霊」
という言葉を感じたような気がした。
それは、
「守護神」
ではなく、守護霊なのだ。
守護霊がどういうものなのか、自分でも調べてみたりした。
「へえ」
と思うようなことが書いてあった。
守護霊というと、自分の先祖ばかりを想像するのだが、守護霊といういわゆる、
「人を救うという意思を持った霊的な存在のものをいう」
と書かれていた。
しかも、霊魂というと、仏教であったり、東洋の宗教のイメージが強かったのだが、守護霊の考え方は静養宗教から来ているという。
そういう意味では、イメージとして、
「よいことをしてくれる妖怪」
などという感じだ。
ちなみに、妖怪と幽霊の違いは。
「妖怪は、人間の想像もつかないことを引き起こすものの正体であり、幽霊というのは、この世に未練を残した人間の例が彷徨っているものをいう」
と言ってもいいだろう。
つまり、霊というのも、人間という特定がついているだけで、妖怪変化の仲間なのかも知れない。
そういう意味では、守護霊も妖怪と言ってもいいだろう、
「よいことをしてくれる妖怪」
あるいは、
「存在そのものが、神に近いような存在」
という意味で、座敷わらしなどが、その類に入るのではないだろうか?
かすみは、その正体を、霊魂だと思っている。そして、自分に近しい人だと思って仕方がない。
そう思っていると、その時父親が言った。
「お前には、なぎさという妹がいたんだよ」
と言ったのを思い出せそうになるのだが、今のところ、かすみは、正直思い出せそうにもなかった。
ただ、意識している間は、いずれ思い出す。そう思うと、
「忘れないようにしないといけない」
という思いに至るのだった。
その時は、ショックだったが、それ以上詳しいことを聞くのが怖かった。ただ、
「どうせ聞いても、詳しいことを教えてはくれないに違いない」
と思ったのだろう。
逆にあの時聞いていれば、忘れることもなかったのかも知れないが、そんなことも、今は思い出せないでいたのだった。
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