第一章 / 32話 『能力は奥が深い』



「―――私は国王陛下の近衛兵…ゲルニス・アルフェーだ! 魔族よ、人間の世界ここは貴様の居ていい場所ではないぞ!」


 突如として現れた男――ゲルニスの存在に、エレクシアとザーイは驚きを隠せない。

 しかも、そんなゲルニスの身分はこの国の王を担う者の近衛兵と来たものだ。


「何故、近衛兵がこんな所に…!」


 壁にめり込むほどに激突したザーイは、そう顔を歪める。


「それは…こちらの台詞、だ!」


 そんなザーイへ、ゲルニスは人の身長ほどはありそうな大剣を、まるで片手剣のように軽々と振るった。


「化け物め…!」


 そう吐き捨てながら、ザーイはその超速でゲルニスの懐に潜り込むが、それにゲルニスはすぐさま反応し、大剣を向ける。しかし、それをザーイはまたもや超速によって回避した。

 そして斬る相手を失った、途轍もない質量を持った大剣は地面を割る。


「凄まじい威力……しかし、当たらなければどうということはない」


 今度のザーイは速度を緩めず、路地の壁を蹴って右往左往に飛び交う。錯乱が目的のその行動に対し、ゲルニスは……


「――――」


「なに…?」


 右足を下げ、中腰の状態で大剣を肩にかつぐ。しかも、その目を閉じて。そんな自殺行為同然の行動に、ザーイは顔をしかめた。

 ―――誘いだ。間違いなく。

 それはわかっていた。しかし、それに乗るか否かに、ザーイは迷っていた。

 そして壁を飛び交いながら思案し、ザーイは「ついてこられない速度で串刺しにする」という結論に至った。


「――――はぁあぁぁっ!」


 壁を蹴り、ザーイは第三者視点で見ていたエレクシアさえ目で追えぬ速度で、ゲルニスに接近し―――


「――――――」


 ―――首を、落とされた。


「――我が《ジョブ》は『観測者』。私を中心とした一定範囲の状況を全て把握できるというもの…魔族よ、相手が悪かったな」


 だからって、あの速度に反応できるのはおかしいだろと、言いたいことを言えずに、ザーイは瞼を閉じた。


「そちらの方、大丈夫か?!」


「え、えぇ……」


 大きな声で心配を投げかけられ、エレクシアは顔をしかめながら返事をする。


「そんなわけなかろう! 出血が酷い……これほどの傷、治療でどうこうできるものでは……」


 エレクシアの様態に困りながらもその状態をどうにかできないか思考を巡らせ、一つの可能性に辿りつく。


「…ギルドマスター殿であれば、あるいは…!」


 そうと決まればと、「失礼」と一言謝りながら、ゲルニスはエレクシアを抱きかかえる。

 そして、ギルドマスターのところへと走り出した。


 ―――そこに極悪人キトウ・ワタルがいることなど知らずに。



△▼△▼△▼△▼△



「―――じゃあ、次は《ジョブ》…『能力』について話すわね」


「お、おう……」


「能力っていうのは『人』に与えられる特殊なモノで、その性質はこの世の法則すらも無視してしまう…貴方の《力を生み出す能力ゼロ》なんかもそうね。でも、そんな能力にも必ず規則は存在するの」


「例えば?」


「まず、『能力を使って直接他の生物に害を加えられない』というものね」


「ん? どういうことだ? それなら攻撃系の能力って全部ダメになっちゃうんじゃ…」


「……斬撃系の能力があったとして、それは《斬撃を放つ能力》であって《何かに斬撃を与える能力》ではない。この意味、わかる?」


「つまり、攻撃系の能力によって他の生物が傷つくのは、あくまで能力の副産物…規則ルール的には、攻撃放った場所にたまたま生物がいただけって判定になるのか」


「ご名答よ。それで、ここからが大事なのだけれど―――」


 能力についてのルールをセナルからご教授いただいている途中、手を挙げたワタルに「どうしたの?」とセナルは問う。


「……なぁ、俺らここにどれくらいの時間いる?」


「ざっとニ十分くらいね」


「嘘つけ!!」


 デタラメを言うセナルに、ワタルはつい怒鳴ってしまう。

 

「サバ読みすぎだろ! もう八時間くらいたってんじゃねぇか!?」


 そう、この特訓場に来てから八時間近くワタルは話を聞かされては実際にやってみたりの繰り返し…まぁ、普通に話の内容や実際にやる際のアドバイスなんかは非常に有意義なものなのだが、流石に疲労というものがある。

 だから、ワタルは必死に抗議するわけだが…


、そうね」


「―――?」


 何やら含みのあるセナルの物言いに、ワタルは首をかしげる。


「私達のいるこの場所はちょっと特殊で、時間が早く流れているのよ。どれくらいかというと、外での一時間が、この中での一日、ってところね」


「……マジで?」


 セナルの口から放たれた衝撃すぎる言葉に、ワタルは呆けてしまう。そしてそれが本当ならば、セナルの言っていた「ニ十分しかたってない」というのも、外の世界の話であれば確かにそうで……


「てか、それここに居すぎたら俺だけ二十四倍の速さで年取るってこと!?」


「はずれよ。人体や物の時の進みは外と同じになるように設定してるもの」


「どういうこっちゃ……」


 もうワケのわからないデタラメっぷりに、ワタルの頭はごちゃごちゃだ。

 とにかく、この場は特訓に最も適しているというわけか。


「私は『魔術』の中でも結界系が得意で、その結界に『設定』を加えられるくらいには研鑽してきたわ。戦いは自身の得意の押し付けあい…貴方も、最初に覚える魔術は結界術がいいわよ」


「まぁ、考えとくよ」


 自身にとって有利な『設定』の結界の生成…確かに、できるなら戦闘はより楽にはなるだろうが、なにせワタルにはまだ技能がない。


「じゃあ戻るけど、能力の大事な部分についてね。実は能力って、変化するの」


「……はぁ?」


「何言ってんだって顔ね。正確には自由に変えられるんじゃなくて、を満たした時にカタチを変えるの」


「ある条件ってのは…」


「『信じる』ことよ」


「えぇ……」


 セナルの言うその能力の変化の条件に、ワタルは訝し気に声をだす。


「正確には、想像して、それを信じるってところね」


「想像って…「こんなのできんじゃね」って思う事? なら、俺の《ゼロ》みたいな能力が、お前の《不老不死》になったりすんのか?」


「いい質問ね。それに答えると、まずその能力の変化はあくまで。さっき言った変化条件の『想像』も、どちらかというと自分の能力からの『連想』って言った方が正しいわね」


「なるほど!」


 セナルの説明に、ワタルは納得がいったとポンと手をたたく。

 そしてそれなら、ワタルにも覚えがある。

 《不変》という『物体を空中に固定する能力』だと思ってたモノが、シルクと戦った時に『状態を固定する能力』になった。

 それは、ワタルが《不変》という文字から『連想』し、その力に変化させたという事なのだろう。

 そんでもって、『状態を固定する能力』に変化させた後も、以前通り『物体を空中に固定する能力』として使うことも可能であったことから、変化させたことによって変化前の能力が使えなくなるというわけではなさそうだ。というか、それで言えば《ゼロ》を何かに付与するって使い方も本来の《ゼロ》を変化させたモノなのかもしれない。

 ん? そういえば……


「なぁ、もひとつ質問していいか? さっきの話とはちょっと違ってくるんだが……」


「――? なにかしら」


「言ってなかったんだが、俺の能力の《不変》だけど、アレ多分正規の力じゃねぇ」


「それは…どういうこと?」


 ワタルの言う事に、セナルはその幼い顔に疑問を浮かべ首をかしげる。

 説明したいのだが…何とも言語化が難しい。


「なんつーのかな…《不変》はいつの間にか手元にあった能力なんだよ。便利だったから使ってるが、普通に怖くはある」


「……気付いたのは、いつの話?」


「えっと、レイブウィアでの大戦闘の前日だな」


「じゃあ、それより前に、強く何かを『願った』ことは?」


「………」


 セナルの問いに、ワタルは記憶をたどる。



△▼△▼△▼△▼△



『パパとママとにぃには、どこにいったの…?』


 物心のついたばかりのころ、近所の老婆に、渡はそんな問いを投げた。

 渡は、家族に会いたいと『願った』


『俺は…俺は……!』


 中学二年の途、二択を迫られ、結果渡は学校にしばらく行けなかった。

 渡は、彼女の気持ちが晴れることを『願った』


『なん…で、家から爆発が……?』


 高校合格が決まった日、家から火が昇ったのを目の当たりにした。

 渡は、家族の無事を『願った』


『■■■■■■■■■■』


 ■■■■■■■■■■■■■■■■。

 渡は、■■■■■■■を『願った』


『やめろやめろやめろぉ! こっち来るなぁ!』


 燃える狼の接近を拒絶し、這いずる。

 ワタルは、生を『願った』


『死ね』


 恩人に庇われ、どす黒い気持ちに従ってそう言い放った。

 ワタルは、死を『願った』


『俺じゃ…ないんだ……』


 玉座の間で、人々がワタルを悪だと決めつける。

 ワタルは、復讐を『願った』


『俺の、せいで……!』


 頭だけの状態となった自分に憧れてくれた少年を見せられる。

 ワタルは、この世から居なくなりたいと『願った』


『俺は、キトウ・ワタルだ』


 金髪の侍女服の女性へ、ワタルは自分の名前を告げた。

 ワタルは――――、



△▼△▼△▼△▼△



「―――あの時だ」


 心当たりを見つけ、ワタルはボソリと呟いた。


「――――?」


「恥ずかしい話ではあるんだが……レイブウィアで俺が心折れちまった時、エレクシアが色々と言ってくれたんだ。――その時、俺は『ずっとこのままでいたい』っていう、『不変』ってもんを『願った』」


「……なるほどね」


「んで、それが何か関係してんのか?」


 確かに『不変』という点では能力名と共通しているが、だからって能力の発現に関係しているのだろうか?


「―――貴方のそれだけれど、恐らく《感能》と呼ばれるものよ」


「カンノウ……?」


 ここでセナルの口から放たれた知らない概念に、ワタルは眉を寄せる。

そのカンノウとやらが何らかの能力を指すのはわかるが、《ジョブ》や《スキル》なんかと何か違うものなのだろうか…


「感情の感に能力の能で、感能よ」


「それはわかったけど、どういうモノなんだ? それ」


「……人の感情には、一定の許容量があってね。そして極稀に、人はその許容量を超えてしまうことがあるの。――その時手に入るのが、《感能》よ」


「でも、それってジョブとかと違うとこがあるのか?」


「そうね…違うのは能力の発現条件くらいで、特に変わりはないわ」


「そういうモンなのか……」


 でもまぁ確かに、能力の特徴である『変化する』というのが《不変》にも適応したのだ。根本的なモノは特に変わらないのだろう。

 …よくよく考えると、《不変》という能力が変化するというのは、どこか矛盾を感じるな。


「にしても、《感能》か……」


 ここで新しい概念が出てきたわけだが、この感能とかいうモノを持っているのはワタルの他に何人いるのだろうか。

 あの時のワタルの願い具合の自己採点だと、かなり強く、しかも本心で願わなければその許容量…一定のラインを超えることはできない。まぁ、セナルいわく普通の能力とあんまり変わんないらしいし、あろうとなかろうとなモノなのかもだが…

 そんなところを考えていると――、


「―――すまない! どなたかおりませんか! 火急の用だ!」


「―――!?」


 地下にまで響くほどの大きな声が、上から聞こえた。

 声からわかるほどの慌てっぷりにワタルは驚く。


「行ったがいいんじゃねぇか?」


「……みたいね」


 セナルは一瞬の思考の後、階段の方へ走っていった。

 というか、そのドレスみたいな服だと階段上りにくいのでは……


「ってなにそれ!?」


 そんな心配をしていると、階段の前でセナルの足元に魔法陣が現れ、階段ギリギリを滑るように登っていく。


「んなもんあんなら俺も乗せてけよ……!」


 そう愚痴を言いながら、ワタルは一応ということで《カゲロウ》のローブで身を包みながら階段を駆け上っていく。

 そして階段を登り切った先で……


「―――エレクシア!?」


 ボロボロとなったエレクシアと、そんな彼女を抱える大柄の鎧男が目に入った。


「むむ! 御知り合いであったか! それはさておき、ギルドマスター殿! 彼女の治療を頼みます!」


「おい! 大丈夫か!? 返事しろ!」


「慌てるのはやめておきなさい。でも、いったい何があればこんな傷……」


 横たわらせたエレクシアのボロボロ具合に、心配そうに慌ててエレクシアに呼びかけるワタルを落ち着かせ、セナルも眉を寄せながら魔法陣を展開し、恐らく治癒魔法らしきものをエレクシアに施す。

 次第にエレクシアの呼吸も落ち着き、傷も癒えていった。


「むむむ! 傷がみるみるうちに! 流石はギルドマスター殿!」


「……ちょっと? この距離だとかなり耳に悪いのだけれど」


「むむむむ! それは失礼! 抑えるよう尽力する!」


「絶対尽力してねぇだろそれ! で、エレクシアは大丈夫そうなのか…?」


「えぇ。この調子で治癒をかけていたら、すぐよくなるわ」


 彼の大きな声にセナルが注意しても全くもって変化しない彼の声量に、ワタルは思わずビックリしてしまう。

 そして、エレクシアが大丈夫だということを聞き、ワタルはホッとする。


「今更ながら失敬! 貴殿の名前を教えて貰えるか!?」


「お、おう…俺はリベルド・アンクだ」


 彼の声量に押されながらワタルが偽名を名乗ると、男は目をかっぴらいた。


「なんと! 貴殿がリベルド殿か! 噂はかねがね聞いている!」


「そりゃ恐悦至極……そんでもって、あんたは誰なんだ?」


 やはり噂は広がっているようで安心すると同時に男に名乗りを求めると、彼の口からは驚くべき言葉が紡がれた。


「私は国王陛下の近衛兵のゲルニスだ! 以後よろしく頼む!」


「―――国王陛下の…近衛兵……」


 そんな彼――ゲルニスの立場を聞いた時、ワタルは息が詰まった。

 近衛兵。しかも、ワタルが『バカ国王』と評してしまったダリスの近衛兵ときた。非常にマズいと、ワタルはローブを深く被る。

 だが、あのワタルが処刑される日、ゲルニスの姿は見えなかったが……


「……国王陛下つったら、ちょっと前に事件があったよな? あの時、あんたはそこに居合わせてたりしてたのか? できればそん時の話を聞いてみたいんだが…」


「――――――」


 その時ゲルニスが何をしてたのか探りを入れてみると、途轍もない悪寒がワタルを襲った。正体がバレたのかとヒヤヒヤしながらセナルに目を向けると、彼女はエレクシアの治療に尽力してるフリをしている。

 まぁ、探るのは勝手にしなさいというメッセージ半分、ワタルの過去の話に興味があるっていうのが半分ってところだろう。


「私はあの時、偶然陛下の命で城を離れていたのだ…! もし私がいれば、王女様に危害を加えるなんてことを許すはずなどなかった…! キトウ・ワタル…死んでいるとしても、私は奴を許すことはない!!」


「そうか…」


 ワナワナと声を震わせながら、その濃い目の顔に青筋を浮かべる

 目の前にいるのがその『許すことはない』キトウ・ワタルだと知った時、彼はどれほど怒り狂うのだろうか……

 顔は見られていないとはいえ、顔の特徴は聞いてるはずだ。もしバレたらと思うとゾッとする。


「それはそうと、あんたは何でこの街に来たんだ? そんな悔しがってるくらいだから、陛下の傍にいたいんじゃ…」


「当然! だがしかし! 陛下の命により、私は今リベルド・アンク殿の人柄を見極めるという任務にあたっているのだ!!」


「いや、俺本人なんだが……」


 見極めるというのは、もっとこう…遠くから忍みたいな奴が観察するみたいな感じのほうがいいのではないだろうか。何もこんな嫌でも目立つような男に任せるとは…いやまぁ、信用はできそうだが……

 それにしても、人柄を見極めるということは……どうやら、ワタルの『王都からの信頼勝ち取ろう大作戦』は順調に進んでいるようだ。このまま上手くいけば、魔族との戦争に誘われる…もとい、あのゴミカスコンビに復讐できるかもしれない。


「……近衛兵さん、いいかしら」


「なんの御用だ!」


「この子は、何でこんな怪我したの?」


 ゲルニスを呼び、エレクシアに目を向けながらセナルがそう問いを投げた。

 そんなエレクシアを見ると、傷はもう殆ど癒えているようだ。流石はセナル!

 とはいえ、怪我の理由が気になるのも事実だ。


「それならこちらも聞きたいことがある! ―――結界内に、魔族が侵入していた。ギルドマスター殿の結界術を疑うわけではないが、些か不安だ!」


「魔族……それは多分、半魔族ね」


「半魔族…? それって人と魔族の子供ハーフって感じか?」


「えぇ、そうよ。半魔族は、人間の『能力が使える』という長所と、魔族の『魔物の特徴が使える』という長所を同時に持ってるから、その力の噛み合いによっては相当な脅威なの。……エレクシアがやられてしまったのも、その噛み合いがよかったのでしょうね」


「話聞いた感じ、お前の結界って設定したモノを結界内にいれないって感じだろ? そんな厄介なら半魔族もその設定に組み込めばいいんじゃないか?」


 確かに人間の力と魔族の力を両方使えるのは厄介だが、そうしてしまえば何ら問題はないはずだ。事実、彼女が生きてる間で結界が破られたこともないらしいし、老朽化ということはないのだろう。

 それとも、何かできない理由があるのだろうか。


「残念だけど、『半魔族』という存在自体、中間で曖昧なものだから設定ができないのよ。…というより、私の結界を見破るなんて、嫌な目ね」


「目付きの話はやめてくれ…」


「む!? 私は目付きが悪かろうと批評はせぬぞ! そも、見えぬしな!」


 豪快に笑い飛ばすゲルニスだが、正直目付きが悪くてローブを被ってるワタルが怪しいと思われないか、ワタルは内心ヒヤヒヤだ。


「そ、それはそうと…エレクシアを街で自主特訓させてたわけだろ? 取り敢えず、シルクとかアンディスとかも回収してくるわ」


 エレクシアが特訓していたということは、シルクもアンディスも街で特訓しているという事なのだろう。

 そんな厄介な奴が出たのだ、彼女らも心配だ。


「えぇ、お願いね。……それと、ついでに貴方がこの街に来た理由を、果たしてきていいわよ」


「……ギルドって怖いな」


 一体どこで聞いたのやら…ワタルがこの街に来た理由――レイブウィアで出会った男の子の祖母へ、会いに来たのだ。


「まぁ、お言葉に甘えて行ってくるよ」


「えぇ、速めに帰ってくるのよ。まだ特訓は残ってるもの」


「まだするんですね……」


 そんな風に疲れた顔をしながら、ワタルは事前に聞いていた彼の祖母の家に向かうのだった―――。



△▼△▼△▼△▼△



 同刻―――、



「ねぇ、後、どれくらいでつく?」


「フェンドラスまでは…あと少しといったところですかね……」


「えー、もう、疲れた」


「そのくらい我慢してください。――貴方は、四天王なんですから…」


「まぁ、魔王様からの、命令だし、やるけど……」



―――魔界の地を、一歩ずつでも確実に、『魔族』の手が、フェンドラスへと迫ってきていた。

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