第一章 / 8話 『圧倒的物量の愛情表現』
「まさか、昨日の今日でまたここに来るとは思わなんだ・・・」
昼なのに薄暗い森を歩きながら、ワタルはうんざりとした様子で足を進める。
「主様は昨日もここに来られたのでございましょうか?」
「あぁ、昨日はここらへんで盗賊に襲われてな。まぁ全員とっちめたけど。あと、言葉使いが凄いことなってるぞ。」
エレクシアのまだまだ未熟な覚えたてのお嬢様言葉を指摘すると同時に、ワタルはエレクシアの疑問に答える。
そういえば、この世界での罪の基準どうなってるんだろう。殺しは確かに良くないから重い罪だとは思うけど、この世界には貴族だのの『立場』がある。貴族がどうのこうので何でも出来るんだろうな。
話が逸れたが、きっとこの世界では殺しが軽く見られていそうだ。正義の殺しは褒め称えられるような、そんな世界なのだろう。
とにかく、この世界は罪の基準が曖昧な気がする。全ての決定権はお偉いさんの気分次第のような感じだろう・・・親としての私事でワタルを裁いたあの国王のように。
「はぁぁぁ・・・」
「どうかされたのですか? 主様」
「・・・いんや、何でもない」
「そうですか・・・」
すると、ワタルの答えに、エレクシアは少し悲し気な表情をした。
「それより、俺等が捕らえる奴の名前ってなんだっけ」
「確か、ガイチョウとか言っていた気がしますわ」
「害鳥て・・・そんなの食ってもいいのか?」
名前からして、いかにもカラスみたいなやつっぽい。いや、そもそも害鳥は「害のある鳥」という意味であって、個を指すものではない。
「まぁ、異世界だしな」
色々浮かび上がってくる疑問を、その言葉で自己完結する。
「・・・そういや、お前って何歳なんだ?」
聞こうと思っていて聞ける機会がなかった質問をする。
ただ、実際に気になってることでもあるので、これを機に・・・という考えもある。
「それが、わたくしにもよくわかっておらず・・・ご期待に沿えず、申し訳ございませんわ」
「いやいいよ、そんな謝らなくて」
改めて話してみると、律儀すぎるというかなんというか・・・
「ん? これって・・・」
苦笑するワタルの目に留まった物は、大きな何かの足跡だ。
「もしかしたら、これが害鳥ってやつの足跡か?」
見たところ新しい足跡だし、案外すぐ見つかりそ・・・・
「ゴルルルルル」
唸り声が聞こえ、ワタルは顔を上げる。
そこには真っ赤なトサカを頭に生やし、鋭い目付きでこちらを睨んで来る鶏のような生き物。その鶏は、羽毛の下に鱗のような物を身にまとい、それはまるで鎧のような・・・
「鎧・・・ガイチョウ・・・ガイ・・・鎧鳥!?」
「ゴゲェェェェェッ!!」
世紀の大発見並の大発見に声を上げるワタルに向かって、害鳥―――鎧鳥はくちばしでワタルを突き刺そうとしてきた。
「のわっ」
それをギリギリでワタルは飛び退く。
「クソ、ガイチョウってそういうことかよ・・・」
鎧鳥を害鳥と間違えるとは・・・・恥ずかしい!
「ゴゲァァァァ・・・」
「エレクシア、あいつ何か鱗みてぇなもんで覆われてる。だから多分斬れねぇ」
「それなら、わたくしは電撃で援護します。主撃は主様に任せますわ」
「オーケー」
「ゴッ、ゴッ、ゴッ」
戦い方を話し合うワタルを見ながら、鎧鳥は喉を鳴らす。そして―――
「ゴゲエァァェァェェェ」
「ほっ」
涎を飛び散らせながら突っ込んで来る鎧鳥を、エレクシアは右に、ワタルは上に飛び、避ける。
「エレクシア!」
「はい! ですわ!」
ワタルの合図に合わせ、エレクシアはワタルに当たらないように電撃を放つ。
「ゴゲッ・・・!」
「うおらぁぁ!」
電撃に痺れている所に、ワタルは踵を振り下ろす。
「ゴガッッ!」
「――――っ! ってぇ!」
踵下ろしの衝撃に鎧鳥は呻くが、ワタルの方は踵がジンジンし、それに少し悶える。
「クソ、滅茶苦茶硬ぇ」
硬いと防御にも使えるし攻撃にも使える。まさにシンプルイズベストだ。
だがシンプルさなら、ワタルの『ゼロ』も負けてない。
「・・・主様? これはしんぷるさを競うものではないですわよ?」
「エスパー!?」
「はいはい、いいから今は戦闘に集中してください」
少しの軽口を言い合い、ワタルは再び戦闘に備える。
「ゴググググ・・・」
そんなワタル達を鎧鳥は睨み、喉を鳴らす。
「そういや、こいつのこと食うんだったよな。なら、ササッとやっちまうべきか」
指を鳴らし、ワタルはそんなことを口にする。そして――
「・・・うし」
両者は足に力を入れ、地面を蹴る。
「ゴゲェェェェェ!!!!」
「うおぉぉぉ―――!!!」
そして正面から衝突・・・・しなかった。
「ゴゲェァッ・・・!?」
「正面衝突なんざする訳ねぇだろ、バーカ」
そう言ってワタルは少し飛び、鎧鳥の首裏に手を触れると、その鎧鳥は小さく断末魔を上げながら倒れた。
「ふぅ・・・いい感じにやれたな」
「あの・・・主様? 今何を・・・?」
「ん? あぁいや、簡単なことだよ。俺の能力で『カゲロウ』っつーのがあってよ、それをアイツの鱗の隙間に―――」
ワタルが先程の出来事をエレクシアに説明しようとしていると、ワタルとエレクシアの間に、何かが落ちて来た。
「?」
それに目を向けると、それは人の形をしている。
だが、それの目には生気が宿っておらず、肌もまるで死体のように白く―――否、それは間違いなく死体だった。
しかもその死体は、落下の衝撃のせいか手足があり得ない方向に曲がっており、その手の一本がワタルの方向を向いていて―――
「―――――っ!?」
その手から突然、突風が吹き荒れ、ワタルは吹き飛んだ。
「主様!?」
「あー、ダメダメぇ」
「!?」
ワタルを追おうとするエレクシアを、誰かが呼び止める。振り返ると、そこにいるのはフードを被った女性だ。そしてその周りを、複数の死体が立ち、取り囲んでいる。
「貴女は確か・・・」
「そうね、数時間ぶりかしら?」
「何故、ここにおりますの?」
人搬馬車に居たはずのフードを被った女性。何故ここにいるのか、そんな当然の疑問をエレクシアは問う。
「簡単なことだよ? アンタと一緒にいたあの目付きの悪い男いたじゃない? 彼を私の『子』にして迎えようと思ってねぇ。だから、まずアンタを倒すことにしたの。彼と連携されたら面倒でしょう?」
だから分断した、というワケである。
「貴女は何者ですの?」
「私? 私は『死導者』よ。知ってる? 冒険者の間では、結構噂として有名なのだけれど」
エレクシアの問いに、『死導者』は一切のためらいもなく、自分の素性を明かした。
―――その頃、ワタルはというと。
「のうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
勢いよく吹き飛ばされ、ワタルは宙を舞う。
とはいえ、このまま飛び続ける訳にもいかない。
「カゲ・・・ロウ!」
背中からカゲロウを伸ばし、そのあたりの木を掴ませて勢いを抑える。
「ぐ・・・あっ、はっ」
うまく勢いを殺すことは出来たが、受け身を取れず地面に激突する。
だが、一応これで元の場所に戻ることが出来る。――そう、思った時だ。
「ウゥアァァァッ!!」
「なっ」
走り出そうとしたワタルに、肌の白い死体が襲い掛かってくる。
「こいつら・・・ゾンビ!?」
ゾンビ・・・それはホラー映画などでよく出てくる動く死体だ。
「この世界にゾンビが・・・いや、違うな」
ワタルは浮かんだ考えを即座に否定する。
確かに、自然発生でゾンビが生まれるのも、ここは異世界であるため有り得なくもないが、それだと説明しきれないことがある。
偶然、ワタルとエレクシアの間に二人を分断する魔法を放つゾンビが落ちてきて、その先にも、偶然二人の合流を拒むようなゾンビがいたなど、あまりにおかしい。
必ず、何者かの関与があるはずだ。つまり、こいつらは魔法か何かで動かされてる死体・・・・
「クソ、胸糞悪ぃ」
殺したのか死んでいたのかは知らないが、死体を動かし、それを手駒として使う。
とても、人間のする所業ではない。
その事実に、ワタルは怒りを覚える。
「あんたらには悪いが、倒させてもらうぞ」
魔法で動かされていて、動かしてる人間が近くにいないということは、恐らく自動操縦のような物だろう。
なら、このゾンビ自体に何か仕組んであるに違いない。
「さっさと成仏してもらって、あいつの所に行かねぇと・・・」
攻略法を考えつつ、ワタルは焦燥する。
△▼△▼△▼△▼△
『水よ、彼奴を貫け。スピト・ウォルク』
「くっ・・・」
『死導者』から放たれる水の槍の攻撃を、エレクシアは紙一重で躱す。
「詠唱が・・・速い・・・ですわね」
「あら、ありがと、昔から魔法関連は得意なの」
魔法の詠唱時間は、使い手の単純な実力で決まる。
魔法の詠唱というのは、使い手が魔法を構築するために一番集中することができる呪文のようなものだ。そのため、詠唱を短く済ませられる者は、物凄い集中力と才能を持っていることが多い。
「ウアァァァァッ」
「邪魔っ、ですわ!」
この屍人、何度倒しても湧き上がって襲い掛かってくる。そのたびにエレクシアは斬って倒しを繰り返す。でもこれではキリがない。それなら―――
「目の前に術師がいるなら、それを倒すが得策ですわ!」
体に電撃を纏い、エレクシアは地面を蹴ろうとする。
「うん、そう来るわよねぇ。アンタの速さなら、距離を詰めるのも簡単ですものねぇ。―――だから当然、対策はするわよねぇ」
「ウァァァッァァ!」
「きゃっ」
女が不適に笑みを浮かべると、地面から屍人が這い出てきて、エレクシアの足を掴む。
「くっ・・・この・・・!」
『岩盤よ、我が命に応え柱となり、彼奴を砕け。ストル・ラード』
エレクシアがその屍人の手を切り飛ばそうとした時、『死導者』がまた、魔法の詠唱をした。しかもそれは、
「岩魔法!?」
あの詠唱は、テガイズが実際に唱えたものに酷似している。
だが、それだと不自然だ。
普通、魔法というのは一人一属性だ。その定説を越えられるのは、『偉人』と呼ばれるに超人のみだ。
「でもこの距離なら・・・」
たとえ相手がその『偉人』だったとしても、この距離ならば躱せる。そう踏んで―――
「がっ・・・!」
後ろからの硬い衝撃に、エレクシアは目を剥く。
その衝撃の正体を確かめようとエレクシアが後ろを見ると、そこには這いつくばった屍人が一人、そしてそのすぐ前から伸びた岩の柱が、エレクシアの体に衝撃を与えていた。
「か、ふ・・・・今のは・・・・」
「やっぱ初見では避けれないわよねぇ、この攻撃は」
「いったい・・・何を・・・」
『死導者』が唱えた魔法が、屍人の魔法として出て来た。これは一体・・・・
「ネタばらしするとね、確かに私は岩属性の詠唱をしたけど、あれは私が攻撃する用じゃなく、その『子』の魔法なの。つまり、私がその『子』の詠唱を代行したってワケ」
それなら、あの屍人による無詠唱の風魔法による分断も納得がいく。
「それって、実質多属性ってことですの?」
「まぁ、そうね。私は水属性で、あの『子』が岩で、あの『子』は炎、そんでもってあの『子』は風」
そう言って、『死導者』は屍人を順番に指さし、属性を言う。その表情は恍惚としており、それが何とも不気味だった。
「・・・そんなこと、教えてもいいんですの?」
「ん? 良いわよ。だって、知った所で対応出来ないでしょう?」
「見くびられたものですわ・・・・ね!」
『死導者』に挑発され、エレクシアは今度こそ地面を蹴る。
『嵐よ。全てを飛ばす強風となり、吹き荒れろ。バル・ウィード』
「ぐ」
それに合わせ『死導者』は後ろに飛び、詠唱する。
すると今度は右方向から突風が吹き、エレクシアはそれに飛ばされて木に体を打ち付ける。
「まだ・・・」
「さぁせない。『水よ、落ちろ。ダウ・ウォルク』」
立ち上がろうとするエレクシアに、『死導者』はまた詠唱をすると、今度はエレクシアの頭上に大きな水の雫が現れ、そこから水が滝のように降ってくる。
「あ・・・が・・・・」
水の余りの質量と勢いに、エレクシアの体がひしゃげる。
「・・・そろそろ終わりよぉ。『火炎よ、紅蓮の業火となり、彼の者を焼き尽くし、炭へと変えろ。イフェル・フィーア』
そんなエレクシアに、『死導者』は水の滝を解除し、代わりに深紅の炎を放つ。
「はっ」
それをなんとか右に避け、エレクシアは息を整える。
「ふぅ・・・・」
「あらぁ、避けられちゃったぁ。やっぱりキミ、速いわねぇ」
「お褒めに預かり光栄ですわ」
そんなことを言いながら、エレクシアは脳を回転させる。
「・・・」
手数では圧倒的に不利、速さで短期決戦を狙っても屍人に邪魔される。それに合わさり『死導者』のとてつもない魔法の才能・・・・
速さだけで足りないなら、獣化して戦うべき? いや、駄目だ。この辺りは木が多く、獣化後の大きな図体では機動力を削ぐだけ・・・それなら、電気を使って遠距離と近距離で臨機応変に? いや、それも駄目。直接と放出では、電気の威力が違いすぎる。それに、射程も短いし、やっぱり屍人が邪魔。
「やっぱり、直接が一番速いですわね」
「なぁに? また突撃? 芸がないわねぇ」
改めて結論を出し、エレクシアは足に力を入れる。狙いは『死導者』―――
「!」
瞬間、エレクシアが地面を蹴り、飛び掛かる。
ただし、それは『死導者』にではない全く関係のない木だ。そしてまた足に力を入れ、今度は別の木に向かって木を蹴る。そしてその木を蹴り、そのまた次の木も蹴り、『死導者』の周りを飛び回る。
「なるほどぉ、考えたね。確かにこれじゃ、私はキミに狙いを定められない。でもねぇ―――」
『死導者』はエレクシアの戦術に感心しつつ、笑みを浮かべる。
『水針達。スピトズ・ウォルク』
笑みを浮かべつつ、『死導者』がそう唱えると地面から水が湧き出た。それを確認した途端、その水が複数の針となり、エレクシアの手足を貫いた。
「―――――っ!」
致命傷は何とか免れたし、手足の傷もそう深いものではないので、一応走ることは出来るが、それは今問題ではない。
動きを止められてしまった。しかも、空中で。
『水よ、手となり掴め。ハド・ウォルク』
それを見て『死導者』は陰惨な笑みを浮かべ、そう唱える。そしてその詠唱道理に、水は手のような形となり、エレクシアの首元を掴む。そして――――
「それそれぇ~」
無邪気な声と裏腹に、エレクシアを振り回し、何度も何度も地面に叩きつける。
「ポイっとな」
そして乱暴に手を離し、エレクシアを木に向かって投げ飛ばす。
その勢いは凄まじく、何本もの木を貫通した。
「あ・・・ぅ・・・」
「もう終わりかなぁ」
痛みに体を震わせ、顔を歪ますエレクシアを見て、『死導者』は冷たい視線と手を向ける。
『水よ、豪水となり、大量の水で前方を洗い流せ。タル・ウォルク』
そう唱えると、向けられた手から途轍もない量の水が噴き出る。
それは、エレクシアを、木を、屍人さえも、全て飲み込み、流し去る勢いと量で―――
「ここまで・・・なのでしょうか・・・・」
迫りくる水に、エレクシアは何もできなかったことに悔しさを覚えながら、拳を握りしめる。
そして成す術もなく、その洪水に呑まれ―――、
「うおぉぉおぉぉぉぉぉおぉ―――」
諦めに溺れたエレクシアの横から、雄叫びを上げながら何かが飛び出す。
それは、大木を抱えており、流れてくる水に向かって走って行く。
「―――んらぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
そして雄叫びを上げながら抱えている大木を水に向かって振りかざす。
「うっそぉ」
それから起きた光景に、『死導者』は驚き、それと同時に笑みを浮かべる。
その起きた光景とは、飛び出した何か――ワタルが、振りかざした大木で水を打ち、水の勢いを完全に相殺した。
そして大木はその力に耐えきれなかったのか、その木も折れて粉々になる。
「はぁ・・・はぁ・・・・クソ、走りすぎた・・・」
「あるじ・・・さま・・・」
「エレクシア! 大丈夫か!? 骨は折れてたり・・・?」
「大丈夫・・・ですわ・・・」
ボロボロのエレクシアにワタルは心配そうな顔で駆け寄る。
折れてはいないが、打撲がひどい。
「動けそうか?」
「主様、わたくしの懐から、瓶をとってくださいますか?」
「えっと・・・これか?」
エレクシアに言われた通りに探してみると、一つの液体入り小瓶を発見した。エレクシアの体を見る限り、かなりの激戦だったはず。それなのに、瓶には傷一つついていなかった。よほど頑丈なつくりなのだろう。
「ありがとうございます」
その瓶をエレクシアは受け取ると、その瓶の蓋を開けて中身の液体を飲んだ。すると、エレクシアの体に刻まれた打撲が、見る見るうちに治っていった。
「おぉ・・・」
「流石、上級回復薬といった所でしょうか。まさかここまで効果があるとは・・・・」
「ん? 待て、今回復薬っつったか? 一体どこでこんなモン手に入れたんだよ」
「・・・・」
「おいコラ、目を逸らすな」
大方、防具を買いに行った際についでに買ったのだろう。
「まぁいいよ、元々お前にやった金だからな、何買おうが文句は言わねぇ。それで、どうだ? 動けそうか?」
すっかり傷が治ったエレクシアに、ワタルはもう一度先程の問いを投げかける。
「えぇ、バッチリですわ」
「―――あららぁ、折角分断したのに、合流されちゃった挙句、傷まで治されちゃったぁ・・・」
「その割には、随分と余裕そうだな」
「まぁ、なっちゃったものは仕方ないしねぇ。それに、まだ数では私の方が勝ってるしぃ」
その言葉を聞き、ワタルは振り返る。状況からみて、目の前の女が敵というのは明らかだ。そして周りの動く死体・・・恐らく、ネクロマンサーみたいなものだろう。・・・・あれ? もしかしてこいつ、『死導者』なのではないか? もし『死導者』が「死へと導く者」ではなく、「死者を導く者」という意味合いなら、こいつが『死導者』というのも納得がいく。
「聞くけど、お前は『死導者』か?」
「あら、単刀直入ねぇ。確かに、世間ではそう呼ばれてるみたいねぇ。まぁ、無駄話は置いといて、ささっとやっちゃいましょぉ」
ワタルの説が立証されると同時に、周りから大量のゾンビが現れる。
「・・・・クソ野郎が、一体どんだけの命を踏みにじってやがんだよ」
「さぁ? 全部倒したら分かるんじゃなぁい? ・・・・そういえば、リベルドくんだっけ? キミの所には私の可愛い『子』を送っといたはずだけどぉ?」
「あぁ、あいつらか・・・悪いけど、成仏してもらったよ」
「へぇ、倒したのねぇ。そう・・・・」
それを聞くと、『死導者』は俯く。そして―――
「フフ、フフフ・・・いいわ、凄く! 早く、早くあなたを私の『子』したいわ!」
「・・・・悲しいとか、そういう感情はないのか?」
「え? いやぁ、確かに少しはあるわよぉ? ただ、それよりもあなたを早く私の『子』にしたいっていうのが大きいだぁけ」
「そんなの、あの方達への・・・命への冒涜ですわ」
「? 何言ってるのよ。あの『子』達はもう死んでるのよ? 死体に、命も糞もないでしょぉ?」
「黙れクソ野郎。てめぇはぜってぇぶっ飛ばす」
「いいわ、受けて立ったげる。私と、私が導く可愛い『子』達が」
ワタルの宣戦布告に、『死導者』は不気味で陰惨な笑みを、浮かべた。
『圧倒的物量の愛情表現』
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
ワタルがただひたすらにうるさい
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