第4話 茅野隊員の指摘

 俺が変身するのは当然だが侵略異星人や怪獣が現れた時だ。そして変身前の俺の仕事はそいつらの対処だ。


 つまり俺達はやつらの出現と共に出動し、逃げ遅れた人の救助にあたったり、被害が最小限になるようそのために整備した広場に追い込んだりしなくてはならないのである。ネイバーがしゃしゃり出る前は積極的に攻撃したり捕獲していたりしていたのだが、最近では俺達が思いっきり戦えるように誘導したり、サポートに回ったりするようになったのだ。


 かといって、仕事が楽になったわけではない。やはりそれなりにやることは多いのだ。先にも説明した通り、逃げ遅れた人の救助もあるし、交通整備なんかもしなくてはならない。被害状況をまとめたり、なんていう事務作業もあるのだ。


 が。


「銀河隊員、最近何か指示を無視して単独行動してませんか?」


 EAATのオペレーターである茅野カヤノ総斗ソウト隊員が、そんなことを言ってきた。基地内勤務である彼は、常にコンピュータの前に座って異星人の出没情報を知らせてくれたり、迅速に救助に向かえるよう指示を出してくれるのである。俺達のように体を張る仕事ではないが、彼がいなければ隊員の到着は大幅に遅れ、その結果、助けられるはずの命が失われていたかもしれない。


 そんな縁の下の力持ち的存在である茅野隊員からの指摘である。ヤバい、と思った。

 

「思いっきり怪獣の至近距離にいるよね? あんな危ないところで一体何をやっているの? ネイバーの戦いを邪魔したら駄目だよ? 踏んづけられたらどうするの」


 なんてお叱りも受けたが、まさかそのネイバーは俺だよ、だなんて言えるわけがない。


 どうやら彼は、俺の隊員バッジに内蔵されているGPSが指示とは全く異なる場所を示していることに気が付いたらしい。そりゃそうだ。だって俺、前線も前線、最前線で戦ってるんだもん。このGPSは先日、隊員バッジが新調された際に導入されたものだったようで、俺達にはそんなものが埋め込まれているなんて一切知らされていなかった。完全に油断していた。なんてものを支給してくれたんだ本部。


 その場は、「やたらすばしっこい子どもがネイバーの戦闘を間近で見ようとしていたから、それを捕まえてた」とかなんとか言って誤魔化したけど、これからどうしよう。毎回、やたらすばしっこい子どもとの鬼ごっこで切り抜けられるわけがない。


 とりあえず次からは、そのGPSを遮断する電波を発してみたのだが、すると今度は「どうして銀河隊員のGPSはネイバーが現れると作動しなくなるのでしょうか」と怪しまれる始末。


 もう限界だ。

 これ以上隠せない。


 俺は覚悟を決めた。

 隊の皆に俺が宇宙からやって来た宇宙人であることを正直に話すのだ。それによって何らかの処罰を受けることになるかもしれないけれども、それは仕方がない。ていうかさんざん地球を救ってきた宇宙人に対して処罰とかあんのか? むしろ歓迎されてしかるべきな気もするが、心構えだけはしておいた方が良い。


 そういうわけでその週明けの月曜日、全体朝礼の場で俺は腹を決めて挙手した。進行役の茅野隊員が、「銀河隊員、どうしました? 何かあるのならどうぞ」と促してくる。


「実は隊の皆に隠していたことがあります」


 その言葉に小さな会議室はざわついた。

 いまさらだが、EAAT日本支部の隊員は俺を含めてわずか六人。少数精鋭にもほどがある。だからざわついたと言っても、俺以外の五人がざわざわしただけだ。

 

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