第7話

 強大な魔法やその残滓が炸裂する映像が映し出される中、司令部ではオンレの戦果に関するリアルタイムデータに釘付けとなっていた。

ASFでは戦果の確認や戦争犯罪を監視するための部隊が存在しており、ASFが出撃するあらゆる局面に同伴し、任務を遂行している。そのためオンレが・誰を何を・どのようにしたのかに関する詳細データを司令部は把握していた。それ以外にもルリィの権限によって本来であれば閲覧できないオンレのを含めたものを司令部にいた人物達は見ていた。

「見せるのはまだ早かったのではないですか。ルリィ様」

皆が戦果に目を通してから呼吸さえも忘れたのではないかと思えるほど静寂となった空間でクラムは問いかけた。

「確かに早かったかもしれませんね。ただこの戦いから聖天の対外における見方は大きく変化するでしょう。特に私たちの実力を把握しているであろう上層部よりも前線に出てくる者達を中心に。そして彼らの対聖天私たちへの対処への対処をASF我々はしなくてはいけません。」

データから映像へと視線を移したルリィの瞳は確かに現在いまではなく未来さきを捉えていた。

「しかしいつ見ても驚愕せざるを得ませんね。」

「それはこれ? それとも・・・」

ふいにでたクラムの呟きに対して、ルリィはあざとく手に映像データをもち、視線はオンレの勇姿に向けていた。皆がデータと戦況に夢中になっていることを良いことに無邪気な姿を見せる上司に対して若干の頭痛を覚えながら、「・・両方です」とクラムは返した。肩を落とした視線の先に映るオンレのデータ。そこには細かい分類とその横に大量のデータが刻まれていた。


オンレ・リーザ

年齢 : 不詳(本人も覚えていないため)

所属 : ASF 聖天第1翼

徽章 : 無印

私兵 : プリシード

雑記 : ASFの魔法白兵部隊「プリシード」の創設者であり、聖天の一翼を担う。    

     近距離~中距離を主戦場とし、質・量共に聖天の名にふさわしい理不尽さ                        

     を備えている。また第三特務謹製の武装『刀無し』を所持

     し、単騎で生態系の破壊に成功している。


 プロフィールの後に記載されていた戦果はその一つ一つのスコアが両手ので数えられないほどの桁が並び、年齢不詳と相まって一体いつから戦い続けているのだろう。とそんな疑念がいつ見ても払しょくされることは無かった。そしてそれの答えが返ってくることもない。

聖天に名を連ねる者はその経歴を語らない。軍属の境地なのか過去のしがらみなのか聖天間でも詳細を知っている者は多くなく、不明点なものも多い。クラムの上司であるルリィ様についてもよく知らない。以前随行して出席した聖天会議にて他の聖天からルリィ様の過去を断片的に聞いたくらいだった。


 「ルリィちゃんは私。ううん、聖天の中でも屈指の実力者で時折やり過ぎることがあったくらいには冷酷だったよ」


(万物に不変はないと言われていますが、ルリィ様が好んで戦場にいたとは信じられないようなお変わりようですね。)

主の今は無きIFの姿を想像し、映像と重ね合わせてしまうような幻覚を抱きながらも何とも言えぬ面持ちでクラムは映像を見つめていた。





           

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