第5話
魔法が戦争主役となる以前、平原や平野では塹壕や障害物で身を隠し、市街地では街並みを生かしたゲリラ戦が防衛の定石だった。敵からは見えず待ち伏せによる奇襲攻撃によって敵を瓦解に追い込む。地の利を生かした防衛を切り崩すには3倍の戦力が侵攻側には必要とされる時代がかつては存在していた。
しかし魔法の兵器化によってその均衡は容易く崩壊した。塹壕は地表よりも低くなっていることから水や毒液を容易く浸透・浸食させることが出来、市街地では建物の倒壊や特定物質を爆弾にさせることでいともたやすく制圧が可能となってしまった。また魔法で構築された防衛陣地は質にもよるが部隊規模で従来の軍基地以上の守備力を有するようになり、3倍程度ではいたずらに死者数を増やすだけとなった。
こうして魔法を中心とした戦術が広がると侵略側は防衛の牙城を崩すべく大規模かつ複合的な攻撃を実施し、防衛側はそれらの攻勢を見切り、防ぐために見通しの良い何もない場所を防衛陣地として対抗するようになっていった。
それはASFも例外ではなかった。レニア第一都市レニーズ郊外。そこには平原に扇状にASFレニア軍が展開し防衛線を維持していた。その扇の弧よりも広く侵略側である
そして有り余る戦力を用いて、魔法の一斉射撃同時弾着による魔法障壁の飽和を図る攻撃が実行された。複数の魔法から生じた眩い光はレニーズを焼くかの如く覆いつくした。
そんな魔法が魔法障壁を破る寸前、急速に収束し消滅した。
「こんな状況で言うのもなんだけど、ちょっと遅れても大丈夫そうだったね☆彡」
敵味方共に驚愕を隠しきれない中、ASFレニア軍陣地の後方を闊歩する者がいた。
「君とか中々に見込みがあるね。私の部隊に入らない?☆彡」
状況が読み込めない中でいきなり意味不明なことを言われたASF軍人は声の主に食って掛かろうとするも、その主を認識すると目を丸くし後ずさりながら腰を付いた。
「オ、オンレ様・・?」
信じられないと言わんばかりの表情をする兵士に、
「うん。私だよ~☆彡」
と、軽すぎる口調で返した。
右手に輝剣を携え、その僅かに華奢な体躯に似合わぬ存在感を羽織っている姿は敵味方問わず目を奪われていた。
「動けるものは負傷者の手当とポータルの開通に回るように☆彡」
独特の口調はそのままにトーンが真剣さを表していた。
一瞬の間をおいて、ASFオンレ軍は即座に後方へと退却を開始していた。それと対を成すようにオンレは僅かに空いた魔法障壁の隙間を抜けて敵陣へと切り込んだ。
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