第3話 雪ちゃんの告白
アタシは
いつもの季節より早い
「な、なんで ?」
アタシはゆっくりと雪ちゃんに近づいて行った。
アタシの足がアタシの
そんなアタシを雪ちゃんはジッと見つめている。今にも泣き出しそうな
アタシは雪ちゃんの目の前まで近づくと、その手を
「・・・・男の子になりたいって。雪ちゃんは、ずっとそんな事を考えていたの ?」
「・・・・あたしは自分の身体が
雪ちゃんはアタシの質問には答えずに独り言のように
「お昼休みに校庭を走り
「そんな事、あるワケないじゃん! アタシが雪ちゃんの事を忘れるなんて」
でも今の雪ちゃんにはアタシの言葉は届いていないようだった。
「あたしは勇気ちゃんと一緒に校庭を走り周りたかった。勇気ちゃんと一緒に体育の授業を受けたかった。勇気ちゃんと一緒に汗を流して心の底から笑い
雪ちゃんの眼からは涙が
「・・・・雪ちゃんが男の子になりたいって、それが理由なの ?」
雪ちゃんはアタシの言葉にやっと
「うん。「特別授業」で女の子でも男の子になれる、って聞いて。それなら、あたしも男の子になったら勇気ちゃんとずっと同じ世界に居られるくらい身体が丈夫になるかも知れないって」
「雪ちゃんは、そんな事を信じてるの ?」
アタシの問いかけに雪ちゃんは少し迷ったような
「最初の「特別授業」の後に、あの授業をした人に聞いてみたの。そしたら「あぁ、
「雪ちゃんのバカ!」
アタシは思わず叫んでいた。
「あんな変なオジサンの言う事を信じるの ?」
「バカって何よ、バカって! あたしはずっと勇気ちゃんの
アタシも負けじと言い返す。
「あー、やっぱり雪ちゃんはバカだ。大バカだよ!」
「何ですって!」
「ちょっと、2人とも落ち着け」
不意に優希の声がしたからアタシと雪ちゃんはビックリしてしまった。そうだ。優希も居た事をすっかり忘れてたよ。
「ほら、2人ともあそこのベンチに座ってろ。俺は何か飲み物を買ってくる。それ飲んで少し頭を
優希はブランコの隣にあるベンチを
「・・・・雪ちゃん、行こう。バカって言っちゃってゴメンね」
アタシは
「・・・・うん。あたしの方こそゴメンね」
雪ちゃんはアタシの手を握り返すと一緒に歩き出してくれた。
良かったぁ。
雪ちゃんは怒るとマジで
アタシと雪ちゃんは手を繋いだままブランコの隣のベンチに座る。
雪ちゃんからは良い
あれ ? そんな事を考えてたら何か恥ずかしいと言うか
「・・・・去年まではよく、このブランコで遊んでたね」
雪ちゃんがポツリと言う。手は繋いだままで。
いつの間にか雪ちゃんの横顔を見つめていたアタシは
「そ、そうだね。そう言えば最近はブランコでは遊ばなくなったよね。なんでだろうね」
「あたし達が成長して子供じゃ無くなりつつなってるからだ、と思う。あれ?」
なんだ、なんだ。雪ちゃんがアタシの顔をジッと見てるぞ。その真っ白な
「勇気ちゃんの眼にも涙の
雪ちゃんのハンカチを持った手がアタシに伸びる。
アタシは固まって動けなくなってしまった。
だって、雪ちゃんの
雪ちゃんはハンカチでアタシの顔を拭きながら繋いでいた手を離す。
両手でアタシの顔を
雪ちゃん。顔が近いよ。
そして。
雪ちゃんは唇をアタシの唇に重ねてきた。
アタシの頭の中が真っ白になって目の前に
時間が止まってしまったように感じた。
「ふぅ」
ため息とともに雪ちゃんの顔が離れていく。
そして「ふふふ」と笑う雪ちゃんの顔はアタシの知らない
しばしの
え、えっと。今のってキ、キスって言うんだよね。アタシは雪ちゃんとキスしちゃったんだぁぁ。でも
チラッと雪ちゃんの方を見ると耳まで
うぅぅぅ。気まずい、気まずいよ。アタシは今、どうしたら良いのぉぉ。
「ふぅ、悪い。遅くなっちまった」
またも不意に優希の声がした。
ハァハァと息を
「アンタ、汗びっしょりじゃん。どうしたの ?」
アタシは雪ちゃんとのビミョーな気まずさから解放されて、いつも通りに話す事が出来た。
「それがなぁ、あの自販機は
「そうだったんだぁ。じゃあ、アンタがこれを飲みなよ」
「うん。優希くんが飲んで」
雪ちゃんが渡されたペットボトルを返そうとする。
「いや、俺はアッチの方が良いよ」
そう言って優希は公園の
そしてコックを思い切りひねると水が
その水を顔に
「あははっ。最近の優希って
「そうかな ? あたしには、あたし達に気を
そう言いながら雪ちゃんは
「どうぞ。勇気ちゃんから飲みなよ」
「いやいや、なに言ってるの。雪ちゃんから飲みなって。せっかくアイツが買って来てくれたんだから冷たいうちに飲んだ方が良いって」
それを聞いた雪ちゃんは
「ありがとう。じゃあ、あたしから
雪ちゃんはペットボトルのキャップを開けるとゴクゴクと飲み始めた。雪ちゃんの白い
「あぁ、冷たくて
「うん。ありがと」
アタシは受け取ったペットボトルに口をつけてゴクゴクと喉に流し込む。うん、ホントに冷たくて美味しいよ。ん ? 雪ちゃんがアタシの方をジッと見てるぞ。えっ。ひょっとして、これって
こら、アタシのバカ。また変な雰囲気になっちゃうじゃんか。
「はぁ、生き返った」
「出来る子」の優希が戻ってきた。髪の毛が水に
「ありがとな、雪。でも、このままの方が
「なんだ 、その「キカネツ」ってのは ? じゃあ、コッチを飲め。まだ冷たいぞ」
アタシはペットボトルを優希に差し出す。
「お、サンキュ」
優希は
飲み終わった優希はマジメな顔になる。
「じゃあ「特別授業」の前後に雪が俺らと一緒に居なかったのは、あのオッサンに会いに行ってたのか ?」
「・・・・うん。2人には
雪ちゃんが申し訳なさそうに言う。
「え、毎週、会いに行ってたの ?」
アタシのビックリした声に雪ちゃんが
「4年生の
優希の問いかけに雪ちゃんが
「だって、最初に会いに行った時に
「え、何で ? 何で校長先生が一緒にいるの ?」
アタシがまたビックリした声を出す。
そんなアタシとは対照的に優希は、ちょっと怖い顔つきになる。
「校長もグルって事か。いや、この県の
「ううん。「特別授業」を受けてる6年生の子や5年生の子も居るよ。6年生の女子が1番多いかな」
何か、2人の話が
「それで、今日はどんな話をしたんだ」
ちょっと、優希。聞き方がコワイよ。
「・・・・
え ?
手術 ?
雪ちゃん、手術しちゃうの!?
つづく
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