本文第四話

 学食で唯一無料で提供されている水を飲み、喉を潤した。暗号文後半の解読の解説と言っても、ここまで来れば、あとは簡単な謎しか残っていない。そう長くはならないだろう。


「開駿先輩!早く続きを!」


「分かりました。ではまず「翠の威光」の前に「貫く鼠と馬」について解説します」


「え、なんで翠の威光を後回しにするんですか?」


「可能性があり過ぎるからです。ただ「貫く鼠と馬」を考えることによって、おそらくこれだろう、というものに当たります。贄暈さん、鼠と馬を聞いて思い浮かぶものはありますか?」


「夢の国のネズ…」


「オーケーそこまでだ。えー、私が思うにこの二つの動物は十二支の「子」と「午」を指すかと。そしてそれを踏まえると「貫く鼠と馬」というのは、おそらく子午線を表すと推測しました」


「地図の縦の線ですね!」


「…まぁそういう認識で良いです。そしてそれを踏まえると「翠の威光」は、おそらくグリニッジ天文台を指すものかと」


「何故ですか?」


「「グリニッジ」を漢字で書くと「緑威」と書くからです。まぁこの解読は若干の不安要素がありますが、一旦この仮定で進めます」


「はーい。分かりました」


「次に「乖離した場所を示す石標」ですが、これは単純に「本初子午線から経度136度離れた場所」ということかと」


「あ!ここで136を使うんですね!」


「そうです。あとは西経か東経かのどちらかなのですが、西経136度に石標があるという記憶がないので、おそらく東経かと」


「東経136度には石標があるのですか?」


「ここからはメタ読みなのですが、日本語ということで、おそらく日本国内であるという前提で進めます。実は滋賀県栗東市の手原駅の近くに、東経136度を示す石標があるのです」


「へぇ〜!そうなんですか!」


「はい。そしておそらくその石標が…」


「この暗号文が示す場所なのですね!」


「…はい」


最後持ってったなぁ。


「滋賀県の手原駅ですね」


「ええ、おそらく今から新幹線で向かえば日帰りで行けるかと」


「そうなんですね!では開駿先輩、行きましょうか!」


「…ん?」


「はい?」


今なんて言った?


「…今なんて言った?」


「あ、もちろんチケット代は私が持ちますのでご安心ください」


「いやいやいや待って待って待って、私も行くの?」


「はい!」


「うそーん…」


「嘘じゃないです♪」


私の午後の予定は関係ないらしい。まぁ元からそんなものないが。まぁ、暇つぶしにはちょうど良いのか…。

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