第46話 爆乳さんカフェへ行く

 ちょうどお昼時ということもあり、目的地であるカフェは満席だった。

 

 しかしタイミングが良かったのか、今から帰る客が何組かいたので、そんなに待つことなく俺たちは席に座ることができた。

 

 ちなみに席は二人用で、俺と爆乳さんは向かい合う形になる。

 

「おしゃれなお店だね。落ち着いた雰囲気だし、どこか温かみがあるというか……」


 店内は木製のインテリアで統一されており、それらが暖色系の照明に照らされることで、どこか落ち着いた雰囲気を作り出している。

 

 ゆっくりとランチタイムを過ごすにはちょうどいい場所だ。


「ネットで調べて、前から行ってみたいなって思ってたの」

「そうだったんだ。雰囲気が良いし、デートにはもってこいの場所かもね」

「うん。実際にデートで利用する人が多いって、口コミにも書いてあったよ」


 言われてみれば、店内はカップルの客が多い気がする。

 もっとも俺たちも、傍から見ればカップルなのだろうが。

 

 

 雑談しながら待つこと約10分。注文していた料理がようやく席にやってくる。

 

 爆乳さんが頼んだのはクリームパスタ、俺が頼んだのはカレーライスで、どちらも木製のプレートに盛り付けられていた。

 

 プレートが木製だと不思議とおしゃれな感じがして、写真映えしそうだなと俺は思った。

 

 

 俺たちは食事をしながら、会話を続ける。

 

「デートといえば、初デートで映画館に行くのは駄目だってよく聞くよね」

「二人で会話をする時間が減るから、だっけ……?」

「そうそう。それで、せっかくの初デートがただ映画を観に行っただけという印象で終わりがちだとか。何より、互いに映画の趣味が合うとも限らないしね」


 たとえ好きな映画のジャンルが被っていたとしても、面白いと感じるポイントが違うと二人の距離は縮まりづらいだろう。

 

 そういった理由からも、初デートに映画は不向きなんだと思う。

 

「じゃあ、水族館とか動物園は?」

「それも実は駄目らしいよ」

「そう、なの……? でも、どうして?」

「歩き疲れるから、だってさ」

「……デートって難しいんだね」


 そんな理由で駄目だとは思わなかったのか、爆乳さんは若干困惑していた。

 でもまあ、疲れるようなデートってのは確かに良いとは言えない。 

 

「それで、一番無難なのはこういうカフェなんだってさ」

「歩き疲れないし、二人で会話する時間がたくさんあるから?」

「そういうこと。口下手だと水族館とか動物園の方が気楽そうだけどね」


 なぜなら、会話のネタがたくさん転がっているから。

 目に入ったものについて話していれば、会話が途切れて気まずい沈黙が続くこともあまりないだろう。

 

「漆黒さん、デートに詳しいね」

「そんなことないよ」

「デートに詳しい漆黒さん。これまでのデート内容を採点するなら何点かな?」

「……え、採点?」


 何か若干馬鹿にされてる気がしないでもないが……。

 俺は求められるがまま、採点をしてやった。

 

「100点かな」

「それって100点満点中?」

「そうだよ」

「……採点易しすぎない?」

「いや、特に減点する要素なかったし……」

「つまり、減点方式ってこと?」

「え? ……まあ、そうなるかな」


 俺が適当にそう言うと、爆乳さんは少し張り切った様子で、

 

「……わかった。減点されないようにこの後も頑張るね」

「この後も採点すること確定なんだ……」


 次に採点を求められた時も100点と言おう。俺は心の中でそう決めた。

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