後編

第44話 爆乳さんから誘いを受ける

 何事もなく帰宅し、自室でくつろいでいる時のことだった。


「ん……?」


 スマホから着信音。

 一体誰からだろうと画面を見ると、そこには爆乳☆爆尻と表示されていた。

 

「爆乳さんから……!?」


 爆乳さんから電話がかかってくるなんて初めてのことだ。

 一体何の用だろう。もしかして、何か忘れ物でもあったのだろうか?

 

「もしもし、爆乳さん?」

『あっ……』

「爆乳さんから電話だなんて初めてだね。何かあったの?」

『えっと……』


 少し間を置いたのち、爆乳さんは言葉を続ける。

 

『……来月の9日、漆黒さんは予定空いてる?』

「来月の9日? ちょっと待ってね」


 俺は部屋の壁に貼ってあるカレンダーを見てみる。

 12月9日は土曜日で、特に予定を入れた覚えもない。

 

「9日なら今のところ空いてるよ」

『午前の10時くらいに集まって、夜に解散って感じにしたいんだけど……』

「それでも大丈夫だよ。その日はどこへ行くつもりなのかな?」

『色々行きたい場所はあるけど、行くこと自体が目的じゃなくて……』

「…………?」

 

 行くこと自体が目的じゃない?

 一体、どういう意味だろうか。


『デ……』

「デ?」

『……デート!』

「……っ……!?」

『……の練習、みたいな……?』

「………………」


 そうか、練習か。

 何事も練習は大事だ。俺だって練習したい。


「そういうことなら協力するよ。もうデートコースは決まってるの?」

『う、うん……。まずは映画館で映画を観て、お昼はカフェへ行って、その後はショッピングモールに行くって感じ。詳細は後でメッセージで送るね』

「わかった。何の映画を観るのかも当日までに決めないとね」

『うん。……その、誘いを受けてくれてありがとう……』

「約束したからね。爆乳さんの手伝いをするって。その日は楽しみにしてるよ」

『わ、私も楽しみ……。じゃあ、もう切るね。おやすみなさい、漆黒さん』

「おやすみ、爆乳さん」


 爆乳さんとの通話が終了する。

 俺は手にしていたスマホをベッドの上に置き、溜息をついた。

 

「ふぅ…………」


 しかし、爆乳さんからデートの練習に誘われるとはな。

 練習ということは、いつか本番があるということだ。

 

「……爆乳さん、デートに誘いたい相手でもいるのかな……」


 それが自分であって欲しいと、俺はつい期待してしまっていた。

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