第30話 爆乳さんは誘いを受ける

『私と、オフ会に……?』

「うん。爆乳さんと一緒に行きたいところがあるんだ」


 爆乳さんをオフ会に誘う。ここまでは何とかできた。

 

 けれど問題はここからだ。

 爆乳さんが俺の誘いに乗ってくれるかどうか。

 乗ってくれなかったら、俺はまた別のプランを考えなければならない。


『どこに行きたいの?』

「水族館に行きたいんだ」

『水族館……?』

「ちょっとした思い出のある水族館なんだ。前に行った時は一人だったけど、今度は爆乳さんと一緒に行きたいなと思って」

『私と、一緒に……』

「駄目かな?」

『………………』


 爆乳さんはすぐには答えなかった。

 今聞こえるのは、爆乳さんの息遣いだけ。

 爆乳さんは、まだ通話を続けてくれている。

 

 俺は待った。

 本当は1秒でも早く返事が聞きたい。

 この緊張と不安で胸が押し潰されそうな時間から、1秒でも早く解放されたい。

 

 まだ1分も経っていないだろうに、返事を待っているこの時間はとても長く感じられた。

 

『……いいよ』

「え……?」

『水族館に、行ってもいいよ』


 爆乳さんは俺の誘いに乗ってくれた。

 安堵して全身の力が抜けそうになるが、まだ通話は終わっていない。当日の集合場所などを決める必要がある。

 

「ありがとう爆乳さん。さっそくだけど、集合場所とか集まる時間を決めようか」

『うん』

「まずは集合場所だけど――」



 俺が集合場所などを伝えて、爆乳さんとの通話は終了した。

 急速に膨れ上がっていく、一仕事終えた後のような充実感。

 

 けれどそんな充実感を味わったのも束の間、俺は全身に伸し掛かるような不安に襲われた。

 

「当日、うまく話せるかな……」


 当日俺は、爆乳さんとうまく話せるのだろうか。

 そんな不安を抱きながら、俺はこれからの数日間を過ごすことになった。

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