第25話 爆乳さんログインしなくなる

「今日も爆乳さんはログインしてないか……」


 お、おおおお、落ち着け俺。

 毎日ログインしていたのが異常だったんだ。

 

 家の用事とか、パソコンの調子が悪いだとか、ログインできない理由なんていくらでもあるだろう。


 それにいざとなったら、電話をかけて連絡すればいい。

 まだ電話したことはないが、河口湖へ行った時に電話番号は交換している。

 

「……でも、なんて電話をかければいいんだ?」


 俺はスマホを見ながら考える。


 次のオフ会の約束をしよう?

 最近ログインしてないけど、何かあったの?

 

 ……いや、どっちも駄目な気がする。

 

 オフ会する気があるのなら、ログインだってしているだろう。

 ログインしてない理由を訊くのも、流石に踏み込みすぎな気が。

 

 俺のギルドはログインを強要するようなギルドじゃないし。

 そもそも俺とのオフ会だって、爆乳さんがしたくて始めたものだ。

 爆乳さんがその気じゃないなら、俺が強引に誘うわけにもいかない。

 

「……まったく俺は、学習しないな」

 

 俺は自分に呆れて笑う。


 ついこの間まで、現状を変えたいと意気込んでいたのに。

 色々と言い訳を並べて、俺はまた行動できずにいる。


「お……?」


 パソコンの画面に視線を戻すと、腹毛はらげさんたちが爆乳さんについて話していた。



腹毛専門店はらげせんもんてん:今日も爆乳ログインしてないよな

ぴらふたん:もう1週間になるよね

腹毛専門店:飽きて他ゲー行ったんかね

ぴらふたん:スマホゲーに引っ越したのかも?

腹毛専門店:今はスマホゲーの時代だもんなぁ~



 やはり腹毛さんたちも、爆乳さんがログインしなくなったことを気にしているようだった。

 

 気にするのも当然かと、俺は思う。

 爆乳さん、これまでは毎日ログインしてたみたいだし。

 

 それだけじゃない。

 俺はリアルの爆乳さんに何があったのかを知っているが、腹毛さんたちはそれを知らないんだ。

 

 余計に唐突さを感じていることだろう。 

 

「……待てよ」


 腹毛専門店とぴらふたん。

 この二人なら、どんな風に考えるだろうか。


 俺はさっそく、ギルドチャットに書き込んだ。



漆黒チョコ棒:爆乳さんのことなんだけど

ぴらふたん:お?

腹毛専門店:チョコ坊は何か知ってるのか?

漆黒チョコ棒:実は二人に隠していたことがあるんだ



 俺はこれまでのことを簡単に説明した。

 簡単に説明するだけでも、結構な時間がかかった。

 

 こんな嘘みたいな話、信じてくれるか心配だったけど。

 

 

ぴらふたん:それでログインしなくなったんだね

腹毛専門店:まさかそんなことがあったとはなぁ・・・


 

 二人は俺の話を信じてくれたようだ。

 ……もちろん驚きまくってはいたが。

 


腹毛専門店:もっと話を聞きたいところだが・・・

ぴらふたん:チャットじゃやり取りがめんどくさいね

腹毛専門店:どうせなら直接話すか?



 直接話す?

 直接ってことは、もしかして……。

 

 

ぴらふたん:いいね! 僕たちもオフ会しよう!!!!

腹毛専門店:あの時みたいに焼肉でも食べに行くかぁ?

ぴらふたん:あそこの店ならアクセスもしやすくていいかもね



 いつの間にか、オフ会をする流れになっていた。

 でもこれは、良い機会かもしれない。

 


腹毛専門店:チョコ坊は次の日曜日とか大丈夫か?

漆黒チョコ棒:大丈夫です

腹毛専門店:じゃあ決まりだな! 次の日曜オフ会するぞ!



 こうして俺たちは、久々にオフ会をすることになった。

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