第11話 爆乳さん波のプールで遊ぶ
流れるプールを3周ほど遊んで、俺たちはプールから出た。
「次はどこへ行こうか?」
「波のプールがいい……」
「流されてる途中、見かけたやつだね」
「うん」
「じゃあ、そこへ向かおうか」
途中から思ってはいたが……。
今日の爆乳さんは、だいぶテンションが高いような気がする。
社会復帰の練習とかじゃなく、純粋にプールを楽しんでいるといった感じだ。
まさか爆乳さん、ただプールで遊びたかっただけなのか……?
◆
しばらく歩いて、俺たちは波のプールに辿り着く。
ちなみにサメさんフロートは、ここへ来る前に返却しておいた。
きっと波のプールでは、邪魔になるだろうと思ったからだ。
波のプールは名前の通り、波が発生しているプールだ。
波により、本当に海にいるかのような気分を味わえるというのが、このプールの売りらしい。
一番奥には造波装置があり、そこへ近づけば近づくほど水深が深くなっている。
水深の浅いところは、まるで本物の波打ち際のようだった。
「前へ進んでみようか」
「う、うん……」
爆乳さんは、恐る恐るといった感じで、波のプールの中を進んでいく。
腰まで水が浸かる深さのところで、俺たちは一度立ち止まった。
「わっ……」
「どう? 波のプールの感想は?」
「本当に波だ……」
「うん、波だね」
けどこの程度の深さなら、その場で棒立ちになっていても平気なくらいに、体の受ける波の影響は小さい。
より波を楽しむなら、もっと奥へ行く必要がある。
「もっと奥の方へ行ってみようか」
「……私泳げないけど、大丈夫かな」
不安げな表情を浮かべ、爆乳さんが言う。
俺は爆乳さんを安心させようと、言葉を返す。
「波が来るタイミングでジャンプすれば大丈夫だよ」
「ジャンプしないとどうなるの?」
「顔面に波が思いっきり直撃するね」
「……ちゃんとジャンプできるかな」
「無理そうだと思ったら、俺に言ってくれればいいからさ。いざとなったら、爆乳さん一人くらい抱きかかえられると思うし」
爆乳さん、軽そうだしなぁ。
水着姿を見ていると、身体の細さがいつもよりよくわかる。
「そ、そうはならないよう、善処するね……」
「ああ。頑張ってみようか」
そして俺たちは、更に奥へと進んでいく。
水深はちょうど、爆乳さんの胸の辺りの深さとなった。
「ほら、波が来るよ!」
「う、うんっ……!」
爆乳さんの頭よりも高い波が、押し寄せてくる。
俺たちはほぼ同じタイミングでジャンプし、何とかその波が顔面に直撃するのを回避した。
「ちゃんとジャンプできたね、爆乳さん」
「……うん。こ、怖かった……」
「ほら、次も来るよ」
「え……」
さっきのジャンプで疲れてしまったのか、爆乳さんのジャンプのタイミングは完全に遅れてしまっていた。
おかげで爆乳さんの顔面に、波がモロに直撃してしまう。
「爆乳さん……!?」
「うッ……」
それでパニクったのか、爆乳さんは次の波が来た時にジャンプをせず、俺の腕にしがみついてきた。
……爆乳さんの爆乳ではない胸が、俺の腕に当たる。
慎ましやかながらもそれは柔らかく、俺の身体にはない柔らかさであり、とても柔らかく、凄く柔らかかった。
「ば、爆乳さん! 浅い方へ戻ろう!」
「う、うん……」
俺たちは急いで、水深の浅い方へと移動する。
そしてすぐに俺は言った。
「ごめん、爆乳さん。俺が強引に誘ったから……」
「……ううん。漆黒さんは悪くないよ。私は私の意思で、波のプールに来たんだよ」
幸い爆乳さんは、気管に水が入るようなこともなかったようだ。
それだけは、とりあえず良かったと言える。
「でも……」
「でも?」
「……ちょっと遊び疲れたかも」
思えばプールに来てから、ずっと遊びっぱなしな気がする。
適度に休憩も挟まなければ、大きな怪我や事故に繋がりそうだ。
「少し休もうか」
「うん」
◆
波のプールを出て、俺たちはプールサイドで休憩することにした。
時刻はちょうど午後2時を少し過ぎた頃。
昼食もまだだったので、プール内の売店でホットスナックを買い、遅めの昼食を摂ることにする。
俺はフライドポテトとフライドチキンと肉まん。
爆乳さんはアメリカンドッグとフランクフルトを食べ始める。
食べながら、俺は爆乳さんに訊いた。
「今更だけど、どうしてプールへ行こうと思ったの?」
「もうすぐ8月も終わるから。夏っぽいこと、したいなって」
「そっか。社会復帰の練習にしては、随分と思い切ったね」
「うん。私としては、結構頑張ったと思う……」
爆乳さんは体育座りで俯きながら、言葉を続ける。
「水着もね、一人で買いに行ったんだよ」
「やっぱりその水着、新しく買ったやつなんだ」
「うん。学校の水着しか、持ってなかったから……」
それでビキニを選ぶとは、中々大胆だなと俺は思った。
「……今度は遠くへ、行ってみたいな」
「え?」
爆乳さんは唐突に、遠くへ行ってみたいと言い出した。
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