第9話 爆乳さんプールへ行く
「……ダメ?」
「いや、そんなことはないけど……」
爆乳さんと一緒にプール。
プールということは、俺たちは水着に着替えるわけだ。
それは、つまり――。
俺は爆乳さんの、水着姿を見ることになるんじゃないか!?
「良かった。じゃあ詳しいことは、また今夜連絡するね」
「えっ? あ、ああ……」
こうして今日のオフ会は終了した。
帰宅後はゲームにログインし、爆乳さんから連絡を貰った。
プールへ行くのは、早くも明後日となった。
◆
そして明後日は、あっという間に訪れた。
天気はプール日和の快晴で、空の青色は澄み渡っている。
「………………ふぅ」
正直に言おう。俺はこの2日間、ずっとドキドキとしっぱなしだった。
女の子と二人でプールへ行くから? それはもちろんある。
だがそれ以上に、爆乳さんと一緒にプールへ来てしまっていいのかという、心配や不安も強かった。
もし何か、事件や事故に巻き込まれるようなことがあったら。
爆乳さんの保護者に、どう説明すればいいのやら。
俺は今日、無事に一日を終えることができるのか。それが気がかりで、昨日の夜も中々眠ることができなかったのだ。
そしてもちろん、今もドキドキしまくっている。
俺は今、管理棟の前で爆乳さんが来るのを待っているのだ。
女子は水着に着替えるのにも時間がかかるのか、かれこれ10分近くは待っているような気がする。
もう来るなら、早く来てくれ……!
これ以上待つのは、俺の心臓がヤバい。とにかくヤバい。
……いや待てよ。
爆乳さんが来てしまったら、よけい心臓が――
「お待たせ。……ごめんね、時間がかかっちゃって」
「――――――」
心臓が止まるかと思った。
目の前には爆乳さん。爆乳さんは水色のビキニを着ていた。
艷やかな黒髪と、水色のビキニによって引き立てられる、爆乳さんの綺麗な柔肌。
小柄で華奢な体つきだけど、女の子であることを強く意識させられる、丸みを帯びたボディライン。
普段とは異なる露出の多さに、俺は思わず目を背けてしまう。
「……漆黒さん?」
「はい」
「どうして目を背けるの?」
「いや、つい……」
「こっち、見て?」
「………………」
このままでは挙動不審すぎて、周囲から注目を浴びてしまう。
俺は意を決し、爆乳さんの方を見た。
「変じゃ、ないかな……?」
「……うん。とても似合ってるよ」
そう言うのが、精一杯だった。
顔が熱くて、頭もうまく働かない。
とてもじゃないが、直視し続けるのは無理だった。
俺は気を紛らすように、爆乳さんに向けて言った。
「さ、さあ! さっそくプールへ行こう!」
「……? ここがプールだよ」
言葉足らずな俺も悪いが、爆乳さんも天然だった。
◆
俺たちはまず、全長50メートルのプールへと向かった。
そこにはビーチボールで遊んでいる客もいれば、どちらが速く泳げるか競っている客、ただ水を掛け合って遊ぶ客なんかもいた。
さっそく水に入る。
ひんやりとした心地よい冷たさが、熱くなっていた体を冷ましてくれる。
おかげで少し、落ち着きを取り戻せたような気がする。
「何して遊ぼうか、爆乳さん」
「泳ぐ練習がしたい」
「泳ぐ練習? 爆乳さん、泳げないんだね」
「うん。漆黒さんは?」
「得意ではないけど、一応泳げるかな」
「泳げるだけでも凄い……」
しかし、泳ぐ練習か。
小学校低学年の頃なんかは、たしか……。
「じゃあ、バタ足でもやってみる?」
「バタ足?」
泳ぎの練習の基本といえば、バタ足だったはず。
普通はビート板なんかを使ってやるが、俺のすることが無くなってしまうので、今回は無しでやることにしよう。
「俺が爆乳さんの両手を掴んで引いていくから、爆乳さんはバタ足をしてみようか。それで下半身が浮くという感覚を身につけよう」
「うん、わかった」
自分で提案をしておきながら、直前になって今更気づく。
爆乳さんの体に触れるの、これがもしかして初めてなんじゃ……。
「……漆黒さん?」
「え? ああ、何でもないよ」
少しためらいながらも、俺は爆乳さんの両手を握る。
「……っ!!」
手に触れた瞬間、俺はその滑らかな感触に大きな衝撃を受けた。
これが本当に、俺と同じ人間の肌なのか……!?
すべすべとしていて触ると気持ちいいというか、何というか、その、とにかくヤバい。癖になりそうだった。
「これで私は、どうすればいいかな?」
「とっ、とりあえず、うつ伏せの姿勢で身体の力を抜いてみようか。その後はバタ足をしてほしいんだけど、膝や足首に力が入らないように気をつけてね」
バタ足の練習を始める。
最初はその場から進まずに、爆乳さんがひたすらバタ足をするだけの練習をして、水中での動きに慣れてもらった。
「身体の動かし方がだいぶ良くなってきたね」
「じゃあ、次のステップに進める?」
「そうだね。次はゆっくりと手を引いていくから、その状態で今のようにバタ足をしてみようか」
「うん。絶対に、途中で手を離さないでね」
それからは、実際にバタ足で前に進めるよう、俺が手を引きながら練習を続けたわけだが。
「手、離したらダメだからね」
「え? ああ……」
「本当にダメだからね」
「もちろん離さないよ」
数分おきに、爆乳さんは手を離さないでねと言ってきた。
よほど手を離されるのが怖いのだろう。
「絶対に、絶対に、手を離したらダメだからね」
「わかってるよ」
「絶対に、絶対に、絶対にだよ?」
「うん」
「絶対に、絶対に、ぜ――」
「振りかな?」
それから俺は手を離した。
後で爆乳さんにメチャクチャ怒られた。
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