第6話 爆乳さんはむっつり

「ほ、本当に爆乳さんなんだね……」

「最初から、そうだよ」


 爆乳さん中の人複数説は、あっさりと否定された。

 どうやら目の前の少女が爆乳さん御本人らしい。

 

「でもどうして、私が違う人だって思ってたの?」


 俺は爆乳さんの質問に正直に答える。

 

「その、君とゲーム上での爆乳さんが、どうしても結びつかなかったんだ。だから爆乳さんの妹か何かだと思って……」


 爆乳さんはストローに口をつけ、コーラを一口だけ飲んだ。

 喉を潤して少し間を置いた後、爆乳さんは話し始める。

 

「もしかして、中の人は男だと思ってた?」

「えっと、まあ……。ゲーム内のキャラ性別も男だったし」


 ちなみにぴらふたんさんは、ゲーム内のキャラ性別は女だが、中の人は俺より年上の20代男性だ。

 

 別にぴらふさんは、ネカマプレイをしているわけではない。

 女キャラの方がアバターが充実しており、キャラメイクが楽しいからという理由で、ぴらふさんは女キャラを使用している。


「爆乳さん。男だって思われるの、嫌だった?」

「そんなことはないよ。私も女だって思われないように振る舞っていたところはあるから……」


 まあ、出会い厨対策をする意味でも、爆乳さんのように男を装うのは良くあることだろう。

 

「だから男だって思われていたのは、気にしてないよ」

「性別はともかく、爆乳さんを疑っていたのは事実だ。爆乳さん、本当にごめん……」


 俺は謝った。

 この流れなら快く許してくれるはず。

 

 そう思っていたのだが、

 

「………………?」

 

 爆乳さんは、少しムッとした顔を見せていた。

 一体どうしたんだろう?

 

「爆乳さん?」

「……言わせた」

「え?」

「恥ずかしいこと、言わせた」

「恥ずかしいこと? 何かな、それは」

「~~~~ッ!」


 爆乳さんは顔を真っ赤にしながら、上目遣いで睨みつけてくる。

 その反応を見て、俺も流石に理解した。


「あー、神ちんちんのことか。でもほら、周りに聞こえてないし」

「そっ、そういう問題じゃ……」

「それに爆乳さんだって、ゲーム内では楽しそうに神ちんちんって言ってたじゃん」


 嘘じゃない。本当のことだ。

 爆乳さんは楽しそうに神ちんちんと書き込んでいた。

 それどころか、クリスタルちんちんも。

 

「そ、それはっ、ゲーム内だから……!」

「爆乳さん」

「へ? な、何……?」

「爆乳さんって、結構むっつり?」

「む、むっつりじゃないよ……」


 爆乳☆爆尻なんて名前にする子がむっつりスケベじゃないと言っても、説得力はまるでなかった。


「漆黒さん、意地悪……」

「ご、ごめん……。本物の爆乳さんだと思ったら、つい……」

「次はラーメンだから」

「えっ?」

「明後日の午後、予定を空けておいてほしい」


 どうやら次行きたい場所はもう決まっているらしい。

 

「次はラーメン屋ってことか。明後日の午後なら大丈夫だよ」

「……良かった。詳しい場所や日時は、ゲーム内で教えるね」





 ハンバーガーセットを食べ終えた後は、すぐに解散となった。

 

 電車に乗る時間をずらしたのは前回同様だが、今回は駅まで爆乳さんを送った後に時間を潰すことにした。

 

 まだ昼間だから危ない目に遭うことはないだろうけど、何となく心配になったからだ。

 

 

 

 帰宅後、俺はすぐに詩織の部屋へと向かった。

 一応3回だけノックして、俺は詩織の部屋へと入る。

 

 そして俺は、詩織に向かって言った。

 

「詩織、聞いてくれ。爆乳さんは本当に爆乳さんだった」 

「いきなり何言い出すねん」

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