第49話 神々の砲台


バトルフィールドが弾けるように消え、二人の激しいバトルによって生じた大量のコアエネルギーとフォニックゲインが神々の砲台へと吸収されていく。そして、宙へ投げ出されたフィーネの身体が床に落ち、その床となっているコアブリットが変形して彼女を収納し、そのままフィールドの外へと吹き飛ばす。射出されたフィーネを乗せたコアブリットが地面にぶつかり、そのまま数メートル抉りながら減速していき漸く止まっていく。そのすぐ近くにフィーネの後にすぐに外に飛び出した弾を乗せたコアブリットが着陸すると、弾はコアブリットを開いて中から飛び出すと、フィーネのコアブリットへと駆け寄っていく。


 


「弾さん!」


「しっかりしろ、フィーネ!」


 


フィーネを乗せたコアブリットを開き、中にいるフィーネを引っ張り出す。連戦に次ぐ連戦、彼女自身も聖遺物と融合し、バトルスピリッツ以外では殺せなくなったその身体は、弾との戦いに敗北したことで、死へのタイムリミットを刻み始めている。弾に彼女を殺すという意思はない。だが、それが彼女に与えられた、呪いのようなものでもあり、摂理であった。故に、この事実は、もう誰にも覆せないのだ。


 


「……もう遅い。バトルスピリッツに敗北した今、私は徐々に死への道をたどっているのだから……」


「かもしれない。死を避ける事はできないとしても、それでも俺は、最後まであんたを見捨てない。俺にとってあんたは、フィーネと言う世界のことを考えていたカードバトラーであり、俺達の大切な仲間、桜井了子だからな」


「……全く、損な奴だ」


「よく言われるよ。でも、それが俺だ」


 


フィーネに肩を貸すように背負うと、響達の所へと彼女を連れていく。そんな弾の姿に、予想通りと言った様子で呆れた表情を見せる翼とクリス。響は、弾に駆け寄っていく。


 


「……もういい」


 


弾に短く声をかけて弾の背中から降りると、その場に力尽きたように座り込むフィーネ。弾に敗北し、ここまで賭けてきた全てが無意味になった。だというのに、どこかその心は安らいでいる。


 


「弾さん!大丈夫ですか!?」


「ああ、心配ないよ」


 


フィーネとの激しいバトルで弾は大丈夫なのか。それを心配するように駆けよってきた響。彼女に続く形で未来や翼達も彼に駆け寄っていく。そんな、いつもと変わらない彼の姿を、その目に焼き付けながら、フィーネは口を開いていく。


 


「……敗れ去った者達も、このような感情だったのかもしれないな」


 


出しきれる全ての力をぶつけ、それを乗り越えて倒される。そうやって倒れた者達は、悔しく、悲しいと思うと同時に、ここまで晴れ渡る感情を持っていたのかもしれない。バトルスピリッツは対話であり、それを通じることで、人々は分かり合える。弾は今まで、そうしてきた。暑苦しい奴、綺麗事を言う奴。様々な言葉を言われ、否定された。それでも、自分を貫き通し、立ちはだかるものを叩き潰し、その先にある本当を見つけ、分かり合ってきたのだ。そして、今も自分とこうして分かり合っている。


 


「ノイズを作り出したのは、先史文明期の人間……統一言語を失った我々は、手を繋ぐことよりも、殺し合う事を選択した……いや、統一言語が存在しても尚、それはただの最低限必要となる条件の一つでしかない。時代が違おうと、環境が変わっていれど、平穏を維持するために必要だったのは、人々を繋ぐ統一言語と、世界を収め、人々を導く存在でしかない」


「……だから、お前が王になろうとしたのか。かつて、異界王がやったみたいに」


「……ああそうだ」


 


そのために、この力を求めたのだ。力弱き者の言葉には、誰も従えない。だからこそ、自分が王として相応しい力を求めた。人々を治めるための強い智慧を求めた。知識を求めた。全ては、世界を作り上げた神のように。世界を作り変え、真に平穏な世界を作り上げた、かつての時代の王のように。万能ではないと分かっていた。だが、それでも万能と言っても良い高みに辿り着き、人々を収め、全ての者達が分かり合う理想の世界を、作り上げる。だが、その全ては、異界王のように、目の前の男に壊された。後に残ったのは以前と変わらない今まで通りの世界。ただあの時と違うのは、自分が希望を与えたという事実を、世界が知らないということだ。


 


「……お前も、不器用な生き方しか選べなかったんだな」


「……ああ、そうだ。だが……そんな生き方しか出来なかった中でも、唯一の友と言える者はいた……時代を超え、次に転召して現れた時には以前の私の記憶の中にいたほとんどの者達が既にその生を終えている中、一人だけ、私の境遇を理解してくれた者が……」


 


懐かしむように、声を漏らす。だが、その者の名前を出す事はできない。彼女は本来、人を遥かに超え、異界魔族すら超える寿命を手にしている。だが、それでも彼女はもういない。当時から数十、いや数百万はくだらない年代が経過しているこの時代で、彼女は既にその身体を失い、魂だけが永遠に、マザーコアを管理している、そう言える状態だろう。もう、会う事は叶わない、それでも、この変わった過去で、交わした約束。それを、今一度思い浮かべ、立ち上がる。


 


「……了子さん……?」


 


今までの自分と、書き変わった過去を生きた自分。その二つが統合した今なら分かる。世界を巡り、幾多の戦いに傷つき、苦しみ、哀しんだ。自分も苦しんだ、でも、時代の流れに苦しむのは、自分だけでよかったのだ。彼までもが、時代を超えて、苦しみ、戦う必要など本来、必要ないのだ。自分を、彼に重ねていたのだろう、だからこそ、自分が、弾を本当はどうしたかったのかを、今なら悟れる。そして、そのための策を、この計画の中に組み込んでいたことを。だが、それは弾によって阻まれた。だからこそ、最後の手段を取る。例え自分が絶対的な悪となったとしても、目的をこの時代で作れなかったとしても、彼女のためにも彼だけは。


 


「はあああああああ!!」


「!?何を……!?」


 


フィーネは突然、ネフシュタンの鞭を放つ。それは、この場にいる誰にも向けられず、それは空の彼方へと飛んでいく。


 


「私の勝ちだ!!この世界を変えられぬのなら……最後に壊す!!これからの時代は、私の作る時代だ!!私の勝ちだ!!」


「!?ま、まさか!?」


 


鞭の放たれた方向。そこに何があるのか、それに気付いて響が、遅れて他の者達も空を向く。音速を超えたかのような速度で射出されたその鞭は、神々の砲台によって砕かれた月の破片に突き刺さり、それを手応えから確認したフィーネは、背負い投げの要領でそれを地球へと振り抜く。周辺の大地が粉々に砕け、ネフシュタンが崩れていく。だが、最後の最後に全ての力を使い果たしたフィーネは、月の一部を、地球へ降らせることを可能とした。


 


「月の欠片を落とす!!私の悲願を邪魔する貴様らは、ここで砕く!!この身はここで果てようと、魂は絶えはしない!新たな存在へと転召し、そこで私は、今度こそ世界を束ねるのだ!!私は永遠の刹那に存在し続ける巫女、フィーネなのだから!!」


 


月の欠片を落とす。そう、宣言したフィーネに、全員の表情が歪んでいく。だが、その中で弾と響だけは、表情を変えはしなかった。


 


「……そうですよね」


「……?」


 


納得したような、そんな静かな声を漏らす響。彼女もまた、世界のことを考え、人々のことを考えて、最善の未来を導こうとした存在にすぎないのだ。こうして、月を落とし、世界を壊そうとした。フィーネとして、そして桜井了子として活動し、この世界に聖遺物に関する技術を確立させ、時代を作った。確かに、これからは彼女が作った時代と言えるだろう。死の間際に、彼女は最後に取り繕ったその仮面は、響の言葉に砕かれた。


 


「じゃあ、そのときは皆に伝えてください。世界を一つにするのに大切なのは、分かり合おうとする言葉だってことを。私達は、未来に手を繋げられるということを」


 


最後まで、自分を貫いたのは弾だけではない。彼の戦いを見て、己も戦いの中で成長させた少女、立花響。彼女の、この戦いを通じて考え、導き出した真っ直ぐな言葉。その言葉を前に、フィーネは、短く溜め息を吐くと、


 


(……成長、か。何故、私が勝てなかったのか、分かった気がする)


 


そう内心で呟いた。神の領域に辿り着けたと満足していた。だからこそ、その強さの深みの中で満足し、先へ進むことを放棄してしまったのだ。だからこそ、弾に敗北した。どんな所にいても、貪欲に先を、さらに上を目指そうとするカードバトラーとしての心を持っている弾に。敗北したからこそ、今まで気付けなかったものを漸く知った。今更悪役を取り繕ったところで、もう無意味だと、漸く悟らされたのだ。


 


「……全く、放っておけないんだから……」


 


そんな、優しい声が出てくる。それは、フィーネとしての威圧的な声では無く、響きたちの良く知る了子のものであった。フィーネは、響の頬に手を当て、彼女に顔を近付けると、


 


「今の貴女ならできるかもしれないわね……今の私のように、聖遺物と融合している事でより大きなエネルギーを生み出せる貴女なら」


「了子さん……?」


「この神々の砲台は、オリジナルと違って、引き金となる人間が犠牲になる事はない。元は私が引く予定だったものなのだから……貴女達に、残りのエネルギーを溜めることができるかしら?」


「……」


 


フィーネの言葉に、僅かに表情を驚いたように変える弾。が、すぐにその真意に気付き、弾は言葉を出さずに表情を元に戻す。フィーネの、了子の最後の言葉、それに響は、満面の笑みで頷き返す。


 


「はい!勿論です!」


「ふふ……弾、これが、最後のプレゼントよ……貴方の時を……」


 


その言葉を最後まで言わず、フィーネの姿が白い砂のようになって崩れ落ちていき、風に舞っていく。だが、弾にはフィーネが最後に言おうとした言葉が何なのか、理解出来た。理解し、そして、彼女が何故、ああ言ったのかを悟り、静かに瞳を閉じて彼女に対する黙祷を捧げる。


 


「……」


 


敵であった。でも同時に、共に時を過ごした大切な人であった。その人物の死に、この場にいた全員がその瞳を潤ませるのだった。


 


 



 


 


数時間後。月の欠片の軌道は、まっすぐに地球に向けられており、衝突は免れないという事態の中、響達は集まって、カードを広げていた。月の欠片を壊す為に、再び神々の砲台を起動するために、その戦いを行うのは、弾、そして、フィーネの頼みを受け、この戦いで大きく成長して見せた響。最後の戦いのためのデッキを作り上げようとした響は、翼、クリス、未来の希望もあり、彼女達のカードも組み込んだデッキを構築していたのだ。


 


「……」


「準備はいいのか?その、十二宮Xレアがすべて投入されているであろうデッキは」


 


デッキを作り上げ、それを手に地下から出てくる弾。彼に声をかけた弦十朗は、険しい表情を見せていた。それはそうだろう。この戦いの先に、月の欠片を破壊するための大きな作業が残っているのだから。


 


「ああ。準備は出来ている。後は、引き金になるだけだ」


「……なる、か。やはり、そうなんだな……代われないのか。君ではなく、俺が」


「無理だ。これは、俺が選んだ戦いだ」


 


なる。隠すことなく真実を告げる弾の言葉に、納得と同時にだがそうであってほしくなかったという思いが表情に現れ、複雑な表情になる弦十朗。ただ、引き金を引いて、その余波で弾が時代を超えるだろうか。そんなわけがない。フィーネが弾を神々の砲台の発射によって除去しようと考えていたことを考えると、引き金は、引くものではなくなるものだと考えた方が自然だ。そして、フィーネの言っている言葉に隠された嘘、それは、弾を犠牲にしてはいけないと響に変に気を使って欲しくないという彼女なりの最後の優しい嘘だったのだろう。そして、その想いを理解したからこそ、弾もまた、嘘を吐いた。同時にそれは、自分がこのバトルに勝利するという、強い自信の表れでもある。


 


「俺が全てを終わらせる。過去の因縁が生んだこの戦いは、過去の人間である俺が止める。そしてこの時代は、この時代に生きる人々が作り出すものであるべきなんだ」


「……そうか。ならもう、俺には何も出来ないな……だが、これだけは忘れないでほしい」


「……」


 


弦十朗の顔を見る弾。弦十朗は、弾に向けて、迷いも何も無い、強い表情を見せ、口を開いて優しく、彼に告げるのだった。


 


「様々な時代を生きたとしても、弾君もまた、この時代で生きた人間だ。君にも、この時代に生きている以上、君にとっての自分の時代を作る権利がある。そのことだけは、忘れないでほしい」


「……分かった。いってくるよ」


 


そう言い、コアブリットへと歩いていく弾。その後ろ姿を見ていたが、少しして視線を外し、弦十朗も機械の操作に向かう。自分は戦えない、だからこそ、この戦いを最後まで見届ける。それが、自分達に課せられた戦いだと信じて。


 


「……よし、できた!」


 


選び抜かれた34枚のカードを手にする響。自分達の集大成と言えるそのデッキを見て、翼、クリス、未来の三人も満足げな表情を見せる。このデッキに空いた6枚のカード。それは、これから彼女達が作り上げ、投入するのだ。


 


「もういいのか?」


「はい!弾さんも、準備はいいですか!」


「ああ、俺はいつでも大丈夫さ」


 


弾とフィーネがそれぞれ乗っていたコアブリット。そこにそれぞれ乗り込んでいく。この星を救う為の戦いが、今から始まる。その重みを噛み締めながら、響、翼、クリスの三人は歌い始める。


 


「……」


 


弾の乗り込んだコアブリットにセッティングさせた金色のアーマーが、弾の上半身に装着されていく。響、翼、クリスの身体をシンフォギアが包み、その手に二枚のカードを作り出す。そして、その二枚を、二人は響に託す。


 


「頼んだぜ!」


「立花、私達の覚悟は共にある!」


「はい!全力で、ぶつかってきます!」


 


そのカードを受け取り、自分の作り出した二枚のカードと共にデッキに入れていく。そして、二人を乗せたコアブリットが閉まっていき、エンジンが起動していく。


 


「響、絶対勝ってね!」


「任せといて!勝って、私がこの星を、救ってくるから!」


「悪いが、このバトル、勝つのは俺だ。いくぞ、響!」


「はい!!」


 


元気よく返事を返す。そして二人は、同時に声を上げる。あの空間へ向かうための、合言葉を。


 


「「ゲートオープン!界放!!」」


 


そして空に、巨大なバトルフィールドが出現する。そこへ、弾と響は、自分達が持つすべての力を叩きつけるために、乗り込んだ。


 


 



 


 


「まさか、ここで弾さんとバトルする事になるなんて……」


「臆したか?」


「全然!寧ろ、ワクワクしています!それに、このデッキは私達のデッキです!絶対に、勝ってみせます!勝って、私が引き金を引かせてもらいますね!」


「楽しみだ。だが……かつて神々の砲台の引き金となったからこそ、今回も俺が引かせてもらう!スタートステップ」


 


弾のボードが光り、先行を取る。遂に鼓動を刻み始めるバトル。月が落下する時間を考えれば、バトルが終了しても余裕がある。その一点で言えば、心配はいらない。お互いに勝利した先の未来を思い描きながら、バトルは動いていく。


 


「ドローステップ、メインステップ。エリダヌス・ドラゴン、召喚」


 


【エリダヌス・ドラゴン:赤・スピリット


コスト3(軽減:赤2):「系統:翼竜・星魂」


コア1:Lv1:BP3000


シンボル:赤】


 


弾のフィールドに出現した赤いシンボルが砕かれる。そして、その中から現れる、エリダヌス座の力を受けたスピリット。紫の翼に赤いエラのようなものを持つ、紫の皮膚のドラゴン。その姿は海竜と言った方が適切なようにも見える。


 


「エリダヌス・ドラゴン……?」


 


今まで見たことのないスピリットだ。この戦いで弾が使うデッキの力を最大限に発揮させるために導入されたスピリットだということか。


 


(この戦い、響はおそらくダブル合体スピリットに対する対策を取ってきている筈。BPを超えるためにどんな策を使うのか。それにどう対応するかも、この勝負の分かれ目になる)


 


どんな策を練ってきたのか。それは今から楽しみだ。どのような策を用いて対抗してきたとしても、こちらはそれを超えて勝利する。熱く滾る想いをその目に宿し、フィーネとの全ての因縁が終わり、元の世界へ戻り行く世界の最後のバトルへと臨む。


 


「ターンエンド」


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!メインステップ!ザニーガンをLv2で召喚!」


 


【ザニーガン:白(赤)・スピリット


コスト1(軽減:白1):「系統:武装・空魚」:【重装甲:赤】


コア3:Lv2:BP3000


シンボル:白(赤)】


 


響のフィールドに出現する赤を基調としたザリガニ型の戦闘機スピリット、ザニーガン。鋏の形をしたブースターを地面に向け、ゆっくりと降下するようにして地面に着地して待機していく。


 


「ザニーガン……成程。響、そのデッキは……」


「ふふ、気付いちゃいました?いやー、これだけで気付かれるなんて思わなかったんですけど」


 


響一人の力で作り上げたデッキでは無い。仲間達から受け取ったカードと共に作り上げたデッキ。かつて、自分が仲間達のカードを受け取り、異界王に挑んだように、彼女もまた仲間達のカードと共に自分に挑もうという事だろう。


 


(……まるで、俺が異界王みたいだな)


 


あのときの状況と重ねるのだとすれば、そうなるだろう。だが、それも不思議と悪い気はしない。絶対的な壁として立ちはだかり、目の前の自分を乗り越え、さらなる高みへ行こうとするカードバトラーと全力をぶつけ合えるのだから。


 


「ターンエンドです!」


「何か、ビッキーも弾さんも、さっきまでと何か違う気がする……」


「うん、きっとそう」


 


バトルをその目に焼き付ける未来達も、二ターンを終えた二人のバトルを見て、フィーネとの戦いのときとは何かが違う事に気付く。それは、響と弾が既に分かり合い、バトルスピリッツが既に対話としては成り立っていないから。そう、例えるならば、これは儀式。響、いや、装者達と弾のバトルは、そのまま儀式として昇華され、時代を救う一撃となるのだ。


 


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。エリダヌス・ドラゴンをLv2にアップ」


 


【エリダヌス・ドラゴン


コア1→3:Lv1→2:BP3000→4000】


 


「ターンエンド」


 


エリダヌス・ドラゴンのLvを上げてターンを終える弾。その狙いが何かは今は分からないが、こちらは今の内にやれるべきことをやるべきだ。そう考えながらデッキに手を伸ばす。


 


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!マジック、双翼乱舞


(軽減:赤2)を使用!デッキから2枚ドロー!ターンエンド!」


 


手札を増やし、まだ動かない。そしてターンは再び弾へと移っていく。


 


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、メインステップ。いくぞ、響!」


「!」


「エリダヌス・ドラゴンを疲労!」


 


エリダヌス・ドラゴン、Lv2効果。自分のメインステップ時、系統:「光導」を持つ自分のスピリットを召喚するとき、このスピリットを疲労させることで、そのスピリットの軽減をすべて満たしたものとして扱う。その効果を発揮させ、疲労状態となったエリダヌス・ドラゴンの身体から青い四つのシンボルが出現し、十二宮Xレアの軽減を一手に引き受ける。


 


「!まさか、もう!」


「青の十二宮Xレア!天秤座より来たれ、粉砕の神よ!天秤造神リブラ・ゴレム、召喚!不足コストは、エリダヌス・ドラゴンより確保!」


 


【エリダヌス・ドラゴン


コア3→1:Lv2→1:BP4000→3000】


 


【天秤造神リブラ・ゴレム:青・スピリット


コスト8(軽減:青4):「系統:光導・造兵」:【粉砕】


コア1:Lv1:BP6000


シンボル:青】


 


弾の背後から立ち昇る無数の光が、大地へと天秤座を刻みこむ。刻まれた天秤座の青い光を地面ごと砕き、地中から両肩に巨大な秤を担いだ青と白を基調としたゴーレムが出現する。その手には自身の得物である、金色の鎖に繋がれた槍が握られており、十二宮Xレアが持つその威圧感をその身体から放っている。


 


いきなり天秤座の十二宮Xレアか!?」


「おいおい、あいつの効果は……!」


 


慌てたような声を漏らすクリス。彼女が焦るのも当然のことだろう。リブラ・ゴレムはLv3のとき、粉砕によって破棄したカードの中にスピリットがあれば自信を回復させる強力な効果がある。下手をすればこれ一枚でゲームエンドに持ちこめるぐらいのとんでもない力を秘めているのだ。


 


「ターンエンド」


「……スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!ニジノコをLv3で召喚!」


 


【ニジノコ:黄(白)・スピリット


コスト1:「系統:戯狩」


コア3:Lv3:BP3000


シンボル:黄(白)】


 


虹色の皮膚を持つツチノコ型スピリット、ニジノコが響のフィールドに出現する。出現したニジノコは火の粉を吹き出しながらザニーガンと共に弾を見据える。


 


「ターンエンド」


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。エリダヌス・ドラゴンをLv2、リブラ・ゴレムをLv3にアップ」


 


【エリダヌス・ドラゴン


コア1→3:Lv1→2:BP3000→4000】


 


【天秤造神リブラ・ゴレム


コア1→4:Lv1→3:BP6000→12000】


 


「アタックステップ、天秤造神リブラ・ゴレムでアタック!粉砕により、デッキを3枚破棄!」


 


リブラ・ゴレムが自身の得物を振り回し、それによって生じた青い波動が響のデッキへと襲い掛かる。Lv3であることにより、3枚のカードが破棄され、獣の氷窟、砲竜バル・ガンナー、ニジノコの3枚のカードがトラッシュへと置かれる。


 


「く……スピリットが……!」


 


スピリットカードが破棄された事に少し表情を歪める翼。しかも、ただ破棄されたばかりでなく、ニジノコがそこに含まれていたことでリブラ・ゴレムが自身の更なる効果が発揮、再び回復する。


 


「Lv3アタック時効果により、このスピリットの粉砕でスピリットが破棄されたことでこのスピリットを回復させる!ただし、このスピリットが回復状態でいる間、このスピリットのアタックで相手のライフは減らない!」


(このままデッキを破壊され尽くしたら、アルティメットもトラッシュに……!)


 


そうなれば、アルティメットを回収することができない響は、もうこのバトルでそのアルティメットを使えなくなる。その前に、このカードで止めるしかない。元はダブル合体スピリットに対抗する為の策としてクリスから受け取ったカードだが、それをこんなに早く使用することになるとは。


 


「ザニーガンでブロック!フラッシュタイミング、リバーシブルスパークを使用!不足コストは、ニジノコとザニーガンから確保!」


 


【ニジノコ:黄(白→赤)


コア3→1:Lv3→1:BP3000→1000


シンボル:黄(白→赤)】


 


【ザニーガン


コア3→2:Lv2→1:BP3000→1000】


 


「このバトルの間、BPを比べるとき、バトルしている自分のスピリットと相手のスピリットのBPを入れ替える!」


 


【天秤造神リブラ・ゴレム


BP12000→1000】


 


【ザニーガン


BP1000→12000】


 


リブラ・ゴレムとザニーガンのBPが逆転する。ザニーガンの身体から黄色い光が解き放たれ、その光と共にリブラ・ゴレムへと突進していく。明らかな体格差がある二体のスピリットの真正面からのぶつかり合いの末、リブラ・ゴレムの全身が粉々に砕け散り、泥となって崩れ落ちていく。そしてザニーガンがリブラ・ゴレムを貫いて空へと飛び上がる。


 


「っ……!」


 


リブラ・ゴレムが破壊されたその事実を受け止めながらも、同時に弾は内心で笑う。響達が用意した、おそらくはダブル合体スピリットとのBP差を逆転させるためのカード、それを予定を前倒しして使わせられたのならば、大きな収穫だ。


 


「くそ……仕方なかったとはいえ、ここで早くも使っちまうのは痛いな……!」


「ああ……寧ろ、この場合は弾が使わせたというべきか……」


 


翼とクリスも苦しい表情を見せる。弾は元々、ライフを削りに行くタイプのカードバトラーだ。デッキ破壊の戦術も、リブラ・ゴレムが来たからこそそちらも使用する、といったところだろう。その柔軟な戦い方の変化に見事に振り回されたともいえる。が、逆に言えば、一枚でゲームエンド級の力を発揮するリブラ・ゴレムを真っ先に対処できたのは大きな成果だと言えるだろう。


 


「他の色のマジックは初めて使うのに、よく使えてるじゃないか」


「えへへ、皆とバトルして、一緒に戦ってますから!その記憶は、経験は私の中に刻まれてますよ!勿論、弾さんとの戦いも!」


「それは楽しみだ。俺はこれでターンエンドだ、来い!響!」


「はい!スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!青玉の巨大迷宮をLv2で配置!コアはザニーガンから使用!」


 


【ザニーガン


コア2→1】


 


【青玉の巨大迷宮:青・ネクサス


コスト3(軽減:青1)


コア3:Lv2


シンボル:青】


 


響の背後に出現する、巨大なサファイアの色をした迷宮。翼の愛用するネクサスを使い、弾の十二宮Xレアの厄介な召喚時効果を防ぐつもりということか。


 


「バーストをセットして、ターンエンド!」


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、メインステップ。ネクサス、光り輝く大銀河を配置」


 


【光り輝く大銀河:赤・ネクサス


コスト4(軽減:赤2)


コア0:Lv1


シンボル:赤】


 


弾の背後の空間が歪み、巨大な大銀河が出現していく。星々の輝きが暗い闇の中で輝く大銀河の中では黄道十二宮の星座達が輝いており、それらが円を作り出してゆっくりと一定の周期で回転しているのが見える。


 


「光り輝く大銀河……」


 


このターンでドローしてきたのだろうか。その強力な効果は、フィーネとの戦いで如何なく発揮されたことを、響は知っている。だからこそ、これから弾がやろうしていることが予測できてしまい、表情が無意識の内に強張ってしまう。


 


「光り輝く大銀河の効果により、手札の系統:「光導」を持つスピリットのコストを5にする!さらに、エリダヌス・ドラゴンを疲労させ、Lv2効果によって全ての軽減を満たす!」


 


エリダヌス・ドラゴンが赤のシンボル4つを解き放つ。それら全てが手札に存在する十二宮Xレア召喚のための糧となる。


 


「牡牛座より来たれ、金色の神よ!!金牛龍神ドラゴニック・タウラス、Lv2で召喚!不足コストは、エリダヌス・ドラゴンより確保!」


 


【エリダヌス・ドラゴン


コア3→1:Lv2→1:BP4000→3000】


 


【金牛龍神ドラゴニック・タウラス:赤・スピリット


コスト7(軽減:赤4):「系統:光導・古竜」:【激突】


コア3:Lv2:BP7000


シンボル:赤】


 


カードが掲げられた瞬間、金色の稲妻が奔る。無数の光がカードから放たれるとそれは空へと無数の光の柱へと分裂して天空へ立ち昇っていき、時を同じくして天空に出現した暗雲に牡牛座を描く。続いて牡牛座から降り注いだ光が地面へと降り注ぎ、その威力が大地を砕くと、砕かれ、発生した大きな砂煙の中から二枚の翼を空に広げ、二本の巨大な金色の角を見せる赤き巨大な猛き牛が降臨する。


 


「牡牛座の、十二宮Xレアを……」


「大型の筈の十二宮Xレアを、たった1コストで……」


「アタックステップ。ドラゴニック・タウラス、激突!」


「っ……ザニーガンでブロック!」


 


ドラゴニック・タウラスが前足でザニーガンを掴み取り、そのまま勢いよく叩き付ける。ザニーガンの身体が爆発して消えていく中、響は仕掛けておいたバーストを起動させていく。


 


「スピリット破壊によりバースト発動!双光気弾!デッキから2枚ドロー!さらに、フラッシュ効果発揮!不足コストはネクサスから確保!」


 


【青玉の巨大迷宮


コア3→2:Lv2→1】


 


「相手のネクサスを破壊する!光り輝く大銀河を破壊!」


 


光り輝く大銀河が消滅していく。十二宮Xレアの大量展開を許してしまうのはこの状況では最も悪手だ。十二宮Xレア達がフィールドで強力なコンボを組み立てる速度を少しでも遅くさせなければならない。


 


「ターンエンド」


「どちらもライフこそ削られてはいませんが……」


「先に十二宮Xレアを使い、展開を始めている弾君の方が流れを引き寄せているだろうな……しかし、彼のデッキは……」


「……知ってんのかよ、あいつのデッキがどうなってるのか」


 


一旦言葉を切る弦十朗に、疑問の目を向けるクリス。終わるまで黙っていようと思っていたが、ここでばらしたところで彼女達もこの戦いに変な横槍を入れるようなことはしないだろう。ならば、別にこのことを公開したところで問題ない筈だと結論付けて、弾のデッキがどうなっているのかを告げていく。


 


「彼のデッキは、13枚の十二宮Xレアすべてが投入されたデッキだ」


「ぜ、全部!?」


「そ、そんなデッキが回るんですか!?」


「そんなアニメみたいな……」


 


だが、弾は現にそのデッキを使いこなしている。まだ本調子とは言えないだろうが、既に十二宮Xレアが二枚出現し、響を着実に追い詰めているのだから。だが、響もまた、防戦一方では終わらせない。


 


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!青玉の巨大迷宮をLv2、ニジノコをLv3にアップ!」


 


【青玉の巨大迷宮


コア2→3:Lv1→2】


 


【ニジノコ:黄(赤→白)


コア1→3:Lv1→3:BP1000→3000


シンボル:黄(赤→白)】


 


「バーストをセット!そしてアタックステップ!ニジノコでアタック!」


「激突を警戒したか!ライフで受ける!」


 


ニジノコが飛び上がり、その体重を弾へと叩き付ける。弾を守るように出現した黄色いバリアが砕かれ、弾のライフが削れていく。


 


「ターンエンド!」


 


ドラゴニック・タウラスにはLv2・3アタック時効果により、ブロックした相手スピリットのシンボルの数と自身のシンボルの数を比べ、ドラゴニック・タウラスの方が多かった時、その個数だけ相手のライフにダメージを与えることができる。さらに、Lv3アタック時効果により、シンボルを比べるとき、自分の系統:「光導」を持つスピリットの数だけ赤のシンボルを追加できる。それによって、スピリットの破壊とライフへのダメージを両立させないためにアタックをしたのだろう。


 


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。エリダヌス・ドラゴンをLv2にアップ」


 


【エリダヌス・ドラゴン


コア1→3:Lv1→2:BP3000→4000】


 


「新たに十二宮Xレアをここに!牡羊座より来たれ!白羊樹神セフィロ・アリエス、Lv2で召喚!不足コストは、エリダヌス・ドラゴンより確保する!」


 


【エリダヌス・ドラゴン


コア3→1:Lv2→1:BP4000→3000】


 


【白羊樹神セフィロ・アリエス:緑・スピリット


コスト6(軽減:緑3):「系統:光導・遊精」


コア3:Lv2:BP8000


シンボル:緑】


 


エリダヌス・ドラゴンが疲労し、今度は緑のシンボル3つが解き放たれる。弾の背後から無数の星が宙へと立ち昇る。まるで樹木の幹を描くように螺旋を描く軌道で空へと昇っていくその星たちは、遥か高き天で牡羊座の陣を描く。描かれた陣からは、薄い紫色の毛並みを持つ巨大な羊の姿をしたスピリットがゆっくりと降りてくる。緑色の装甲を身体の所々に纏ったそのスピリットが地に足を付ける。


 


「緑の十二宮Xレアまで……」


「アタックステップ。金牛龍神ドラゴニック・タウラスでアタック!」


「ライフで受ける!」


 


ドラゴニック・タウラスが雄叫びを上げ、大地を揺らすかのような音を響かせながら一直線に突進する。そして飛び上がり、勢いよく前足を響へと叩きつけていく。


 


「ライフ減少によりバースト発動!」


 


しかし、セフィロ・アリエスは止める。響が発動したバーストが、フィールドでオープンされていく。そこにあったのは、白のカード。


 


「!白のバースト!」


「氷の覇王ミブロック・バラガン、バースト召喚!!」


 


【氷の覇王ミブロック・バラガン・スピリット


コスト7(軽減:白4):「系統:覇皇・機人」


コア4:Lv3:BP12000


シンボル:白】


 


響のフィールドに吹き荒れる氷の嵐。それが一瞬にして吹き飛ばされると同時に現れる氷のように冷たい鋼鉄の鎧。翼のように大きく広げられた鋼鉄の羽に、左肩から盾のように巨大な鋼鉄の武装が取り付けられており、その鋼鉄の和服が静かに靡く。その右手には紅く光るレーザーの刃を出現させた刀が握られているのが見える。


 


「ミブロック・バラガン……」


「響……!」


 


未来の託した、彼女のエーススピリット、ミブロック・バラガン。その姿が、弾の続くアタックを止める壁となる。BP12000は今の弾にも超えられない。よって、ここで弾が選択できるのは、ただ一つ。


 


「ターンエンド」


「ありがとう、未来……おかげで、耐えられた!スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!」


 


ドローしたカードを見て、僅かに笑う。このスピリットならば、弾が十二宮Xレアを展開させるためのサポートとして使用しているエリダヌス・ドラゴンを除去できる筈だ。


 


「次は、このカードだ!巨人大帝アレクサンダー、召喚!不足コストは、ニジノコとネクサスから確保!」


 


【ニジノコ:黄(白→赤)


コア3→1:Lv3→1:BP3000→1000


シンボル:黄(白→赤)】


 


【青玉の巨大迷宮


コア3→0:Lv2→1】


 


【巨人大帝アレクサンダー:青・スピリット


コスト6(軽減:青3):「系統:闘神・勇傑」:【強襲:2】


コア1:Lv1:BP6000


シンボル:青】


 


風に靡く赤いマント。身体に纏われた鋼の鎧。左腕に取り付けられた自らを護る盾。右手に握られた全てを貫かんとする強大な槍。翼が弾と戦う響へと託した青のXレア、巨人大帝アレクサンダーはその姿を降臨させる。


 


「よし、いいぞ立花!アレクサンダーの効果なら、エリダヌス・ドラゴンを……!?」


 


が、翼はここである異変に気付く。アレクサンダーが地に膝を付けて疲労しているという事に。目を凝らして見れば、セフィロ・アリエスから伸びた目に見えるかどうかの透明さを持つ糸がその身体に巻き付いているのが見える。


 


「なっ……アレクサンダーが!?」


「そ、そうか!セフィロ・アリエスが持つ効果は……!」


「白羊樹神セフィロ・アリエスが存在する限り、お互いに系統:「遊精」を持たないスピリット/ブレイヴをメインステップに召喚するとき、疲労状態で召喚する!」


「そんな効果を……!」


「バーストをセット!そして、アタックステップ!」


 


どのみち、Lv2効果が使えないことを考えれば、アレクサンダーがアタックできないという事実自体はあまり影響ない。次のターンに防御に回せないという事実があるだけだろう。だが、それは些細なことだ。


 


「ミブロック・バラガンでアタック!」


「ライフで受ける!」


 


ミブロック・バラガンが振り上げた刃が弾のライフを削る。これで勝利まで後三つ。だが、これ以上のアタックは出来ない。そう結論付け、響はターンエンドを宣言することにする。


 


「ターンエンド」


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。マジック、ブレイヴドローを使用。デッキから2枚ドローし、その後、デッキを上から3枚オープン」


 


輝竜シャイン・ブレイザー、ブレイドラ、獅機龍神ストライクヴルム・レオ。弾はブレイヴ、輝竜シャイン・ブレイザーを手札に加え、残りは獅機龍神ストライクヴルム・レオ、ブレイドラの順番でデッキの上に戻した。


 


「セフィロ・アリエスをLv1にダウン、さらにドラゴニック・タウラスをLv3にアップ」


 


【白羊樹神セフィロ・アリエス


コア3→1:Lv2→1:BP8000→7000】


 


【金牛龍神ドラゴニック・タウラス


コア3→5:Lv2→3:BP8000→10000】


 


「エリダヌス・ドラゴンをLv2にアップ」


 


【エリダヌス・ドラゴン


コア1→3:Lv1→2:BP3000→4000】


 


「さらに疲労!」


 


エリダヌス・ドラゴンに今度は四つの黄色のシンボルが出現する。それが意味するスピリットの召喚に、嫌でも響は気を引き締めざるを得なくなる。


 


「双子座より来たれ!創造と破壊、二つの顔を持つ天空の魔術師!魔導双神ジェミナイズ、召喚!不足コストは、エリダヌス・ドラゴンより確保する!」


 


【エリダヌス・ドラゴン


コア3→1:Lv2→1:BP4000→3000】


 


【魔導双神ジェミナイズ:黄・スピリット


コスト7(軽減:黄4):「系統:光導・導魔」


コア1:Lv1:BP5000


シンボル:黄】


 


双子座の黄色い光が地面に出現する。地面を砕き、無機質にすら思える細い腕を持つ奇妙な姿をした白と黒、それぞれカラーリングの違う奇術師二人が背中合わせに繋がったような容姿を持つスピリットが光を払って大地へ出現する。


 


「ジェミナイズまで……!」


「十二宮Xレアが増えたことで、ドラゴニック・タウラスの破壊力も増すことになる……!」


(どうすれば……マジックと展開を補助するジェミナイズ?スピリットとブレイヴを疲労させて妨害をするセフィロ・アリエス?それとも、ワンショットのドラゴニック・タウラス!?)


 


ジェミナイズ自身もセフィロ・アリエスの力によって疲労する。だが、そこは問題ではないだろう。大事なのは、光導スピリットを増やしてドラゴニック・タウラスの補助をするということなのだから。


 


「いくぞ、アタックステップ」


 


弾の静かな、強い言葉がバトルフィールドに響く。そして、少し思案した響は、意を決してミブロック・バラガンのカードに手を伸ばすのだった。

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