第46話 馬神弾VSフィーネ

「スタートステップ、ドローステップ」


 


装者達が新たなシンフォギアを携え、ノイズを迎撃する。そんな中、外を彼女達に任せ、弾はフィーネとの最後の戦いに臨んでいた。フィーネもまた、己の悲願を叶えるために全力を弾へと叩き付ける。お互いに、カードバトラーとして、一人の目的を持つ者として、全てを出し切って戦うために。


 


「メインステップ」


 


先行を取ったのは弾。五枚の手札を見て、下手をすれば手札事故すれすれだと内心で評価しながら、その中でこの状況で唯一フィールドに繰り出せるカードを取り出す。


 


「ネクサス、光り輝く大銀河を配置」


 


【光り輝く大銀河:赤・ネクサス


コスト4(軽減:赤2)


コア0:Lv1


シンボル:赤】


 


「……?太陽石の神殿以外のネクサスだと?」


 


フィーネが眉を寄せる。弾の背後の空間が歪み、巨大な大銀河が出現していく。星々の輝きが暗い闇の中で輝く大銀河の中では黄道十二宮の星座達が輝いており、それらが円を作り出してゆっくりと一定の周期で回転しているのが見える。


 


「ターンエンド」


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、メインステップ。ダークマタードラゴンを召喚!」


 


【ダークマタードラゴン:赤・スピリット


コスト4(軽減:赤2・極1):「系統:星竜」


コア1:Lv1:BP3000


シンボル:赤】


 


その身体の中で周囲の星の光と反するように赤く輝く光が蠢く、黒に近い青い鉱石を全身から生やした巨大なドラゴンが召喚される。彼女のデッキのアルティメット・ガイ・アスラの補助のために投入されたスピリットが初手で呼び出され、弾を牽制する。召喚時効果でトラッシュのスピリットを回収するのも主な役割ではあるのだが、彼女の手札には他に出せるスピリットが存在しないという事か。


 


「ターンエンド」


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。ニジノコをLv3で召喚」


 


【ニジノコ:黄(白)・スピリット


コスト1:「系統:戯狩」


コア3:Lv3:BP3000


シンボル:黄(白)】


 


虹色の皮膚を持つツチノコ型スピリット、ニジノコ。小さな火の粉を口から漏らし、そのやる気と元気を見る者に教えている様子が目に入る。


 


「ターンエンド」


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。マジック、ライフチャージを使用!コスト3以上の自分のスピリット1体、ダークマタードラゴンを破壊してボイドからコア3個をリザーブに置く!」


 


ダークマタードラゴンが光と共に消えていき、フィーネのリザーブに3個のコアが増える。さらにダークマタードラゴンの破壊と共にその上に乗っていたコア1個もリザーブに移動し、5つのコアを自由に使える状態となる。


 


「続けてネクサス、彷徨う天空寺院を配置!」


 


【彷徨う天空寺院:赤・ネクサス


コスト5(軽減:赤3)


コア0:Lv1


シンボル:赤赤】


 


フィーネの背後に出現する巨大な大陸。龍の姿を模したその大陸は、熱く燃えるマグマにも似た巨大なエネルギーを秘めているのは間違いないことだろう。


 


「ターンエンド」


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ」


 


ドローしたカード。それを見て、弾の表情が変わる。それが、弾が十二宮Xレアを呼び出そうとしている前兆だと気付いたフィーネは、気を引き締めるように表情を強張らせる。


 


「ネクサス、光り輝く大銀河の効果により、十二宮Xレアのコストを5に!」


 


光り輝く大銀河、Lv1・2効果。自分のメインステップ時、自分の手札にある系統:「光導」を持つスピリットカードすべてをコスト5にする。弾の背後の大銀河が光を放ち、弾の手札の十二宮Xレアのコストを5へと書き換えていく。


 


「十二宮Xレアをここに!水瓶座より来たれ、宝瓶神機アクア・エリシオン、召喚!不足コストはニジノコより確保!」


 


【ニジノコ:黄(白→赤)


コア3→1:Lv3→1:BP3000→1000


シンボル:黄(白→赤)】


 


【宝瓶神機アクア・エリシオン:白・スピリット


コスト7(軽減:白4):「系統:光導・武装」


コア1:Lv1:BP6000


シンボル:白】


 


天空に描かれていく白い水瓶座。そこから巨大な水流が発生し、大地へと降り注いでいく。大地を濡らし、満たしていく絶え間なく流れていく水流の中で二つの黄色い目が光り、その瞳を持つ主が水瓶を半分に割った様な篭手を腕に纏い、その先端に刃を生やした二刀流を操る人型の武装スピリットが水を振り払うように切り裂いて現れる。水瓶座の化身、その背中には巨大な水瓶が二つ背負われており、アクア・エリシオンが刃を振り抜いては経った水が雨となって空から大地へと短い時間降り注いでいく。


 


「水瓶座……!」


「アタックステップ!アクア・エリシオンでアタック!」


 


弾が動いた。アクア・エリシオンが刃を振り抜くと、その刃が光を反射して輝く。そして背中の水瓶がブースターとなってアクア・エリシオンの機動力を増強させ、アクア・エリシオンは振り上げた刃をフィーネへと叩き付ける。


 


「ライフで受ける!」


 


フィーネの前方に出現する、無数の白い六角形を束ねたような小さなバリア。そこに叩きつけられたアクア・エリシオンが持つ巨大な十二宮Xレアの力が収束し、それがフィーネのライフを穿つ。


 


「ターンエンド」


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。ネクサス、賢者の樹の実を配置!」


 


【賢者の樹の実:緑・ネクサス


コスト4(軽減:緑2)


コア0:Lv1


シンボル:緑】


 


フィーネの背後に金色の幹が出現する。その枝の先には金色の果実が実っており、青々とした生命力溢れる大量の葉と共にその樹木の全容を作り出す。


 


「続けて現れよ、対峙する者に不幸を告げ、使役する者に勝利をもたらす漆黒の鳥よ!漆黒鳥ヤタグロス、召喚!」


 


フィーネのフィールドに現れた一体のスピリット。緑のシンボルの中から現れた、枯れた樹木のような長い尾を持つ漆黒の鳥、ヤタグロスが不気味な鳴き声をフィールドへと響かせる。フィーネのデッキのコアブーストの中核を担うスピリット、その出現に弾は少しだけ目を細める。


 


「ターンエンド」


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。ニジノコをもう一体召喚」


 


【ニジノコ:黄(赤)


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:黄(赤)】


 


「アクア・エリシオンをLv2にアップ」


 


【宝瓶神機アクア・エリシオン


【装甲:赤/紫/青】


コア1→3:Lv1→2:BP6000→8000】


 


「ターンエンド」


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。漆黒鳥ヤタグロスをLv3にアップ!」


 


【漆黒鳥ヤタグロス


コア2→10:Lv1→3:BP4000→8000】


 


ヤタグロスのコアを増やし、コアブーストの準備を着実に進めていく。無論、これだけのコアを得たヤタグロスを弾に破壊させようという受動的な手段はフィーネも取らない。確実にその手札にはあのマジックが眠っている事だろう。


 


「更に二枚目のライフチャージを使用、ヤタグロスを破壊し、3コアをリザーブに置く」


 


二枚目のライフチャージによってヤタグロスの身体が光に包まれて消えていく。それによって3コアが増えていき、さらにヤタグロスの持つ驚異的なコアブースト能力が起動する。


 


「漆黒鳥ヤタグロス、破壊時効果!ボイドからこのスピリット上に置かれたコア1個につきコア1個を自分のリザーブに置く!ヤタグロスの上に置いてあるコアは10!よって10個のコアをボイドからリザーブに置く!」


 


フィーネのリザーブに増えていく10のコア。ヤタグロスのコアもリザーブへ戻り、そのコアの総量は実に23。


 


「続いてマジック、三札之術を使用!」


 


デッキから2枚ドローし、その後、自分のデッキを上から1枚オープンし、そのカードが赤のスピリットならば手札に加えるマジック。ドローを終え、デッキからオープンされたカードは、赤のスピリットカード、プロフェット・ドラゴン。よって、フィーネの手札に加えられることとなる。


 


「プロフェット・ドラゴンを召喚!」


 


【プロフェット・ドラゴン:赤・スピリット


コスト2(軽減:赤1):「系統:戦竜」


コア1:Lv1:BP2000


シンボル:赤】


 


黄色い鱗に身を包み、紺色を基調としたローブを纏った預言者のような姿をしたそのドラゴンが現れる。そして、その召喚と共にフィーネの手札が赤く、強く輝いていく。


 


「召喚時効果により、滅龍帝ジエンド・ドラゴニス、龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード、十剣聖スターブレード・ドラゴンの3体を公開し、カードを3枚ドローする!」


 


プロフェット・ドラゴン、召喚時効果。自分の手札のコスト8以上のスピリットカードを好きなだけオープンし、手元に置く。それにより、この効果でオープンしたカードの枚数分カードをドローし、手札を増やせるのだ。今回、フィーネが公開したのは3枚のスピリット、よって、ドローするカードもまた3枚だ。


 


「続けて二枚目の三札之術を使用!」


 


さらに、プロフェット・ドラゴンの効果でドローしたマジックを、ヤタグロス達によって増やしたコアを用いて惜しみなく使用していく。さらに2枚ドローし、デッキトップのカードが赤のスピリットカード、滅龍帝ジエンド・ドラゴニスであったため、フィーネの手札に加えられる。


 


「彷徨う天空寺院を疲労させ、龍の覇王ジーク・ヤマト・フリードを既に2コスト支払った状態に!」


 


彷徨う天空寺院、Lv1効果。自分のメインステップ時、本来のコストが8以上となるスピリットを召喚する際、このネクサスを疲労させることによってリザーブから2コストまでを支払ったものとして扱うのだ。龍の覇王ジーク・ヤマト・フリードのコストは8、よって、ネクサスの効果が無事に適用されることとなる。


 


「降臨せよ、龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード!召喚!」


 


【龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード:赤・スピリット


コスト8(軽減:赤3):「系統:覇皇・古竜」


コア1:Lv1:BP10000


シンボル:赤】


 


天から炎がフィールドへと降り注ぐ。そこから現れた龍は、紅蓮の装甲を纏い、背中や肩から青い角のような装飾が出ている。顔には巨大な赤い角と金色に輝く瞳を持ち、その手に一振りの刃を握っている姿が確認出来る。現れた龍の覇王は、登場と共に咆哮を上げる。


 


「出てきたか……」


「さらに降臨せよ!滅龍帝ジエンド・ドラゴニス、召喚!」


 


【滅龍帝ジエンド・ドラゴニス:赤・スピリット


コスト9(軽減:赤6):「系統:滅龍」


コア1:Lv1:BP9000


シンボル:赤赤】


 


天空から赤紫色の雷鳴が降り注ぎ、それに導かれるように黒い巨大なドラゴンが現れる。四本脚で大地に立ち、二本の巨大な金色の角を見せ、紫色の瞳を輝かせて薄い黄色の翼を大きく広げ、龍の覇王と共に並び立つ。


 


「来たれ、星の剣振るいし竜!十剣聖スターブレード・ドラゴン、召喚!」


 


【十剣聖スターブレード・ドラゴン:赤・スピリット


コスト8(軽減:赤6):「系統:剣使・星竜」


コア1:Lv1:BP7000


シンボル:赤】


 


炎が天空より降り注ぐ。その炎を振り払い、中から現れたのは白銀の鎧を纏う龍。その両手には赤く燃えるような刀身の剣が握られ、紅蓮の皮膚が炎によって強く、赤く光る。


 


「賢者の樹の実をLv2にアップ!」


 


【賢者の樹の実


コア0→3:Lv1→2】


 


手元のスピリット達を全て召喚してフィールドを整え、さらに防御も成立させるためにネクサスのLvも上げていく。アクア・エリシオンが持つ、お互いのリフレッシュステップで合体していないスピリットは1体しか回復できない効果への対処としてこのネクサスは機能することだろう。


 


「アタックステップ!十剣聖スターブレード・ドラゴンでアタック!アタック時効果により、最もBPの高い相手スピリット1体を破壊する!」


 


スターブレード・ドラゴンの剣に炎が宿り、それがアクア・エリシオンへと放たれる。しかし、その炎を前に自身の両腕を合わせて二つの篭手を水瓶のようにすると、そこから水流を放ち、アクア・エリシオン自身がそれを纏う事によって炎を弾き返す。


 


「装甲:赤を発揮!」


 


宝瓶神機アクア・エリシオン、Lv2・3効果。系統:「神星」/「光導」/「星魂」を持つ自分のスピリットすべてに装甲:赤/紫/青を与える。その効果を受けたアクア・エリシオンは赤のスピリットの効果であるスターブレード・ドラゴンの効果を受け付けないのだ。


 


「だが、この効果は装甲によって効果を受け付けないスピリットを除いた最高のBPのスピリットを破壊する効果!アクア・エリシオンが破壊できぬのなら、ニジノコを潰せ!」


 


 


弾き返された炎が再び剣に纏われる。そして再度振るわれた剣から放たれた炎の斬撃がニジノコを切り裂き、破壊する。


 


「スターブレード・ドラゴンのアタックはどう受ける!」


「フラッシュタイミング!マジック、サイレントロック を使用!不足コストはアクア・エリシオンより確保!」


 


【宝瓶神機アクア・エリシオン


コア3→2:Lv2→1:BP8000→6000】


 


「合体していないスピリットのバトルが終了したとき、アタックステップを終了する!このアタックはライフで受ける!」


 


スターブレード・ドラゴンの紅蓮の刃が弾へと叩きつけられる。叩きつけられた炎は赤い六角形を無数に束ねたようなバリアに吸収されていき、収束したエネルギーは弾のライフを貫き、アーマーから白い煙を発生させていく。


 


「……ふっ」


「……エンドステップ!賢者の樹の実、Lv2効果により自分のスピリットすべてを回復させる!」


 


賢者の樹の実の力により、疲労したスターブレード・ドラゴンが回復する。このターンでアタックできなかったスピリット達も、強力なものばかり。次のターンでフィーネに対抗する為の手段を用意できなければ、一瞬で捻り潰されてしまうだろう。だが、その緊張感は、弾にとっては寧ろ心地の良い感覚にもなる。


 


「ターンエンドだ」


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。新たな十二宮Xレアをここに!」


「!」


 


光り輝く大銀河が再び光り出し、弾の手札の十二宮Xレアのコストを書き換えていく。コスト7から5へと書き換えられた十二宮Xレアの力が、その手から放たれる。


 


「双子座より来たれ!創造と破壊、二つの顔を持つ天空の魔術師!魔導双神ジェミナイズ、Lv2で召喚!不足コストは、ニジノコより確保!」


 


【ニジノコ


コア1→0】


 


【魔導双神ジェミナイズ:黄・スピリット


コスト7(軽減:黄4):「系統:光導・導魔」


コア2:Lv2:BP6000


シンボル:黄】


 


双子座の黄色い光が地面に出現する。地面を砕き、無機質にすら思える細い腕を持つ奇妙な姿をした白と黒、それぞれカラーリングの違う奇術師二人が背中合わせに繋がったような容姿を持つスピリットが光を払って大地へ出現する。


 


「新たな十二宮Xレア……!」


「宝瓶神機アクア・エリシオンをLv2にアップ!」


 


【宝瓶神機アクア・エリシオン


【装甲:赤/紫/青】


コア2→3:Lv1→2:BP6000→8000】


 


【魔導双神ジェミナイズ


【装甲:赤/紫/青】】


 


アクア・エリシオンのLvが上昇したことにより、再び装甲が復活する。復活した装甲は、アクア・エリシオンだけではなくジェミナイズにも付加されることとなる。


 


「ターンエンド」


 


が、二体のBPではジエンド・ドラゴニスは超えられない。乙女座の直接的では無く、間接的な破壊耐性効果があれば臆せずアタックも宣言できるのだろうが、この場ではアタックを控えるのが最善の一手となるだろう。


 


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ」


 


リフレッシュステップを宣言するフィーネ。しかし、そこで彼女は異変に気付くこととなる。疲労したネクサスが回復しないと言う異変を。


 


「アクア・エリシオンの効果で、リフレッシュステップ時にネクサスは回復しない!」


「……ちっ、メインステップ」


 


フィーネの手札の条件に該当するスピリットのコストを2支払う。これにより、実質-2コストで呼び出す事が可能となるネクサスを封じられ、舌打ちをする。が、それがあってもなくても、呼び出すのは変わらない。フィーネが呼び出すのは、圧倒的な戦力で弾を押し潰す為のスピリット達。その先陣を切るのはこの一枚だ。


 


「虚構より出現せよ!激神皇カタストロフドラゴン、召喚!」


 


【激神皇カタストロフドラゴン:赤・スピリット


コスト10(軽減:赤6):「虚神・古竜」


コア1:Lv1:BP7000


シンボル:赤】


 


空に黒い無数の繊維のようなものが出現していき、一つに集って行く。それらは周囲へと広げられ、複雑に繊維が絡み合い、巨大な六枚の黒い翼となる。そして、最後に身体が作られていき、白い装甲が所々に確認出来る漆黒の龍となっていく。


 


「カタストロフドラゴン……!」


「召喚時効果!系統:「古竜」を持つ自分のスピリット1体につき、自分はデッキから1枚ドローする!ジーク・ヤマト・フリードとカタストロフドラゴンの2体が存在することで2枚ドロー!」


 


手札を増やすフィーネ。しかし、カタストロフドラゴンがLv1で現れた所から見てもまだ他に手を打とうとしているのは確実だ。フィーネはその手札から更なるドラゴン達を呼び出していく。


 


「更なる絶望への幕開けだ!十剣聖スターブレード・ドラゴン2体を連続召喚!」


 


【十剣聖スターブレード・ドラゴン


コア1:Lv1:BP7000


シンボル:赤】


 


空からさらに二つの炎が降り注ぎ、二体のスターブレード・ドラゴンをフィールドへ呼び出していく。アクア・エリシオンの加護を受けている以上、その効果は弾の十二宮Xレアには及ばないが、この状況では存在し、ライフを狙いに行くスピリットとして存在しているだけで価値がある。


 


「続けて降臨せよ!破滅を司りし黙示録の獣よ!滅龍帝ジエンド・ドラゴニス!召喚!!」


 


【滅龍帝ジエンド・ドラゴニス


コア1:Lv1:BP9000


シンボル:赤赤】


 


【滅龍帝ジエンド・ドラゴニス


コア1:Lv1:BP9000


シンボル:赤赤】


 


さらに天から降り注ぐ稲妻達。それは、フィーネのフィールドに新たな滅龍帝の姿を作り出し、彼女の手札より出現した二体の滅龍帝は、既にフィールドに存在する滅龍帝、三体のスターブレード・ドラゴン、そしてカタストロフドラゴンとジーク・ヤマト・フリード、それをプロフェット・ドラゴン。七体のドラゴンと共に咆哮を張り上げ、九体のドラゴンはその溢れんばかりの闘志を解き放つ。


 


「……!」


 


流石の弾もこのプレッシャーに当てられたのか、少しだけ口元を歪める。尤も、その歪み方は、これぐらいやってもらわなければという、ノルマを達成してくれたことを喜んでいるかのようなものであったが。


 


「バーストをセットし、アタックステップ!滅龍帝ジエンド・ドラゴニスでアタック!」


 


一体の滅龍帝が咆哮を張り上げ、弾へと襲い掛かる。もし、アクア・エリシオンの効果がなければ1体はLv2となり、滅龍帝は、滅龍帝ジエンド・ドラゴニス以外の自分のスピリットが相手のスピリットにブロックされたとき、回復するという攻撃的な能力を持ち合わせることが可能となったのだが。迫るジエンド・ドラゴニス、そのアタックを前に弾は力強く宣言する。


 


「ライフで受ける!!」


 


ジエンド・ドラゴニスの口に紫色の炎が収束していき、弾を襲う。炎は一旦、六角形の赤いバリアに吸収され、それが何倍もの威力となって弾を襲い、一気に二つのライフを削り取る。その衝撃に僅かに揺れた弾は、その痛みを全身で受け止め、微かに喜びを露わにするかのよな、どこか狂気に塗れた恍惚とした表情を見せる。


 


「続け!二体目の滅龍帝よ!!」


 


さらにジエンド・ドラゴニスがアタックを仕掛ける。残りライフが2となっている弾はこのアタックをブロックするしかない。だが、弾はそれをしない。先程のアタックにより、十分にコアは溜まった。後はこのコアを使い、この状況を凌ぐだけだ。


 


「フラッシュタイミング!」


「!アタックステップを終了させるマジックをまだ持っていたか!?」


「マジック、サンダーブランチを使用!不足コストはアクア・エリシオンより確保!」


 


【宝瓶神機アクア・エリシオン


コア3→2:Lv2→1:BP8000→6000】


 


「このターンの間、合体していない、または転召を持たない相手のスピリットすべてのLv1/Lv2/Lv3BPを2000として扱う!」


 


【プロフェット・ドラゴン


BP2000】


 


【龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード


BP6000→2000】


 


【十剣聖スターブレード・ドラゴン


BP7000→2000】


 


【十剣聖スターブレード・ドラゴン


BP7000→2000】


 


【十剣聖スターブレード・ドラゴン


BP7000→2000】


 


【激神皇カタストロフドラゴン


BP7000→2000】


 


【滅龍帝ジエンド・ドラゴニス


BP9000→2000】


 


【滅龍帝ジエンド・ドラゴニス


BP9000→2000】


 


【滅龍帝ジエンド・ドラゴニス


BP9000→2000】


 


天空から降り注ぐ青白い稲妻達。それはフィーネのフィールドのドラゴン達全てを包みこみ、その電撃に秘められた魔力によって大量のBPを一気に削ぎ落し、そのBPを2000に固定させることとなる。


 


「く……サンダーブランチか……!これでブロックできる、そう言う事か……!」


「悪いが、そんな甘い手は使わない!」


「!」


 


見れば、ジェミナイズがその身体を揺らしている。揺らしながら、その全身から黄色い光の波動を周囲へと放っている。その光は、弾の手札に眠るマジックの使用を助長するための力となる。


 


「魔導双神ジェミナイズ、Lv2・3効果!自分がコストを支払ってマジックを使用したとき、その効果発揮後、自分のマジックをノーコストで使用できる!」


「く……まさかコンボを……!」


「マジック、ネオ・フレイムテンペスト!」


 


弾が赤のマジックを掲げる。瞬間、大気の温度が急激に上昇し、弾の真上に巨大な炎の竜巻が出現していく。その炎はより巨大になり、フィールド全域を包みこむ巨大な炎の嵐となってフィーネのフィールドのドラゴン達と弾のフィールドの十二宮Xレア達を全て、差別なく呑み込んでいく。


 


「BP4000以下のスピリットすべてを破壊する!」


 


フィーネのフィールドのスピリットは、サンダーブランチの効果によってBP2000となっている。対する弾のフィールドのジェミナイズ、アクア・エリシオンのBPは6000。よってネオ・フレイムテンペストの効果で焼かれずに済むが、フィーネのフィールドはそうはいかない。


 


「これで全焼だ……!」


 


電撃によって既に身体がボロボロとなっていたドラゴン達の身体が次々と燃え尽きていく。フィーネのフィールドを覆い尽くしていた九体のドラゴン達は全て燃やし尽くされ、たった一瞬で焼け野原にされる。


 


「っ……!」


 


流石のフィーネも、これには冷や汗を流すしかない。声こそ上げなかったものの、やはり侮れる相手なわけがない。そう実感せざるを得ない瞬間だった。いや、油断も慢心もしていない、侮りも無い。間違いなく全力で、本気で弾に挑んでいるのだ。それでも、この男はその自分に匹敵し、下手をすれば超えかねない。だが、それはこちらも同じ。こちらもまた、弾と同等、あるいはそれ以上の力があるのだ。まだ、バトルは終わってはいない。寧ろ、お互いにここからと言ったところだろう。


 


「ターンエンド」


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。マジック、リバイヴドローを使用。デッキから2枚ドローする」


 


弾もそれを分かっているのだろう。だからこそ、この唯一のインターバルと言える時間帯で手札を補充し、次なる攻撃と防御に備える。そして、マジックを使用したことにより、再びジェミナイズの効果が起動する。


 


「魔導双神ジェミナイズの効果により、マジックをノーコストで使用する。ブレイヴドローを使用。デッキから2枚ドローし、デッキを上から3枚オープン」


 


輝竜シャイン・ブレイザー、金牛龍神ドラゴニック・タウラス、バーニングサン。三枚のカードがオープンされる。その中のブレイヴカード、輝竜シャイン・ブレイザーを手札に戻し、残ったカードはバーニングサン、金牛龍神ドラゴニック・タウラスを順番でデッキの上に戻す。


 


「更なる十二宮Xレアをここに!」


「っ!」


 


光り輝く大銀河が光る。フィーネもだが、ネクサスの力を最大限に活かし、弾もまた全力でフィーネへと挑む。


 


「黄色の天霊よ、乙女座より来たれ!戦神乙女ヴィエルジェ、Lv2で召喚!不足コストは、ジェミナイズより確保!」


 


【魔導双神ジェミナイズ


コア2→1:Lv2→1:BP6000→5000】


 


【戦神乙女ヴィエルジェ:黄・スピリット


コスト6(軽減:黄3):「系統:光導・天霊」


コア2:Lv2:BP6000


シンボル:黄】


 


弾がカードを掲げると共に弾の周囲から立ち昇った黄色の光が空に放たれ、乙女座を描く。そしてそこから光の衣を纏って見る者全てを魅了するかのような金髪のロングヘアを持つ乙女が舞い降りる。慈悲に溢れた緑色の目を開き、先端で花の咲いた杖を握る、白い羽衣を纏った天使が白い翼を広げて現れる。


 


「乙女座まで手札にいたのか……!?」


「戦神乙女ヴィエルジェ、召喚時効果!自分のライフが5以下のとき、ボイドからコア1個を自分のライフに置く!」


 


ヴィエルジェが手を翳すと、そこから黄色い光が溢れ出る。溢れた癒しの力は新たなライフを作り出し、弾のアーマーに消えた光を取り戻させる。


 


「続けて、ジェミナイズの効果!系統:「神星」/「光導」/「星魂」を持つ自分のスピリットが手札から召喚されたとき、自分のデッキを上から1枚オープン、それがスピリットかブレイヴならばノーコストで召喚する!」


 


弾のデッキトップのカードは、ブレイヴドローによって把握されている。自身の身体を揺らしたジェミナイズから放たれた黄色い波動、それが、彼のフィールドのジェミナイズのカードからも発せされ、それに呼応するかのようにヴィエルジェも黄色い光も放ち、二つの光が重なってデッキの上のカードを公開していく。デッキの上に置かれた、金牛龍神ドラゴニック・タウラスを。


 


「牡牛座より来たれ、金色の神よ!!金牛龍神ドラゴニック・タウラス、召喚!不足コストは、アクア・エリシオンより確保!」


 


【宝瓶神機アクア・エリシオン


コア2→1】


 


【金牛龍神ドラゴニック・タウラス:赤・スピリット


コスト7(軽減:赤4):「系統:光導・古竜」:【激突】


コア1:Lv1:BP5000


シンボル:赤】


 


金色の稲妻が奔る。無数の光がカードから放たれるとそれは空へと無数の光の柱へと分裂して天空へ立ち昇っていき、時を同じくして天空に出現した暗雲に牡牛座を描く。続いて牡牛座から降り注いだ光が地面へと降り注ぎ、その威力が大地を砕くと、砕かれ、発生した大きな砂煙の中から二枚の翼を空に広げ、二本の巨大な金色の角を見せる赤き巨大な猛き牛が降臨する。


 


「アタックステップ!ジェミナイズでアタック!」


「ライフで受ける!」


 


ジェミナイズが大地を滑るように移動し、両手に黄色い光を纏ってフィーネへと殴りかかる。フィーネへと振り上げた拳が同時に叩きつけられ、その光が黄色い六角形を束ねたバリアによって防がれ、エネルギーを収束させることによってその全てをフィーネへと放出し、ライフを破壊する。


 


「ライフ減少により、バースト発動!絶甲氷盾!ボイドよりコア1個をライフに置く!さらにフラッシュ効果発揮!このバトル終了時、アタックステップを終了させる!」


 


フィーネに新たな光が戻る。さらに、フィーネの目の前に巨大な氷の盾が出現して弾の猛攻を強制的に防ぐシールドを出現させる。


 


「ターンエンド」


 


シールドが消えていくのを見ながらターンを終える。そして、次のターンを掴み取ったフィーネは自分の手札に存在する更なる地獄への扉を開くことを可能とするカードを見ながら、不敵な笑みを浮かべていく。


 


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。賢者の樹の実をLv1にダウン!」


 


【賢者の樹の実


コア3→0:Lv2→1】


 


「漆黒鳥ヤタグロスをLv3で召喚!」


 


【漆黒鳥ヤタグロス


コア21:Lv3:BP8000


シンボル:緑】


 


再びコアブーストを狙い、一気に21コアを乗せたヤタグロスを呼び出す。ヤタグロスを呼び出したという事は、彼女の手札にあるのは、


 


「……」


「ここまで来ればもう分かるだろう。最後のライフチャージを使用!ヤタグロスを破壊し、ボイドより3コアをリザーブに置く!ヤタグロスの効果により、ヤタグロスに乗った21個のコアをボイドからリザーブに置く!」


 


ヤタグロスが消え、さらに21コアをリザーブに移動させ、合計45コアがリザーブに移動する。さらに、トラッシュのコアを含めればその総量は破格の52。これだけあれば、このバトルでコアに不足することはよっぽどの場合を除いて存在しないと言い切ってもいいだろう。


 


「そして、永遠なる神都をLv2で配置!」


 


【永遠なる神都:赤・ネクサス


コスト4(軽減:赤2)


コア2:Lv2


シンボル:赤】


 


瞬間、バトルフィールドの外壁を覆っていくかのように巨大な都市が出現していく。白い建物が立ち並ぶその都市の上空には青緑色の光の軌跡が流れており、フィーネの背後には触手のような形をした白い建造物が螺旋を描いているかのように柱に絡みついているような形をした巨大な塔が出現していく。


 


「来たか……」


「こいつの効果はお前も知っているだろう。配置時効果!自分のトラッシュにある赤のスピリットカードすべてを手札に戻す!」


 


龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード、滅龍帝ジエンド・ドラゴニス三体、十剣聖スターブレード・ドラゴン三体、激神皇カタストロフドラゴン。フィーネのトラッシュに眠る八体の赤のスピリット達が全て、トラッシュから出現して浮き上がる。それを一度に全て手に掴み取ると、その八枚を見て、フィーネは不敵な笑みを口元へと浮かべる。


 


「さぁ、味わうがいい!ブレイヴ使いよ!そして、破滅への鼓動を刻ませてやろう!!」


 


獰猛な笑みを口元に浮かべ、フィーネはその手からドラゴン達を呼び出す。そのためのカードを、フィールドへと繰り出し、弾を倒すために猛攻を仕掛けるのだった。

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