第45話  魔弓、雪のように澄み

(……まさか、空を飛ぶ時が来るとは)


 


ネフシュタンのときのように、強靭となった脚力を活かして跳ぶのとは全然違う。彼女の腰に装着された、巨大な赤いマシンのような装甲。アームドギアとしての役割も果たしているこの新たな特殊装甲が、空中での飛行も可能とした、攻防一体の機関として機能しているのだ。


 


(……これが、私の新しい力……)


 


ぐっと、拳を握る。このデッキには、彼女が目を逸らしていた歌が作り出した、守り、救うための力がある。その力を手に、クリスは皆のために戦う。響きたちのために。自分のために。そして、フィーネと戦おうとする弾のために。


 


『スタートステップ、ドローステップ、メインステップ。神機レーヴァテインをLv2で召喚』


 


【神機レーヴァテイン:白・スピリット


コスト2(軽減:白1):「系統:武装」


コア2:Lv2:BP3000


シンボル:白】


 


ノイズが呼び出したのは、白のスピリット。細く、洗練されたフォルムが生み出す一種の芸術的な姿。人型の機械スピリットの背中には風に靡く鋼鉄のマントと剣の腹のような形状が見えており、その両肩からは柄と鍔を二等分したかのような装飾が施されている。


 


『ターンエンド』


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!メインステップ!光楯の守護者イーディスをLv2で召喚!」


 


【光楯の守護者イーディス:黄・スピリット


コスト3(軽減:黄2):「系統:天霊」:【強化】


コアS+1:Lv2:BP2000


シンボル:黄】


 


光を帯びた楯を持つ白い衣を纏った長い金髪の女性がフィールドに現れ、白い天使の翼を広げる。その澄んだ緑色の瞳を開き、イーディスは敵のスピリットを冷たく睨みつける。


 


「ターンエンド!」


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。神機レーヴァテインをLv3にアップ』


 


【神機レーヴァテイン


コア2→4:Lv2→3:BP3000→5000】


 


『ターンエンド』


(動かずか……)


 


レーヴァテインのBPを上昇させるだけに留め、新たなカードは出さない。白デッキだからこそ、手札が枯渇するのを防ぐために不要なカードを出していないのか。それとも今は出せないのか。まだ定かではないが、相手が様子を見ている間にこちらは出来る限り準備を整えておくにこしたことはないだろう。


 


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!天使スピエルを召喚!」


 


【天使スピエル:黄・スピリット


コスト0:「系統:天霊」:【強化】


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:黄】


 


第四ターン。イーディスによってコスト3以下のクリスのスピリット達の効果破壊に対する耐性が与えられている中、その加護を受ける灰色の髪の天使を呼び出す。赤い目を開き、黒い帽子を整えながら現れた、黒い鎧と白いスカートを履いた槍を構える天使、スピエルがイーディスと共に並ぶ。


 


「さらにマジック、マジカルドローを使用!」


 


マジック、マジカルドロー。そのメイン効果によりデッキからカードを1枚ドロー。その後、デッキの上から5枚をオープンし、その中の強化を持つスピリットすべてを手札に加え、残りを好きな順番でデッキの上に戻す。次々とオープンされていくカード達、天星鎧ブラン・ペガス、エンジェルストライク、天使マカエル、ライフレボリューション、リバーシブルスパーク。この中の強化を持つ天使マカエルがクリスの手札に加わり、残ったカードはリバーシブルスパーク、ライフレボリューション、天星鎧ブラン・ペガス、エンジェルストライクの順番でデッキの上に戻した。


 


「ターンエンド」


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、メインステップ。神機レーヴァテインをLv2にダウン』


 


【神機レーヴァテイン


コア4→2:Lv3→2:BP5000→3000】


 


『神機グングニルをLv2で召喚』


 


【神機グングニル:白・スピリット


コスト3(軽減:白2):「系統:武装」


コスト2:Lv2:BP4000


シンボル:白】


 


額から槍の柄が生えた、両肩から槍の腹が二つに割れたような盾を装着している機械人が出現する。オレンジを基調とした細身の、洗練されたボディ。胸と顔に輝く赤い光。大地に降り立つと共に金属音が鳴り響き、グングニルは静かに瞳を光らせた。


 


『ターンエンド』


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!イーディスをLv3、スピエルをLv2にアップ!」


 


【光楯の守護者イーディス


コアS+1→S+2:Lv2→3:BP2000→3000】


 


【天使スピエル


コア1→2:Lv1→2:BP1000→2000】


 


「アタックステップ!イーディスでアタック!」


 


イーディスが背中に右手を伸ばす。背中に背負われていた剣が抜かれ、剣と楯を手にノイズのフィールドに斬り込んでいく。しかしそのBPは、グングニルよりも低い。


 


『神機グングニルでブロック』


 


その点を見逃さず、グングニルでのブロックを宣言する。ライフで受ける宣言をするならばこれを温存して済んだが、ブロックしてきたのならこれを使い、一体でもスピリットを排除しにかかる。


 


「フラッシュタイミング!マジック、エンジェルストライクを使用!不足コストはスピエルから確保!」


 


【天使スピエル


コア2→1:Lv2→1:BP2000→1000】


 


「神機グングニルのBPを-5000!2強化追加でBP-7000!」


 


【神機グングニル


BP4000-(5000+1000×2)→0】


 


このターンの間、相手のスピリット/アルティメット1体をBP-5000する黄色のマジック。その効果によって黄色い光線が天からグングニルに降り注ぎ、そのBPを吹き飛ばす。さらにBPが0になったことで、エンジェルストライクのさらなる力が発動される。


 


「この効果でBP0になったとき、そのスピリット/アルティメットは破壊される!」


 


グングニルが爆発し、その姿を見てイーディスが剣を収める。バトルする対象がいなくなったからだろう。だが、グングニルは自身の爆発と共にその白い光を宙へと放つ。


 


「!?」


『神機グングニル、Lv1・2破壊時効果。相手のコスト1以下のスピリットすべてを手札に戻す』


「っ……!」


 


その光の影響で天使スピエルが手札へと戻っていく。ブロッカーをバウンスされ、次のターンでアタックをかけられたらもう防ぐ事はできないだろう。そのことを苦々しげに思いながら、クリスはこれ以上何も出来ないことを考えながらコールをする。


 


「ターンエンド」


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。神機レーヴァテインをLv1にダウン』


 


【神機レーヴァテイン


コア2→1:Lv2→1:BP3000→2000】


 


『冥機グングニルをLv3で召喚』


 


【冥機グングニル:白・スピリット


コスト3(軽減:白2):「系統:武装」


コア4:Lv3:BP6000


シンボル:白】


 


レーヴァテインのLvを下げることで最大Lvで呼び出すことを可能にしたのは、新たなグングニル。その槍の部品は黒く染まっており、身体も黒に近い濃いオレンジ色に染まっている。そして、先程までクリスが見たグングニルよりもずっと強力な力を感じさせることとなる。


 


『バーストをセット。アタックステップ』


 


さらに畳みかけるようにバーストがセットされる。より布陣を強固にし、ノイズはブロッカーの存在しないクリスへとアタックを仕掛けていく。


 


『冥機グングニルでアタック』


「ライフで受ける!」


 


グングニルが空へ飛び上がると、両肩の槍が自分の身体を包みこむように変形していく。そして一本の槍となったグングニルが回転しながらクリスへと襲い掛かり、クリスを守るように出現した白い半透明のバリアを砕く。


 


『神機レーヴァテインでアタック』


 


さらにレーヴァテインも攻める。グングニルのように空へ跳び上がると自身の身体を一振りの剣へと変形させ、空からクリスへと襲い掛かる。


 


「ライフで受ける!」


 


そのアタックもライフで受けるクリス。バリアとレーヴァテインが衝突し、激しい火花を散らせながらバリアを砕いていき、無防備なクリスのライフをさらに削り取っていく。


 


『ターンエンド』


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!」


 


ふと、クリスはノイズが伏せたバーストを見る。わざわざフルアタックを仕掛けてライフで受ける以外の選択肢を外している所から、おそらくライフ減少を引き金とするバーストなのだろう。が、ここは相手がどんな罠を伏せていたとしても、ブロッカーのいない今の状況を活かさない訳にはいかない。ここは仕掛けるしかない。


 


「天使スピエル、天使マカエルをLv2で召喚!」


 


【天使スピエル


コア2:Lv2:BP2000


シンボル:黄】


 


【天使マカエル:黄・スピリット


コスト2(軽減:黄2):「系統:天霊」:【強化】


コア2:Lv2:BP3000


シンボル:黄】


 


神機グングニルの効果によってバウンスされたスピエルと、更なる天霊を呼び出す。金と白で彩られた鎧を纏った、赤い髪に緑の目を持つ女性、白い二枚の翼を広げ、二本の剣を得物として構えた彼女は、静かに瞳を開く。


 


「バーストをセットしてアタックステップ!イーディスでアタック!」


 


イーディスが再び剣を抜いて飛翔する。その先にあるのは、ブロッカーのいないノイズのフィールド。このままライフで受けてバーストを狙う。そう思っていたクリスは、その期待を裏切られる事となる。


 


『フラッシュタイミング』


「!」


『マジック、インフィニティシールドを使用。不足コストは冥機グングニルより確保』


 


【冥機グングニル


コア4→2:Lv3→2:BP6000→4000】


 


『このターンの間、系統:「機獣」/「武装」を持つ自分のスピリットすべては、相手のスピリットすべてを疲労状態でブロックできる』


「!?」


 


このターンの間、グングニルは一切疲労状態でのブロックを可能とした。そして、クリスのフィールドのスピリット達が持つ最大BPは3000。この壁は、現在の状況ではどう足掻いても超えられない。


 


『冥機グングニルでブロック』


 


グングニルの肩の装甲をイーディスの剣にぶつけ、そのまま力任せに剣を弾き飛ばす。さらに一回転して蹴りの威力を高めると、その一撃をイーディスの胴体へと叩きつけて吹き飛ばしていく。


 


「っ!」


 


宙を舞うイーディスの身体が光の粒子となって消えていく。バーストも無意味では無かったのだろうが、インフィニティシールドを用いた二段構えだったとは。ノイズにしてやられるのは不満だが、それに引っかかってしまった自分も自分だ。


 


「ターンエンド……」


 


このままアタックを続行した所で、グングニルに全て阻まれるだろう。となれば、ここはこのままアタックステップを終了するしかない。


 


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。冥機グングニルをLv1にダウン』


 


【冥機グングニル


コア2→1:Lv2→1:BP4000→2000】


 


『鎧神機ヴァルハランスを召喚』


 


【鎧神機ヴァルハランス:白・スピリット


コスト7(軽減:白3):「系統:武装・戦騎」:【装甲:∞】


コア1:Lv1:BP6000


シンボル:白】


 


稲妻が大地を砕きながら溢れ出す。砕かれた大地より出現する巨大な氷山、それが砕かれ、中から両腕を組んだ漆黒のボディを持つ巨大なスピリットが出現する。その瞳を紫色に輝かせ、宙を舞う無数の氷を吹き飛ばすように、両腕を広げると、宙を舞う氷が大地に積もっていく。


 


「ここで大型を……!?」


『アタックステップ。鎧神機ヴァルハランスでアタック』


 


ヴァルハランスが拳を打ち鳴らし、大地を揺らすような足音を響かせながら発進する。振り上げられた巨大な拳を前に、マカエルとスピエルの二体がそれぞれの得物を構えて迎え撃とうとする。が、クリスが選んだのは、


 


「ライフで受ける!」


 


ライフで受ける選択肢。それを宣言した彼女が二体の天霊の前に出て、自身を守る白いバリアを出現させ、ヴァルハランスの拳を受け止める。そして拳がクリスのライフを吹き飛ばすのと同時に、仕掛けた罠が起動する。


 


「ライフ減少によりバースト発動!砲天使カノン!!」


 


自分のライフが3以下になったとき、このターンの間、相手のスピリット/アルティメットすべてをBP-10000する。さらにその効果は、スピエルとマカエルの強化を受けてBP減少量はさらに2000上昇することとなる。出現した、青い四枚の光の翼で空を飛ぶ、無数の砲台を身体に装着した薄い水色の髪の天使、カノンはその銃口を目の前のスピリット達へ向け、他の天霊達から受け取った力と共に放つ。


 


【神機レーヴァテイン


BP2000-(10000+1000×2)→0】


 


【冥機グングニル


BP2000-(10000+1000×2)→0】


 


放たれた無数の砲撃がレーヴァテインとグングニルを巻き込み、そのBPを奪う。しかし、ヴァルハランスは、相手のフィールドにあるシンボルの色の装甲を得る装甲:∞を持っており、黄色の装甲を持っているも同然の状態にカノンの効果は通用しない。


 


「この効果でBP0になったスピリット/アルティメットすべてを破壊する!そしてカノンをバースト召喚!」


 


【砲天使カノン:黄・スピリット


コスト8(軽減:黄4):「系統:星将・天霊」


コア3:Lv3:BP10000


シンボル:黄】


 


バースト効果によって二体の武装スピリットを破壊したカノンがクリスのフィールドに降り立つ。爆風の中でピンピンしているヴァルハランスを倒せなかった事に不満そうな視線を向けながら、カノンは静かに佇んでいる。


 


『ターンエンド』


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!メインステップ!」


 


そろそろ呼び出すべきか。そう思いながらデッキトップのカードであったライフレボリューションをドローする。カノン程のスペックがあれば、このカードもより効率よく扱えるだろう。相手のヴァルハランスに対抗するには、このブレイヴが今の手札では一番適任だろう。


 


「射抜け、イチイバル!ぶち抜け、アームドギア!星銃フォーマルハウト、召喚!」


 


【星銃フォーマルハウト:白・ブレイヴ


コスト4(軽減:白1・極1):「系統:剣刃」


コアS:Lv1:BP3000


シンボル:なし】


 


クリスのフィールドに出現するアームドギアが変化した新たなブレイヴ、フォーマルハウト。青と白の二色で構築されたその銃は、戦端が魚のようなものになっており、聖遺物が持つその強力な力を秘めている様子が見て取れる。


 


「星銃フォーマルハウト、召喚時効果!BP8000以下の相手スピリット/アルティメット1体を手札に戻す!鎧神機ヴァルハランスを手札に戻す!」


 


フォーマルハウトの瞳が光り、その銃口から白い光弾が発射される。発射された弾丸はヴァルハランスの心臓を貫き、その身体を光で包み込み、手札へと消し飛ばす。装甲ではブレイヴの効果を防ぐ事はできない。


 


「星銃フォーマルハウトを、砲天使カノンに合体!」


 


【砲天使カノン:黄+白


コスト8+4→12


コア4→S+4:BP10000+3000→13000】


 


カノンの右手にフォーマルハウトが握られる。それによって白の色を得たカノンの全身から白い光が放たれ、フィールドを照らしていく。


 


「アタックステップ!合体スピリットでアタック!」


『ライフで受ける』


 


カノンの右手に持たれている銃から白い砲撃が放たれる。放たれた砲撃は大気を揺らしながらノイズへと叩きつけられ、そのライフを吹き飛ばしていく。


 


『自分のライフ減少後、バースト発動。アルティメットウォール』


 


ノイズの目の前に出現する巨大な吹雪。それがノイズの目の前に現れ、クリス達を阻む巨大な壁となる。誕生した巨大な壁に阻まれたことでクリスは僅かに表情を厳しくする。


 


『このバトルが終了したとき、アタックステップを終了する』


「エンドステップ!星銃フォーマルハウト、合体時効果!エンドステップ時、合体したカードを回復させる!」


 


カノンが起き上がり、フォーマルハウトを構え直す。相手を迎撃する準備を整えたカノンを前にすることとなるノイズは、続く十一ターンをスタートさせる。


 


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。鎧神機ヴァルハランスをLv2で召喚』


 


【鎧神機ヴァルハランス


コア3:Lv2:BP7000


シンボル:白】


 


手札にバウンスされたヴァルハランスが再び召喚され、クリスの目の前に立ち塞がる。その姿を見ながら、クリスは再び警戒心を強めざるを得なくなる。


 


『バーストをセット。ターンエンド』


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップはこのまま!アタックステップ!合体スピリットでアタック!」


『ライフで受ける』


 


クリスの命令に従い、アタックを仕掛けるカノン。このまま順調にライフを減らしていき、エンドステップ時に回復して防御に備える。カノンの放った砲撃が再びノイズのライフを奪い取る。そして、それが引き金となってノイズは再びバーストを起動させる。


 


『自分のライフ減少後、バースト発動。次元断。相手のスピリット1体を手札に戻す。天使スピエルを指定』


 


ノイズが起動させたバーストによって次元が歪み、歪んだ次元に吸い込まれたスピエルが消滅、クリスのフィールドから弾き飛ばされたように空中に舞ったカードをクリスはキャッチする。さらに、


 


『その後コストを支払うことで、このカードのフラッシュ効果を発揮する。不足コストは鎧神機ヴァルハランスより確保』


 


【鎧神機ヴァルハランス


コア3→1:Lv2→1:BP7000→6000】


 


『このバトルの間、自分のライフを減らした相手のスピリット1体を破壊する。または、このバースト発動時に自分のライフを減らした相手のスピリット1体を破壊する』


 


このバーストを発動したとき、ノイズのライフを削ったのは砲天使カノン。カノンの背後に突然斬撃が放たれて誕生したかのような巨大な次元の歪みが出現し、その中にカノンが吸い込まれて消えていく。そしてクリスのフィールドにフォーマルアウトだけが落下する。


 


【星銃フォーマルハウト


コアS+3:Lv1:BP3000


シンボル:なし】


 


「っ……ターンエンドだ」


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。鉄騎皇イグドラシルをLv3で召喚』


 


【鉄騎皇イグドラシル:白・スピリット


コスト6(軽減:白3):「系統:動器・戦騎」:【装甲:赤/白】


コア4:Lv3:BP9000


シンボル:白】


 


ヴァルハランスと共に並ぶスピリットは、白の皇。ノイズのフィールドに出現した白のシンボルが光速で回転し、周囲から白い風を掻き集める。集った白い風は白いシンボルを包みこむ巨大な球体となり、その中から巨大な人型のスピリットが召喚される。


 


「!」


 


白いマントを靡かせ、二枚の紫のマントのような布を靡かせる、白と金色の装甲を纏った巨大な鉄の皇、イグドラシル。その姿が、ヴァルハランスの隣に降り立つ。


 


「ここにきてまだこんなものを……!」


『鉄騎皇イグドラシル、Lv1・2・3召喚時効果。BP3000以下のスピリットすべてを手札に戻す』


 


イグドラシルの手に剣が出現し、それが振るわれる。それによって生じた白い風がクリスのフィールドのマカエルとフォーマルアウトを包みこみ、同時に消し飛ばしてしまう。


 


「またバウンスかよ……!」


 


二枚のカードを手札に加えながら、舌打ちする。が、ノイズはさらにリザーブのコアを使いこんでいく。


 


『鎧神機ヴァルハランスをLv2にアップ』


 


【鎧神機ヴァルハランス


コア1→3:Lv1→2:BP6000→7000】


 


『アタックステップ。鎧神機ヴァルハランスでアタック』


 


ヴァルハランスが先程と同じく、大地を揺らしながら駆け出す。このアタックを受ければ残りライフは1。ここで止めるしかない、クリスは手札のマジックを繰り出してヴァルハランスの攻撃を凌ぐ。


 


「フラッシュタイミング!シンフォニックバーストを使用!このアタックはライフで受ける!」


 


ヴァルハランスが振り上げた拳を受け止めるクリス。その衝撃で吹き飛ばされながらも、クリスは発動したフォニックバーストの効果を適用させていく。


 


「このバトルが終了したとき、自分のライフが2以下ならアタックステップを終了させる!」


 


フィールドに響き渡る、黄色い旋律。その旋律がスピリット達の動きを防ぎ、アタックステップを終了させる。


 


『ターンエンド』


「はは……随分ギリギリにまで追い込まれたもんだ……けど、こんなところで諦めきれるかよ!スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!」


 


第十四ターン。カードをドローしたクリスは、一瞬だけ驚いた様な表情を見せる。そのカードが生きているかのような、そんな感覚を感じ取ったそのカードは、彼女だけではなく、響や翼もその存在は知らず、デッキに投入されていた事さえも知らなかった筈のものだ。だが、それをドローした瞬間に、クリスはそのカードのことを理解していた。三人がバトルフィールドに入り、ソウルコアを見た瞬間にその使い方を即座に理解したように。


 


「リフレッシュステップ!メインステップ!天使スピエル、星銃フォーマルハウトを召喚!」


 


【天使スピエル


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:黄】


 


【星銃フォーマルハウト


コア1:Lv1:BP3000


シンボル:なし】


 


が、その前にクリスのフィールドに再召喚されるスピリットとブレイヴ。スピエルと共に召喚されたフォーマルハウトの効果が再び起動する。


 


「星銃フォーマルハウト、召喚時効果!鎧神機ヴァルハランスを手札に戻す!」


 


再びフォーマルハウトから放たれた光弾がヴァルハランスを貫き、手札へとバウンスさせる。これで、相手のフィールドに存在するスピリットは一体消す事ができた。


 


「……」


 


これでお膳立ては済んだ。折角こんな便利が力があるのだ。使わないわけにはいかないだろう。この状況を打開する為に、この新たなシンフォギアの力を解き放つ為に、クリスは瞳を閉じ、そのアルティメットを呼び出す為に意識を集中させ、歌い始める。右手に集っていく、フォニックゲイン。それは、新たな戦国六武将を生み出すための糧となる。


 


「現れろ!妖しき光の獣!!その矢を、放て!!戦国六武将バケルカッツェ、Lv5で召喚!」


 


【戦国六武将バケルカッツェ:黄・アルティメット


コスト6(軽減:黄3):「系統:次代・妖戒」:【ソウルドライブ】


コアS+2:Lv5:BP17000


シンボル:極】


 


瞬間、黒い霧のようなものがクリスの周囲を覆い尽くす。それはまるで、妖怪が現れるかのような、そんな夜の闇。その闇の中、闇を貫く三本の黄色い光に包まれた矢が空へ放たれ、それが地面へと突き刺さる。突き刺さった三本の矢から放たれた光が一つに交わったかと思うと、次の瞬間に黄色い閃光が溢れ、その中から黄色い衣を纏った巨大な化け猫が出現する。その手には、黄色い巨大な弓が握られており、化け猫は頼もしい背中をクリス達に見せながら静かに降り立つ。


 


「星銃フォーマルハウトを、バレルカッツェに合体!!」


 


【戦国六武将バケルカッツェ:黄+白


コスト6+4→10


コアS+2→S+3:BP17000+3000→20000】


 


バレルカッツェの右手にフォーマルハウトが握られ、弓が消滅していく。新たな力、合体アルティメットを携え、クリスはアタックステップを宣言する。


 


「アタックステップ!合体アルティメットでアタック!バレルカッツェ、アタック時効果!手札のコスト6以下の黄色のスピリット/アルティメット1体をノーコストで召喚できる!天使マカエルを召喚!」


 


【天使マカエル


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:黄】


 


バレルカッツェが左手を宙に上げると、黄色い光が溢れる。その光の中から先程のターンにバウンスされたマカエルが召喚され、クリスのフィールドでその翼を再び広げる。


 


「まだだ!起動しろ!ソウルドライブ!!」


 


【戦国六武将バケルカッツェ


コアS+3→3】


 


クリスの目の前でソウルドライブが舞う。宙を舞ったソウルドライブ、それはクリスの手に出現したボウガンの銃口に収まり、一発の矢が放たれると共に粉々に砕け散る。それによってバレルカッツェから激しい黄色い閃光が解き放たれ、その閃光はクリスに五つの光を与えていく。


 


「私のライフを6にする!」


 


ソウルドライブによってソウルコアをゲームを除外することによって発動されるバレルカッツェの効果。それは、自分のライフが6になるようにボイドからコアを置くという強力な効果。その回復効果は、かつて弾が使用した切り札、超神星龍ジークヴルム・ノヴァをも超えている。


 


「そしてこいつがメインのアタックだ!」


『ライフで受ける』


 


フォーマルハウトの引き金が引かれ、それがノイズを襲う。それによって貫かれるノイズのライフ。それを見ながら、クリスはまだ残っているイグドラシルと言うブロッカーを意識してアタックステップを終了させる。


 


「エンドステップ!」


 


フォーマルハウトの効果によってバレルカッツェが回復する。そして、ターンが終了する。


 


「ターンエンド!」


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。神機レーヴァテイン、神機グングニルを召喚』


 


【神機レーヴァテイン


コア1:Lv1:BP2000


シンボル:白】


 


【神機グングニル


コア1:Lv1:BP2000


シンボル:白】


 


ノイズのフィールドに召喚されていく、伝説の武具の名前を冠したスピリット達。そのスピリット達の存在が、ノイズの手札に存在するヴァルハランスを呼び出す為の力となる。


 


『鉄騎皇イグドラシルをLv1にダウン』


 


【鉄騎皇イグドラシル


コア4→1:Lv3→1:BP9000→5000】


 


『鎧神機ヴァルハランスをLv3で召喚』


 


【鎧神機ヴァルハランス


コア5:Lv3:BP10000


シンボル:白】


 


三度現れるヴァルハランス。何度でも現れて攻めかかるその姿は、とても大きく見えることだろう。


 


『アタックステップ。鎧神機ヴァルハランスでアタック。Lv3アタック時効果。BP4000以下の相手のスピリットすべてを手札に戻す』


 


ヴァルハランスが前進する音と共に二体の天使がバウンスされ、消えていく。そしてがら空きとなったフィールドをヴァルハランスが駆ける。


 


「ライフで受ける!」


 


ヴァルハランスの拳がクリスのライフを奪う。しかし、ノイズのアタックはまだ終わりはしない。


 


『鉄騎皇イグドラシルでアタック』


「ライフで受ける!」


 


Lvが下がった事によって剣を失い、素手となったイグドラシルがヴァルハランスのように拳を振り上げ、クリスへと叩き付ける。


 


『神機レーヴァテインでアタック』


「ライフで受ける!」


 


剣へと変形したレーヴァテインのアタック。戦国六武将の力が無ければ既にこのアタックを受け止めきれず、自分は既に敗北していたかもしれない。そう考えれば戦国六武将のその大きな力が実感できる。


 


『神機グングニルでアタック』


「ライフで受ける!」


 


ここでフルアタック。全てのスピリットを疲労させるという事は、その手札に回復マジックがあるのか、或いは二枚目のインフィニティシールドがあるのか。それは定かではないが、おそらく次のターンをマジックを使って凌ごうという目的があるのは間違いない。


 


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!天使スピエルをLv2、天使プリマをLv3で召喚!」


 


【天使スピエル


コア2:Lv2:BP2000


シンボル:黄】


 


【天使プリマ:黄・スピリット


コスト4(軽減:黄2):「系統:天霊」


コア3:Lv3:BP6000


シンボル:黄】


 


桃色の鎧のようなドレスを纏い、チューリップのような花の形をした杖を手に持つ女性型のスピリットが現れる。その隣にはスピエルの姿が見える。


 


「アタックステップ!合体アルティメットでアタック!アタック時効果!コスト6以下のスピリット/アルティメットをノーコストで召喚する!」


 


クリスの手札でカードが金色の光を放つ。早く私を呼べ。そう言わんばかりの様子をその光を見ながら感じ取ったクリスは、その力を呼び起こす為に歌を紡ぐ。


 


「来たれ、我が砲台!その一撃で、戦況を切り開け!砲天使長ファイエル、Lv5で召喚!!」


 


【砲天使長ファイエル:黄・アルティメット


コスト6(軽減:黄3・極1):「系統:次代・天霊」


コア3:Lv5:BP18000


シンボル:極】


 


鳴り響く雷鳴、いやプラズマ。それが激しい閃光を作り出し、その中からプラズマを帯びた水色のツインテールに青い目の少女が現れる。白を基調とした全身を包むインナースーツを着用した彼女の背中と両肩には巨大な白い機械翼が装着され、その手には巨大なライフルが握られている。


 


「そしてこれがメインのアタックだ!」


 


『ライフで受ける』


 


バレルカッツェの放った銃弾がノイズへと突き刺さる。遂に最後のライフだけとなったノイズへ、クリスはさらに攻め立てる。


 


「砲天使長ファイエルでアタック!Uトリガー、ロックオン!」


 


クリスの手に出現した弓から放たれた矢がノイズのデッキトップのカードをトラッシュへと叩き落とす。そこにあったカードは、翼神機グラン・ウォーデン。コスト8のカードのため、ガードとなる。だが、ライフが3以下であることにより、新たなトリガーが発揮される。


 


「XUトリガー、ロックオン!!」


 


第二の矢が、ノイズのデッキのカードを再び叩き落とす。今度は落ちたカードはブリザードウォール。コスト5のカードであったことにより、ファイエルのトリガーがヒットすることとなる。


 


「ヒット!トラッシュのコア2個をライフに置き、相手スピリットすべてをBP-10000!」


 


【鉄騎皇イグドラシル


BP5000-10000→0】


 


【神機レーヴァテイン


BP2000-10000→0】


 


ファイエルが放った弾幕が次々とスピリット達を呑み込んでいく。この攻撃によってノイズのスピリット達のBPが尽きた。その事実が、新たな効果のトリガーとなる。


 


「天使プリマのLv2・3効果!相手スピリットのBPが0になったとき、そのスピリットを破壊する!」


『神機グングニル、破壊時効果発揮』


 


大爆発が引き起こされ、ノイズのフィールドが全滅する。疲労しているスピリットが消えてしまえば、ノイズはファイエルのアタックを防ぐこともできない。それによって、グングニルの破壊時効果が起動し、クリスのフィールドのコスト1以下のスピリットすべてが手札にバウンスされる。スピエルが手札にバウンスされるクリス。が、その瞳に敗北の文字はない。それがどうしたといわんばかりに、更なるアタックを仕掛ける。


 


「そして、メインのアタック!」


『フラッシュタイミング。マジック、インフィニティシールドを使用。不足コストは鎧神機ヴァルハランスより確保』


 


【鎧神機ヴァルハランス


コア5→3:Lv3→2:BP10000→7000】


 


「やっぱ二枚目……!」


 


これにより、ノイズのフィールドの武装スピリット達は疲労状態でブロックすることが可能となる。これを使う事でこのターンを凌ぐ算段なのだろう。


 


『鎧神機ヴァルハランスでブロック』


 


ヴァルハランスがファイエルの前に立ち塞がる。しかし、そのBPの差は圧倒的。ファイエルの放った銃弾が、ヴァルハランスをいとも簡単に貫いて破壊してみせた。そして、最後のライフを奪い取るのは、クリスのフィールドで回復状態で存在するスピリット、天使プリマ。


 


「こいつでトドメだ!天使プリマでアタック!!」


『ライフで受ける』


 


プリマの振り上げた杖から放たれた黄色い光弾がノイズを粉々に消し飛ばす。全てのライフを打ち砕き、勝利した。その事実を受け止め、少しだけ呼吸と気分を落ちつけるように深呼吸をすると、クリスはエクストリームゾーンの外へ向かうのだった。


 


最後の戦いへ臨む、弾の戦いをその目に焼き付ける為に。

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