第43話 赤く、熱く響き渡る魂


「シンフォギア……だと。どういう……ことだ……!?」


 


三人の得た新たな姿。エクスドライブ、後にそう名付けられる彼女達の新たな雄姿には、弾でさえも見惚れるほどの輝きを放っていた。


 


「っ……貴様の仕業か!?馬神弾!!」


「さぁ、どうかな?」


 


不敵に笑いながらはぐらかすように答えを返す弾。フィーネにも分かっていた。弾にそんなことをする力はないという事を。が、そんな力がなかったとしても、それを可能にする力と言う形では現れない力が彼にあることを。


 


彼は、仲間達と共に未来を変えたのだ。本来、未来を変えるというのは並大抵のものではない。現に、こうして今、フィーネや弾が立つ時代が最終的な終着点として時代の収束を迎えている事により、この未来を変えるのはどんなに巨大な要因があっても不可能に近い。が、弾はその過程を変えたのだ。


 


十二宮Xレアの存在が知られず、地球リセットによって滅びた未来。平行世界の出来事であったそれは、弾の復活がもたらした影響なのだろうか。その未来はブレイヴ使い、月光のバローネらによって地球リセットを回避した世界へと変わることとなる。そう、彼は定められていた筈の未来を、過去を変える因子を持っているのだ。そして、彼に触れた者たちもまた、馬神弾という人間を知り、彼に影響されて前に進もうとする。更なる高みへと目指そうとする。


 


そして彼女達は、その高みへ辿り着いた。弾に言わせるなら、強さの深みに一歩踏み込んだ。その強い覚悟が、シンフォギアと言う力の深みに足を踏み入れさせたのだ。


 


「だが、まだ終わってはいない!既に呼び出した大量のノイズ達、これを、殲滅しきれるものか!!」


「やってやるよ!!」


「弾さんは自分の戦いに集中してください!」


「露払いは私達がやる!」


 


弾の胸から赤いシンボルの光が僅かに漏れる。そして脳裏に、シンボルが通じ合った装者達の念話が響き、弾は静かに頷く。そして、


 


「ああ……任せろ!」


 


力強く宣言する。その声を聞いた三人は、背中を合わせながら目の前で壁を作り、自分達を閉じ込める巨大な壁を見る。


 


「いくぞ!この戦い、負ける訳にはいかない!」


「はっ、これ以上負けて恥を晒すわけにはいかねえだろ!」


「弾さんのためにも、皆のためにも!このバトル、負けられない!」


 


ノイズ達の壁が崩れ、一斉に響達へと襲い掛かる。それを前にし、三人は勢いよく声を上げ、それぞれ三つのゲートを開き、全てのノイズを三分割して引き込む。


 


「「「ゲートオープン!界放!!」」」


 


エクストリームゾーンへと移動する響。その足に台は必要ない。今の彼女には空を飛ぶための翼があるのだから。それで宙に浮かびながら、目の前のノイズを見据え、フィールドを見る。そして、そこに彼女は見た。三つの青いコアと共に、一つの紅蓮のコアが存在することを。


 


(……分かる。これは、ソウルコア。使い方も、全部!)


 


ソウルコア。そう呼んだその紅蓮のコアこそ、彼女達が過去から呼び起こした新たな力。同時に、時代を切り開く力でもある。


 


「スタートステップ!ドローステップ!メインステップ!ハービッグ・ワイバーンを召喚!」


 


【ハービッグ・ワイバーン:赤・スピリット


コスト3(軽減:赤1):「系統:星竜」:【強化】


コアS:Lv1:BP2000


シンボル:赤】


 


先行を取った響が召喚したのは、星の輝きを纏った一体のワイバーン。翼を広げ、フィールドに出現したワイバーンは鳴き声を上げながら空を飛ぶ響の隣でその翼をはばたかせ、風を払う。


 


「ターンエンド!」


 


ソウルコアを用いてバトルを行う場合、ゲームスタート時に通常のコア三個とソウルコア一個をリザーブに置いてスタートする。無論、ソウルコアの使用は任意となっているため、ソウルコアを現状では持たないノイズは通常のコア四個でバトルを行っている。また、ソウルコアに限り、ソウルコアを置いてあるカードとそれ以外のコアを置いてあるカードのコアは交換することが可能となる。また、コアシュートによってソウルコアが乗っているカードのコアがリザーブやトラッシュに移動するとき、移動させるコアの種類をその持ち主が選択でき、またソウルコアはボイドやライフに移動しないルールが存在している。


 


「……響……!」


 


彼女達の復活に、その表情に笑みが戻っていく未来達。しかし、自分達はこうしてここにいたままでいいのだろうか。自分達の歌が、彼女達を救い、彼女達は再び歌を歌い、自分達を救おうとしている。より、彼女達に応える為には、どうすればいいか。それは、


 


「!?どこへいく!?」


「外は危険です!ここに……」


「……もうじっとしてなんかいられません!」


 


その戦いを、間近で見ること。共には戦えないだろう、だが、その苦しみを、戦いに向かっているその感情を、分かち合う事は可能な筈だ。だからこそ、未来は自ら彼女達が戦う地へと向かう。今度こそ自分が命を落とす事になるかもしれない。その恐怖を乗り越えて足を外へ向けた未来を見て、弓美達も顔を見合わせると、扉の方へと駆け出していく。


 


「ヒナ!」


「私達も!」


「こういうとき、アニメだと皆が一緒になればずっと強い力になれるんだから!」


 


彼女達の表情にも、恐怖はない。いや、恐怖を乗り越えたというべきだろう。誰かを守りたい、助けたい、救いたい。強い覚悟を持つ少女たちの顔を見た弦十朗は、今一度、覚悟を確かめるように彼女達の表情を見返す。そして、


 


「よし!俺達も地上に打って出る!!いくぞ、勝っても負けても、これが最後だ!!」


 


弦十朗も高らかに叫ぶ。そして、自分達がいる、閉じられたシェルターの扉に向かって勢いよく拳を振り上げるのだった。


 


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、メインステップ。オードランを召喚』


 


【オードラン:赤・スピリット


コスト0:「系統:翼竜」


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:赤】


 


ノイズが呼び出した赤いシンボルの中から、二本の角を生やした赤い鬼のようなドラゴンが現れる。棍棒の尻尾と虎の模様の皮膚を持つその小さなドラゴンの背中には二枚の黒い翼が生えており、出現したオードランはその翼を使ってゆっくりと地面に降りるように降下する。


 


『ネクサス、七龍帝の玉座を配置』


 


【七龍帝の玉座:赤・ネクサス


コスト5(軽減:赤3)


コア0:Lv1


シンボル:赤】


 


ノイズの背後に巨大な玉座が現れる。人のものではなく、山に匹敵するかというレベルの大きさをもつその金色の玉座には龍の翼のような装飾が施され、持ち主を示すかのように巨大な龍の爪痕が刻まれている。


 


『ターンエンド』


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!マジック、三札之術を使用!デッキから2枚ドロー!」


 


デッキから2枚ドローし、その後、デッキの一番上のカードをオープンする。そのカードが赤のスピリットカードであったとき、それを手札に加えるマジックの力によって、響のデッキトップのカードが裏返っていく。そしてそこに現れたのは雷光龍ライト・ジークヴルム。赤のスピリットカードであったため、響の手札に加えられる。


 


「ターンエンド!」


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。マジック、フェイタルドローを使用。自分はデッキから2枚ドローする』


 


続く第四ターン。ノイズもまた、手札を補充する為のマジックであるフェイタルドローを使用し、デッキからカードをドローしていく。ノイズは自身の手札を三枚から五枚へと増やすと、リザーブに残ったコアを動かしていく。


 


『オードランをLv2にアップ』


 


【オードラン


コア1→3:Lv1→2:BP1000→3000】


 


『ターンエンド』


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!星見の三連塔を配置!」


 


【星見の三連塔:赤・ネクサス


コスト4(軽減:赤2)


コア0:Lv1


シンボル:赤】


 


響の背後で地響きが鳴り響き、地面から三つの塔が連続して生えてくる。天まで届くかと言わんばかりの長さとなったその三連塔の根元や周囲には、三連塔と比べれば小さな高さになる複数の塔が出現していき、街並みを作り出していく。


 


「ハービッグ・ワイバーンをLv2にアップ!」


 


【ハービッグ・ワイバーン


コアS→S+2:Lv1→2:BP2000→5000】


 


「アタックステップ!ハービッグ・ワイバーンでアタック!星見の三連塔の効果で1枚ドロー!」


 


星見の三連塔、Lv1・2効果により、自分のアタックステップ時に強化を持つコスト2以上の自分のスピリットがアタックしたとき、自分はデッキから1枚カードをドローできる。その効果によって手札を増やしながら、攻撃を仕掛ける響。そのアタックを前にノイズはオードランでのブロックは当然宣言しない。


 


『ライフで受ける』


 


ハービッグ・ワイバーンが飛翔し、天高く舞い上がる。そして急降下して勢いを付けながらノイズへと激突していったハービッグ・ワイバーンはその強烈な体当たりをノイズへ浴びせ、その一撃でライフを砕いていく。


 


「ターンエンド!」


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。オードランをLv1にダウン』


 


【オードラン


コア3→2:Lv2→1:BP3000→1000】


 


『雷帝竜騎レイブリッツをLv2で召喚』


 


【雷帝竜騎レイブリッツ:赤・スピリット


コスト5(軽減:赤3):「系統:竜騎・竜人」


コア3:Lv2:BP7000


シンボル:赤】


 


ノイズのフィールドに召喚される雷帝。稲妻の形をした剣を握り、黒い鎧に実を包んだ稲妻のように黄色い皮膚を持つ竜人は、呼び出されると共に咆哮を上げて響を威嚇する。


 


「……!」


『アタックステップ。雷帝竜騎レイブリッツでアタック』


「ライフで受ける!」


 


レイブリッツが稲妻を剣に纏わせ、赤い翼を広げて響へと飛び掛かる。眼前に迫るレイブリッツのアタックを防ぐために響を囲むように赤い半透明のバリアが出現し、そこへ向かって叩きつけられたレイブリッツの電光がバリアを砕いてそのまま響を大きく吹き飛ばす。


 


「う、うわあああ!?」


 


痛みや衝撃は然程気にはならない。いや、それに関しては以前のギアを纏っていたときよりもずっと抑えられている。しかし、空を飛ぶなんて初めての経験で、それほど時間が経っている訳ではないのだ。今までの経験から空中でバランスを取ることはすぐにできていたが、それを崩されると、それを立て直すのは少々難しい。まして空を飛んでいるという事は、支えになるものがあるわけではないのだ。手探り状態の中、翼を自分の意志で動かしながら必死に自分の身体を支えて何とか復帰する。


 


「……ふぅ」


『ターンエンド』


 


額に流れる冷や汗を拭いながら、このままコントロールしきれずに地面に落ちなかった自分を内心で褒める響。今はまだ不慣れな部分もあるが、いずれはもっと安定して飛行できるようになれば色々と面白い事ができるようになるだろう。そう考えると中々面白味が増してくる新たなギアの姿だ。まぁ、そこまで考える余裕は流石に今の響にはなかったが。


 


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!」


 


コアは揃った。これで、あのスピリットを呼べる。相手のデッキがどんなデッキなのかはまだ分からないが、相手もぼちぼちコストの高いスピリットを呼び出している。ここは、先に高コストスピリットを呼び出して牽制する。


 


「来たれ雷光!その鼓動を響かせろ!雷光龍ライト・ジークヴルム、召喚!」


 


【雷光龍ライト・ジークヴルム:赤・スピリット


コスト6(軽減:赤3):「系統:星竜」


コア1:Lv1:BP4000


シンボル:赤】


 


雷鳴が響の背後で轟く。続けて背後から這い出るように現れたのは、銀色の身体を持つドラゴン。紫色の瞳を輝かせ、ライト・ジークヴルムはその姿をフィールドへと出現させ、咆哮を張り上げる。


 


「ハービッグ・ワイバーンの効果でさらに1枚ドロー!」


 


ハービッグ・ワイバーン、Lv2効果。ターンに1回、自分のメインステップ時にコスト5以上の自分のスピリットが召喚されたとき、自分はデッキから1枚ドローする。その効果でライト・ジークヴルム召喚によって減った分の手札を補充し直し、響はアタックステップを宣言する。


 


「アタックステップ!ライト・ジークヴルムでアタック!アタック時効果!BP4000以下の相手スピリット1体を破壊する!1強化でBP5000以下のスピリットを破壊!オードランを破壊!」


 


ハービッグ・ワイバーンが赤く光り輝き、その光がライト・ジークヴルムへと与えられる。仲間からの赤い光を受け取り、そのBP破壊能力を強化させたライト・ジークヴルムの口から放たれた電光のブレスがオードランを呑み込み、一瞬で消し飛ばす。そしてがら空きとなったフィールドへ、ライト・ジークヴルムがその口を開き、咆哮を上げながら殴りかかる。


 


『ライフで受ける』


 


ライト・ジークヴルムの拳に電光が宿り、それがノイズへと叩きつけられる。二発目の一撃がノイズのライフを奪い取り、ライト・ジークヴルムが響のフィールドへと戻っていく。それを見ながら、響はターンを終える。


 


「ターンエンド」


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。雷帝竜騎レイブリッツをLv1にダウン』


 


【雷帝竜騎レイブリッツ


コア3→1:Lv2→1:BP7000→4000】


 


『七龍帝の玉座をLv2にアップ』


 


【七龍帝の玉座


コア0→3:Lv1→2】


 


『雷帝竜騎レイブリッツ、Lv1・2自分のメインステップ時効果。ターンに1回、自分の手札にある転召を持つスピリットカード1枚を転召させずに召喚できる。ただし、このスピリットの召喚時効果は発揮されない』


 


ノイズの手札で1枚のカードが光を得る。そのカードは稲妻に似たエネルギーを纏い、そのエネルギーが転召の糧として昇華され、生贄を喰らわずに降臨することが可能となる。


 


『極帝龍騎ジーク・クリムゾン、Lv2で召喚』


 


【極帝龍騎ジーク・クリムゾン:赤黄・スピリット


コスト6(軽減:赤3+赤1・黄3):「系統:竜騎・龍帝」:【転召:コスト3以上/トラッシュ】


コア2:Lv2:BP8000


シンボル:赤黄】


 


天空から雷鳴が降り注ぐ。黄色い稲妻が空から、そしてそれが降り注いだ大地からも巨大な炎が舞い上がり、赤と黄色の力が混ざり合い、一体の龍を生み出していく。赤と黄色をメインとしたカラーリングの強固な鎧を纏い、背中からは赤い四枚の翼がひろげられている。その左手には炎を象った様な盾が握られており、右手には黄色い巨大な槍が握られている。盾と槍を握るジークの戦士は、自らの纏う炎と稲妻を振り払うように咆哮を叫ぶ。


 


「だ、ダブルシンボル!?」


 


ノイズのフィールドにはネクサス、七龍帝の玉座が存在しており、そのLv1・2効果によって手札にある系統:「古竜」/「龍帝」を持つスピリットすべてに赤のシンボルを追加されていた。しかし、フィールドに存在する赤のシンボルは二つだけだったため、それはこの状況においては無意味となる。が、


 


『七龍帝の玉座、Lv2効果。自分のメインステップ時、自分のフィールドに系統:「古竜」/「龍帝」を持つスピリットが召喚されたとき、召喚されたスピリットのBP以下のBPを持つ相手スピリット1体を破壊する』


「は、破壊……!?」


『雷光龍ライト・ジークヴルムを破壊』


 


七龍帝の玉座が光を放ち、ジーク・クリムゾンが槍を構えてライト・ジークヴルムへと突進していく。そのBPは8000、よってBP4000のライト・ジークヴルムは射程圏内であり、その胸元を貫いた槍は、いとも簡単にライト・ジークヴルムの命を奪い取る。


 


『七龍帝の玉座をLv1にダウン』


 


【七龍帝の玉座


コア3→0:Lv2→1】


 


『雷帝竜騎レイブリッツをLv2にアップ』


 


【雷帝竜騎レイブリッツ


コア1→3:Lv1→2:BP4000→7000】


 


『アタックステップ。雷帝竜騎レイブリッツ、Lv2アタックステップ時効果。系統:「龍帝」/「竜騎」を持つ自分のスピリットすべてを、そのスピリットが持つ最高Lvとして扱う』


 


【極帝龍騎ジーク・クリムゾン


Lv2→3:BP8000→11000】


 


レイブリッツの全身から赤い光が放たれ、ジーク・クリムゾンがその光を浴びてさらに力を増していく。一気に最高Lvとなったジーク・クリムゾンは咆哮を上げて響のフィールドへと攻めかかる。


 


「Lv3に!」


『極帝龍騎ジーク・クリムゾンでアタック。Lv3アタック時効果。このスピリットをBP+5000!』


 


【極帝龍騎ジーク・クリムゾン


BP11000+5000→16000】


 


ジーク・クリムゾンが槍を構え、響へ突進する。ダブルシンボルの強烈なアタックが目の前に迫る中、響は迷うことなく宣言する。


 


「ライフで受ける!」


 


ジーク・クリムゾンがその手の槍を響へと叩き付ける。響を守るように出現したバリアを貫き、ダブルシンボルのアタックがその身を大きく吹き飛ばしていき、響は宙を舞う。


 


「うわあああああ!?」


 


当然ながら、先程のレイブリッツのアタックよりもその衝撃は大きい。遂に完全にバランスを崩し、大地に落ちそうになった響はそのまま両手のガントレットに装着されたパワージャッキを伸ばすと、それを大地に叩き付けた反動によって再び空中へ飛び出すと、空中で器用に身体を回転させて体制を再び整え直し、再び飛行を続行する。


 


「セーフ……!」


『ターンエンド』


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!」


 


相手がダブルシンボルを呼び出して勢いを見せるならば、こちらも一気に攻める為に、このカードを呼び出すべきだ。自分のシンフォギアが生み出した、一体目のアルティメットを。


 


「響け、金色の稲妻!!アルティメット・ジークヴルム、Lv4で召喚!」


 


【アルティメット・ジークヴルム:赤・アルティメット


コスト6(軽減:赤3):「系統:新生・星竜・竜人」:【真・激突】


コア2:Lv4:BP13000


シンボル:極】


 


空が暗雲で黒く塗りつぶされ、そこから雷鳴が鳴り響く。雷鳴の中から現れたのは、黄金の鎧を纏う、紅蓮の皮膚を持つ雷の龍。ライト・ジークヴルムよりも強き力を持ち、アルティメットへと昇華された存在、アルティメット・ジークヴルム。その力は、彼女の得た新たな力、アームドギアによってさらに増幅されることとなる。


 


「貫け、ガングニール!その拳を響かせろ!撃爪アダーラ、召喚!!」


 


【撃爪アダーラ:緑・ブレイヴ


コスト2(軽減:緑1):「系統:剣刃」:【スピリットソウル:緑】


シンボル:なし】


 


響のフィールドに空から二つの光が降り注ぐ。それは、鋭い爪が生えた緑を基調とした篭手となって現れ、それが宙に星の光を放ちながら浮かび上がる。


 


「撃爪アダーラを、アルティメット・ジークヴルムに直接合体!!」


 


【アルティメット・ジークヴルム:赤+緑


コスト6+2→8


BP13000+1000→14000】


 


アルティメット・ジークヴルムの両腕にアダーラが装着され、その身体から緑色の光が放たれる。新たな姿、合体アルティメットとなったアルティメット・ジークヴルムは自分の新たな力を得て喜んでいるかのように咆哮を上げる。


 


「アタックステップ!合体アルティメットでアタック!Uトリガー、ロックオン!」


 


ガングニールから放たれた光弾がノイズのデッキを吹き飛ばす。今のアルティメット・ジークヴルムはアダーラと合体していることによってそのコストは2増えている。よって、今までガードとなっていたコスト6と7のカードでもトリガーをヒットできるようになるのだ。トラッシュへと落ちたのは、極龍帝ジーク・ソル・フリード。コスト6のカード、よって、


 


「ヒット!BP+10000!」


 


【アルティメット・ジークヴルム


BP13000+1000+10000→24000】


 


「さらに、フラッシュタイミング!双光気弾!不足コストはハービッグ・ワイバーンより確保!」


 


【ハービッグ・ワイバーン


コアS+2→S:Lv2→1:BP5000→2000】


 


「七龍帝の玉座を破壊!」


 


二つの炎弾が玉座へと降り注いでいき、ネクサスを破壊する。玉座を破壊し、相手がスピリットを展開すると同時に引き起こす破壊効果を無力化させる。


 


「そして、アルティメット・ジークヴルムのアタック時効果!真・激突!」


『雷帝竜騎レイブリッツでブロック』


 


レイブリッツが稲妻を纏わせた剣を手にアルティメット・ジークヴルムを迎え撃つ。しかし、アルティメット・ジークヴルムのアダーラの爪がレイブリッツの剣の根元に激突し、そのまま剣をへし折って得物を破壊すると、その身体に二撃目を叩きこみ、破壊してみせる。


 


「撃爪アダーラ、合体時効果!BPを比べ相手のスピリット/アルティメットだけを破壊したとき、相手のライフのコア1個を相手のリザーブに置く!」


 


アルティメット・ジークヴルムの咆哮がノイズのライフを吹き飛ばす。スピリットを破壊し、さらにライフを奪う貫通効果。その一撃は正に貫く槍と例えるに相応しい力だろう。


 


「ターンエンド!」


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。魔帝龍騎ダーク・クリムゾンを召喚』


 


【魔帝龍騎ダーク・クリムゾン:赤・スピリット


コスト7(軽減:赤4):「系統:竜騎・龍帝」


コア1:Lv1:BP6000


シンボル:赤】


 


ノイズのフィールドで光り輝く赤いシンボル。それが砕かれる音と空に暗雲が出現し、そこから降り注いだ光の中から黒に近い皮膚をもつ、全身に鎖が絡みついたドラゴンが出現する。その手には自身の得物である槍が握られており、龍帝達を率いる戦士としてフィールドに降り立つ。


 


『魔帝龍騎ダーク・クリムゾン、召喚時効果。自分のデッキを上から7枚オープンする』


 


イーズナ、魔龍帝ジークフリード、竜騎集う円卓、極帝龍騎ジーク・クリムゾン、ブリザードウォール、サジッタフレイム、オードラン。七枚のカードがオープンされていき、その中で二枚のカード、魔龍帝ジークフリードと極帝龍騎ジーク・クリムゾンの二枚のカードが赤い光を放つ。


 


『その中の系統:「龍帝」/「竜騎」を持つスピリットカードすべてを、コストを支払わず、転召させずに召喚できる。極帝龍騎ジーク・クリムゾン、魔龍帝ジークフリードを召喚』


 


【極帝龍騎ジーク・クリムゾン


コア1:Lv1:BP6000


シンボル:赤黄】


 


【魔龍帝ジークフリード:赤・スピリット


コスト9(軽減:赤5):「系統:龍帝・古竜」:【転召:コスト6以上/ボイド】


コア1:Lv1:BP5000


シンボル:赤赤】


 


ノイズのフィールドに二体目のジーク・クリムゾンが現れる。同時に、大きな胴体をもつ巨大な黒いドラゴンが召喚される。稲妻と共に大地を砕いて現れたそのドラゴンは、巨大な両手を翳しながら大地を震わせる咆哮を放つ。


 


『ただし、それらのこのスピリットの召喚時効果は発揮されない。残ったカードは破棄する。極帝龍騎ジーク・クリムゾンをLv1にダウン』


 


【極帝龍騎ジーク・クリムゾン


コア2→1:Lv2→1:BP8000→6000】


 


『魔龍帝ジークフリードをLv2にアップ』


 


【魔龍帝ジークフリード


コア1→2:Lv1→2:BP5000→7000】


 


『アタックステップ。魔龍帝ジークフリードでアタック』


「ハービッグ・ワイバーンでブロック!フラッシュタイミング、ドラゴニックウォール!不足コストは、合体スピリットから確保!」


 


【アルティメット・ジークヴルム


コア2→1:Lv2→1:BP13000→10000+1000→11000】


 


アルティメット・ジークヴルムのLvが下げられ、魔龍帝の前に果敢に立ち塞がったハービッグ・ワイバーンの身体を燃やし、炎の壁を作り出していく。その炎の壁を前にした魔龍帝はこれ以上攻撃することが出来ず、後退を余儀なくされていく。


 


「自分の赤のスピリット1体を破壊することで、バトル終了時にアタックステップを終了させる!ハービッグ・ワイバーンを破壊!」


『ターンエンド』


 


ハービッグ・ワイバーンの犠牲でどうにかターンを凌ぐ。しかし、相手のフィールドには二体のダブルシンボルスピリットがまだ控えている。次のターン、再びトリガーを命中させてライフを一つ奪えたとしても残る最後のライフは砕けないだろう。今の手札にあるカードも、この状況を打開できるかどうかと聞かれればそれは悩まざるを得ない。


 


(……ここで、引くしかない。逆転できる一手を……!)


 


今の自分のデッキに何が残っている。今の手札と組み合わせて、どうすれば逆転できる。が、いくら考えても出てこない。と、そんなときだった。


 


「……!」


 


脳裏に、獣の咆哮が聞こえてくる。そして同時に、響の本能は悟っていた。これなら、いける。この状況を、打開できると。だが、それを引く事は出来るのか。そんな一瞬の不安が心の中をよぎった瞬間。


 


「……!」


 


声が聞こえてきた。聞き間違える筈のない、少女の声。それは、未来の声。何故、未来の声が。辺りを見渡すが、エクストリームゾーンのどこにも未来の姿はない。だが、彼女の心に奇跡的に届いてきた未来の声は、彼女がこの危険な外に出てきたという確信を、響に与えていた。


 


「……そうだよね」


 


笑みが零れる。そうだ、何を弱気になってるのだろうか。フィーネに負けて、一度、ボロボロに叩きのめされたせいなのだろうか。だが、関係ないのだ。この戦いは、勝てるかどうかではない。勝たなければならないのだ。勝って、大切なものを守るのだ。そして、翼に、クリスに、弾に繋ぐのだ。勝利への希望を。


 


「絶対、引いてみせる……!スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!」


 


デッキに手を伸ばす。目を閉じ、自分の信じるもの、守りたいと思うもの全てをその脳裏に思い描く。そして、全ての運命を託すかのように、そのカードを引いた。


 


「!!」


 


瞬間、響は全身に熱い鼓動が響いた様な感覚に陥り、その瞳を大きく開いた。獰猛な、暴れ狂う獣の本能が手にしたカードから伝わってくる。そしてそれが、響に教えてくれた。このカードのことを。そして、この状況を切り開く救世主となるということを。


 


「リフレッシュステップ!メインステップ!」


 


響は再び瞳を閉じ、ドローしたカードに意識を集中させる。そのカードの力を最大限に発揮させるために必要なのは、シンフォギアの動力たるフォニックゲイン。彼女の口から紡ぎ出されたその歌は、彼女の手に金色の炎を宿していく。


 


「蘇れ!灼熱の猛き獅子!!その闘志を、響かせろ!!戦国六武将レオンランサー!!召喚!!Lv4!!」


 


【戦国六武将レオンランサー:赤・アルティメット


コスト8(軽減:赤4):「系統;次代・皇獣」:【ソウルドライブ】


コアS+3:Lv4:BP18000


シンボル:極】


 


瞬間、響の瞳が真っ赤に染まる。そして、彼女の目の前で劫火が出現し、そこから放たれた炎が天を突き刺す柱へと変貌を遂げていく。その炎の柱の中を空から大地へと駆ける獅子。炎の中で緑色の瞳を輝かせながら大地へ着地した獅子は、着地すると同時に額から生えたその刀を炎の外へと突き出す。そして咆哮と共に炎を象った赤と青の強固な装甲のようなたてがみ、全身に纏った、鋭い角やミサイルなどが装着された装甲が明らかとなり、その炎が振り払われる。


 


「戦国六武将……!」


 


戦国六武将。それは、自分フィールドに他のスピリットやネクサス、アルティメットといった、自分のフィールドに存在する対応した要素を持ち合わせるカードを召喚条件に指定する通常のアルティメットとは一線を超えた存在。フィールドを更地にされてしまえば正規の方法では召喚出来ないものとは異なり、その召喚条件は自分のライフ3以下であること。ライフが少ない。それだけで召喚を可能とする劇的な召喚条件を持ち合わせた存在なのだ。


 


「これが、シンフォギアの、新たな姿……!」


 


興奮が抑えきれない。この力を、響は最大限に使い、その燃える魂で勝利を掴み取る。そのために、響は運命のアタックステップを宣言する。


 


「アタックステップ!戦国六武将レオンランサーでアタック!!」


 


レオンランサーが咆哮を張り上げ、ドラゴン達が構える相手フィールドへと攻めかかる。アルティメット・ジークヴルムの存在を考えれば、このアタックはノイズは確実にブロックするだろう、が。そうはさせない。それをさせる前に、響はその熱く燃える魂を、歌と言う形にして、さらにフォニックゲインを発生させていく。


 


「レオンランサーの力!!」


 


レオンランサーが大きく足を踏み込む。瞬間、全身から溢れんばかりの炎が出現し、レオンランサーの力が高まっていく。Lv3・4・5アタック時効果によってBP10000以下の相手スピリット1体を破壊する効果。しかし、その力はさらに爆発する。己の魂を燃やす事によって。


 


「ソウルドライブ!!!」


 


【戦国六武将レオンランサー


コアS+3→3】


 


響の手のガントレットの中で紅蓮のコアが厚く燃え上がる。その瞳が真っ赤に染まり、その手から放たれた炎の中で、ソウルコアが燃え尽きる。それが引き金となり、レオンランサーの全身から溢れる炎が、さらに熱く、気高く燃え上がる。


 


「ソウルコアをゲームから除外し、BP20000以下の相手スピリット/アルティメットすべてを破壊する!!」


 


レオンランサーの背中から無数のミサイルが展開される。その両腕の爪から放たれた斬撃がミサイルと共に放たれ、それは、ノイズのフィールドへと襲い掛かる。それを散開して避けるジーク達。しかし、ダーク・クリムゾンは逃げきれず、ミサイルの着弾によって爆発に巻き込まれて消えていき、三ヶ所に散開したジーク・クリムゾンと魔龍帝がレオンランサーへと襲い掛かり、槍と爪を振り上げる。そして三体が一気にレオンランサーへと振り下ろした一撃を、空へと飛び上がることで避け、そのまま着地と同時にジーク・クリムゾンを押し潰す。そして右の爪を薙ぎ払ってもう一体のジーク・クリムゾンを盾と鎧もろとも切り裂いて仕留めると、最後の一体、魔龍帝へ向けて飛び出し、その拳で魔龍帝の腹を貫いていく。


 


「これで、全滅だ!!」


 


ソウルドライブ。それは、ソウルコアをリザーブ、トラッシュ、ボイドの何れにも置かず、文字通りゲームから除外することによって発動できる、ゲーム中一度のみ発揮できる強力な効果である。ソウルドライブを使用した場合、アタック時効果に続けて新たな効果が発揮される場合とアタック時効果の代わりに新たな効果が適用されるようになる場合の二つがあり、レオンランサーの効果は後者、BP10000以下の相手スピリットを破壊する効果の代わりにBP20000以下の相手スピリット/アルティメットすべてを破壊する効果が適用されるようになるのだ。


 


「これが、メインのアタック!!」


『ライフで受ける』


 


レオンランサーの額の刃が、ノイズへと突き刺さる。シンフォギアがもたらした新たな力、ソウルドライブ。その力によって一掃された相手のフィールド。そこを駆けるレオンランサーはノイズの残る二つのライフの内の一つを破壊する。


 


「ぶち抜け!合体アルティメット!!合体アタック!」


『ライフで受ける』


 


咆哮を響かせ、トドメを刺さんと翼を広げ、飛翔するアルティメット・ジークヴルム。その拳の爪が光を纏い、ノイズの前で急停止する。そして腰を落とし、拳を振りかぶると、その身体に全力の一撃を叩きこんで破壊してみせた。


 


「……よし!」


 


最後のライフが砕け散る。その音と共にノイズの身体が大爆発を引き起こし、黒い炭素の塵となって消えていく。その姿を目の当たりにしながら、響は強く拳を握り、己の勝利を喜ぶように声を張り上げる。


 


「勝った!!」


 


響の声に呼応するように咆哮を張り上げる二体のアルティメット。勝利の喜びを分かち合った彼女達は、皆が待っているであろうエクストリームゾーンの外へと向かうのだった。


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