第37話 変調の鼓動

「っ……!」


 


空から勢いよく落ちてくるコアブリット。地面に突き刺さったコアブリットが開き、そこから慎次が投げ出されて地面に落ちる。一足遅れて地面に再び降りてきたフィーネは、立ち上がることもままならない慎次を見下ろしながら、口元に笑みを浮かべる。


 


「中々充実したバトルだった。無論、完全にチャージしきるには少し足りないが、そこはあの三人で何とかなるだろう」


「っ……一体、何の目的を……そして、カ・ディンギルというのは……!」


「神々の砲台……フィーネは、俺と十二宮Xレアを使い、この神々の砲台を使おうとしている……!」


「神々の砲台……!?それって……!」


 


弾がこの時代に来る原因となった兵器。地球リセットを回避するべく使用され、その砲撃の余波によって弾は次元を超えてこの時代へと来る事となった。そう、慎次達は思っている。引き金という真の意味を知るのは、弾とフィーネの二人だけだ。


 


「そんな力を使って、どうするつもりだ。これが俺やあんたの知るものよりも性能が低いからと言っても、その力は……」


「ああ、強大だ。その力を最大限に発揮させれば星を破壊することぐらいは簡単にこなすだろう。が……この砲台は本家とは違い、バトルフィールドを砲台にドッキングさせずともその力を起動させられるという利点がある」


 


フィーネが語る様子を見ながら、弾はあることを考えていた。それは、彼女のバトルで発生したダメージについてだ。かつて、弾が戦った時代に存在した戦士たちの集った部隊、獄龍隊。獄龍隊のバトルでは通常のものよりもダメージが大きく、さらに敗者必滅という掟が存在している。負ければ消え、その魂はアスクレピオーズの糧となる戦い。あの時代を知る筈の彼女が敢えてそれをしなかったのは、最初から慎次を消すつもりがないということ。或いは、アスクレピオーズのようなカードが存在しなかったからか。それとも、弾が薄々感づいている自分とこの世界の違いが原因なのか。


 


「は……はは……」


「……何を笑っている?」


 


と、そんな中だった。突然慎次が笑い始めたのは。疲労感が全身に広がり、その痛みに耐えながらも何とか立ち上がった慎次は、自分の目的は成し遂げたと言わんばかりに笑みを見せると、フィーネに向けて口を開く。


 


「いえ……貴女が僕と戦ってくれたおかげで、やってくれたようです。既に彼女達は避難を完了している!」


「……ふん、今更あんな雑魚が消えたところでどうにもならん」


 


それを冷たく切り捨てるフィーネ。というより、未来が戦っていた時は友達を置いて逃げられないという使命感からこの場に三人がいたのは別におかしくはないことだと考えていた。そして、慎次がバトルによって時間を稼いでいる間に動けない未来を連れて地下シェルターへと行こうとしたのだろう。今ならもう地上でノイズ達も制限時間を迎えて消えているだろうし、単純に移動するという面で言えばこれ以上に最適な瞬間はないだろう。しかし、それは地上へのエレベーターが動いていればの話だ。


 


「とっくに、この二課の電力は落ちている。エレベーターも動く事はない……非常階段を使えば不可能ではないが、シェルターに辿り着くのに一体どれくらいの時間がかかるか?」


 


既に、フィーネの仕掛けた罠によって慎次とのバトルの最中に二課の電力は落とされている。二課、そしてリディアンにあるあらゆる機器が電力を使用することが出来なくなっているだろう。電力を落としたのは機械的な妨害が行われないようにという意図の下で行われたものであり、それはこういった所にも影響をもたらしているようだ。


 


「ああ、そうだ。そのおかげで、最初はどうやって駆け付ければいいか迷ってしまったところだ」


「!」


 


瞬間、フィーネの背後から一人の男性の声が聞こえてくる。その声を聞いたフィーネはやはり来たかと思いながらも後ろを振り向く。


 


「どうやってここに?」


「……了子君。いや、フィーネ。お前が壊した穴から飛び降りさせてもらった。君の言うとおり、エレベーターは動かないからな。四人は二課の中の安全な所に移動してもらった」


 


そこにいたのは弦十朗だった。漸くリディアンに戻った弦十朗は、通信が遮断されてからの出来事を弾に教えてもらい、コアブリットと自分がバトルフィールドへ行くために地上に開いた穴から飛び降りて未来達と合流、その後慎次のバトルの間に彼女達を避難させたのだ。しかし、弦十朗でも弾をここから脱出させることは出来なかった。下手なことをすれば弾に何が起こるか分からないという可能性を危惧したのだろう。


 


「お前の目的もここで終わりだ。三人にかつての仲間と戦わせはしない!それが、今の今まで気付かずに事態を深刻化させてしまった大人の責任だ!」


 


拳を構え、フィーネに対して臨戦態勢を取る弦十朗。その姿を見ながら、フィーネは彼の意志を鼻で笑う。


 


「ならばどうする?その拳とやらで私を貫くか?私の心臓を潰すか?無駄だ。そんなことをした所で私の身体は再び再生する。私を倒したければ……」


「バトルスピリッツで倒せ、か。いいだろう、ならば全力で倒す!大人として……そして、一人のカードバトラーとして!」


「やってみるがいい!ゲートオープン!界放!!」


 


上空に出現するバトルフィールド。そこへと飛び込んでいくフィーネ。その姿を見送ると、弦十朗は慎次へと駆け寄っていく。


 


「大丈夫か?」


「はい。少しは動けるようになりました。しかし……」


「後は安心してくれ。俺が片付ける。そして……弾君、君もそこから救い出す」


 


静かに意気込みを語ると、弦十朗はコアブリットに乗り込む。それを合図としてコアブリットが閉まり始めていく。


 


「彼女達を頼む」


「気を付けて」


 


短く言葉を交わす。互いに信頼し合っている関係だからこその会話を交わし、弦十朗はフィーネの待つバトルフィールドへと行くのだった。


 


 



 


 


「やはり臆さずに来たか」


 


弦十朗が立つことなど分かっていた。そう言わんばかりの口調で目の前に立つ弦十朗に話しかけるフィーネ。弦十朗はフィーネと目を合わせながらある事を確認するかのように口を開く。


 


「このバトルで俺が勝った場合、弾君が解放される保証は」


「答える必要はないことだ。スタートステップ」


 


何も答えはしなかったが、目は語っていた。フィーネは、カードバトラーとしても本物の精神を持っているという事を。だからこそ、弦十朗も聞き返す事はしない。この戦いに勝てば、弾も救う事ができ、フィーネの野望も潰える。それだけ確認出来ればこの戦いには十分。後は自分のカードバトラーとしての全てを彼女に叩きこむだけだ。


 


「ドローステップ、メインステップ。プロフェット・ドラゴンをLv2で召喚!」


 


【プロフェット・ドラゴン:赤・スピリット


コスト2(軽減:赤1):「系統:戦竜」


コア2:Lv2:BP3000


シンボル:赤】


 


黄色い鱗を持つ、紺色の肌を多く露出させるローブを纏ったドラゴンが召喚され、二本脚で立つ。その手に握られた水晶を先端に埋め込んだ杖を掲げ、フィーネの手札を増やそうとする。


 


「プロフェット・ドラゴン、召喚時効果!手札のコスト8以上のスピリットを好きなだけオープンし、手元に置くことでそのカードだけドローする!四枚のカードを公開する!」


「!手札の全てのカードを公開するだと!?」


 


龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード、十剣聖スターブレード・ドラゴン、滅龍帝ジエンド・ドラゴニス二枚。下手すれば事故さえも必須となりかねない残りの手札を公開することでフィーネはデッキから四枚ものカードを一ターン目からドローしていく。


 


「ターンエンド」


(……俺のデッキのことは彼女も知っている筈。知っていてカードを引いてきた……そう考えるのが自然だろう。となれば、彼女のデッキにはデッキ破壊メタを行うカードがあると見ていいだろう……ここは、デッキ破壊ではなくビートダウンで攻める!)


 


デッキ破壊もビートダウンも同時にこなせるのが弦十朗のデッキの特性だ。故に、相手にデッキ破壊を対処されてもビートダウンで殴り倒す事が可能であり、相手のライフを打ちに行けなくともデッキ破壊に移行する柔軟な戦術を持ち味をしている。その持ち味を活かし、弦十朗は攻撃の為の準備を整えていく。


 


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、メインステップ。ダンデラビットを召喚!」


 


【ダンデラビット:緑・スピリット


コスト3(軽減:緑1):「系統:遊精・星魂」


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:緑】


 


弦十朗のフィールドに出現する白い兎。耳からタンポポのような植物が生えたその兎の出現と共に、弦十朗のリザーブに青い光が出現する。


 


「召喚時効果!ボイドからコア1個をリザーブに置く!さらに颶風高原を配置!」


 


【颶風高原:緑・ネクサス


コスト3(軽減:緑1)


コア0:Lv1


シンボル:緑】


 


ネクサスが配置された瞬間、緑の風が吹き荒れる。存在するもの全てを吹き飛ばす颶風が弦十朗のフィールドを巡り、彼の戦うに相応しい舞台を作り上げていく。


 


「ターンエンド」


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。ネクサス、彷徨う天空寺院を配置!不足コストはプロフェット・ドラゴンをLv1に下げて確保!」


 


【プロフェット・ドラゴン


コア2→1:Lv2→1:BP3000→2000】


 


【彷徨う天空寺院:赤・ネクサス


コスト5(軽減:赤3)


コア0:Lv1


シンボル:赤赤】


 


フィーネの背後で浮上する巨大な龍の形をした大陸。彼女のデッキで大型スピリットを召喚する為の補助として使われており、その力はこのバトルでも如何なく発揮することとなるだろう。


 


「ターンエンド」


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。さらにもう一体、ダンデラビットを召喚!」


 


【ダンデラビット


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:緑】


 


「召喚時効果によりボイドからコア1個をリザーブに置く。さらにボイドからコア1個をこのスピリット以外の系統:「星魂」を持つスピリットに置く!もう一体のダンデラビットを指定!」


 


【ダンデラビット


コア1→2】


 


「さらに、クロタネホークを召喚!」


 


【クロタネホーク:緑・スピリット


コスト4(軽減:緑3):「系統:爪鳥」:【暴風:2】


コア1:Lv1:BP3000


シンボル:緑】


 


青い花びら、クロタネソウの翼をもつ鷹が弦十朗のフィールドに出現する。暴風を持つスピリットが呼び出された事で、ネクサス、颶風高原が緑色の風を吹かせる。


 


「颶風高原の効果!自分のメインステップ時、暴風を持つ自分のスピリットが召喚されたとき、そのスピリットが指定する暴風の数のコアをボイドからそのスピリットの上に置く!クロタネホークは暴風:2を持っている。よって、ボイドからコア2個をクロタネホークに!」


 


【クロタネホーク


コア1→3:Lv1→2:BP3000→5000】


 


「随分と荒いカードの使い方ねぇ。そんなんじゃすぐに息切れしちゃうわよ?」


「問題ない。元よりこちらの戦い方は読まれているも同然、だったら遠回りなんかしていられるか!こちらが狙うのは、その五つのライフのみだ!蜂王フォン・ニード、召喚!不足コストはLv2のダンデラビットとクロタネホークより確保!」


 


【ダンデラビット


コア2→1】


 


【クロタネホーク


コア3→2】


 


【蜂王フォン・ニード:緑・スピリット


コスト7(軽減:緑4):「系統:殻人・怪虫」


コア1:Lv1:BP6000


シンボル:緑】


 


弦十朗のフィールドに吹き荒れる緑色の風。その中から現れたのは金色の殻をもっつ巨大な蜂のスピリット。その手に鋭い針の装着された槍を握る蜂の王は降臨と共にその赤い瞳を強く輝かせる。


 


「蜂王フォン・ニード、召喚時効果!ボイドからコア3個をこのスピリットに置く!」


 


【蜂王フォン・ニード


コア1→4:Lv1→2:BP6000→10000】


 


手札を一気に使い続け、大型Xレアまで召喚し、コアも増やしていく弦十朗。しかし、コアが増えていたとしてもそれを使う手札がなければ普通は話にはならない。が、


 


「そしてマジック、ハンドリバース!」


「手札の消費を躊躇わなかった理由はこれか……!」


「不足コストはフォン・ニードより確保!」


 


【蜂王フォン・ニード


コア4→1:Lv2→1:BP10000→6000】


 


「自分の手札がある場合、すべてを破棄する。その後、相手の手札と同じ枚数だけデッキからカードをドローする!お前の手札は四枚!よって俺はデッキから四枚ドロー!」


 


フィーネがプロフェット・ドラゴンによって手札増強したことが裏目に出てきたようだ。しかし、相手がどれだけ手札を増やしてこようが、最終的に勝利するのはこちらだ。勝利を渇望するその意志がある限り、カードバトラーに諦めるということは有り得ない。


 


「アタックステップ!フォン・ニードでアタック!アタック時効果!BP合計10000まで相手スピリットを好きなだけ疲労させる!プロフェット・ドラゴンを指定!」


 


フォン・ニードが槍を振り抜く。それによって生じた風がプロフェット・ドラゴンを包みこみ、疲労状態へと変化させることでブロックを封じる。


 


「ライフで受ける!」


 


フォン・ニードが振り上げた槍がフィーネへと突き出される。フィーネの身体を貫く槍が慎次とのバトルの時のように通常よりも遥かに威力を増した痛みをなって襲い掛かっていく。


 


「続けてクロタネホークでアタック!」


「こちらもライフで受ける!」


 


クロタネホークの翼から放たれた旋風がフォン・ニードに続くようにフィーネのもう一つのライフを奪い取る。一気に二つのライフを奪う事に成功した弦十朗だが、これ以上の攻撃をしようとはせずに一旦様子を見るようにアタックステップを終了する。


 


「ターンエンド」


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。彷徨う天空寺院を疲労させ、ジーク・ヤマト・フリードのコストをリザーブから2コスト支払ったものとして扱う!龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード、Lv2で召喚!」


 


【龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード:赤・スピリット


コスト8(軽減:赤3):「軽減:覇皇・古竜」


コア3:Lv2:BP10000


シンボル:赤】


 


フィールドへと降り注ぐ炎。炎の中から現れたその龍は、紅蓮の装甲を纏い、背中や肩から青い角のような装飾が出ている。顔には巨大な赤い角と金色に輝く瞳を持ち、その手には一振りの剣が握られている。その圧倒的な力を相手へと見せつける覇王、ジーク・ヤマト・フリードがフィールドに降臨する。


 


「プロフェット・ドラゴンをLv2にアップ!」


 


【プロフェット・ドラゴン


コア1→2:Lv1→2:BP2000→3000】


 


「バーストをセットし、アタックステップ!ジーク・ヤマト・フリードで蜂王フォン・ニードを指定アタック!」


 


ジーク・ヤマト・フリードがフォン・ニードへと斬りかかる。振るわれた剣を槍で受け止め、反撃に転じようとするが、その手首をジーク・ヤマト・フリードは剣を握っていない左手で掴むと、再び剣を振り上げてその心臓を貫き、絶命させる。


 


「くっ……!」


「ターンエンド」


「ジーク・ヤマト・フリード……早急に対策させてもらう!スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。軍師鳥ショカツリョーを召喚!」


 


【軍師鳥ショカツリョー:緑・スピリット


コスト6(軽減:緑3):「系統:覇皇・華兵」


コア1:Lv1:BP4000


シンボル:緑】


 


弦十朗のフィールドに吹き荒れる緑の風。その中から現れたのは、緑色の衣を纏った軍師のような姿をした鳥型スピリット。このスピリットが、この状況を打開するための鍵の一つとなる。


 


「森林のセッコーキジを召喚!」


 


【森林のセッコーキジ:緑(赤)・スピリット


コスト1(軽減:緑1・赤1):「系統:爪鳥」


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:緑(赤)】


 


緑色の羽を持つ、甲冑を纏ったキジが現れる。その腰と背中には刀が一本ずつ帯刀してあり、緑と共に赤としても扱う自身のシンボルが弦十朗のフィールドで小さく光を帯びていく。


 


「スカルプレインを召喚!」


 


【スカルプレイン:紫・ブレイヴ


コスト5(軽減:紫2・赤1):「系統:無魔」


コア2:Lv1:BP3000


シンボル:紫】


 


弦十朗のフィールドに現れたのは、骨で作られた飛行機が出現する。鳥を模した形状に飛行機の翼が確認出来る骨のブレイヴ。これこそがジーク・ヤマト・フリードを打ち破る鍵となる。


 


「紫のブレイヴだと!?」


「スカルプレインをショカツリョーに合体!Lv2へ!」


 


【軍師鳥ショカツリョー:緑+紫


コスト6+5→11:【連鎖:条件赤シンボル


コア1→3:Lv1→2:BP8000+3000→11000


シンボル:緑+紫】


 


スカルプレインの両翼がショカツリョーの両翼を覆うように装着される。それによってBPとシンボルを増やしたショカツリョーが高らかに声を上げる。


 


「ダンデラビット1体とクロタネホークから1コアずつリザーブへ移動!」


 


【ダンデラビット


コア1→0】


 


【クロタネホーク


コア2→1:Lv2→1:BP5000→3000】


 


コアが消え、クロタネホークのLvが下がると同時にダンデラビット一体が光と共に消滅する。これでメインステップで行うべき最後の行動は済んだ。後は、攻め込むだけだ。


 


「アタックステップ!合体スピリットでアタック!スカルプレイン、合体時効果!このスピリットのアタック時、相手のスピリット1体のコアを、1個だけになるように相手のリザーブに置く!ジーク・ヤマト・フリードを指定!」


 


【龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード


コア3→1:Lv2→1:BP10000→6000】


 


「さらに赤のシンボルがあることで連鎖発揮!ジーク・ヤマト・フリードを指定アタック!」


 


スカルプレインの翼から放たれる紫の波動がジーク・ヤマト・フリードへと浴びせられる。それによってコアを失い、BPを下げられたジーク・ヤマト・フリードへと突撃したショカツリョーの体当たりがその胴体へめり込んでいき、ジーク・ヤマト・フリードを壁に吹き飛ばしてその身体を爆発させる。


 


「くっ……!」


「さらにクロタネホークでアタック!軍師鳥ショカツリョー、Lv2効果!暴風を持つスピリットがアタックしたとき、そのスピリットが持つ暴風で指定された数と同じ数のコアをリザーブからトラッシュに置き、相手スピリットを暴風が指定した数だけ疲労させる!プロフェット・ドラゴンを疲労!」


 


弦十朗のリザーブのコアが消え、ショカツリョーが緑色の旋風を巻き起こす。その効果によって先程のターンと同じように疲労させられたプロフェット・ドラゴン。しかし、フィーネはそんなことは関係ないと言わんばかりに両手を広げ、声を張り上げる。


 


「ライフで受ける!ライフ減少によりバースト発動!」


(やはりバーストがここで起動するか……!)


「三札之術!BP4000以下の相手スピリット、クロタネホークを破壊!」


「クロタネホークだと……?」


 


フィーネの発動させたバーストから放たれた炎がクロタネホークを燃やす。その破壊に疑問を抱く弦十朗を横目に、フィーネは続く効果を発揮させていく。


 


「さらにコストを支払いメイン効果発揮!デッキから2枚ドローし、その後デッキを上から1枚オープン、それが赤のスピリットカードならば手札に加える!」


 


フィーネのドローカードとして現れたのは、幻羅星龍ガイ・アスラ。赤のスピリットカードのため、彼女の手札に加えられる。ガイ・アスラが彼女の手札に来たことに警戒したような目を向けるが、同時に今のバースト効果に付いても思考を展開していく。そして、


 


「ターンエンドだ」


 


ターンを終えた。弦十朗のフィールドには森林のセッコーキジとダンデラビットがアタックでき、二体のアタックで全てのライフを奪い取れた。しかし、それはバースト効果で防げたはずなのだ。なのにそれをせず、暴風持ちを優先して破壊した。つまり、彼女の手札に防御の為のカードがあることは明白だと弦十朗は確信したのだ。


 


(……とはいえ、もしこれがバトルの勝敗すらも利用したブラフだったというのならば……)


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。六分儀剣のルリ・オーサ2体をLv2とLv1で召喚!」


 


【六分儀剣のルリ・オーサ:緑(赤)・スピリット


コスト4(軽減:緑2・赤1):「系統:殻人・星魂」


コア2:Lv2:BP5000


シンボル:緑(赤)】


 


【六分儀剣のルリ・オーサ:緑


コア1:Lv1:BP3000


シンボル:緑】


 


緑色の殻に包まれた、その手に一本の刃を握る殻人達が現れる。二体のルリ・オーサを並べたフィーネが行うのはただ一つ。コアブーストに他ならない。


 


「召喚時効果。ボイドからコア1個ずつを自分の赤のスピリット2体に置く。プロシェット・ドラゴンとLv2のルリ・オーサに1個ずつ、これを2度行い、合計4コアブースト!」


 


【プロフェット・ドラゴン


コア2→3→4】


 


【六分儀剣のルリ・オーサ


コア2→3→4】


 


「ここでプロフェット・ドラゴンより1コアを外し、そのコアをLv1のルリ・オーサへと移動させる!Lv2へ!」


 


【六分儀剣のルリ・オーサ:緑(赤)


コア1→2:Lv1→2:BP3000→5000


シンボル:緑(赤)】


 


コアを移動させ、もう一体のルリ・オーサも赤のスピリットへと変えていく。だが、まだフィーネの大量に増えた手札から繰り出されるスピリット達の猛攻は終わる事はない。


 


「プロフェット・ドラゴンを召喚!不足コストは既にいるプロフェット・ドラゴンをLv1にダウンさせて確保する!」


 


【プロフェット・ドラゴン


コア3→1:Lv2→1:BP3000→2000】


 


【プロフェット・ドラゴン


コア1:Lv1:BP3000


シンボル:赤】


 


フィーネのフィールドに続けて呼び出されたのは二体目のプロフェット・ドラゴン。彼女の手札には最低でも公開するカードとして前のターンに三札之術の効果で手札に加えられたガイ・アスラがある。最低一枚のドローは確約されていると言ってもいいだろう。


 


「その効果により手札のコスト8以上のスピリット、幻羅星龍ガイ・アスラと断罪の滅龍ジャッジメント・ドラゴニスをオープンし、手元に置いてデッキから2枚ドロー!」


(ジャッジメント・ドラゴニス……?)


 


見たことのないカードも同時に公開される。このターンで呼び出そうというつもりはなさそうだが、警戒するにこしたことはないだろう。


 


「マジック、三札之術を使用!不足コストは4コア乗っているルリ・オーサから使う!」


「ここに来て、更にドローマジックだと!?」


 


今のドローで来たのだろう。続けてマジックを繰り出したフィーネはデッキから二枚ドローしてデッキトップをオープンする。そこにあったのは赤のスピリットカード、シャムシーザー。よって手札へと加えられる。


 


「彷徨う天空寺院を疲労させ、十剣聖スターブレード・ドラゴンのコストを既に2コスト払ったものとして扱う!降臨せよ、スターブレード・ドラゴン!不足コストはルリ・オーサより確保!」


 


【六分儀剣のルリ・オーサ:緑


コア2→1:Lv2→:BP5000→3000


シンボル:緑】


 


【十剣聖スターブレード・ドラゴン:赤・スピリット


コスト8(軽減:赤6):「系統:剣使・星竜」


コア1:Lv1:BP7000


シンボル:赤】


 


天空から降り注いだ炎の中から現れる白銀の鎧を纏ったドラゴン。赤く燃えるような刀身を持つ二本の刃を構えた星の竜は登場と共に炎を振り払って咆哮を上げる。


 


「ぼちぼち出てきたか……!」


「竜骨棍カノープスを召喚!不足コストは、2体のプロフェット・ドラゴンより確保!」


 


【プロフェット・ドラゴン


コア1→0】


 


【プロフェット・ドラゴン


コア1→0】


 


【竜骨棍カノープス:青・ブレイヴ


コスト2(軽減:青1):「系統:剣刃」


シンボル:なし】


 


フィーネのフィールドに空から落ちてくる巨大な三節棍。その端には竜の口のようになっており、それに加えられる形で鉱石のようなものがあることを確認出来る。


 


「スターブレード・ドラゴンに直接合体!」


 


【十剣聖スターブレード・ドラゴン:赤+青


コスト8+2→10


BP7000+2000→9000】


 


スターブレード・ドラゴンがその手の剣を全て投げ捨て、地面に突き刺さったカノープスを引き抜き、新たな得物とする。そしてそれを構えるのと同時に青い光が全身から漲っていく。


 


「っ……!」


「アタックステップ!合体スピリットでアタック!カノープス、合体時効果!アタック時、このスピリットを最高Lvとして扱う!さらにスターブレード・ドラゴンのアタック時効果によりBP+5000!」


 


【十剣聖スターブレード・ドラゴン


Lv1→4:BP7000→20000+2000+5000→27000】


 


「まだだ!さらにアタック時効果により、最もBPの高い相手スピリット1体を破壊する!合体スピリットを破壊!」


「スカルプレイン、分離!」


 


ショカツリョーへ向けて放たれる劫火。それはショカツリョーの身体を破壊し、スカルプレインを強制的にその身体から引きはがしていく。


 


【スカルプレイン


コア3:Lv1:BP3000


シンボル:紫】


 


「スターブレード・ドラゴン、Lv3・4合体時効果!このスピリットのアタック時、BP7000以下の相手スピリット1体を破壊する!」


 


さらに追い打ちと言わんばかりに残ったスカルプレインをも破壊する。スカル・プレインが吹き飛んでいったその姿を見ながら、弦十朗は素早くこのアタックに対する命令を下す。


 


「ダンデラビットでブロック!」


 


ダンデラビットが小さく鳴き、スターブレード・ドラゴンへと迫る。しかし、スターブレード・ドラゴンはダンデラビットをサッカーボールのように蹴り飛ばして壁に叩き付けて破壊してしまう。


 


「ターンエンド」


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。颶風高原を更に二枚配置!」


 


【颶風高原


コア0:Lv1


シンボル:緑】


 


【颶風高原


コア0:Lv1


シンボル:緑】


 


さらに二枚のネクサスが展開され、弦十朗のフィールドに吹く風が更に強くなる。ほとんど嵐に近いその暴風の中を弦十朗は顔色一つ変えずに立ち続ける。


 


「そしてマジック、ハンドリバースを使用!」


「二枚目……!」


「手札を全て破棄するが、俺の手札はない。そして相手の手札と同じ枚数だけカードをドローする!お前の手札は六枚!よって、六枚のカードをドロー!」


 


0枚となった手札が再びハンドリバースによって増強される。しかも今度は先程よりもドローした枚数が多い。そして、その中のカードを見て、弦十朗は口元に笑みを浮かべる。


 


「来たか……!現れろ、鳥獣烈神ガルード!!召喚!」


 


【鳥獣烈神ガルード:青・スピリット


コスト7(軽減:青2・緑2):「系統:獣頭・爪鳥」:【暴風:5】


コア1:Lv1:BP7000


シンボル:青】


 


白い翼が空に羽ばたく。青い毛並みを持ち、緑の装甲を身体中に纏った、顔には無数の羽の装飾を取り付けた金色の仮面を纏った巨大な鳥獣が出現する。青のXレアでありながらも緑の力を宿した巨大な鳥は、舞い降りると同時に颶風高原の風を吹かせる。


 


「颶風高原の効果により、暴風を持つガルードにガルードが指定した暴風の数のコアをボイドから置く!ガルードが持つ暴風は5!そして三枚の颶風高原の力によりボイドから合計15個のコアを置く!」


 


【鳥獣烈神ガルード


コア1→16:Lv1→2:BP7000→12000】


 


「!?」


 


一回の召喚で15個のコアを増やす。そんな常軌を逸した荒技には流石のフィーネも驚きの表情を見せるしかない。これ程の一手を繰り出す弦十朗。だが、まだ終わりはしない。さらに攻め込むために手札に眠る新たなスピリットを呼び出す。


 


「続けて二体目の蜂王フォン・ニードを召喚!不足コストはガルードより確保!」


 


【鳥獣烈神ガルード


コア16→13】


 


【蜂王フォン・ニード


コア1:Lv1:BP6000


シンボル:緑】


 


「フォン・ニードの召喚時効果により3コア追加!」


 


【蜂王フォン・ニード


コア1→4:Lv1→2:BP6000→10000】


 


「さらに二体目のスカルプレインを召喚!」


 


【鳥獣烈神ガルード


コア13→9】


 


【スカルプレイン


シンボル:紫】


 


弦十朗のフィールドに二体目のスカルプレインが出現する。そして、その力を使用するスピリットは、弦十朗のデッキのエースに他ならない。


 


「ガルードに直接合体!」


 


【鳥獣烈神ガルード:青+紫


【連鎖:条件赤シンボル


BP12000+3000→15000


シンボル:青+紫】


 


ガルードの白い翼がスカルプレインの両翼へと変化する。紫のブレイヴと指定アタックの効果を得たガルードは、このフィールドに新たな風を吹かせる事となる。


 


「ガルードより4コアを颶風高原に移動!Lv2へアップ!」


 


【鳥獣烈神ガルード


コア9→5】


 


【颶風高原


コア0→4:Lv1→2】


 


「アタックステップ!合体スピリットでアタック!スカルプレインの効果により、ルリ・オーサのコアを1つだけ残し、残りをリザーブに置く!」


 


【六分儀剣のルリ・オーサ:緑


コア2→1:Lv2→1:BP5000→3000


シンボル:緑】


 


「さらに連鎖発揮!合体スピリットに指定アタック!さらに、ガルードのアタックがブロックされたことにより暴風:5発揮!二体のルリ・オーサを疲労させる!」


 


ガルードから放たれた風が二体のルリ・オーサを疲労させる。そしてスピリットが疲労したことによって、ガルードはその力を強めていく。


 


「ガルード、Lv2効果!相手のスピリットが疲労したとき、そのスピリット1体につき、相手のデッキを上から3枚破棄する!2体が疲労したことで6枚破棄!」


 


十剣聖スターブレード・ドラゴン、マーク・オブ・ゾロ、生還者リューマン・ファルコ


カメレオプス、騎士王蛇ペンドラゴン、マーク・オブ・ゾロ。フィーネのデッキから六枚のカードが風と共に吹き飛んでいく。


 


「フラッシュタイミング!絶甲氷盾を使用!不足コストは3体のスピリットより確保する!」


 


【六分儀剣のルリ・オーサ


コア1→0】


 


【六分儀剣のルリ・オーサ


コア1→0】


 


【十剣聖スターブレード・ドラゴン


コア1→0】


 


「バトル終了時、アタックステップを終了させる!」


 


スターブレード・ドラゴンが消え、ガルードの振り抜いた爪が虚空を切り裂く。瞬間、フィーネを守るように氷の嵐が吹き荒れ、お互いのフィールドを遮断する。


 


「ターンエンド……!」


「くく、これほどまでにコアが使われるのは先程よりも良いペースだ。スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。シャムシーザー、カメレオプスを召喚!」


 


【カメレオプス:赤・スピリット


コスト3(軽減:赤2):「系統:爬獣・星魂」


コア1:Lv1:BP2000


シンボル:赤】


 


【シャムシーザー:赤(白)・スピリット


コスト1(軽減:赤1):「系統:爬獣」


コア1:Lv1:BP2000


シンボル:赤(白)】


 


カメレオン型スピリット、カメレオプス。赤を基調とした六本足の身体に無数の剣が生えた獣、シャムシーザー。新たに二体のスピリットを呼び出し、温存してきたスピリット達を呼び出して一気に勝負を付けようとする。


 


「コスト7以上のスピリットを呼ぶとき、カメレオプスに赤のシンボル二つを追加する!」


 


【カメレオプス


シンボル:赤+赤赤】


 


「彷徨う天空寺院を疲労させ、滅龍帝ジエンド・ドラゴニスをコスト1で召喚!」


 


【滅龍帝ジエンド・ドラゴニス:赤・スピリット


コスト9(軽減:赤6):「系統:滅龍」


コア1:Lv1:BP9000


シンボル:赤赤】


 


天空から赤紫色の雷鳴が降り注ぎ、それに導かれるように黒い巨大なドラゴンが現れる。四本脚で大地に立ち、二本の巨大な金色の角を見せ、紫色の瞳を輝かせて薄い黄色の翼を大きく広げる。


 


「っ……!」


「更に手元の二体目も召喚!」


 


【滅龍帝ジエンド・ドラゴニス


コア1:Lv1:BP9000


シンボル:赤赤】


 


「ここでダブルシンボルを連続召喚……!」


「さらにとっておきだ!降臨せよ、龍皇と要塞皇が融合せし究極の聖皇よ、来るがいい!アルティメット・ジークフリーデン、召喚!!」


 


【アルティメット・ジークフリーデン:赤白・アルティメット


コスト7(軽減:赤2・白2):「系統:新生・古竜・武装」


コア1:Lv1:BP12000


シンボル:極】


 


金色の光が空へと放たれる。その中には、アルティメット・ジークフリードに似た金色の龍が姿を見せ、その龍は金色の光を振り払い、フィールドに降り立つ。白い翼を広げた紅蓮の龍は、弦十朗を威嚇するかのように咆哮を張り上げる。


 


「!?」


 


アルティメット・ジークフリーデン。奏が最後に得たアルティメットを前にした事で、弦十朗の顔が驚きにも似た動揺に包まれる。


 


「アタックステップ!アルティメット・ジークフリーデンでアタック!Uトリガー、ロックオン!」


 


フィーネの手に出現したネフシュタンの鞭が弦十朗のデッキを抉っていく。そしてトラッシュへと落とされたカードは、牙皇ケルベロード。コスト5のカードであることにより、このトリガーはヒットとなる。


 


「ヒット!5体のBP10000の相手スピリットを破壊する!森林のセッコーキジと蜂王フォン・ニードを破壊!」


 


アルティメット・ジークフリーデンの口から放たれた炎が二体のスピリットを同時に燃やし尽くす。そしてアルティメット・ジークフリーデンが弦十朗へと飛び掛かる。


 


「フラッシュタイミング!ウィンドウォールを使用!このアタックはライフで受ける!」


 


アルティメット・ジークフリーデンのアタックが通常よりも強烈なダメージとなって弦十朗へと襲い掛かる。アーマーの一部から白い煙が上がりながらも、弦十朗はその痛みを難なく耐えながら、ウィンドウォールの効果を適用させていく。


 


「バトル終了時、アタックステップを終了させる!更に緑のシンボルの存在により連鎖発揮!滅龍帝ジエンド・ドラゴニス1体を疲労させる!」


 


弦十朗のフィールドを再び風が吹き荒れる。その風はジエンド・ドラゴニスにまで及び、風でその身体を包みこんで疲労させる。


 


「ターンエンド」


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。森林のセッコーキジ、鳥獣烈神ガルードをLv2で召喚!颶風高原の効果によりガルードに15コア追加!」


 


【森林のセッコーキジ


コア2:Lv2:BP2000


シンボル:緑(赤)】


 


【鳥獣烈神ガルード


コア5→20:Lv2:BP12000


シンボル:青】


 


弦十朗のフィールドに現れる二体目のガルードと連鎖用の赤のシンボル確保のためのセッコーキジ。フィーネの手元にはまだ強力なスピリット達が眠っている。このターンで倒しきれなかったとしても、可能な限り相手の強力なスピリット達を除去する為に弦十朗は動く。


 


「アタックステップ!合体スピリット、いけ!」


「……指定アタックをしない……成程、そういうことか……!」


 


冷や汗を流しながら、フィーネは弦十朗の狙いを悟る。ダブルシンボルのアタックを自分はブロックせざるを得ない。しかし、ブロックをすれば、暴風によって自分のスピリットは疲労し、二体のガルードの合わせ技によって一体につき六枚のデッキが破棄されるということになる。


 


(マジックを使ってスピリットを消滅させに来る筈だ。だが……それによってスピリットの数が減るのならば問題ない!)


(残りのデッキは15枚……!つまり、二体を暴風で疲労されればデッキは空になる……が!)


 


フィーネは不敵な笑みを浮かべると、弦十朗の一歩先を行く。


 


「シャムシーザーでブロック!」


「!?何だと!?」


 


まさか、もう策が無いのか。驚いたように声を上げる弦十朗。しかし、ブロックしたことによって暴風がカメレオプスとジエンド・ドラゴニスを疲労させ、三体のスピリットが疲労したことにより二体のガルードが嵐を巻き起こす。


 


「く……デッキを18枚破棄!」


 


プロフェット・ドラゴン、竜骨棍カノープス、侵されざる聖域、生還者リューマン・ファルコ、カメレオプス、彷徨う天空寺院、六分儀剣のルリ・オーサ、双光気弾、十剣聖スターブレード・ドラゴン、牙皇ケルベロード、彷徨う天空寺院、滅龍帝ジエンド・ドラゴニス、バルカン・アームズ、三札之術、絶甲氷盾。フィーネのデッキに残る全てのカードが破棄され、フィーネのデッキが消し飛んでいく。


 


「フラッシュタイミング!絶甲氷盾を使用!不足コストは暴風で疲労していないジエンド・ドラゴニス、そしてアルティメット・ジークフリーデンより確保!」


「自らアルティメットを手放すだと!?」


 


【滅龍帝ジエンド・ドラゴニス


コア1→0】


 


【アルティメット・ジークフリーデン


コア1→0】


 


自らアルティメットを手放し、二体が消滅する。それによってバトル終了時、アタックステップが終了することが確定し、シャムシーザーが合体スピリットによって吹き飛ばされる。


 


「っ……何が狙いだ……!?これでは、デッキアウトで……!?」


「くくく、動揺しているぞ?そのせいで、自分のネクサスの効果まで失念したか?」


「ネクサス……!そういうことか!?」


 


スピリット達の除去のためにLv2にアップさせた颶風高原。フィーネの狙いが、それにあることに弦十朗は漸く悟る。


 


「颶風高原はLv2の時、暴風を持つ自分のスピリットがBPを比べ、相手のスピリットだけを破壊したとき、暴風で疲労した相手のスピリットすべてを好きな順番でデッキの下に戻す。さぁ、その効果を使用しろ。順番を決めるのはお前だ」


(これでデッキアウトを避けるのが狙いか……!そして、次か、或いはその次のターンでジエンド・ドラゴニスを再びドローするのが目的!ならば……!)


 


すぐに思考を切り変え、フィーネが敢えてデッキの残りを確定させたのかについて考える。もしジエンド・ドラゴニスを再び召喚するためにこんなことをしたのなら、デッキの一番下に置いて少しでも時間稼ぎをするのがベスト。しかし、カメレオプスを先に出させれば、次のターンにガイ・アスラの超覚醒の使用を促すこととなる。となれば、リスクが高くても出すスピリットを一体に抑えさせるために。


 


「カメレオプスをデッキの一番下に、そして次のドローカードはジエンド・ドラゴニスだ。ターンエンド」


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。彷徨う天空寺院を疲労させ、既に2コスト支払ったものとする!」


 


デッキからジエンド・ドラゴニスをドローする。そして、フィーネは手元のジャッジメント・ドラゴニスを手にする。


 


「!!」


「今、終わりを告げし時が訪れる。断罪の龍よ、神の力持ちて降臨せよ!断罪の滅龍ジャッジメント・ドラゴニス!Lv2で召喚!!」


 


【断罪の滅龍ジャッジメント・ドラゴニス:赤・スピリット


コスト10(軽減:赤6):「系統:滅龍」:【激突】


コア3:Lv2:BP13000


シンボル:赤】


 


フィーネがカードを掲げた次の瞬間、彼女の前に青い魔法陣が出現する。六つの青い円が見慣れないルーン文字のようなものを刻んだ陣によって連結したそれから放たれた青白い光がフィールドへと降り注いでいく。それは無数にばらけ、流星群のように大地へと降り注いでいき、地上を破壊していく。そして破壊されていく地上から巨大な赤い魔法陣と球体をした青い魔法陣が出現し、激しい雷鳴がフィールド全域で鳴り響く。


 


「くっ……これは!?」


 


そして、魔法陣が一斉に砕け、一体の龍が姿を見せる。ジエンド・ドラゴニスが小型に見えるほどの巨大な白き龍。全身に拘束具を付けて力を封印された巨龍は、翼を広げて地上に舞い降りてくる。


 


「断罪の龍よ、裁きの神剣を手にせよ!手札のスピリット、滅龍帝ジエンド・ドラゴニスを破棄し、裁きの神剣リ・ジェネシスを召喚!」


 


【裁きの神剣リ・ジェネシス:赤・ブレイヴ


コスト6(軽減:赤3):「系統:剣刃」


コア1:Lv1:BP6000


シンボル:赤赤】


 


フィーネの手から放たれたカードが、空を金色に染める。そして、空に巨大な穴を開いてそこから裁きの神剣をフィールドへと降臨させる。この時代でデュランダルと呼ばれる巨大な剣、それを振るうに相応しい罪を斬る龍は、すぐ近くにいる。


 


「裁きの神剣リ・ジェネシスを、断罪の滅龍ジャッジメント・ドラゴニスに合体!!」


 


【断罪の滅龍ジャッジメント・ドラゴニス


コスト10+6→16


コア3→4:Lv2→3:BP13000→16000+10000→26000


シンボル:赤+赤赤】


 


ジャッジメント・ドラゴニスが裁きの神剣を口に加える。すると、剣から放たれた光がジャッジメント・ドラゴニスの全身へと広がっていき、その拘束具を破壊する。そして人のような両腕を解き放ち、黒い肉体の上半身が明らかとなる。その背中で裁きの神剣が十一の赤い光の剣となってジャッジメント・ドラゴニスの身体から生えるかのように出現する。


 


「まさか……自分の手札に確実にスピリットを引き込むためにあんなことを……!」


「その通りだ。尤も、ここまで追い込まれることになるとはな……やはり、お前は危険だった……が、それに見合うものは手に入れた。これで我が目的の為に必要な最後の手順は、勝利するのみ!それで、残りの足りない砲台を放つ為のエネルギーも揃う!」


 


フィーネを見た弦十朗は、その異変に気付く。全身の金色のアーマーは黒く染まっていき、彼女の背後からは赤黒い光の翼のようなものが出現していたのだから。そして、変わり果てた彼女は、勝利を手にするために運命のアタックを開始する。


 


「アタックステップ!ソード合体スピリットよ、いけ!」


 


ジャッジメント・ドラゴニスが弦十朗へと殴りかかる。トリプルシンボルの驚異的なアタック。しかし、ジャッジメント・ドラゴニスの効果が炸裂する。


 


「アタック時効果!激突!」


「!く……森林のセッコーキジでブロック!」


 


森林のセッコーキジが刀を抜いて、ジャッジメント・ドラゴニスへと果敢に斬りかかる。しかし、ジャッジメント・ドラゴニスは簡単に拳を振り抜いて森林のセッコーキジを吹き飛ばしてしまう。


 


「ターンエンド」


「よし……凌ぎきっ……!」


「スタートステップ!!」


「!?」


 


何故か、フィーネがスタートステップを宣言する。瞬間、彼女のプレイボードが光り輝き、次のターンを彼女が開始することとなる。


 


「馬鹿な!?何故俺のターンが!?」


「これこそが、ジャッジメント・ドラゴニスが持つ、絶対なる力!その力は、ルールと言う時空さえも歪め、ゲーム中に1度、自分のターン終了後にもう1度自分のターンを行うことを可能とする!」


「何……だと……!?」


 


言葉を失う弦十朗。そんな彼の目の前で、フィーネは、ジャッジメント・ドラゴニス、Lv3効果によって掴んだエクストラターンを開始する。


 


「コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。彷徨う天空寺院を疲労!」


 


ネクサスが疲労し、彼女の持つ手札、手元のカードで唯一効果が対応している幻羅星龍ガイ・アスラのコストが既に2コスト支払ったものとして扱われる。


 


「断罪の神の龍と共に並び立て!未来見据えし幻羅の星の龍!!幻羅星龍ガイ・アスラ、召喚!」


 


【幻羅星龍ガイ・アスラ:赤・スピリット


コスト10(軽減:赤6):「系統:神星・星竜」:【超覚醒】


コア1:Lv1:BP8000


シンボル:赤】


 


地面から吹き荒れる巨大な土煙。上空から降り注ぐ赤い炎。それらによって視界が遮られた中、突如としてその視界を遮る煙は消え失せる。そしてそこには白い人型の上半身に龍の尾が生えたドラゴンが存在していた。


 


「断罪の滅龍が終わりを告げ、裁きの神剣が新たな時代を切り開くならば、幻羅星龍は変わりゆく時代を告げる。幻羅星龍よ!断罪の剣を手に取り、新時代へ降臨する姿へと変われ!」


 


【断罪の滅龍ジャッジメント・ドラゴニス


コスト10


BP16000


シンボル:赤】


 


【幻羅星龍ガイ・アスラ


コスト10+6→16


BP8000+10000→18000


シンボル:赤】


 


ジャッジメント・ドラゴニスの背中に十一の剣が出現し、それらが裁きの神剣へと変化してガイ・アスラのブレイヴへとチェンジされる。瞬間、フィーネのフィールドでガイ・アスラのカードが何やら強い鼓動を響かせたような音が響く。


 


「……?リザーブのコアを全てジャッジメント・ドラゴニスへ追加し、アタックステップ!」


 


【断罪の滅龍ジャッジメント・ドラゴニス


コア4→13】


 


「ジャッジメント・ドラゴニスの効果により、お互いのアタックステップ開始時に手札の赤のカード1枚を破棄することでこのターンの間、自分のスピリットをBP+5000!」


 


【断罪の滅龍ジャッジメント・ドラゴニス


BP16000+5000→21000】


 


【幻羅星龍ガイ・アスラ


BP8000+10000+5000→23000】


 


「断罪の滅龍ジャッジメント・ドラゴニス、激突!」


「鳥獣烈神ガルードでブロック!フラッシュタイミング、ストームアタックを使用!ソード合体スピリットを疲労させ、こちらの合体スピリットを回復させる!」


「無駄だ!超覚醒!回復せよ、ソード合体スピリット!」


 


【断罪の滅龍ジャッジメント・ドラゴニス


コア13→12】


 


【幻羅星龍ガイ・アスラ


コア1→2】


 


ジャッジメント・ドラゴニスがガルードを殴り飛ばし、一撃で破壊する。その前で合体スピリットが風の力を受けて回復し、ジャッジメント・ドラゴニスの後ろでガイ・アスラが風によって疲労するが超覚醒によって再び起き上がる。


 


「やれ、ソード合体スピリット!」


「合体スピリットでブロック!」


「超覚醒!」


 


【断罪の滅龍ジャッジメント・ドラゴニス


コア12→11】


 


【幻羅星龍ガイ・アスラ


コア2→3:Lv1→2:BP8000→10000+10000+5000→25000】


 


超覚醒によって起き上がったガイ・アスラが更にBPを上昇させる。拳を振り上げ、果敢に殴りかかってくるガルードだったが、ガイ・アスラは裁きの神剣を振り降ろし、それを両断してしまう。


 


「再びソード合体スピリットでアタック!超覚醒により、Lv4へ!」


 


【断罪の滅龍ジャッジメント・ドラゴニス


コア11→4】


 


【幻羅星龍ガイ・アスラ


コア3→10:Lv2→4:BP10000→30000+10000+5000→45000】


 


瞬間、ガイ・アスラの身体が激しい光を発し、天に金色の二枚の翼が広げられる。そして白い人型をしたその上半身の両手には金色の剣とトライデントが握られる。竜の下半身はさらに巨大になり、紫色の無数の脚が出現する。下にも巨大な口が開かれ、上半身と繋ぐように出現した新たな上半身から生えた四本の腕には、斧、ハンマー、剣、金剛杵がそれぞれ握られていたが、その四つの得物が全て消え、新たに二本の腕が生えて六本の腕となる。そして、その六つの腕それぞれに一本ずつ剣が握られる。


 


「ライフで受ける!!」


 


ガイ・アスラのトリプルシンボルのアタックが、弦十朗へと凄まじい衝撃と痛みを与える。その衝撃は流石に耐えられない。そう瞬間的に悟った弦十朗は発勁を用いることでバトルフィールドへとその痛みを分散させることによって凌ぐ。しかし、それによってバトルフィールド全体に大地震が響き渡り、バトルフィールドの地面が粉々に砕け散るほどの影響が現れる。


 


「っ……地面が!」


 


そして、弦十朗の立つ場所も、完全に崩壊していた。一瞬でもバランスを崩せば奈落の底に落下すると言っても過言ではないレベルで砕け散っている今の弦十朗の足場では、次のガイ・アスラのアタックの衝撃を逃がせない。


 


「その身体に受けてみるがいい!!ラストアタック!!」


 


ガイ・アスラが剣を振り上げる。その攻撃を前に、覚悟を決めた弦十朗は、拳を構えて雄叫びを上げながら、その拳を剣へと叩き付ける。


 


「うぉおおおおおおおおお!!!」


 


そして、最後のライフが砕け、バトルの終了の時が告げられた。


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