第32話 三つの歌が重なる時

響・翼・クリス ライフ:6 リザーブ:1 トラッシュ:5


 


響 手札:3


 


フィールド


 


【ピナコチャザウルス:赤(緑)・スピリット


コスト1(軽減:赤1):「系統:地竜」


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:赤(緑)】


 


【ブロンソードザウルス:赤・スピリット


コスト3(軽減:赤2):「系統:地竜」:【連鎖:条件緑シンボル


コア1:Lv1:BP2000


シンボル:赤】


 


 


翼 手札:3


 


フィールド


 


【碧海の剣聖マーマリアン:青・スピリット


コスト3(軽減:青1・緑1)+3→6:「系統:剣使・異合・創手」:【連鎖:条件緑シンボル


コア1:Lv1:BP3000+4000→7000


シンボル:青】+【ダイブ・アームズ】


 


ネクサス


 


【海帝国の秘宝:青・ネクサス


コスト4(軽減:青2)


コア0:Lv1


シンボル:青青】


 


 


クリス 手札:1


 


フィールド


 


【天使スピエル:黄・スピリット


コスト0:「系統:天霊」:【強化】


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:黄】


 


【光の天使ダリエル:黄・スピリット


コスト4(軽減:黄2)+5→9:「系統:天霊」:【強化】


コア2:Lv2:BP4000+3000→7000


シンボル:黄】+【ウィングアロー】


 


 


ノイズ 手札:6 ライフ:7 リザーブ:8 トラッシュ:3


 


フィールド


 


【バスター・フェンリルキャノン:白・スピリット


コスト5(軽減:白3):「系統:機獣」


コア1:Lv1:BP3000


シンボル:白】


 


 


ネクサス


 


【ジグザール鋼鉄草原:白・ネクサス


コスト4(軽減:白2)


コア0:Lv1


シンボル:白】


 


 


3VS1で行われる変則タッグルールによるバトル。現在、六ターン目までが終了し、順番で言えば一巡したとも言えるだろう。響のフィールドには回復状態のピナコチャザウルスとブロンソードザウルス。翼のフィールドにはダイブ・アームズと合体した碧海の剣聖マーマリアンが疲労状態で存在し、彼女の張ったネクサス、海帝国の秘宝は回復状態でフィールドに残っている。そしてクリスのフィールドには回復状態の天使スピエルと疲労状態のウィングアローと合体した天使ダリエルがいる。


 


対するノイズのフィールドには疲労状態のバスター・フェンリルキャノンと回復状態のネクサス、ジグザール鋼鉄草原の二枚が存在している。そして七ターン目を迎えようとした現在、ただ淡々とバトルをしようとしているノイズの前で、三人の装者は。


 


「大体お前なあ!」


「貴様こそ!」


 


絶賛喧嘩中だった。元々敵同士で、響のように一度でも共闘したわけではないのだ。お互いに何かと因縁を付け合って口喧嘩を翼とクリスが繰り広げている状態だ。その挙げく、遂に二人も我慢の限界に来たのか、互いに相手を掴みあう始末。


 


「ちょ、ちょっと二人とも!」


 


それを何とか収めようとする響。しかし、もう二人には周りのことが目に入らないほどにヒートアップしていた。何とか二人を引き剥がそうとする響も加わり、三人全員が周りの見えない状態となっていた。


 


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ。ネクサス、ジグザール鋼鉄草原、Lv1・2効果。自分のドローステップ時、ドローするかわりに、自分のデッキを上から1枚オープンできる。そのカードが系統:「機獣」を持つカードのとき、ボイドからコア1個を自分のリザーブに置く。オープンしたカードは手札に加える』


 


ノイズがオープンしたカードは、機獣要塞ナウマンガルド。系統:「機獣」を持つカードのため、ノイズの手札へと加えられ、さらにコアが増える。


 


『リフレッシュステップ、メインステップ』


 


一方、三人の様子を見ながら、二課の面々は完全に呆れていた。ある意味で年頃の少女達らしい光景ではあるのだろうが、せめて時と場合を弁えてやってほしい。


 


「……」


 


しかし、そんな光景を見ながら弾は懐かしい光景を思い出していた。自分が今まで出会ってきた仲間達だって、いきなり分かり合ってきたわけじゃない。ぶつかりあい、時に喧嘩をして、その度にバトルを通じて分かり合ってきたのだ。そんな、過去を思い出しながらも、弾はノイズの次の一手を見る。


 


『マネキキャットを召喚』


 


【マネキキャット:緑・ブレイヴ


コスト5(軽減:緑2・白2):「系統:剣獣・機獣」


コア1:Lv1:P3000


シンボル:なし】


 


ノイズのフィールドに現れたのは緑のブレイヴ、マネキキャット。白いボディを持つ機械仕掛けの招き猫が手を動かすと、それに導かれるように大地にヒビが入っていく。


 


『マネキキャット、召喚時効果。自分の手札にある緑/白のスピリットカード1枚をコストを支払わずに召喚できる。機獣要塞ナウマンガルドをLv2で召喚』


 


【機獣要塞ナウマンガルド:白・スピリット


コスト8(軽減:白3):「系統:機獣」


コア4:Lv2:BP12000


シンボル:白白】


 


大地がひび割れ、そこから要塞のように巨大なナウマンゾウを模した機獣スピリット、ナウマンガルドが召喚される。この召喚の際にも巨大な音が鳴り響いていたのだが、肝心の対戦相手である三人にはその登場すらも目に入らないようだ。


 


『要塞都市ナウマンシティーをLv2で配置』


 


【要塞都市ナウマンシティー:白・ネクサス


コスト5(軽減:白3)


コア2:Lv2


シンボル:白】


 


ノイズの背後の鋼鉄の草原に要塞都市が建造されていく。要塞都市。そこでは新たなスピリットが生み出され、フィールドへと現れる拠点となる。


 


『要塞都市ナウマンシティー、配置時効果。自分の手札にある白のスピリットカード1枚を、コストを支払わずに召喚できる。虚械帝インフェニット・ヴォルスを召喚』


 


【虚械帝インフェニット・ヴォルス:白・スピリット


コスト11(軽減:白6):「系統:虚神・機獣」


コア1:Lv1:BP7000


シンボル:白】


 


瞬間、空が割れた。そう思わせるほどの激しい冷気と嵐が巻き起こり、それを肌で感じ取った三人はそこで漸く相手がナウマンガルドをブレイヴによって呼び出し、ネクサスによって超大型スピリットを呼び出したことに気付く。


 


「な……」


「これは……!」


「何……だと……」


 


三人とも相手の身体を掴みながら、ノイズのフィールドを見る。空から現れたナウマンガルドよりもずっと巨大な、機械の身体を持つ鳥、いやドラゴンにすら見えるスピリット。六枚の機械の翼を広げ、その頭は刃になっており、それは存在するだけでフィールド全体を冷やしているかのようにすら感じ取れる。


 


『バーストをセット。アタックステップ、虚械帝インフェニット・ヴォルスでアタック』


 


インフェニット・ヴォルスの六枚の翼が光を帯びていく。そして光は額の剣に集約し、そこから放たれた一筋の光線が、大気を振動させ他の小型スピリット達を吹き飛ばしながら響達へと迫っていく。


 


「ぶ、ブロンソードザウルスで」


「「ライフで受ける!!」」


 


反射的にブロックを選択し、ブロンソードザウルスを犠牲にしようとする響。しかし、それを遮ってライフで受ける宣言をしたのは、先程まで口喧嘩をしていた翼とクリス。自分達の答えが重なった事に驚いたように二人が互いの目を見合わせた瞬間、インフェニット・ヴォルスの光線が巨大な衝撃となって三人に襲い掛かり、身体を支える準備も出来ていなかった三人は揃って吹き飛んでいく。


 


「うわあああ!?」


「くっ!?」


「うぉお!?」


『アタックステップ終了後、機獣要塞ナウマンガルド、Lv2効果発揮。自分のアタックステップ終了後、ドローステップ/リフレッシュステップ/メインステップの内、どれか1つを行う。ドローステップネクサス、ジグザール鋼鉄草原、Lv1・2効果』


 


オープンされたのは、系統:「機獣」を持つバスター・フェンリルキャノン。よってボイドからコアが1個リザーブに増え、オープンされたカードは手札に加えられる。


 


『ボイドからコア1個を自分のリザーブに置く。ターンエンド』


 


これ以上のアタックはされなかったが、可能な限り除去した筈のスピリットを再び展開されていく。これ程のデッキを使用するノイズ。自らゲートを開き、見たことのないバトルフィールドへと引き寄せる。さらに三人がかつて見たことのないほどの高密度のノイズが一つになったことによって生み出される実力。これは、もし一人ならば勝てるかどうか疑問を抱くほどのものだろう。


 


「だ、大丈夫ですか?翼さん、クリスちゃん……」


「ああ……油断したが、問題はない……」


「別に、これぐらい怪我にすらならねえよ……」


 


相変わらず視線を合わせることすらしないが、それでも今の攻撃で文字通り頭が冷えて、今の状況を呑み込んだのだろう。先程までの二人の間の険悪なムードも少しはマシになっている。とはいえ、これでは冷戦状態でしかないのだろうが。


 


「……」


「「?」」


 


ふと、二人は自分たちの手が握られた感触に気付く。この状況でそれが出来るのは、ただ一人。その本人、響の突然の行動に驚いたように二人は視線を彼女へ向ける。


 


「一緒に戦おうよ!皆で力を合わせて!」


「は、はぁ?」


「……立花」


 


満面の笑みで二人に笑いかける響。その顔には、自分達のことを心の底から信じているという安心感が感じられた。


 


「皆、私達が勝ってくれるって信じてくれていたからここにいると思うんだ。だから、きっと分かり合える!私はそう思ってる」


「いや、お前が勝手に思ってるだけだろ……」


「でも、皆弾さんと分かり合ってる。弾さんと分かり合って、弾さんに信じられてるからここにいる」


「「……」」


 


響の言葉は正しい。だからこそ、翼とクリスは何も言わない。クリスがここにいるのも、弾が大きな要因となっているのだから。本当の自分を知り、その上で自分を信じて送り出してくれたのは弾なのだ。しかし、当の本人達はこうして喧嘩ばかりしているのは彼から見て如何程なものなのか。


 


((……何か微笑ましく笑ってそうな姿が……))


 


二人は知ることはなかったが、考えている事が一致する。そして、その考えの通り、自分の過去のタッグバトルを思い出した弾が微笑ましく笑っていたりするのだが、それを知ることもないだろう。


 


「だから、きっと私達も分かり合えるよ!だから……三人で協力して勝とう!」


「……勝つ、か」


「……そうだよな」


 


完全に失念していた。バトルをしている以上、自分達が目指さなくてはいけないのは勝利なのだ。その戦いで仲間に文句があったのなら、戦いが終わった後に言えばいい。一番やってはいけないのは敗北すること。それも、ノイズ程度に負けるとなれば、ただの笑い物などという話ではすまされない。


 


「……わーったよ。ったく、私もこんなところで負けたくはないからな。一先ずは協力してやるよ……あいつにも悪いしな」


「……ああ、私達がこんな不甲斐ない姿をしている所など、あいつが見たら笑うだろうな……」


 


となれば、もうつまらない喧嘩は止めだ。三人は今一度戦意を奮い立たせると、先程とは違う強い目でノイズを見る。


 


「いけ、立花!」


「決めてやれ!」


「任せといて!スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!」


 


デッキからカードをドローし、ターンを進めようとする響。ふと、手札にあるマジックのコストが何故か増えている事に気付く。


 


(コストが……これってもしかして)


 


手札のマジックのコストが増えている理由。それは、要塞都市ナウマンシティー、Lv2の効果によるものだ。相手ターンの間、相手のフィールドのスピリット/ネクサスの色が二色以上の間、相手の手札のマジックのコストは色一色につきコスト+1される。今、三人のフィールドには赤、青、黄、緑の四色。よって、コストは+4されることとなる。


 


「まずは、ネクサスを破壊する!砲凰竜フェニック・キャノン、召喚!」


 


【砲凰竜フェニック・キャノン:赤・スピリット


コスト5(軽減:赤2・白2):「系統:機竜・星魂」


コア1:Lv1:BP3000


シンボル:なし】


 


赤いフェニックスを模した機械竜が響のフィールドに現れる。現れたフェニック・キャノンは自身が持つ武装である二つの銃口をノイズのフィールドへ向ける。


 


「フェニック・キャノン、召喚時効果!BP4000以下の相手スピリット1体と相手のネクサス1つを破壊する!バスター・フェンリルキャノンと要塞都市ナウマンシティーを破壊!」


 


フェニック・キャノンの銃口から放たれた炎がバスター・フェンリルキャノンと鋼鉄の草原の上に建造された都市を一瞬にして融かし尽くし、破壊する。ナウマンシティーが消えたことで、響達の手札のマジックもコストが本来の数値へと戻っていく。


 


「さらにネクサス、ボルカニックキャニオンをLv2で配置!」


 


【ボルカニックキャニオン:赤・ネクサス


コスト3(軽減:赤2)


コア2:Lv2


シンボル:赤】


 


三人の背後。海帝国の秘宝の更に背後に巨大な山脈が出現する。活火山の姿が確認出来るそのキャニオンが、赤のスピリット達に力を与える。


 


「ピナコチャザウルスをもう1体召喚!そしてフェニック・キャノンをブロンソードザウルスに合体!Lv2にアップ!」


 


【ピナコチャザウルス:赤(緑)・スピリット


コスト1(軽減:赤1):「系統:地竜」


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:赤(緑)】


 


【ブロンソードザウルス


コスト3+5→8:【激突】


コア1→3:Lv1→2:BP2000→4000+3000→7000】


 


フェニック・キャノンがブロンソードザウルスの背中に装着され、二台の砲門と剣を併せ持つ戦士となる。


 


「アタックステップ!ボルカニックキャニオンの効果により、系統:「地竜」を持つ自分のスピリット1体につき、自分のスピリットすべてをBP+1000!」


「今、我々のフィールドには三体の地竜がいる!」


 


【ピナコチャザウルス


BP1000+1000×3→4000】


 


【ピナコチャザウルス


BP1000+1000×3→4000】


 


【ブロンソードザウルス


BP4000+3000+1000×3→10000】


 


【碧海の剣聖マーマリアン


BP3000+4000+1000×3→10000】


 


【天使スピエル


BP1000+1000×3→4000】


 


【光の天使ダリエル


BP4000+3000+1000×3→10000】


 


ブロンソードザウルスと二体のピナコチャザウルスからエネルギーが他のスピリットへと与えられる。BPを底上げされたスピリット達のアタックステップが開始される。


 


「ぶつかれ、響!」


「うん!合体スピリットでアタック!フェニック・キャノン、合体時効果!激突!」


 


ブロンソードザウルスが大地を駆け、激突していく。クリスの後押しを受け、彼女を信じて激突を宣言する響。しかし、その勢いはノイズの伏せたバーストによって覆されることとなる。


 


『相手のスピリットのアタック後、バースト発動。光速三段突。このターンの間、自分のスピリットすべてをBP+3000する』


「ネクサス分の増加数値を無理矢理打ち消してきた!?」


 


【マネキキャット


BP3000+3000→6000】


 


【機獣要塞ナウマンガルド


BP12000+3000→15000】


 


【虚械帝インフェニット・ヴォルス


BP7000+3000→10000】


 


三体のスピリットを光が包み込む。それによってBPが増加し、これによってボルカニックキャニオンのBP増加のアドバンテージは相殺される。


 


『その後コストを支払うことで、このカードのフラッシュ効果を発揮。相手のスピリット1体をデッキの下に戻す。ブロンソードザウルスを指定』


 


半透明の剣が空中に出現し、ブロンソードザウルスを三度突き刺す。剣に貫かれたブロンソードザウルスの身体が消えていき、代わりにフェニックキャノンがフィールドに残る。


 


【鳳凰竜フェニック・キャノン


コア3:Lv1:BP3000+1000×2→5000


シンボル:なし】


 


系統:「地竜」を持つスピリットの数が減った事でボルカニックキャニオンの恩恵も弱まる。そして途中でスピリットが消え、ブレイヴだけが残った場合、そのアタックはスピリット状態となったブレイヴのアタックとして引き続き行われる事となる。


 


『機獣要塞ナウマンガルドでブロック』


 


ナウマンガルドが雄叫びを上げ、フェニック・キャノンの前に立ちはだかる。BPの差は歴然。勝てる訳の無い勝負。しかし、クリスはナウマンガルドでのブロックを聞いて、僅かに口元に笑みを浮かべる。


 


「フラッシュタイミング!マジック、リバーシブルスパーク!不足コストはフェニック・キャノンとダリエルから確保!」


 


【鳳凰竜フェニック・キャノン


コア3→1】


 


【光の天使ダリエル


コア2→1:Lv2→1:BP4000→3000】


 


「クリスちゃん!」


「私の最後の手札だ!じっくりと味わいやがれ!リバーシブルスパークの効果により、このバトルの間、BPを比べるとき、バトルしている自分のスピリットと相手のスピリットのBPを入れ替える!」


 


【鳳凰竜フェニック・キャノン


BP3000+1000×2→15000】


 


【機獣要塞ナウマンガルド


BP12000+3000→5000】


 


フェニック・キャノンとナウマンガルドに稲妻が落ちる。その稲妻は二体のBPを交換させ、絶望的なBP差を一瞬にして覆し、フェニック・キャノンの非力な弾丸がナウマンガルドの強固な身体を貫くという奇跡を現実のものとさせる。


 


『機獣要塞ナウマンガルドの効果。相手によってこのスピリットが破壊されたとき、自分はデッキから3枚ドローし、ボイドからコア3個を自分のリザーブに置く』


「ボルカニックキャニオン、Lv2効果!自分のアタックステップ時、自分の赤のスピリットは、BPを比べ相手のスピリットだけを破壊したとき、回復する!私はこれでターンエンド!」


 


他のスピリット達でアタックしても、マネキキャットにすら勝てない。その為、響が取ったのはターンエンドという選択肢。そして再びノイズのターンが訪れる。


 


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ』


 


ドローステップ。ノイズは再びジグザール鋼鉄草原の効果によってカードをオープンする。しかし現れたのはネクサス、巨獣の森。よって、コアは増えずにそのまま手札に加えることとなる。


 


『リフレッシュステップ、メインステップ。ネクサス、巨獣の森をLv2で配置』


 


鋼鉄の草原を覆うように巨大な森が広がっていく。巨獣と機獣をサポートする堅実なネクサスが草原の上に出現し、三人はさらに警戒心を跳ね上げる。


 


『エゾノ・アウルをLv2で召喚』


 


【エゾノ・アウル:白・スピリット


コスト3(軽減:白1):「系統:機獣」


コア2:Lv2:BP4000


シンボル:白】


 


ノイズのフィールドに召喚される二体目のエゾノ・アウル。まだ終わらない。ノイズはこのターンで最後となるスピリットの召喚を行う。


 


『バスター・フェンリルキャノンをLv3で召喚』


 


【バスター・フェンリルキャノン:白・スピリット


コスト5(軽減:3):「系統:機獣」


コア4:Lv3:BP8000


シンボル:白】


 


さらに二体目のバスター・フェンリルキャノンを召喚する。そして、最後に余ったコアが行き着くのは、


 


『虚械帝インフェニット・ヴォルスをLv2にアップ』


 


【虚械帝インフェニット・ヴォルス


コア1→4:Lv1→2:BP7000→10000】


 


『バーストをセット。アタックステップ、エゾノ・アウルでアタック。バスター・フェンリルキャノン、Lv2・3自分のアタックステップ時効果。自分のバーストをセットしている間、系統:「機獣」を持つ自分のスピリットすべての、このスピリットのブロック時、効果すべては、このスピリットのアタック時に発揮される。エゾノ・アウル、ブロック時効果。自分のバーストをセットしているとき、ボイドからコア1個をこのスピリットに置く』


 


【エゾノ・アウル


コア2→3:Lv2→3:BP4000→6000】


 


ブロック時効果をアタック時効果に変えることで受け身のコアブーストを攻撃的な手段へ変更させる。そしてコアをブーストさせると共にエゾノ・アウルは三人へ向けて飛び出していく。


 


「「「ライフで受ける!」」」


 


エゾノ・アウルの巻き起こした竜巻が三人のライフを奪い取っていく。だがまだだ。まだノイズのアタックは終わらない。


 


『虚械帝インフェニット・ヴォルスでアタック』


「「「ライフで受ける!」」」


 


このBPに勝てるスピリットは現状いない。ならば、ここはこの攻撃をライフで受けるしかない。先程と同じ強烈な一撃が三人を襲うが、今度は吹き飛ばされはしない。


 


『ターンエンド』


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!ダイブ・アームズを分離!さらに、海帝国の秘宝をLv2にアップ!」


 


【ダイブ・アームズ


コア1:Lv1:BP2000


シンボル:なし→青】


 


【海帝国の秘宝


コア0→1:Lv1→2】


 


マーマリアンの篭手が消え、ダイバー服を思わせる姿をしたゴーレムのようなブレイヴがスピリットとして現れる。本来はシンボルを持たないが、スピリット状態である間、青のシンボルがこのブレイヴには追加されるという効果があり、それによって青のシンボルが生成される。


 


「門番アルパーカーを召喚!」


 


【門番アルパーカー:青(緑)・スピリット


コスト1:「系統:獣頭・創手」


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:青(緑)】


 


麦わら帽子を頭にかぶり、背中に鍬を担いだ青いオーバーオールのアルパカが出現する。この召喚によって、翼は青のスピリット三体と言う条件をクリアすることとなる。しかし、それを呼び出すのはまだもう少し後だ。


 


「立花、このブレイヴ、使わせてもらうぞ!鳳凰竜フェニック・キャノンを碧海の剣聖マーマリアンに合体!」


 


【碧海の剣聖マーマリアン:青+赤


コスト3+5→8:【激突】【連鎖:条件緑シンボル


コア1→2:Lv1→2:BP3000→5000+3000→8000】


 


先程まで別のブレイヴと一つになっていたマーマリアンの背中にフェニック・キャノンが装着される。赤のブレイヴと一つとなった事により、全ての条件が揃った。


 


「この局面、我が剣が切り開く!」


 


そう宣言すると、翼はその手に握る一枚のカードを掲げる。そして、彼女の口から歌が流れていく。


 


「「!」」


 


その歌が意味することを知る二人の口元に笑みが浮かび上がる。そして、紡がれた歌によって高められたフォニックゲインが、シンフォギアを象徴するその存在を呼び起こしていく。


 


「我が刃よ、防人の歌と共にその剣を顕現せよ!アルティメット・オライオン、召喚!!不足コストは、マーマリアンより確保!」


 


【碧海の剣聖マーマリアン


コア2→1:Lv2→1:BP5000→3000+3000→6000】


 


【アルティメット・オライオン:青・アルティメット


コスト8(軽減:青3・極1):「系統:新生・闘神」


コア1:Lv3:BP15000


シンボル:極】


 


大地が砕け、そこから巨大な剣が現れる。そしてそれを握る、金髪をなびかせる筋肉質な青い身体の巨人がその姿を出現させ、身体に纏われた金色の衣を輝かせる。


 


「やっとお出ましか……!」


「アルティメット・オライオン来たあ!」


「Uトリガー、ロックオン!!」


 


翼の手に出現した短刀がノイズのデッキを貫く。そしてトラッシュに落とされていったカードは、ザグナ・オリックス。コスト4のカードだ。


 


「クリティカルヒット!コスト合計12まで相手のスピリットを好きなだけ破壊する!インフェニット・ヴォルスを斬り裂け、アルティメット・オライオン!!」


 


アルティメット・オライオンが両手で剣を握り、それを振り下ろす。次の瞬間、一筋の斬撃がその剣から放たれ、それはインフェニット・ヴォルスを両断し、大爆発と共にその姿を消し去らせる。ここまでは通常のヒット効果。そしてここからは、コスト5以下のカードがヒットしたことによって行われるクリティカルヒット効果。


 


「さらに相手のデッキを12枚破棄!」


 


メカオコ・ジョー、リーディング・オリックス、要塞蟲ラルバ、要塞都市ナウマンシティー、エゾノ・アウル、リーディング・オリックス、ワイズ・モンキー、重巡機ピーコックルーザー、双光気弾、絶甲氷盾、砲凰竜フェニック・キャノン、光速三段突。一気に十二枚のカードが吹き飛んでいく。クリティカルヒットを決め、相手の主要カードを一気に落とせたのは大きいだろう。


 


「アタックステップ!」


『ネクサス、巨獣の森、Lv2相手のアタックステップ時効果。ステップ開始時、相手のスピリット1体を指定できる。そのスピリットはこのステップの最初に可能ならば必ずアタックする。ピナコチャザウルスを指定』


「くっ……!」


 


ピナコチャザウルスがネクサスの魔力によって無理矢理突撃させられる。そして、それを迎え撃つのは当然ノイズのスピリット達だ。


 


『エゾノ・アウル、相手のアタックステップ時効果。相手のスピリットがアタックしたとき、このスピリットは回復する。エゾノ・アウルでブロック。エゾノ・アウル、ブロック時効果。自分のバーストをセットしているとき、ボイドからコア1個をこのスピリットに置く。巨獣の森、Lv1・2相手のアタックステップ時効果。系統:「巨獣」/「機獣」を持つ自分のスピリットがブロックしたとき、ボイドからコア1個をそのスピリットに置く』


 


【エゾノ・アウル


コア3→5】


 


コアが増えたエゾノ・アウルがピナコチャザウルスを翼を振るって生み出した風によって吹き飛ばす。地竜が消えた事によってボルカニックキャニオンによるBP上昇値も下げられてしまう。


 


「ちぃ……!めんどくさいネクサスを……!」


「だが、これで強制アタックはもう終わった!いけ、合体スピリット!碧海の剣聖マーマリアン、合体時効果!アタック時、デッキから2枚ドローし、その後手札1枚を破棄する!だが、ネクサス、海帝国の秘宝、Lv2効果により、自分のアタックステップ時、自分の青のスピリット/アルティメットの効果で破棄する自分の手札の枚数を-1枚する!よって、破棄するカードは0枚!」


 


デッキから2枚ドローし、手札を増やす翼。だが、マーマリアンには更なる効果も秘められている。


 


「さらに連鎖発揮!ボイドからコア1個をこのスピリットに置く!」


 


【碧海の剣聖マーマリアン


コア1→2:Lv1→2:BP3000→5000+3000+1000→9000】


 


「さらにフェニック・キャノンの効果!激突!」


『エゾノ・アウルでブロック』


 


【エゾノ・アウル


コア5→7】


 


エゾノ・アウルがアタックに反応して回復し、激突の効果によってブロックする。ブロックを行った事で自身の効果とネクサスで合計2個のコアを増やすが、そのBPはマーマリアンの方が上であり、逆転されて敗北する。


 


「ボルカニックキャニオン、Lv2効果により、フェニック・キャノンの持つ赤の色を得ているマーマリアンは回復する!そして二度目のアタック!デッキから2枚カードをドローする!だが、この効果でドローするのは私ではない!」


「「?」」


 


タッグルールでは自分を対象とするドロー効果などを、別の味方プレイヤーに移す事は確かに可能ではある。そして、翼が自分の代わりにドローするプレイヤーとして選択したのは、


 


「……雪音、お前が引け」


「私が?」


「まさか、ハンドレス状態で次のターンを迎えるわけではないだろう」


「……まぁ、ありがたく受け取らせてもらおうか!」


 


手札が枯渇して満足するのはクリスのデッキではあまりよろしいことではない。ここは翼の言うとおり、ありがたく引かせてもらうことにしよう。


 


「そして連鎖!」


 


【碧海の剣聖マーマリアン


コア2→3】


 


「激突!」


『バスター・フェンリルキャノンでブロック。ブロック時効果。自分の白のスピリット1体につき、このスピリットをBP+2000する』


 


【バスター・フェンリルキャノン


BP8000+2000×2→12000】


 


「くっ……!」


 


先程のブロックはコアを増やす為にエゾノ・アウルを犠牲にしたということか。しかし、一体が消えてもバスター・フェンリルキャノンとのBP差は覆る事はない。しかし、今の自分の手札にこの状況を打開できるカードもない。ここまでか、そう思ったその時だった。


 


「フラッシュタイミング!マジック、エンジェルストライクを使用!不足コストはマーマリアンから確保させてもらう!」


 


【碧海の剣聖マーマリアン


コア3→1:Lv2→1:BP5000→3000+3000+1000→7000】


 


「バスター・フェンリルキャノンにBP-5000!2強化追加でBP-7000!」


 


【バスター・フェンリルキャノン


BP8000+2000×2-(5000+1000×2)→5000】


 


マーマリアンの背後から放たれた一筋の砲撃がバスター・フェンリルキャノンの力を奪い取っていく。BP差を逆転されたバスター・フェンリルキャノンはマーマリアンの振り上げた剣によって両断され、破壊。それによってボルカニックキャニオンの効果が適用され、再度回復することとなる。


 


「雪音……お前……」


「か、勘違いするなよ!借りなんて作りたくない性分なだけだ!」


「……そうか。だが……助かった。ありがとう」


「……お、おう」


 


このとき、少しだけクリスの頬が赤く見えたのは気のせいでは無いだろう。


 


「再び行け、合体スピリット!アタック時効果!立花!」


「はい!」


 


【碧海の剣聖マーマリアン


コア1→2:Lv1→2:BP3000→5000+3000+1000→9000】


 


続けて響も残り少ない手札をドローによって補充する。さらに連鎖によってコアが増え、激突によって相手は最後のスピリットによるブロックを強制される。


 


『マネキキャットでブロック』


 


マネキキャットが前に出る。しかし、その存在もいとも容易くマーマリアンによって両断され、ネクサスの効果によって回復する。


 


「やった!これで全滅!」


「いけ、マーマリアン!アタック時効果!雪音!」


「あいよ!」


 


【碧海の剣聖マーマリアン


コア2→3】


 


『ライフで受ける。自分のライフ減少によりバースト発動。絶甲氷盾。ボイドからコア1個を自分のライフに置く。その後、コストを支払ってフラッシュ効果発揮。このバトル終了後、アタックステップを終了する』


 


クリスがさらにカードを2枚ドローする。このアタックによって強固な壁に守られていたノイズのライフが漸く削られるが、それは即座に復活し、ついでにアタックステップまで終了させられる。しかし、確実に流れは来ている。それを感じ取りながら、三人は緊張した面持ちで次なる一手を待ち構える。


 


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ』


 


ネクサスの効果によってデッキトップの二枚目の虚械帝インフェニット・ヴォルスがオープンされる。それにより、ボイドからコア1個がリザーブに追加され、オープンされたカードは手札に加わる。


 


『リフレッシュステップ、メインステップ。虚械帝インフェニット・ヴォルスをLv3で召喚』


「く……二体目が」


 


【虚械帝インフェニット・ヴォルス


コア8:Lv3:BP17000


シンボル:白】


 


ノイズのフィールドに再び出現する超大型スピリット、インフェニット・ヴォルス。その存在はこのデッキの切り札を象徴するといっても過言ではないだろう。


 


『要塞蟲ラルバをLv2で召喚』


 


【要塞蟲ラルバ:緑(白)・スピリット


コスト4(軽減:緑2・白1):「系統:怪虫」


コア2:Lv2:BP5000


シンボル:緑(白)】


 


ノイズのフィールドに出現する、巨大な要塞となった幼虫型スピリット、ラルバ。緑のスピリットではあるが、その効果は白のスピリット達にとってありがたいものでもある。


 


『召喚時効果。ボイドからコア1個ずつを、自分の白のスピリット2体に置く』


 


【要塞蟲ラルバ


コア2→3】


 


【虚械帝インフェニット・ヴォルス


コア8→9】


 


ラルバはLv2のとき、自身の色とシンボルを白としても扱える。それによって、ラルバ自身も白のスピリットとしてカウントできるのだ。


 


『極星剣機ポーラ・キャリバーを召喚』


 


【極星剣機ポーラ・キャリバー:白・ブレイヴ


コスト5(軽減:白2・赤2):「系統:動器」


シンボル:白】


 


続けてノイズが呼び出したのは、二つのミサイルと一本の剣が戦闘機のようなフォルムのパーツによって一つにまとめられた小型戦闘機。そのブレイヴの力は、フィールドに聳えるその存在と一つになることでより強く発揮される。


 


『虚械帝インフェニット・ヴォルスに直接合体』


 


【虚械帝インフェニット・ヴォルス


コスト11+5→16


BP17000+6000→23000


シンボル:白+白】


 


ポーラ・キャリバーから剣と二つのミサイルが分離し、そのミサイルはインフェニット・ヴォルスの背中に装着される。そして剣は額の剣と入れ替わるようにして装着され、六枚の翼が白銀の翼へとカラーチェンジされる。


 


「BP23000だと!?」


『アタックステップ。合体スピリットでアタック』


「「「ライフで受ける!!」」」


 


額のポーラ・キャリバーが射出され、三人のライフをダブルシンボルによって一気に削り取る。BP23000が相手では今のアルティメット・オライオンでも迎撃できない。


 


『ターンエンド』


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!天使マカエルをLv2で召喚!」


 


【天使マカエル:黄・スピリット


コスト2(軽減:黄2):「系統:天霊」:【強化】


コア2:Lv2:BP3000


シンボル:黄】


 


赤い髪の天使が召喚される。この局面ではその力は役には立たないが、このスピリットにはそれ以上にそのシンボルが大きな意味を成す。


 


「さらにマジック、ライフレボリューションを使用!ボイドからコア1個を自分のライフに置く!さらに、赤のシンボルがあることで連鎖発揮!BP合計5000まで相手のスピリットを好きなだけ破壊する!要塞蟲ラルバを破壊!」


 


炎がラルバを包み込む。ラルバを仕留め、ライフを回復させたクリスは自身の手札にある1枚のカードを見つめる。そして、


 


「私にもカッコつけさせてもらおうか!!来い!」


 


瞬間、クリスの右手に握られた一枚のカードが光を帯びる。同じくして彼女の口から流れる歌。それが呼び起こすのは、彼女の、イチイバルのアルティメット。


 


「クリスちゃん!」


「来たれ、我が砲台!その一撃で、戦況を切り開け!砲天使長ファイエル、Lv5で召喚!」


 


【砲天使長ファイエル:黄・アルティメット


コスト6(軽減:黄3・極1):「系統:次代・天霊」


コア3:Lv5:BP18000


シンボル:極】


 


鳴り響く雷鳴、いやプラズマ。それが激しい閃光を作り出し、その中からプラズマを帯びた水色のツインテールに青い目の少女が現れる。白を基調とした全身を包むインナースーツを着用した彼女の背中と両肩には巨大な白い機械翼が装着され、その手には巨大なライフルが握られている。


 


「これが……!?」


「クリスちゃんのアルティメット!」


「スピエルをLv2、アルティメット・オライオンをLv4にアップ!」


 


【天使スピエル


コア1→2:Lv1→2:BP1000→2000】


 


【アルティメット・オライオン


コア1→4:Lv3→4:BP15000→25000】


 


「アタックステップ!」


『巨獣の森、Lv2効果。光の天使ダリエルを指定』


 


巨獣の森の効果によってダリエルが強制的にアタックを行う事となる。しかし、アタックを行った事によってそのアタック時効果も発揮される。


 


「ウィングアロー、アタック時効果!相手スピリット1体をBP-3000!3強化追加でBP-6000!」


 


【虚械帝インフェニット・ヴォルス


BP17000+6000-(3000+1000×3)→17000】


 


『合体スピリットでブロック。巨獣の森、Lv1・2効果』


 


【虚械帝インフェニット・ヴォルス


コア9→10】


 


「疲労状態でブロックできる効果を持っていたのか!?」


 


虚械帝インフェニット・ヴォルスは相手のアタックステップ時、このスピリットと氷壁を持つ自分のスピリットすべては疲労状態でブロックできるようにする疲労ブロック効果がある。その力でダリエルの前に立ち塞がったインフェニット・ヴォルスの額から射出された剣がダリエルを貫き、ブレイヴを分離させるのと同時に、更なる異変が起こる。


 


【ウィングアロー:黄・ブレイヴ


コスト5(軽減:黄3・赤1):「系統:翼船」


コア1:Lv1:BP3000


シンボル:なし】


 


『虚械帝インフェニット・ヴォルス、Lv2・3相手のアタックステップ時効果。このスピリットと氷壁を持つ自分のスピリットが、BPを比べ相手のスピリットだけを破壊したとき、相手のライフのコア1個を相手のトラッシュに置く。極星剣機ポーラ・キャリバー、合体時効果。このスピリットのブロック時、BPを比べ相手のスピリットだけを破壊したとき、相手のスピリット/ブレイヴ/ネクサス、どれか1つを手札に戻す。天使マカエルを指定』


 


さらにライフとスピリットを一つずつ消し飛ばされながらも、クリスは思わず冷や汗を流す。もしライフレボリューションを使用していなければこのバトルで自分達は敗北していた事になるのだから。しかし、この攻撃を凌げたのは大きい。


 


「いけ、ファイエル!Uトリガー、ロックオン!」


 


クリスの手に出現したボウガンから放たれた矢がノイズのデッキをトラッシュへと落とす。置かれたカードは機獣要塞ナウマンガルド。コスト8のカードのためガードとなる。


 


「くっ、防がれたか……!」


「これぐらい誤差の範囲内だ!どのみち、ファイエルのトリガーはこの状況じゃ腐ってるんだからな!だが……こっちは違う!XUトリガー、ロックオン!」


 


更なるカードがクリスの放たれた矢によってトラッシュへと落とされる。そしてトラッシュへと落ちたカードは、絶甲氷盾。コスト4のカードだ。


 


「ヒット!自分のトラッシュのコア2個を自分のライフに置く!それによって、相手スピリットすべてにBP-10000!」


 


【虚械帝インフェニット・ヴォルス


BP17000+6000-(3000+1000×3)-10000→7000】


 


ファイエルのばら撒いた弾丸がインフェニット・ヴォルスの力を更に削り取る。BPで逆転されれば、ノイズもこのアタックをブロックする道理はない。


 


『ライフで受ける』


 


さらにファイエルの弾丸がノイズのライフに傷を付ける。それを皮切りとして翼も声を上げる。


 


「畳みかけろ、アルティメット・オライオン!」


『ライフで受ける』


 


アルティメット・オライオンが剣を振り上げ、インフェニット・ヴォルスを素通りしてノイズを切り裂く。一気に二つのライフを削り、少しでも状況を改善するのが狙いだ。


 


「ターンエンド!」


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ』


 


ドローステップでネクサスによってオープンされたカードはジグザール鋼鉄草原。既に二枚目が張ってある時点でこのカードはただの死に札でしかない。


 


『リフレッシュステップ、メインステップ、アタックステップ。合体スピリットでアタック』


「ダイブ・アームズでブロック!」


 


インフェニット・ヴォルスの額のポーラ・キャリバーが放たれ、ダイブ・アームズを貫く。ダブルシンボルのアタックを防ぎ、次のターンのネクサスとのコンボで殺されないようにする。


 


『ターンエンド』


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!ライト・ブレイドラを二体召喚!」


 


【ライト・ブレイドラ:赤・スピリット


コスト0:「系統:星竜」:【強化】


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:赤】


 


【ライト・ブレイドラ


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:赤】


 


二人の全力に自分も応える。そう強く決意して二体の銀色のブレイドラを召喚する響。続けて、その手札に引いた一枚のマジックを取り出す。


 


「マジック、双光気弾を使用!巨獣の森を破壊!」


 


空から降り注いだ炎がネクサスを焼き払う。これにより、強制アタックを強いるその効果はフィールドから消え去ることとなる。


 


「よし!これで……!」


「次は私がやる番だ!」


 


そして最後の手札のカードを呼び出す。翼とクリスが自身のアルティメットを呼び出し、全力で戦いに臨んでくれたのだ。自分が全力で応えなくてどうするというのか。響の口から奏でられる歌。それは、彼女の切り札を目覚めさせる鍵となる。


 


「響け、金色の稲妻!!アルティメット・ジークヴルム、Lv4で召喚!不足コストはボルカニックキャニオンと海帝国の秘宝から確保!」


 


【アルティメット・ジークヴルム:赤・アルティメット


コスト6(軽減:赤3):「系統:新生・星竜・竜人」:【真・激突】


コア2:Lv4:BP13000


シンボル:極】


 


空が暗雲で黒く塗りつぶされ、そこから雷鳴が鳴り響く。雷鳴の中から現れたのは、黄金の鎧を纏う、雷の龍。アルティメット・オライオン、砲天使長ファイエルと共に並んだ赤のアルティメットは、高らかに雄叫びを上げる。そして今、ここに装者達の力が集結することとなる。


 


「響!スピエルとウィングアローのコアを使え!」


「え?いいの?」


「あれをこの状況で何とかできるのはお前のアルティメットだけだ!」


「立花、この勝負、お前に託す!」


「翼さん……クリスちゃん……うん、分かった!スピエルをLv1にダウンし、その分のコアとウィングアローのコアを全てアルティメット・ジークヴルムに!Lv5にアップ!」


 


【天使スピエル


コア2→1:Lv2→1:BP2000→1000】


 


【ウィングアロー


コア1→0】


 


【アルティメット・ジークヴルム


コア2→4:Lv4→5:BP13000→17000】


 


「アタックステップ!アルティメット・ジークヴルムでアタック!Uトリガー、ロックオン!!」


 


響の手から放たれた光弾が、ノイズのデッキを破壊する。勝敗を左右するこの一撃、ノイズのデッキからトラッシュへと落ちたのはマネキキャット。コスト5のカードだ。


 


「ヒット!!アルティメット・ジークヴルムにBP+10000!!」


 


【アルティメット・ジークヴルム


BP17000+10000→27000】


 


アルティメット・ジークヴルムがBPを大きく上昇させ、全身に稲妻を纏って飛翔する。


 


「そして真・激突!!」


『合体スピリットでブロック』


 


インフェニット・ヴォルスの額のポーラ・キャリバーが射出され、同時に背中のミサイルも放たれる。それを避け、逆に剣を掴むとアルティメット・ジークヴルムは二つのミサイルを両断して斬り捨てると、逆に剣を投げ返してインフェニット・ヴォルスに突き刺し、そこに雷鳴を纏った拳を叩きつけてその身体を貫き、破壊する。


 


「よし!これでがら空きだ!決めろ、天使スピエル!」


「門番アルパーカー、続け!」


「ライト・ブレイドラ!ピナコチャザウルス!お願い!」


 


大型スピリットが消えたノイズのフィールドにブロックを可能とするスピリットはもういない。対して、響達のフィールドには合計五体のアタックが可能なスピリットがいる。それらが、やっと掴んだチャンスを逃す前にノイズへと突撃していき、その残った五つのライフを一気に削り取り、ノイズを撃破するのだった。


 


「や……やったやった!やったよー!クリスちゃん!」


「うわっぷ!?いきなり抱き付くな!?少しは余韻に……!」


 


勝った。その事実が嬉しいのは分かる。しかし、だからと言っていきなり抱き付いてきてほしくはない。そんな様子を苦笑しながら見る翼。先程とは違い、微笑ましい一幕が出てきた、その時だった。このフィールドの、ある特性が起動することとなる。


 


「……これは?」


「地面が……揺れている?そういえば、どうやってここから出るんだ?」


「……あ、確かに。バトルが終われば普通は外に出れるようになるんだけど……?」


 


バトルが終わったのに外に出れない。ここに出口らしいものは見えないのにどうやって出ればいいのか。そう考え始めた矢先だった。先程から起こっていた小さな地面の揺れが徐々に大きくなり、次の瞬間に三人の立っていた地面が、空へと射出された。


 


「うぇえええ!?」


「ちょっ!?」


「なあああああ!?」


 


そのまま天を突き抜け、バトルフィールドの外へと飛ばされる三人。と、彼女達の乗っていた足場が突然変形して一つの乗り物みたいなものになると、そのまま三人を中に押し込めて地面に墜落。その衝撃で再び開閉する。


 


「ってて……何なんだよこれ……」


「……乗り物みたいだが……?」


「びっくりしたぁ……」


 


辺りが安全なことを確認してギアを解除し、その乗り物の中から外に出る三人。これが何かは気になるが、それは後で二課に回収させて調べてもらえばいいだろう。


 


「けど、これで……」


 


フィーネの目的を達成させずに済んだ。そう三人が思った、その時だった。響の懐の携帯が突然鳴り響く。その通信の相手は未来。だが、


 


「響!?リディアンがノイズに襲わ」


「……え?」


 


切羽詰まった声と共に通信が強制的に途切れた。同時に、彼女達は、この時にようやく悟る事となる。自分達が罠にハマっていたという事実を。そして、最後の戦いを告げる鐘はとっくに鳴っているということを。


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