第30話 少女にとっての歌

「確かにこちらからの依頼ではあるけれど、仕事が社撰すぎると言っているの。足がつけばこちらの身動きが取れなくなるわ。まさか、それも貴方達の思惑と言うのなら……」


 


様々な研究器具やモニター、パソコンなどが置いてあるフィーネの居城。窓から差し込んで来る夕陽の光をその背中に浴びながら、そこの一室で受話器を手にアメリカの者であろうか、そこの存在と通信を繋いでいた。


 


「神ならざる者が全てに干渉するなど不可能。お前自身が一番わかっているのではないか」


「……」


 


少しだけ不満げに声を漏らすと、受話器を置いて通信を切る。そして、ゆっくりとその顔を上げる。


 


「ネフシュタンを纏う術も見つけた。仮称、ガ・ディンギルも完成し、そのエネルギー問題も解決した……ふふ」


 


不敵な笑みを、フィーネは浮かべるのだった。


 


 



 


 


弾とクリスがバトルをしてから約一週間後。クリスは行方を眩ませており、度々起こるノイズとの戦いでも弾と響がバトルをしている間に現れるということもない。弾としても、彼女にはまだ一人でいる時間が必要なのだろうと考えており、あのバトルのことを含めたクリスのことを二課には報告していない。


 


そして現在、フィーネにとっては大きな損害を受けた状態に陥っていると言ってもいいだろう。彼女の下でネフシュタンを使用していたクリスが完全に離反、同時に相手方が所有していた聖遺物の一つ、イチイバルも消えた事になるのだから。加えて言うならば、絶唱の影響で暫くは動けなかった翼も完全に回復している。既に表向きとして行っている元のアーティスト活動を続けている所からも彼女に不調が無いのは明らかだ。


 


「……」


 


一先ずは表裏、どちらの面でも平穏を取り戻したとも言える街並み。裏に関しては嵐の前の静けさとも見てとれるが、今はそこを気にしても仕方のないことだろう。


 


「入るぞ」


「……」


 


もうじき夜になる時間帯。雲一つない、まだ夕陽の見える空の下、一つの紙袋を手にした弾が訪れたのは、今では住人も存在せず、荒れ果てたアパートの一室。街の外れにあり、数週間後に取り壊されることが決められているこの場所にいる唯一の住人にとっても、ここは仮暮らしの宿と言えるだろう。


 


「……また来たのかよ」


「一人にしておくわけにはいかないからな。それに、こんな所だとお金をかけないと食べ物も手に入らないだろう?」


「それはそうだけど」


 


そこにいたのは、クリス。あの戦いの後、変に街をうろついていると響達とエンカウントすることを考えたのだろう。そこで彼女が選んだ場所は、普通の人なら誰も近付かないこのアパートの一室だったのだ。


 


「……言っておくけどな、幾ら来たって、私は確かにあんたらとは戦わないけどだからって一緒に戦おうとはしないからな!」


「無理強いはしないさ。クリスが嫌だって言うならそのままでいいさ」


 


部屋の中に上がり、部屋の隅で座っていたクリスの前にしゃがむと、その手に持っていた紙袋を彼女の前に置く。その瞬間に紙袋の中から漂ってくる香ばしい匂いに、クリスは思わず唾を呑む込む。


 


「そ、そんなこと言ったって、そんなもので私を餌付けできると……」


「視線はずっと追ってるみたいだけどな」


 


紙袋の中から一つ一つ取り出されていく、どこかの店で購入してきたであろう焼き立てのパンなどを食い入るように見ていくクリス。身体もどこか前のめりになっており、彼女の体がこれを求めているのは疑うまでもない。


 


「う、うるせえ!こ、これは……お、お前が意味深そうにものを出すから!」


 


頬を紅潮させながら慌てて言い訳をしていくクリス。しかし、彼女の言い訳すらも簡単に吹き飛ばす変化が、彼女の体にすぐに現れることとなる。


 


「……!」


 


腹の鳴る音が響いた。音が鳴った瞬間、クリスは思わず声を失い、思考が止まる。弾は最初から静かだったため、物音の消えた部屋にその音は意外と大きく響き渡り、徐々に思考を取り戻したクリスは、思わず顔を真っ赤にする。


 


「……食べるか?」


 


そんなクリスを微笑ましく見ながらパンを差し出す弾。その手のパンを、クリスはひったくるように奪い取ると、弾に背中を向けるようにして食べ始める。


 


「大体、何で、こんなことまで、するんだよ」


「困ってると思ったからな」


 


食べながら質問をしてくるクリスに答えていく弾。弾が言っていた困っている人を助けたい、仲間の為に尽くしたいという気質などは、確かに弾の強さであり、馬神弾という人間を象徴しているものであるだろう。しかし、だからこそクリスには一つ疑問が浮かんでくる。


 


「……あんた、過去から来たんだろ。しかも、フィーネが言っているのが本当のことなら、あんたには五人……いや、四人の仲間がいた筈だろ。戻りたいとか思わないのか?」


「……?」


 


ふと、弾はクリスの言葉に違和感を覚える。だが、すぐにその疑問を解決させる。彼女の言っている四人とはコアの光主のことだろう。白の光主は弾達のことを快く思わない存在の手にかかった為、彼女の言っているのは他の四人のことだと納得させる。確かに、弾が本来住んでいた時代の仲間で言えばそれで間違いはない。


 


「……そうだな。確かに、戻りたいとは思わないまでも俺が生きているって伝えたいとは思う。俺の持っている十二宮Xレアも、この戦いが終わったらこの強力な力をあるべき場所に、あるべき時代に戻したいと考えている。けど、今は俺のことよりも、フィーネのことだ」


「……」


「今はフィーネの目的は分からない。でも、あいつは確実に混乱を起こそうとしている。その先に何を見ているのかは分からないが、きっと止めなきゃいけない筈だ」


「……バラバラになった世界。あいつはそう言っていた」


「世界……?」


 


クリスの口から漏れた言葉。それは、クリスがフィーネの下で戦った理由でもある。戦争の火種を全て消せば、人は呪いから解放され、バラバラとなった世界が元に戻る。フィーネがクリスを引き込んだ際にはこのような文句を使っていたが、だからといって実際にそれがフィーネの目的になるとは限らないだろう。どちらにせよ、彼女は現段階ではまだ力を集めている。そう考えるのが自然な筈だ。


 


しかし、そう考えた場合、フィーネがこのままクリスにイチイバルを渡したままにしておくのだろうか。イチイバルもまた、シンフォギアの一つ。本当に力を欲しているのならば、下手をすれば脅威になりかねないクリスからそれを奪い取りに来る筈だ。その気配が無いというのは、今はまだ奪い取る必要が無いのか。或いは、そもそもあってもなくても変わらなくなったからなのか。


 


「……」


「?何だよ、もう行っちまうのか?」


 


しかし、近い時にそれが明らかになる。弾はそんな予感を感じ取っていた。普通の人から見たら当てに出来ないであろうその直感を頭の奥底に追いやると、その場から立ち上がる。


 


「ああ。いつまでもここにいるのも悪いしな」


「……そうか」


「それじゃあ……」


 


ふと、弾の懐にしまってある携帯から着信音が鳴る。同じくして窓の外に目を向ければ、空は夜の空へと姿を変えているのが分かる。それぐらいの時間をここで過ごしたのだということを考えながら携帯を取り出し、耳に当てる。通信相手は弦十朗。そして通信の内容は、


 


「……ノイズが現れた?」


「!」


 


ノイズの出現。ノイズの出現した場所などを聞いた弾は、アパートを出てその場所へと向かおうとする。しかし、今の弾にはバイクなどはない。その為、走ってその場所へと向かうしかない。


 


「今、響君が向かっているが……一人では大分厳しいだろう」


 


弦十朗との通話の中で出てきたのは、響一人のみ。既にバトルも再び出来るようになっている翼が出てこなかったのは、恐らく今日行われるあるイベントが関係しているのだろう。


 


「そうか……分かった。俺も急ぐ……そうだな」


「?どうした?」


「後で翼に謝っておかないとな。今日、彼女の復帰ライブだったんだろ?」


「……ふっ、そうだな」


 


今までアーティスト活動を休止していた翼だが、いきなり以前のような活動をこなしてきたわけではない。徐々に元に戻していくようにして慣らしてきていたのだ。しかし、いつまでも甘えている訳にはいかない。そこで、名実共に完全復活したことを証明するためのイベントが、今日行われるライブだ。弾や響も来てほしいと言われていたのだが、それは叶わないようだ。それに、翼にとっては、それもまた己の戦いである筈だ。ならば、彼女には自分の戦いに臨んでもらうべきだ。尤も、その雄姿が見れないのは少し残念だが。


 


「……」


 


残念がるように笑うと、弾は走る速度を上げる。とはいえ、ノイズが出現した場所に行くのにはどれぐらいの時間がかかるだろう。バイクとまではいかないが、乗り慣れたコアブリットでもあればもっと早く到着できるのだが。


 


「?」


 


そんなことを考えていた弾の頭上を赤い影が通過する。その正体を確かめるべく顔を上げた弾は、そこにいた人物を見て足を止める。


 


「……何だ、協力してくれるのか?」


 


そこにいたのは、イチイバルを纏ったクリス。彼女は静かに弾を見ていたが、ふと、どこか恥ずかしそうに頬を掻きながらしどろもどろといった様子で口を開く。


 


「……別に。飯の借りを返させてもらうだけだ。いいな?勘違いするなよ?私は別に味方になったわけじゃないからな!?」


「……そうか。それならそれでも俺は構わない。頼むよ、今の俺じゃ少し時間がかかりそうだからな」


「……ふん」


 


 


もう一度弾を見ると、クリスは背を向けて飛び出していく。その先にいるであろうノイズ達を倒す為に。


 


 



 


 


「っ、お、多い……!」


 


寂れた建物が立ち並ぶ街並み。エクストリームゾーンから飛び出してきた響に間髪いれずに襲い掛かるノイズ達。倒しても倒しても底が見えないその大群は、いつになれば終わりが見えてくるのかという不安に思わず駆られるほどの勢いを見せていた。


 


「でも、弾さんが来るまでは何としても持たないと!翼さんの為にも!」


 


襲い掛かるノイズを避けるように飛び出す。そのまま地面を何回か蹴って跳ぶことで勢いを止めながらノイズの方へ振り返ると、再びゲートを開こうとする。しかし、その瞬間に背後に数体のノイズが接近してきていたということに気付く。


 


「!しまっ……」


 


時既に遅し。背後から迫るノイズ達の強烈な体当たりが、響へと襲い掛かろうとした瞬間、頭上から降り注いだ弾幕がノイズの進路を遮り、爆煙を一帯に張り巡らせた。


 


「!?」


 


弾がこんな真似をする訳が無い。ならばこれは誰なのか。煙の中、響が神経を張り巡らせていると、その背後に空から一つの影が降りてくる。


 


「……え?く、クリスちゃん!?どうしてクリスちゃんがここに!?逃げてきたの!?自力で脱出を!?」


「何からだよ……もうフィーネとは手を切ってるっつーの」


 


背後に立つ少女、クリスに驚いたことが原因なのか滅茶苦茶な言葉が思わず漏れる。それに対し、一応敵としてここにはいないということだけを短く言うと、クリスは背後に立つ響から視線を外して前を見ると、真剣味を帯びた声で小さく呟く。


 


「……言っておくけど、今回だけだからな。お前らのためじゃねえ。あいつのためだ」


「え?それって……」


 


聞き返そうとするが、その先は続けられなかった。煙が徐々に晴れ、煙によって隠れ、中に飛び込みかねていたノイズ達の姿が目の前に浮かび上がってきたからだ。


 


「戦うのか、それとも逃げるのか。どっちだよ」


「……そんなの、戦うしかないよ!」


 


聞きたい事は山ほどある。だが、今はそんなことをしている暇はないだろう。今、自分達は敵を同じくした戦士としてこの戦場に立っているのだから。ならばやるべきことはただ一つ。目の前の敵を殲滅することだけだ。


 


「「ゲートオープン!界放!!」」


 


それぞれが別々のゲートを開き、大量のノイズ達を二分させる。エクストリームゾーンに立ったクリスは、何で自分がこんなことをする羽目になっているのだろうかと自嘲するように笑う。


 


「……全く、私の掌ってどうなってんだか」


 


一度、大きなため息を吐くと、バトルを開始する為に目の前のノイズ達の集合体へとその視線を向ける。そして、自分のターンを宣言する。


 


「スタートステップ!ドローステップ!メインステップ!光楯の守護者イーディスを召喚!」


 


【光楯の守護者イーディス:黄・スピリット


コスト3(軽減:黄2):「系統:天霊」:【強化】


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:黄】


 


クリスのフィールドに出現した黄色いシンボルが砕かれる音と共にその中から黄色い楯を持つ金髪に緑色の目を持つ可憐な天使、イーディスが召喚される。


 


「ターンエンド」


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、メインステップ。ネクサス、氷宙遺跡スカイ・リオを配置』


 


【氷宙遺跡スカイ・リオ:白・ネクサス


コスト4(軽減:白2)


コア0:Lv1


シンボル:白】


 


ノイズの背後に無数の氷の柱となり、また中には宙に浮き上がるものも含めた氷の遺跡が出現する。かつては巨大な都市であったものが時代を経て遺跡になったと表現するのが正しいであろうその姿は、どこか哀愁を漂わせている。


 


『アルマジトカゲを召喚』


 


【アルマジトカゲ:白(赤)・スピリット


コスト1(軽減:赤1・白1):「系統:甲竜」


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:白(赤)】


 


続けてノイズが呼び出したのは、背中に小さな二枚の翼が付いた、アルマジロのような固い装甲に覆われたトカゲ型スピリット。イグア・バギーなどのように、自身を赤としても扱う事の出来る効果に加え、このスピリットの召喚によってネクサスがその効果を起動させる。


 


『氷宙遺跡スカイ・リオ、Lv1・2自分のメインステップ時効果。系統:「甲竜」を持つ自分のスピリットが召喚されたとき、ボイドからコア1個を自分のリザーブに置く。アルマジトカゲをLv2にアップ』


 


【アルマジトカゲ


コア1→2:BP1000→3000】


 


冷気が吹き荒れ、ノイズのリザーブにコアが増える。そのコアをそのままアルマジトカゲへと置き、Lvを上げることで次のターンに備える。


 


『ターンエンド』


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!天使アクセラを召喚!」


 


【天使アクセラ:黄・スピリット


コスト4(軽減:黄2):「系統:天霊」


コア1:Lv1:BP3000


シンボル:黄】


 


鎌に似た巨大な得物をその手に握る、背中から白い翼を生やした少女が現れる。胸や腰を護る装甲の下に露出の多い緑の布地の服。耳元には白い羽根の装飾が施された耳あてを装着し、茶髪を靡かせながらその澄んだ青い目を開く。


 


「アタックステップ!いけ、アクセラ!アタック時効果、このターンの間、相手スピリット1体をBP-2000!1強化追加でアルマジトカゲをBP-3000!」


 


【アルマジトカゲ


BP3000-(2000+1000)→0】


 


イーディスから放たれた黄色い光がアクセラの体に更なる輝きを与える。輝きを増したアクセラが振り上げた鎌から繰り出された斬撃がアルマジトカゲのBPを全て失わせる。


 


『ライフで受ける』


 


そして繰り出されるアクセラのアタック。それをライフで受ける宣言をしたノイズのライフが一つ奪われる。手始めに一発。相手のライフを順調に奪うと、クリスは静かに顔を上げる。


 


「ターンエンド」


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。ガーネットドラゴンをLv3で召喚』


 


【ガーネットドラゴン:白(赤)・スピリット


コスト4(軽減:白2・赤2):「系統:甲竜」:【重装甲:赤/紫/白/青】


コア4:Lv3:BP6000


シンボル:白】


 


アルマジトカゲに続くように召喚されたのは、ガーネットのような紅い煌きを放つたてがみを宿した鋼の龍。その背中から生えた翼にはガーネット色に似た光を放っており、その頭からは三本の金色の角が生えているのが確認出来る。


 


『氷宙遺跡スカイ・リオの効果。リザーブにコア1個を置く。アルマジトカゲをLv3にアップ』


 


【アルマジトカゲ


コア2→3:Lv3:BP3000→4000】


 


先程のターンと同じようにコアをブーストさせ、そのコアを使ってアルマジトカゲを強化する。しかし、ノイズは先程のターンのように動かない、という訳ではないようだ。


 


『アタックステップ。アルマジトカゲでアタック』


「ライフで受ける!」


 


アルマジトカゲが飛び出し、その体当たりがクリスのライフを奪い取る。まさか攻めてくるとは。一瞬驚いたが、すぐに表情を冷静に戻す。


 


『ガーネットドラゴンでアタック』


「!そっちも動くのか……!?ライフで受ける!」


 


さらに追撃とばかりに動くガーネットドラゴン。翼を広げて飛翔し、その胸の鋼の装甲から穴が開くと、そこから放たれた小型ミサイルがクリスを襲う。


 


「っ……」


『ターンエンド』


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!天聖弓セイクリッド・ボウを召喚!」


 


【天聖弓セイクリッド・ボウ:黄・ブレイヴ


コスト4(軽減:黄3):「系統:剣刃」


コア2:Lv1:BP3000


シンボル:黄】


 


空から光が差し込み、白い翼が生えた黄金の弓が空から地面に突き刺さる。新たな攻め手として繰り出したブレイヴを手に、クリスは果敢にノイズへと攻めていく。


 


「天聖弓セイクリッド・ボウを天使アクセラに合体!Lv3に!」


 


【天使アクセラ


コスト4+4→8


コア1→3:Lv1→3:BP3000→5000+3000→8000


シンボル:黄+黄】


 


アクセラの手に握られていた鎌が光と共に消え、地面に突き刺さっていた弓が新たな得物としてアクセラの手に握られる。


 


「さらにイーディスをLv2にアップ!」


 


【光楯の守護者イーディス


コア1→2:Lv1→2:BP1000→2000】


 


「アタックステップ!いけ、合体スピリット!アクセラ、アタック時効果!ガーネットドラゴンにBP-2000!再び1強化追加でBP-3000!」


 


【ガーネットドラゴン


BP6000-(2000+1000)→3000】


 


アクセラが翼を振り抜き、光の風がガーネットドラゴンを包み込む。BPを減少させておき、そこにさらにBP減少効果を重ねていく。


 


「さらにセイクリッド・ボウ、合体時効果!アタック時、相手スピリット1体をBP-2000!こっちも1強化追加でBP-3000!」


 


【ガーネットドラゴン


BP6000-(2000+1000)-(2000+1000)→0】


 


セイクリッド・ボウから一本の矢が放たれ、それがガーネットドラゴンの身体に突き刺さる。身体の中に侵入したその矢は、光へと変化してガーネットドラゴンの全身へと駆け巡り、そのBPをさらに減少させていく。


 


「そして、この効果で相手スピリットがターンで初めてBP0になったとき、デッキからカードを1枚ドローする!」


『アルマジトカゲでブロック』


 


BPを実質失ったに等しいガーネットドラゴンが力を失ったかのように崩れ落ちる。その横でアルマジトカゲが疲労の影響を無視するかのように起き上がり、その翼を広げてアクセラへと飛び出す。


 


「!疲労ブロック効果!?」


 


ガーネットドラゴンには、このスピリットが存在する限り、相手のアタックステップの間、系統:「甲竜」/「竜人」を持つ自分のスピリットは疲労状態でブロックできる効果がある。その効果を受け、ダブルシンボルのアタックを防ぐべくアルマジトカゲが出撃したのだ。しかし、


 


「けど、その効果でどうにかなるか!アクセラの更なるアタック時効果!このスピリットよりもBPの低い相手スピリットとBPを比べるとき、BPを比べずにブロックされなかったものとして扱う!」


 


ひらりと簡単にアルマジトカゲの体当たりを避けるアクセラ。慌てて空中で方向転換をしようとするアルマジトカゲだったが、速度が乗っていたその身体では厳しかったのか、そのまま空中でバランスを崩して地面に墜落してしまう。そして、ブロックされない扱いとなったアクセラは、再び弓を構え、その標的をノイズへと定める。


 


『ライフで受ける』


 


放たれた矢が二つのライフを砕く。イーディスでアタックした所で仕留めきれるわけでもないし、アルマジトカゲに返り討ちにされるだけだろうと考えたクリスはここで攻撃を中断させることとする。


 


「ターンエンド」


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。マジック、フェイタルドローを使用』


「赤のマジック!?」


『自分はデッキから2枚ドローする。自分のライフが2以下のとき、さらに、自分はデッキから1枚ドローする』


 


アルマジトカゲとガーネットドラゴンが持つ赤のシンボルを使い、最大軽減で三枚のカードをドローし、手札を増強させていく。続けてノイズは、新たなスピリットをその手札から呼び出す。


 


『ディフェンザードを召喚』


 


【ディフェンザード:白・スピリット


コスト2(軽減:白2):「系統:甲竜」


コア2:Lv2:BP4000


シンボル:白】


 


機械の体を持つ四足歩行をする白銀のドラゴン、ディフェンザード。その白銀の小さな翼を広げ、ディフェンザードもまた、二体の甲竜と共に並び立ち、雄叫びを上げる。


 


『氷宙遺跡スカイ・リオの効果によりボイドからコア1個を自分のリザーブに置く。アタックステップ。ディフェンザードでアタック』


 


ディフェンザードの翼が広げられ、ブースターの機動音を響かせて突進していく。ディフェンザードのBPではイーディスは耐えられない。ならばここは、


 


「フラッシュタイミング!シンフォニックバーストを使用!不足コストは合体スピリットより確保!」


 


【天使アクセラ


コア3→2:Lv3→2:BP5000→4000+3000→7000】


 


「バトル終了時、自分のライフが2以下ならアタックステップを終了する!」


『フラッシュタイミング、双光気弾を使用。相手の合体スピリットのブレイヴ1つを破壊する。天聖弓セイクリッド・ボウを破壊』


 


さらに赤のマジック、双光気弾がアクセラの持つ弓を燃やし尽くす。ドローとBP-を両立させ、さらにダブルシンボルを生み出す厄介なブレイヴを消したかったのだろう。


 


「ライフで受ける!」


 


ディフェンザードの体当たりがクリスのライフを削る。同時に、ライフが砕かれる音と共に鳴り響いた旋律が音色の壁を作り出し、後続のアタックを防ぐ。


 


『ターンエンド』


「……スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!」


 


ドローステップでドローした一枚。そのカードを見て、クリスの表情が僅かに驚いたものへと変わる。それは、以前までの彼女であれば使用すること自体が彼女にとっての一種の禁忌でもあった。ただ、その力は何かを壊す為にしか使う事が出来ない。だが、少なくとも今は違う。もしこの力が、彼の言うとおり、何かを壊す為ではなく守るため、救う為に使えるのだとしたら。


 


「……リフレッシュステップ!メインステップ!天使マカエルをLv2で召喚!」


 


【天使マカエル:黄・スピリット


コスト2(軽減:黄2):「系統:天霊」:【強化】


コア2:Lv2:BP3000


シンボル:黄】


 


金と白で彩られた鎧を纏った、赤い髪に緑の目を持つ女性が現れる。彼女もまた天使の翼を広げ、その両手には二本の剣が握られている姿が確認出来る。


 


「……」


 


このバトルは、自分にとって大きな転換期となるだろう。シンフォギア、いや聖遺物の力を手に入れてから、壊す為にしか歌を歌わなくなった自分が初めて、自分のためではなく誰かのために。何かを護るために歌うのだから。いざ、その時が来ると、自然と気持ちが静まっていき、雑念が不思議と消えていく。そして彼女の口から紡がれた歌は、クリス本人の心を満たしていくかのような、そんな快い流れを生み出す。


 


(……ああ、そうか。私は……歌が嫌いなんかじゃない。寧ろ、大好きだったんだ……)


 


今まで、突っぱねていただけだ。親が関わっていた音楽、歌を否定し、嫌いだと意地を張って遠ざかることで、その辛い過去から目をそらそうとしていただけ。本当は、親の事が大好きだった。歌が大好きだった。何より、信じていた。歌に秘められているその魅力、そして力を。


 


(……本当に、馬鹿だな、私。こんなことになるまで、忘れていたなんて)


 


このことに気付かせてくれたのも、弾のおかげなのかもしれない。そう考えながら、歌い続ける彼女の右手に握られた一枚のカードが、金色の光を放つ。


 


「来たれ、我が砲台!その一撃で、戦況を切り開け!砲天使長ファイエル、召喚!不足コストはイーディスとアクセラから確保!」


 


【光楯の守護者イーディス


コア2→1:Lv2→1:BP2000→1000】


 


【天使アクセラ


コア2→1:Lv2→1:BP4000→3000】


 


【砲天使長ファイエル:黄・アルティメット


コスト6(軽減:黄3・極1):「系統:次代・天霊」


コア2:Lv4:BP13000


シンボル:極】


 


鳴り響く雷鳴、いやプラズマ。それが激しい閃光を作り出し、その中からプラズマを帯びた水色のツインテールに青い目の少女が現れる。白を基調とした全身を包むインナースーツを着用した彼女の背中と両肩には巨大な白い機械翼が装着され、その手には巨大なライフルが握られている。


 


「……頼むぜ、ファイエル。バーストをセットしてアタックステップ!砲天使長ファイエルでアタック!Uトリガー、ロックオン!」


 


クリスの右手に出現したボウガンから放たれた矢がノイズのデッキを吹き飛ばす。トラッシュに落とされたカードは光速三段突。コスト6のカードの為、ファイエルのトリガーはガードとなる。しかし、このトリガーに関してはヒットしようがしまいがあまり関係はない。本命は、自分のライフが3以下のときに続けて行えるこちらの方だ。


 


「さらに、XUトリガー、ロックオン!」


 


続けて左手に出現したボウガンが右手のボウガンとクロスして同時に矢が放たれる。放たれた二本の矢はノイズのデッキをさらに抉っていき、カオティック・リクゴーのカードをトラッシュへと落とす。そのコストは4。よって、


 


「ヒット!トラッシュのコア2個を自分のライフに置くことで、このバトルの間、相手スピリットすべてのBPを-10000する!」


 


【アルマジトカゲ


BP4000-10000→0】


 


【ガーネットドラゴン


BP6000-10000→0】


 


【ディフェンザード


BP4000-10000→0】


 


ファイエルのライフルから無数の弾丸がばら撒かれ、三体のスピリットのBPを全て奪い取る。そしてこの効果でBPが0になったことで、クリスのフィールドに存在する天使がその力を発揮させることとなる。


 


「天使マカエル、Lv2効果!BP0になったスピリットを全て疲労させる!」


 


マカエルが振り上げた剣から放たれた光を受け、三体のスピリットが全て疲労する。しかし、この疲労効果はガーネットドラゴンが存在している以上あまり意味を成さないだろう。


 


『フラッシュタイミング。絶甲氷盾を使用。不足コストはガーネットドラゴンより確保』


 


【ガーネットドラゴン


コア4→1:Lv3→1:BP6000→3000-10000→0】


 


「!」


『ライフで受ける』


 


ファイエルの放った銃弾がノイズの残り二つのライフの内の一つを奪い取る。しかし、さらなるアタックを仕掛ける前にノイズの目の前に氷の壁が出現し、マジックの効果でアタックステップを強制的に終了させてしまう。


 


「くっ……ターンエンド」


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。機界蛇竜ヨルムンガンドをLv2で召喚』


 


【機界蛇竜ヨルムンガンド:白・スピリット


コスト8(軽減:白4):「系統:甲竜」


コア2:Lv2:BP11000


シンボル:白】


 


大地がひびわれ、そこから巨大な機械竜が出現する。禍々しい赤い光を全身に漲らせた蛇のようなそのドラゴンは、出現と同時にその咆哮をフィールド全体へと響き渡らせる。


 


「これは……Xレアか!?」


『氷宙遺跡スカイ・リオの効果でボイドからコア1個を自分のリザーブに置く』


 


ノイズのリザーブにコアが更に追加される。それが終了すると、ヨルムンガンドがまるで歌を掻き消すかのような咆哮を解き放つ。その咆哮は、ファイエルに宿る力をその身体から吹き飛ばしていく。


 


「何!?」


 


【砲天使長ファイエル


BP13000→1000】


 


「ばっ、BPが!?」


『機界蛇竜ヨルムンガンド、Lv2・3効果。お互いのアルティメットすべてのLv3/Lv4/Lv5BPを1000にする』


「何だと!?」


 


BPを1000に下げられるファイエル。これでは、どんなスピリットが相手でも純粋なBP勝負では勝つことは不可能になってしまう。アルティメットを大幅に弱体化させるヨルムンガンドは、仲間のコアを喰ってさらに強大な存在へと変化しようとする。


 


『アルマジトカゲをLv1にダウン』


 


【アルマジトカゲ


コア3→1:Lv3→1:BP4000→1000】


 


『機界蛇竜ヨルムンガンドをLv3にアップ』


 


【機界蛇竜ヨルムンガンド


コア2→5:Lv2→3:BP11000→14000】


 


『アタックステップ。機界蛇竜ヨルムンガンドでアタック。Lv1・2・3バトル時効果。BP5000まで相手のスピリット/アルティメットを好きなだけ手札に戻す。天使マカエルを指定』


 


5000まで。その為、戻す対象はBP5000まで可能な限り全てではないので一体だけ戻すこともできる。ヨルムンガンドの咆哮によって吹き飛ばされたマカエルがクリスの手札へと戻っていく。そして、ヨルムンガンドの更なる効果が発揮される。


 


『この効果で戻したスピリット/アルティメット1体につき、系統:「甲竜」を持つ自分のスピリット1体を回復させる。機界蛇竜ヨルムンガンドを指定』


 


ヨルムンガンドが回復し、クリスへと襲い掛かる。襲い掛かるその牙を見ながら、クリスは自分の選択を告げる。


 


「ライフで受ける!」


 


ヨルムンガンドの口が開かれ、そこから放たれたブレスがクリスのライフを奪う。その衝撃によろめく姿を見せるが、すぐにその体勢を整え直すと、自身が伏せたその一枚を起動させる。


 


「ライフ減少によりバースト発動!砲天使カノン!自分のライフが3以下のとき、相手スピリット/アルティメットをBP-10000!1強化追加でBP-11000だ!」


 


【アルマジトカゲ


BP4000-(10000+1000)→0】


 


【ガーネットドラゴン


BP6000-(10000+1000)→0】


 


【ディフェンザード


BP4000-(10000+1000)→0】


 


バーストが起動し、無数の砲撃がノイズのフィールドのスピリット達を襲う。しかし、その中でもヨルムンガンドだけがその全ての砲撃をその身体から弾き飛ばしていた。


 


『機界蛇竜ヨルムンガンド、Lv3効果。このスピリットは、相手のスピリット/マジックの効果を受けない』


「っ、でも他は違う!この効果でBP0になったスピリット/アルティメットすべてを破壊し、この効果発揮後、このスピリットを召喚する!砲天使カノン、Lv3でバースト召喚!コアはアクセラとイーディスのものを全て移動させる!」


 


【砲天使カノン:黄・スピリット


コスト8(軽減:黄4):「系統:星将・天霊」


コア3:Lv3:BP10000


シンボル:黄】


 


三体のスピリットが爆発する。それと同時にファイエルの隣に現れた、白い無数の砲台を纏った青白い髪の少女、カノン。一気に相手のフィールドを殲滅してみせたカノンと共にクリスはノイズの更なるアタックを迎え撃とうとする。


 


『機界蛇竜ヨルムンガンドでアタック。バトル時効果により、砲天使長ファイエルを指定』


 


ヨルムンガンドの咆哮がファイエルをクリスの手札へとバウンスさせ、さらに効果によってヨルムンガンドは再び回復する。


 


「ライフで受ける!」


『ターンエンド』


 


二度目のブレス攻撃を受け切るクリス。バウンス対象が存在せず、連続アタックも出来ない以上、次のターンの防御を考えて回復状態で残しておいたのだろう。


 


「……カノンの効果が効かない、か……厄介だな……けど、問題ないな!スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!天使スピエルを召喚!」


 


【天使スピエル:黄・スピリット


コスト0:「系統:天霊」:【強化】


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:黄】


 


槍を握る灰色の髪の少女がクリスのフィールドに新たに出現する。これで、準備は整った。如何に強力な効果を持つヨルムンガンドと言えど、その効果には抜け穴がある。そこに狙いを定めればいいのだ。


 


「ホルス・ジェッターを召喚!」


 


【ホルス・ジェッター:黄・ブレイヴ


コスト5(軽減:黄2・白2):「系統:雄将・戯狩」


コア1:Lv1:BP3000


シンボル:黄】


 


赤と黄のオッドアイを持つ置物のような姿をした人工物の鳥型スピリット、ホルス・ジェッターが召喚される。ヨルムンガンドの効果では、ネクサス、ブレイヴ、アルティメットの効果は防げない。その弱点こそが勝利への鍵となる。


 


「ホルス・ジェッター、召喚時効果!このターンの間、相手のスピリットすべてをLv1として扱う!」


 


【機界蛇竜ヨルムンガンド


Lv3→1:BP14000→7000】


 


ヨルムンガンドのLvが下がった事により、その耐性とアルティメットを縛る鎖が消滅する。このチャンスを逃しはしない。そう言わんばかりにクリスは再びその歌を紡ぎ出す。


 


「再び来たれ!砲天使長ファイエル!Lv2で召喚!不足コストはカノン、スピエル、ホルス・ジェッターより確保!」


 


【砲天使カノン


コア3→2:Lv3→2:BP10000→7000】


 


【天使スピエル


コア1→0】


 


【ホルス・ジェッター


コア1→0】


 


【砲天使長ファイエル:黄・アルティメット


コスト6(軽減:黄3・極1):「系統:次代・天霊」


コア2:Lv4:BP13000


シンボル:極】


 


再度、召喚されるファイエル。自身の切り札を従え、クリスは決着を付けるべくアタックステップを宣言する。


 


「アタックステップ!いけ、ファイエル!Uトリガー、ロックオン!」


 


ノイズのデッキからトラッシュへと落とされるサンク・シャイン。コスとは6の為、今回もトリガーはガードとなる。しかし、


 


「XUトリガー、ロックオン!」


 


続けて落とされたカードは絶甲氷盾、コスト4。よって、この二度目のトリガーはヒットとなる。


 


「ヒット!トラッシュのコア2個を自分のライフに置くことで、このバトルの間、相手スピリットすべてのBPを-10000する!」


 


【機界蛇竜ヨルムンガンド


BP7000→0】


 


ファイエルの放った銃弾が次々とヨルムンガンドの装甲を貫いていく。ホルス・ジェッターの力によって弱体化したその身体は次々と銃弾を受けて力を失い、地に落ちていく。


 


「さらに、カノンのLv2・3効果!相手のスピリット/アルティメットがBP0になったとき、そのスピリット/アルティメットを破壊する!」


 


トドメの一撃とばかりにカノンの砲撃がヨルムンガンドの体を粉々に打ち砕いていく。守るべきスピリットを失い、がら空きとなったフィールド。その先にいるノイズを仕留めるべく、ファイエルは一切の躊躇すら見せずにその引き金を引き、ノイズを撃ち抜いた。


 


「……あれ?」


 


クリスがバトルを終え、エクストリームゾーンから出てきたその直後、響もまたバトルを終えて外へと出てくる。二人で一気に手分けしてやったおかげなのか、弾が来る前にノイズは全部仕留めることが出来たようだと確認した所でふと、クリスの姿が見えない事に気付く。


 


「あれ?クリスちゃん?」


「……これで、貸し借りは無しだからな!」


 


言い捨てるようにして逃げるように空へと飛び出していくクリス。その姿を見ながら、響は苦笑していた。しかし、苦笑しながらも、その表情には嬉しそうな感情を浮かべていたのだった。


 


 



 


 


「……そう、そんなことがあったの」


 


場所は代わり、ライブ会場。無事にライブを終了させ、控室に戻った翼はノイズの襲撃があったことをここで漸く聞かされていた。弾や響に今の自分の姿を見てもらえなかったことは残念だが、自分が思い切りライブに集中できたのも、二人の心遣いのおかげだろう。そのことに感謝しながら、翼は胸に手を当てる。


 


(……久しぶりにやったから、かな。もしかしたら、彼も似たような感じだったのかも)


 


久しぶりに、皆の前で歌うこと。自分の歌を皆に聞いてもらう事。使命も何もない、ただ自分の心に率直に応えるその行動は、とても満足のできるものだった。心が満たされ、気分が高揚し、興奮してくる。楽しむことを止めた、いや忘れていたからこそ、それを思い出し、取り戻す事が出来た。かつて弾が、バトルフィールドで戦うその楽しさを取り戻したように。自分もまた、歌でそれを取り戻す事が出来た。そんな気がする。


 


「……」


 


もし、自分が弾や響と出会っていなかったら。今の自分になっていただろうか。いや、それはないだろう。自分は、迷っていたのだ。迷っていないフリをしながら。でも、もう今の自分に迷いはない。歌でも、バトルでも。本当の自分を貫いていける。そう感じ取ったのだった。


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