第26話 響き渡る龍の声

響 ライフ:4 コア:8 リザーブ:1 トラッシュ:4 手札:5


 


フィールド


 


【ブロンズ・ヴルム:赤・スピリット


コスト3(軽減:赤2):「系統:星竜」:【強化】


コア1:Lv1:BP3000


シンボル:赤】


 


【雷光龍ライト・ジークヴルム:赤・スピリット


コスト6(軽減:赤3)+4→10:「系統:星竜」


コア2:Lv1:BP4000+2000→6000


シンボル:赤+赤】



【砲竜バル・ガンナー:赤・ブレイヴ


コスト4(軽減:赤2):「系統:地竜・星竜」


シンボル:赤】


 


 


クリス ライフ:4 リザーブ:0 トラッシュ:6 手札:3 バースト:あり


 


フィールド


 


【ダーク・ガドファント:白・スピリット


コスト3(軽減:白2):「系統:機獣」:【連鎖:条件緑シンボル】:【重装甲:赤/青】


コア3:Lv2:BP4000


シンボル:白】


 


【スレイヴ・ガイアスラ:赤・スピリット


コスト6(軽減:赤3):「系統:滅龍・星竜」:【超覚醒】


コア2:Lv1:BP4000


シンボル:赤】


 


 


現在第八ターン。響のフィールドには疲労状態の砲竜バル・ガンナーと合体した雷光龍ライト・ジークヴルムと回復状態のブロンズ・ヴルムが存在している。対するクリスのフィールドには回復状態のスレイヴ・ガイアスラとダーク・ガドファントが存在しており、現在のターンプレイヤーはクリス。そしてクリスのターンのアタックステップである。


 


「スレイヴ・ガイアスラ、二度目のアタック!超覚醒でダーク・ガドファントのコアをスレイヴ・ガイアスラへと与え、回復!」


 


【ダーク・ガドファント


コア3→2】


 


【スレイヴ・ガイアスラ


コア2→3:Lv1→2:BP4000→6000】


 


「ライフで受ける!」


 


スレイヴ・ガイアスラの振り上げた拳が響へと再び放たれる。ネフシュタンの力がもたらす、通常を遥かに超える威力を叩きだしたリアルダメージが再び響を襲い、その全身に激痛をもたらす。


 


「っ……うっ!!」


「響……!」


 


一瞬、その痛みに耐えきったかのように思われたがすぐに身体を曲げて大きく咳込み始める響。今の時点でその身体は痛みに支配されているだろう、しかし、最後まで勝負を諦めることはカードバトラーとしては絶対に有り得るものではない。


 


「……ここはこれでターンエンドだ」


 


赤のデッキである響のカード効果のほとんどを防げる重装甲:赤を持つダーク・ガドファントは可能な限りLv2で維持しておくべきだろう。超覚醒の餌としても防御としてもこのカードを残しておくことは決して悪い選択ではないだろうから。


 


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!ブロンズ・ヴルムと合体スピリットをLv3にアップ!」


 


【ブロンズ・ヴルム


【激突】


コア1→5:Lv1→3:BP8000】


 


【雷光龍ライト・ジークヴルム


【強化】【激突】


コア2→5:Lv1→3:BP4000→9000+2000→11000】


 


ライト・ジークヴルムがLv3効果により強化を得る。さらに、ライト・ジークヴルム、Lv2・3効果により強化を持つ自分のスピリットすべてに激突が付与されることとなる。


 


「アタックステップ!合体アタック!砲竜バル・ガンナー、合体時効果!デッキから1枚ドローし、相手のBP4000以下のスピリット1体を破壊する!2強化追加でBP6000以下のスレイヴ・ガイアスラを破壊!」


 


ライト・ジークヴルムの背中の砲台から放たれた炎の弾丸がスレイヴ・ガイアスラを破壊する。超覚醒を使われるフラッシュタイミングの前に対処してしまえば、その超覚醒も怖れることは無いのだ。


 


「スピリット破壊によりバースト、双光気弾!デッキから2枚ドローし、フラッシュ効果を発揮!ブレイヴである砲竜バル・ガンナーを破壊!」


 


【雷光龍ライト・ジークヴルム


BP9000


シンボル:赤】


 


クリスの発動させたバーストから放たれた二つの炎がバル・ガンナーの砲台を破壊する。ブレイヴを失い、その背中にライト・ジークヴルムは本来の翼を取り戻す事となる。が、まだアタック時効果は終わってはいない。さらにライト・ジークヴルムのアタック時効果でBP4000以下のスピリットが破壊される効果と激突が発揮されるが、その効果はダーク・ガドファントが出現させた重装甲:赤によって阻まれる。


 


「このアタックはライフで受ける!」


 


そしてライト・ジークヴルムのアタックはクリスが自身のライフで受け止める。雷光を纏って突進してきたライト・ジークヴルムの攻撃を真正面から受け止め、自身のライフを一つ削りこのターンを凌ぐ。


 


「ターンエンド!」


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!イグア・バギーを召喚!」


 


【イグア・バギー:白(赤)・スピリット


コスト1(軽減:白1・赤1):「系統:機獣・星魂」


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:白(赤)】


 


新たな白のスピリットとしてクリスが呼び出したのは四輪バギー型のスピリット。しかし、白のスピリットとしてだけでなく、赤のスピリットとしても扱うという効果の方に大きな存在意義があるのだろう。


 


「続けて二体目のスレイヴ・ガイアスラを召喚!」


 


【スレイヴ・ガイアスラ:赤・スピリット


コスト6(軽減:赤3):「系統:滅龍・星竜」:【超覚醒】


コア1:Lv1:BP4000


シンボル:赤】


 


先程破壊したというのに、再び二体目が出現する。また蘇ったスレイヴ・ガイアスラが腕を軽く振り抜くと、その覇気がブロンズ・ヴルムとライト・ジークヴルムへと与えられる。


 


「さらにおまけだ!こい、鳳凰竜フェニック・ソード!召喚!」


 


【鳳凰竜フェニック・ソード:赤・ブレイヴ


コスト6(軽減:赤3):「系統:機竜・星魂」


シンボル:なし】


 


赤い刀身の四枚の刃が構築する右翼と青紫色の四枚の刃が重なって作り上げる左翼を持つ、機械的な姿をした竜が出現する。その右肩には一本の剣が装着されており、青く燃える炎の尻尾を持っている。


 


「!このブレイヴは!」


「スレイヴ・ガイアスラに直接合体!」


 


【スレイヴ・ガイアスラ


コスト6+6→12


BP4000+5000→9000】


 


フェニック・ソードの肩から剣が分離し、残った身体のエネルギーが全て剣に集約される。フェニック・ソードが変換された剣がスレイヴ・ガイアスラの手に握られるのと同時にそのエネルギーが全身に漲り、スレイヴ・ガイアスラの全身から赤い光が解き放たれる。


 


「フェニック・ソードの召喚時効果でBP4000以下のスピリットすべてか、ネクサスすべてを破壊する!私はネクサスを選択!」


 


スピリットを選べば、イグア・バギーとダーク・ガドファントを自ら焼いてしまうからだろう。敢えて効果の不発を選択させたが、フェニック・ソードが持つその驚異的な効果は、響の目にも焼き付いている。


 


「……!」


「バーストをセット、そしてアタックステップ!イグア・バギーでアタック!」


「ライフで受ける!」


 


イグア・バギーが地を走り、地を蹴るように飛び上がって響へと襲い掛かる。ネフシュタンの力によって加速された一撃が響の三つ目のライフを奪い取り、その身体を大きく仰け反らせる。


 


「やれ、合体スピリット!フェニック・ソード、合体時効果でブロンズ・ヴルムに指定アタック!フラッシュタイミング、イグア・バギーのコアを喰って回復!」


 


【イグア・バギー


コア1→0】


 


【スレイヴ・ガイアスラ


コア1→2】


 


フェニック・ソードを真上から振り抜く事によって放たれる炎の斬撃がブロンズ・ヴルムを両断する。


 


「っ……!!」


「これでターンエンドだ」


 


イグア・バギーからコアを吸収して回復してくるかと思われたが、次のターンで防御に使うコアが欲しいのか、そのままの状態でターンを終えるクリス。


 


「……っ」


「!響!!」


 


瞬間、膝がぐらつき、力が抜けたように倒れ込む響。三回目のダメージは、ただでさえ戦いの中で傷ついた身体に大きなダメージを与えたのだろう。だが、


 


「……まだ、まだ!これからだ!スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!ライト・ブレイドラを召喚!」


 


【ライト・ブレイドラ:赤・スピリット


コスト0:「系統:星竜」:【強化】


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:赤】


 


「さらにネクサス、星見の三連塔を配置!」


 


【星見の三連塔:赤・ネクサス


コスト4(軽減:赤2)


コア0:Lv1


シンボル:赤】


 


響のフィールドに銀色の毛並みを持つブレイドラが召喚され、続けて響とドラゴン達が背を向ける背後の空が夜の空となる。星が輝く夜空の下に連続して出現する三本の塔の戦端が赤く光りを発する。


 


「そして砲竜バル・ガンナーを再び召喚!」


(二枚積んでいたのか……)


 


【砲竜バル・ガンナー:赤・ブレイヴ


コスト4(軽減:赤2):「系統:地竜・星竜」


シンボル:赤】


 


「ライト・ジークヴルムに直接合体!」


 


【雷光龍ライト・ジークヴルム:赤・スピリット


コスト6(軽減:赤3)+4→10


BP9000+2000→11000


シンボル:赤+赤】


 


二体目のバル・ガンナーが合体され、再びBPを11000へと上昇させる。破壊とドローを両立させてくれる頼れるブレイヴを従え、響は果敢に攻め込む。


 


「アタックステップ!合体スピリットでアタック!バル・ガンナーアタック時効果で1枚ドロー!さらに強化を持つコスト2以上の自分のスピリットがアタックしたことでネクサス、星見の三連塔Lv1・2効果発揮!デッキから1枚ドロー!」


「一気に二枚ドローか……だが、このアタックに対して私はバーストを発動する!」


「「!」」


「ドラゴニックウォール!こいつでスレイヴ・ガイアスラのBPを+5000!」


 


【スレイヴ・ガイアスラ


BP4000+5000+5000→14000】


 


相手のアタック後に発動するバースト、ドラゴニックウォール。その力がスレイヴ・ガイアスラへと降り注ぎ、BPがライト・ジークヴルムを超える。


 


「!BPがライト・ジークヴルムを……!?」


「激突でブロックしなければならないんだよなぁ!?合体スピリットでブロックだ!」


 


スレイヴ・ガイアスラが剣を振り上げてライト・ジークヴルムの前へと立ちはだかる。このままではライト・ジークヴルムがスレイヴ・ガイアスラに破壊されてしまうのは明白だ。


 


「ここは仕方ない……フラッシュタイミング!双光気弾を使用!鳳凰竜フェニック・ソードを破壊!」


 


【スレイヴ・ガイアスラ


BP4000+5000→9000】


 


響の使用したマジックはフェニック・ソードを打ち砕く。それによってBPは9000へと下がり、今度はスレイヴ・ガイアスラがそのBPを下回らせることとなる。


 


「ここで引いてやるかよ!フラッシュ、超覚醒!ダーク・ガドファントのコアを移動させ、Lv2へ!」


 


【ダーク・ガドファント


コア2→1:Lv2→1:BP4000→3000】


 


【スレイヴ・ガイアスラ


コア2→3:Lv1→2:BP4000→6000+5000→11000】


 


しかし、クリスの方もただではやられない。Lv2となったことでスレイヴ・ガイアスラはライト・ジークヴルムと互角のBPを得る。


 


「BPは同じ……相討ちだ!」


 


スレイヴ・ガイアスラがライト・ジークヴルムの両腕を掴み、持ち上げてそのまま叩き付ける。その衝撃を受けながらライト・ジークヴルムは最後の意地とばかりにその口を開き、雷光をスレイヴ・ガイアスラへと叩き付け自分諸共その身体を爆散させる。


 


「くっ……!」


「バル・ガンナー、分離!」


 


【砲竜バル・ガンナー


コア1:Lv1:BP2000


シンボル:赤】


 


「……ターンエンド」


 


ここでライト・ジークヴルムを失ったのは大きいだろう。対するクリスはスレイヴ・ガイアスラを失ってこそいるが、まだまだ余力がある様子を見せている。


 


「ちっ……あんたみたいな奴が、ここまでやれるとはな」


「あんたじゃない!私は立花響!」


「知った事かよ!スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!最後のスレイヴ・ガイアスラを召喚!」


 


【スレイヴ・ガイアスラ:赤・スピリット


コスト6(軽減:赤3):「系統:滅龍・星竜」:【超覚醒】


コア1:Lv1:BP4000


シンボル:赤】


 


「双翼乱舞を発動!デッキから2枚ドロー!!そしてリザーブのコアを全てダーク・ガドファントへ移動!」


 


【ダーク・ガドファント


【重装甲:赤/青】


コア1→4:Lv1→2:BP3000→4000】


 


「アタックステップ!いけ、スレイヴ・ガイアスラでアタック!フラッシュタイミング、超覚醒!」


 


【ダーク・ガドファント


コア4→3】


 


【スレイヴ・ガイアスラ


コア1→2】


 


「ライト・ブレイドラでブロック!」


 


響がブロックを宣言した瞬間にライト・ブレイドラが可愛い鳴き声を上げて走り出す。続けて、響は手札からマジックを使用する。


 


「フラッシュタイミング!ドラゴニックウォールを使用!自分の赤のスピリット、ライト・ブレイドラを破壊してバトル終了時にアタックステップを終了する!」


 


ライト・ブレイドラから高熱が吹き荒れ、炎の壁が出現する。それはスレイヴ・ガイアスラの次なる攻撃を防ぐ壁となる。


 


「フラッシュタイミング!超覚醒でスレイヴ・ガイアスラをLv2へと上げておく!」


 


【ダーク・ガドファント


コア3→2】


 


【スレイヴ・ガイアスラ


コア2→3:Lv1→2:BP4000→6000】


 


「ターンエンドだ!」


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!ピナコチャザウルスを召喚!」


 


【ピナコチャザウルス:赤(緑)・スピリット


コスト1(軽減:赤1):「系統:地竜」


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:赤(緑)】


 


小型の恐竜型のスピリットが召喚される。低コストのスピリットを並べ、下準備を終えた響は最後のスレイヴ・ガイアスラを倒す為に手札にあるこのデッキの中で最強のスピリットを呼び起こす。


 


「降り注げ紅蓮よ!響き渡れ、流星の鼓動!龍星皇メテオヴルム、Lv3で召喚!」


 


【龍星皇メテオヴルム:赤・スピリット


コスト7(軽減:赤3):「系統:星竜・勇傑」:【激突】


コア6:Lv3:BP11000


シンボル:赤】


 


に黒い暗雲が広がっていく。その雲を突き抜けて降り注いだ流星群が地面に衝突して爆発し、その中の一つが爆煙を振り払い、オレンジ色の翼が広げられる。緑色の眼を光らせ、そのオレンジ色の龍の身体を光に反射させ、龍星皇がその姿を出現させる。


 


「アタックステップ!メテオヴルム、Lv3効果により、激突を持つ自分のスピリットは相手スピリットに指定アタックできる!スレイヴ・ガイアスラを指定!」


 


メテオヴルムの身体が炎の槍となり、赤き灼熱の竜巻を纏って急上昇する。そして一直線に急降下してスレイヴ・ガイアスラへと襲い掛かり、その身体を貫いてみせる。


 


「くっ……!?」


「す、凄い……」


「続けて砲竜バル・ガンナー、ピナコチャザウルスでアタック!」


(っ、ダーク・ガドファントのBPに打ち勝つマジックが手札にあるのか!?)


 


いや、そうでなければ一気にアタックしてこないだろう。だが、それもブラフである可能性がある。クリスは一瞬だけ迷ったが、すぐに選択を決める。


 


「どっちもライフで受ける!!」


 


二体の体当たりがクリスのライフを残り一つだけ残して全て削り取る。フルアタックを終えた響は、そのままターンを終えるしかない。


 


「ターンエンド」


「スタートステップ!」


「……ねぇ!」


「……んぁ?」


 


バトルの最中に突然話しかけられ、クリスは思わず反応する。話せる、そう確信した響は次の言葉を口にしていく。


 


「何でこんな戦いをしなくちゃいけないの!?私達は言葉で通じ合える、分かり合える筈なのに!なんでこんな傷つけるバトルを……」


「っ、うるさぁい!」


「!」


 


思わず声を荒くするクリス。こんな、まるで自分達が分かり合っているかのように話されることが、クリスの気分を悪くする。そんなことで何かが変わるのかと叫びたくなる。声を荒くしながら、自分の心の中の思いをぶちまけるように叫ぶ。


 


「分かり合えるかよ、人間が!そんな都合良くできているかよ!口だけは達者なこと言いやがって!気に入らねえ!コアステップ!ドローステップ!!くそっ!」


「……」


 


ドローステップでドローしたカードを見ながら、思わず舌打ちをするクリス。その一枚は、このデッキで二枚目に強いカード。このターンで幻羅星龍を呼び出す事が出来ないという事を意味するそれは、このネフシュタンがほぼ完全に力の使い手としてクリスを見限っているということを意味していた。


 


「この際、こいつで十分だ!!お前を引きずって来いと言われたが、もうどうでもいい!完膚なきまで叩きのめして、その身体も、心もぶっ壊して、全てをお前から奪ってやる!この終わらない永遠の攻撃で!!リフレッシュステップ!!メインステップ!!全てぶち壊せ!そしてこの戦いを終わらせろ!!天地神龍ガイ・アスラ、召喚!」


 


【天地神龍ガイ・アスラ:赤・スピリット


コスト8(軽減:赤3):「系統:神星・星竜」


コア1:Lv1:BP8000


シンボル:赤】


 


右半身が黒く、左半身が白く染まったガイ・アスラがその姿を出現させる。このスピリットが出てきたところを見るに、どうやら幻羅星龍は引けなかったようだと響は推測する。


 


「……!」


「響……!」


「そしてネクサス、フォートレスキューブを配置!」


 


【フォートレスキューブ:白・ネクサス


コスト4(軽減:白2)


コア0:Lv1


シンボル:白】


 


何かが崩れていく音を響かせて、クリスの背後に巨大な黒いキューブが出現する。それには虚空から出現した無数のワイヤーが装着されて空中に固定化されており、その不気味さを強調している。


 


「白のネクサス!?」


「ゲッコ・グライダーを召喚!!」


 


【ゲッコ・グライダー:白・ブレイヴ


コスト4(軽減:白2・黄1):「系統:甲竜」


コア1:Lv1:BP4000


シンボル:なし】


 


緑色の半透明なグライダーの翼を持つ金属のような装甲で体を覆ったヤモリが召喚される。白のブレイヴ、ゲッコ・グライダー、その力はフォートレスキューブとガイ・アスラによって最大限に発揮される事となる。


 


「ゲッコ・グライダー、召喚時効果!このターン、このブレイヴと合体しているスピリットはブロックされない!」


「これじゃ、響がブロッカーを用意したとしても無意味に……!」


「天地神龍ガイ・アスラにゲッコ・グライダーを合体!!」


 


【天地神龍ガイ・アスラ:赤+白


コスト8+4→12:【重装甲:紫/黄】【超覚醒】


コア1→2:BP8000+4000→12000】


 


ゲッコ・グライダーの翼が天地神龍と一つになり、その翼に緑色のグラデーションが追加される。白の力を手にしたガイ・アスラを従え、クリスはアタックステップを堂々と宣言する。


 


「アタックステップ!合体アタック!超覚醒でダーク・ガドファントのコアを移動させ、回復!」


 


【ダーク・ガドファント


コア2→1:Lv2→1:BP4000→3000】


 


【天地神龍ガイ・アスラ


コア2→3:Lv1→2:BP8000→12000+4000→16000】


 


「そしてフォートレスキューブの効果。アタックステップ中に自分の白のスピリットが回復した時、ボイドからコア1個を自分のスピリットに置く。ダーク・ガドファントを指定」


 


【ダーク・ガドファント


【重装甲:赤/青】


コア1→2:Lv1→2:BP3000→4000】


 


「!?こ、これって……!?」


「気付いたみたいだな」


 


天地神龍がアタックし、超覚醒によってダーク・ガドファントのコアを喰って回復する。白のブレイヴ、ゲッコ・グライダーと合体していることにより、白色を得た天地神龍が回復したことでフォートレス・キューブの効果により、ダーク・ガドファントに損失分のコアが再び置かれる。それにより、再び超覚醒の餌が補給される。そう、これは、


 


「無限ループ……!?」


「響!!」


 


こんなの、防ぎようが無い。響は息を呑み込みながら目の前に迫る脅威を見る。同時に、その視界の隅に、未来の姿が捉えられ、瞬間、彼女の耳に未来の声が届く。


 


「ぶっ壊れなあ!!」


「……まだ、まだ終わらない!!フラッシュタイミング!!ブレイジングバースト !!不足コストはメテオヴルムから確保!」


 


【龍星皇メテオヴルム


コア6→4:Lv3→2:BP11000→7000】


 


「赤のスピリット、ピナコチャザウルスを破壊してこのターン、相手のスピリットのアタックでは自分のライフは1しか減らされない!」


「何!?」


「これなら、どんなにアタックされても響のライフは残る!」


「ライフで受ける!」


 


響の身体へと叩き込まれる天地神龍の攻撃。振り下ろされた拳から放たれた波動がその身体を大きく吹き飛ばし、悲鳴を上げさせる暇すら与えずその身体を床へと叩き付ける。


 


(お前なんかがいるから、私はまた……!)


 


このターンで決められなかった。その事実に思わず歯ぎしりをしてしまう。しかし、もうこのターンでは響では仕留められない。ならば、


 


「殴れ!殴れ!!そのまんま、何度も殴りつけろ!!超覚醒で起き上がり続けろ!!ガイ・アスラァアアアアアア!!」


 


【天地神龍ガイ・アスラ


コア3→∞:Lv2→3:BP8000→12000+4000→16000】


 


このターンで倒す事はできない。しかし、コアを無限に増やし続けることは出来る。感情のままに、響の前に出現した火炎の壁を殴り続ける天地神龍。その攻撃の度にコアが増えていき、拳が振るわれる速度は徐々に上昇し、最早視認することすら不可能な速度となる。そして、その連続攻撃に遂に限界を迎えた天地神龍が弾き飛ばされたのを見て、これ以上は限界かと悟り、息を荒くしながらターンの終了を宣言する。


 


「ターンエンドだ!!」


(私には、確かに翼さんみたいにアルティメットを使いこなせないし、弾さんみたいに柔軟に、どんなバトルでもできる訳じゃない。でも……私にだって、力がある。この状況を引っ繰り返せるカードが、私のデッキには1枚ある。それを、引き当てる!!未来の為にも!!)


 


一度、深呼吸をする。そして響は、強い意志を持ってデッキに目を向けた。


 


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!」


「……響」


 


そして、デッキから一枚のカードをドローする。それ次第で、勝負は分かれるだろう。クリスも息を呑んでその一枚を凝視し、未来は両手を合わせて祈るように響を見る。そして響は、裏側になっているカードを表側にして、そこにある希望を、その目に移した。


 


「……来た!!リフレッシュステップ!メインステップ!」


「……歌?」


「くそ、引き当てたってのか!?」


 


響が一枚のカードを掲げ、同時に歌い始める。何も知らない未来からすれば場違いのように思えたが、それはほんの一瞬。すぐに未来は、その歌がまるで、何かを呼び出す為の聖なる儀式を行っているかのような神聖な光景を演出しているように感じられた。


 


「響け、金色の稲妻!!アルティメット・ジークヴルム、Lv5で召喚!!」


 


【アルティメット・ジークヴルム:赤・アルティメット


コスト6(軽減:赤3):「系統:新生・星竜・竜人」:【真・激突】


コア4:Lv5:BP17000


シンボル:極】


 


空が暗雲で黒く塗りつぶされ、そこから雷鳴が鳴り響く。雷鳴の中から現れたのは、黄金の鎧を纏う、雷の龍。響のシンフォギアの象徴たる存在が降臨し、フィールドをその咆哮で揺らしていく。


 


「ぐ!?」


「す、凄い……」


 


アルティメットを見せられ、呆然とする未来。だが同時に、感じ取っていた。これならば、この状況を打開できるかもしれない。二人の希望を託されたアルティメット・ジークヴルムはその翼を広げ、最後のアタックステップを開始させる。


 


「アタックステップ!!アルティメット・ジークヴルムでアタック!Uトリガー、ロックオン!!」


 


響の手から放たれた光の波動が、クリスのデッキを吹き飛ばす。そして吹き飛ばされたカードは、ライフチャージ。コスト4のカードだった。


 


「っ、くそ!!」


「ヒット!!BP+10000!」


 


【アルティメット・ジークヴルム


BP17000+27000】


 


「BP27000の、ジークヴルムだとぉ!?」


「天地神龍ガイ・アスラに真・激突だ!!」


 


電撃を纏い、天地神龍へと真正面からぶつかるアルティメット・ジークヴルム。勢いよくその身体を吹き飛ばして壁へと叩き付けると、電撃を纏った拳を振り上げてその身体を粉々に打ち砕いた。


 


「何……だと……!?」


「これで、終わりだ!!ピナコチャザウルス!メテオヴルム!」


 


ピナコチャザウルスがダーク・ガドファントにぶつかり、破壊される。しかし、それによってクリスは全てのブロッカーを失い、メテオヴルムが大きく飛翔して彼女へと飛び込む。


 


「う、おお……うぉおおおおおおおお!?」


 


瞬間、メテオヴルムの身体が金色に光る。アルティメット・ジークヴルムから受け取ったその力がメテオヴルムの中で燃え上がり、炎の槍となったメテオヴルムの一撃が、クリスの鎧に大きくひびを叩きこみ、その最後のライフを奪い取ったのだった。


 


「うわあああああああああ!!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る