第24話 幻羅星龍VS光龍騎神

弾 ライフ:3 リザーブ:0 トラッシュ:9 手札:4 バースト:なし


 


フィールド


【魔導双神ジェミナイズ:黄・スピリット


コスト7(軽減:黄4):「系統:光導・導魔」


コア2:Lv2:BP6000


シンボル:黄】


 


 


少女 ライフ:5 リザーブ:9 トラッシュ:6 手札:2 バースト:あり


 


 


ジェミナイズの効果によって連続発動されたサンダーブランチとネオ・フレイムテンペストの効果により、一瞬にして全てのモンスターを破壊されるネフシュタンの少女。お互いのフィールドに存在するカードは、弾のフィールドに存在する回復状態の魔導双神ジェミナイズだけであり、それ以外は何も存在していない。そして現在は少女のアタックステップではあるが、アタック出来るスピリットもアルティメットも存在していない以上、そのターンで行える行為は最早何も存在しない。よって十一ターン目、弾のスタートステップが行われる事となる。


 


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。イグア・バギーを召喚」


 


【イグア・バギー:白(赤)・スピリット


コスト1(軽減:白1・赤1):「系統:機獣・星魂」


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:白(赤)】


 


緑色の車体を持つ四輪バギーを呼び出す弾。イグア・バギーのBPはこの状況では小さいものではあるが、このスピリットの召喚によりジェミナイズの力が発揮される。


 


「何だ……ジェミナイズが」


 


ジェミナイズが不思議な舞いのような動きを取りながら、その身体から黄色い波動を解き放つ。イグア・バギーが召喚されたことで発揮される効果ではあるが、この効果は召喚時効果ではない。よって、少女のバーストは起動しない。


 


「魔導双神ジェミナイズの効果!系統:「神星」/「光導」/「星魂」を持つ自分のスピリットが手札から召喚されたとき、自分のデッキを上から1枚オープンし、それがスピリットかブレイヴならばノーコストで召喚する」


 


弾のデッキのトップのカードがオープンされる。そしてそこに現れたのは、マジックカード、ネクサスコラプス。スピリットでもブレイヴでもないので召喚される事はない。


 


「それ以外のカードのときは手札に加える。再臨せよ、乙女座の十二宮Xレア!戦神乙女ヴィエルジェ、再びLv2で召喚!」


 


【戦神乙女ヴィエルジェ:黄・スピリット


コスト6(軽減:黄3):「系統:光導・天霊」


コア2:Lv2:BP6000


シンボル:黄】


 


天空に描かれた乙女座から舞い降りる、長い金髪に白い羽衣を纏った美しき乙女。天使の白い翼を広げ、優雅に舞い降りるその姿は、弾に癒しの力をもたらす。


 


「来た……!」


「戦神乙女ヴィエルジェ、召喚時効果!自分のライフが5以下のとき、ボイドからコア1個を自分のライフに置く!」


 


出現と同時に回復する弾のライフ。だがまだだ。まだこの程度では終わりはしない。弾は、次なる一手をジェミナイズから起動させる。


 


「ヴィエルジェは系統:「光導」を持っている。よってジェミナイズの効果が発揮され、デッキの上のカードをオープンする!」


 


弾のデッキの上のカードがオープンされる。そしてそこにあったのは、紫のカード。このデッキで一番コストの高い、一枚のXレア。それを見た瞬間、弾は内心で少しだけ笑みを零す。


 


(お前が来てくれたか……イザーズ)


「スピリット……だと!?」


「いくぞ。蛇遣い座より来たれ、十三番目の十二宮Xレア!!蛇皇神帝アスクレピオーズ、召喚!!」


 


【蛇皇神帝アスクレピオーズ:紫・スピリット


コスト9(軽減:紫5):「系統:光導・魔神」


コア1:Lv1:BP7000


シンボル:紫】


 


弾が紫のカードをフィールドに繰り出すと、そのカードから無数の蛇が解き放たれる。紫の半透明の光の蛇達はそのまま天空へと渦巻くように伸びる竜巻となり、それは大地へと次々降り注いで地面に蛇遣い座を描く。そこから溢れた青い炎の中から、無数の蛇となった足を持つ巨大な人型のスピリットが現れる。黒を基調とした、紅い装飾の施された鎧を纏い、その手には二匹の蛇が絡み合った杖を握っている。


 


「じゅ、十二宮Xレアが三体!?」


(本来存在しない、十三番目の十二宮Xレア……)


「アスクレピオーズ、召喚時効果。系統:「星魂」を持つイグア・バギーを破壊し、3枚ドロー」


 


イグア・バギーが青い炎に包まれて消えていき、代わりに弾はデッキからカードを3枚ドローする。しかし、こうも相手に好きなだけやられるわけにはいかない。


 


「だからなんだ!こっちだってバーストがある!バースト発動!双翼乱舞!デッキから2枚ドローし、メイン効果発揮!さらにデッキから2枚ドロー!」


 


相手スピリット/ブレイヴの召喚時効果に反応するバーストを発動し、一気に手札を補充する少女。だが、手札を増やした所でそのがら空きのフィールドが改善する訳ではない。


 


「ジェミナイズをLv3にアップ、アタックステップ」


 


【魔導双神ジェミナイズ


コア2→3:Lv2→3:BP6000→8000】


 


「蛇皇神帝アスクレピオーズでアタック!」


「ライフで受ける!」


 


アスクレピオーズが杖を振り上げるとその先端に光が集う。その先で魔法陣が作り出され、その中心から放たれた光が少女のライフを遂に奪い取る。


 


「く……」


「ターンエンド」


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!はは、何が十二宮Xレアだ!全部一掃してやる!」


(ガイ・アスラの力を考えれば、本当に俺が呼び出した十二宮Xレアが一掃されてもおかしくない)


 


確かにガイ・アスラの力は驚異的だ。しかし、ガイ・アスラの効果は消滅させるのではなく、破壊に特化した能力。その能力では、破壊されても破壊された光導スピリットを手札に戻すヴィエルジェ、そしてLv2・3になれば自分のアタックステップ時に自分の光導スピリットにバトルによる破壊耐性を与えるアスクレピオーズの2体が並んでいる。ガイ・アスラの持つLv4効果までは防げないが、牽制としては十分すぎる役目を果たしているだろう。しかし、


 


(ガイ・アスラの突破力で言えばこの守りの布陣も気休めにしかならないだろう。だが……彼女には何としても、ガイ・アスラを呼んでもらう!今度こそ、俺が超える為に!)


 


この守りを餌にして、異界王のキースピリットを引き出す。少女は、手札にある高コストのスピリットを呼び出す為に手札から2枚のカードを取り出す。


 


「ファイザード、森林のセッコーキジをLv2で連続召喚!」


 


【ファイザード:赤・スピリット


コスト0:「系統:翼竜」


コア4:Lv2:BP3000


シンボル:赤】


 


【森林のセッコーキジ:緑(赤)・スピリット


コスト1(軽減:緑1・赤1):「系統:爪鳥」


コア2:Lv2:BP2000


シンボル:緑(赤)】


 


オレンジ色の毛並みの小型ドラゴンと刀を持つキジが召喚される。下級スピリットを並べた上で少女は、弾にとって印象深いカードを取り出す。


 


「そしてネクサス、星創られし場所を配置!」


「!星創られし場所……!」


 


【星創られし場所:赤・ネクサス


コスト4(軽減:赤2)


コア3:Lv2


シンボル:赤】


 


少女の背後に出現する広大な宇宙。至る所で星を生み出すビッグバンが発生しており、まさに星が創られる全ての始まりを描いている。


 


「その反応……どうやら、こいつの効果を知ってるみたいだな」


「ああ……嫌というほど知ってるさ。こんなものを出してきたんだ、一気に攻めたいだろ?」


「……食えない奴」


 


心地いい冷や汗を背中に感じ取りながら、弾は目の前の光景に、以前の光景を重ねる。星創られし場所の力を受け、ガイ・アスラがXレア達を次々と蹂躙していく様を。これは、その再臨を予感させるのだろうか。


 


「まずはこっちが相手をしてやる!新たな超覚醒の力をここに!天地神龍ガイ・アスラ、召喚!」


 


【天地神龍ガイ・アスラ:赤・スピリット


コスト8(軽減:赤3):「系統:神星・星竜」:【激突】


コア1:Lv1:BP8000


シンボル:赤】


 


「このガイ・アスラは……!?」


 


スレイヴ・ガイアスラや真の姿になる前のガイ・アスラと酷似したスピリットが呼び出される。違う点を上げるとすれば、右半身が黒く、左半身が白く染まっており、その右手に青い月のエネルギーを、そして左手に赤い太陽のエネルギーを秘めているということだろうか。


 


「流石の激突王も驚いたみたいじゃんか。幻羅星龍には劣るけど、この場はこいつで十分だ!さぁ来い!こいつの力を最大限に活かす為の力、ブレイヴ!騎士王蛇ペンドラゴン、召喚!」


 


【騎士王蛇ペンドラゴン:紫・ブレイヴ


コスト5(軽減:紫2・赤2):「系統:妖蛇・星魂」


シンボル:なし】


 


二つの刃が連結した形状の機械の蛇が召喚される。このブレイヴが持つの強力な効果を知る弾は、その効果を用いて自分の破壊に対する防御の布陣を突破しようとしているのだと瞬時に理解する。


 


(そう来たか……)


「天地神龍ガイ・アスラに直接合体!」


 


【天地神龍ガイ・アスラ:赤+紫


コスト8+5→13:【超覚醒】


BP8000+4000→12000】


 


ペンドラゴンが二つの剣に分離され、天地神龍ガイ・アスラの両手に握られる。新たな武器を手に入れたガイ・アスラの身体が強く光り輝き、新たな力がその身体に宿る。


 


「ペンドラゴン、召喚時効果で相手スピリット1体のコア2個をリザーブに置く!ヴィエルジェのコアをリザーブに!」


 


【戦神乙女ヴィエルジェ


コア2→0】


 


ヴィエルジェのコアが全て外され、消滅する。ヴィエルジェの効果に対応していない弱点、消滅を上手く突かれ、ヴィエルジェが消えると共にペンドラゴンの更なる効果が発動される。


 


「この効果でそのスピリットのコアが0個になったとき、自分はデッキから1枚ドローする!そしてアタックステップ!合体スピリットでアタック!星創られし場所の効果!激突!!」


 


星創られし場所の効果により、BP8000以上の自分のスピリットすべてに激突を与える。背後の宇宙から降り注いだ無数の光が天地神龍に激突の力を与え、回復状態のジェミナイズへと激突する。


 


「ここでペンドラゴンの合体時効果!アタック時、相手の合体していないスピリットのコア1個を相手のリザーブに置く!アスクレピオーズを指定!」


 


【蛇皇神帝アスクレピオーズ


コア1→0】


 


ペンドラゴンの刃を天地神龍が振るうと、そこから放たれた紫の斬撃がアスクレピオーズを貫き、その身体を消滅させてしまう。


 


「い、一気に十二宮Xレアが2体も!?」


「そして最後の一体も……」


 


ジェミナイズに向けて振り下ろされる二振りの刃。しかし、その刃を前に弾は手札からマジックを取り出す。


 


「フラッシュタイミング!マジック、トライアングルトラップを使用!コスト4以下の相手スピリット3体、ファイザードと森林のセッコーキジを疲労させる!」


 


三角形の緑色の光が出現し、それがファイザードと森林のセッコーキジを包んで疲労させる。これにより、この2体は攻撃には参加できなくなる。


 


「マジック……また双子座のマジックコンボか」


「ジェミナイズの効果使用はない」


「何……?」


 


手札にマジックが無いということだろうか。今、弾の使えるコアは僅か3個だ。もし使った方が良いマジックがあるなら、ここで使うべきだ。だが、それを使わないということは、


 


(今のあいつの手札にもうマジックはない!今のトライアングルトラップは苦し紛れってことか!)


 


だったら、一気に勝利を狙える。このガイ・アスラは通常の状態では超覚醒を持たない。しかしブレイヴの力を持つことでその力を取り戻せるのだ。


 


「フラッシュタイミング!天地神龍ガイ・アスラ、合体時効果!超覚醒!ファイザードのコアを移動させ、回復!」


 


【ファイザード


コア4→3】


 


【天地神龍ガイ・アスラ


コア1→2】


 


天地神龍がジェミナイズを両断し、弾のフィールドを完全にがら空きに変える。先程とは一転して今度は弾がフィールドをがら空きにされることとなる。しかも弾とは違い、少女のフィールドには超覚醒を持つスピリットがいる。


 


「だ、弾さん!!」


「もう一発、合体アタック!超覚醒で森林のセッコーキジのコアを喰って回復!」


 


【森林のセッコーキジ


コア2→1:Lv2→1:BP2000→1000】


 


【天地神龍ガイ・アスラ


コア2→3:Lv1→2:BP8000→12000+4000→16000】


 


「ライフで受ける!」


 


弾に振り下ろされる刃が容赦なくそのライフを貫いていく。だが、まだその猛攻が終わる事はない。


 


「さらに合体アタック!!ファイザードのコアを喰って超覚醒だ!」


 


【ファイザード


コア3→2:Lv2→1:BP3000→1000】


 


【天地神龍ガイ・アスラ


コア3→4】


 


「ライフで受ける!」


 


追撃もライフで受ける。だがまだ終わらない。彼女のフィールドには超覚醒の餌となるコアがまだ3個も残っているのだから。


 


「まだまだ合体アタック!ファイザードのコアを喰って超覚醒!」


 


【ファイザード


コア2→1】


 


【天地神龍ガイ・アスラ


コア4→5:Lv2→3:BP12000→16000+4000→20000】


 


「ライフで受ける!!」


 


さらに追撃と言わんばかりに放たれる攻撃が、弾のライフを遂に最後の一つにまで減らす。完全に打つ手がなく、ただサンドバックにされていく様子を響はただ心配した様子で見るしかない。


 


「だ、弾さん……」


(……本当に何も打つ手が無いというの?これはまるで……)


「こいつで終わりだ!!合体アタック!」


 


最後の攻撃を叩きこむ為のアタックを宣言する。天地神龍が剣を振り上げて弾へと襲い掛かり、その刃を振り上げる。しかし、そのアタックを見て、無表情で攻撃を受け続けた弾は初めて、不敵な笑みを浮かべた。


 


「!?」


「生憎、コアは撃たせて貯めるタイプでね。ジェミナイズの効果を使わずに攻撃を誘わせてもらった!フラッシュタイミング!」


「!!」


 


ジェミナイズのマジックをノーコストで使う効果があれば、手札のマジックを使って使用コアを浮かせる。そう思い込んでいた少女は、完全に弾の策にはまっていたということに気付く。ジェミナイズの効果を使わないということは手札にマジックがないから効果が使えない。防御用のマジックがもうないということは、攻撃を防げない。そう思い込ませ、コアをリザーブに溜める為にライフを削らせていたのだ。


 


「デルタバリアを使用!」


 


デルタバリアが発動されると同時に弾はそのカードを握る右手で逆三角形を描く。瞬間、白い三角形のバリアが出現し、それが弾の目の前で巨大化して全てのアタックを防ぐ防壁となる。


 


「このターンの間、相手のスピリット/マジックの効果と、コスト4以上の相手のスピリットのアタックでは、自分のライフは0にならない!」


「こ、これを狙って……!」


 


天地神龍が振り上げた刃はデルタバリアを斬れず、逆に弾かれてしまう。しかし、超覚醒に使えるコアがまだ残っている今、次を迎え撃つ準備は万端だ。


 


「くそっ、ターンエンドだ!!」


「流石、伝説って所かしら。こんなプレイングまでしちゃうなんて」


「ジェミナイズにこんな使い方が……」


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。輝竜シャイン・ブレイザーを召喚」


 


【輝竜シャイン・ブレイザー:赤・ブレイヴ


コスト5(軽減:赤2・青2):「系統:星竜・機竜」


コア1:Lv1:BP5000


シンボル:赤】


 


白く輝く翼をもつ機械竜、シャイン・ブレイザーが弾のフィールドへと現れる。サジット・アポロドラゴン達と共に勝利をもたらしてくれたこのブレイヴが、きっと力を与える存在となるだろう。


 


「マジック、ゾディアックコンダクトを使用!」


「ゾディアック……コンダクト?」


「デッキを上から4枚オープンし、その中の系統:「光導」を持つスピリット1体をノーコストで召喚、残りは破棄する」


「ここでギャンブル!?正気か!?」


「リスクも無しに倒せる相手じゃない。そして俺は、デッキを信じる!俺が選び抜いたカード達を、そのカード達で構築したデッキを!」


 


弾のデッキの上から次々とカードがオープンされていく。ブレイヴドロー、武槍鳥スピニード・ハヤト、ダンデラビット。三枚のカードがオープンされるが、ゾディアックコンダクトに対応するカードは存在しない。


 


「だ、弾さん!?」


「残りの一枚が勝負を分ける……」


 


全員が息を呑んでその光景を見る。ゆっくりとオープンされていく最後の一枚。そのカードがゆっくりと裏側から表側になった瞬間、そのカードは赤く強い光を解き放った。


 


「「「!」」」


「カードは応えてくれた。なら今度は俺がカード達に応える番だ!龍神の弓、天馬の矢、戦いの嵐を鎮めよ!光龍騎神サジット・アポロドラゴン召喚!」


 


【光龍騎神サジット・アポロドラゴン:赤・スピリット


コスト8(軽減:赤4):「系統:光導・神星」


コア4:Lv2:BP10000


シンボル:赤】


 


弾の背後で太陽が出現する。プロミネンスの中を駆ける四本の足を持つ白き馬、その上半身に赤、金、緑の三色の鎧を纏う巨大なドラゴン。その右手には巨大な弓が構えられており、背中には龍の翼が生えている。それが、炎を纏って弾の背後からフィールドへと現れ、紅く燃えるように輝く射手座の星座の光と共に咆哮を上げる。


 


「き、来た!!」


 


最後の一枚、サジット・アポロドラゴンを引いて見せた弾に、興奮が隠しきれなくなる響。サジット・アポロドラゴンを呼び出した弾は、間髪いれずにブレイヴの力をその身に宿す。


 


「輝竜シャイン・ブレイザーを光龍騎神サジット・アポロドラゴンに合体!」


 


【光龍騎神サジット・アポロドラゴン


コスト8+5→13


コア4→5:Lv2→3:BP10000→13000+5000→18000


シンボル:赤+赤】


 


輝竜シャイン・ブレイザーの身体が消滅し、背中の翼だけが分離する。サジット・アポロドラゴンの翼もまた消滅し、馬の腰にシャイン・ブレイザーの翼が合体し、シャイン・ブレイザーの6枚の空へと翼が広げられる。


 


「これが、こいつのキースピリット……!?」


「マジック、ネクサスコラプスを使用!星創られし場所を破壊!」


 


空から降り注いだ炎がネクサス、星創られし場所を破壊する。ガイ・アスラに激突を与え、相手のフィールドを蹂躙する異界王のコンボは、これで機能しない。


 


「くっ……」


「アタックステップ!射抜け、合体スピリット!サジット・アポロドラゴン、合体時効果!アタック時、このスピリットのブレイヴの数だけBP10000以下の相手スピリットを破壊する!森林のセッコーキジを破壊!」


 


サジット・アポロドラゴンの弓からはなたれた矢が森林のセッコーキジを撃ち抜く。一瞬にして森林のセッコーキジを破壊すると共に、サジット・アポロドラゴンは更なる効果を発揮させる。


 


「さらにサジット・アポロドラゴンの効果!合体スピリットに指定アタック!」


「!こっちの方がBPは上なのに!?」


 


天地神龍が剣を振り上げてサジット・アポドラゴンへと斬りかかる。それを弓で受け止めると一旦相手を吹き飛ばし、サジット・アポロドラゴンは距離を取るように下がる。


 


「フラッシュタイミング!マジック、バーニングサンを使用!手札のブレイヴ、トレス・ベルーガを召喚、サジット・アポロドラゴンに合体!そして回復!」


 


【トレス・ベルーガ:青・ブレイヴ


コスト5(軽減:青2・赤2):「系統:異合」


シンボル:青】


 


【光龍騎神サジット・アポロドラゴン:赤+青


コスト8+5+5→13


BP13000+5000+6000→24000


シンボル:赤+赤+青】


 


三つの首を持つ青き獣、トレス・ベルーガ。その姿がサジット・アポロドラゴンの背後から青い一筋の光と共に放たれ、サジット・アポロドラゴンと衝突する。瞬間、眩き青の閃光がサジット・アポロドラゴンから放たれて全身の鎧をトレス・ベルーガの顔のような装飾が成された金色の鎧へと変化させ、背中の翼は太陽のように神々しく輝く。


 


「!?ダブル合体……だと……!?」


 


そして変化は弾にも訪れる。弾の身体を激しい闘気が駆け巡ったかのように覇気が弾の全身を包み、アーマーが黒く染まっていく。そしてその表情も大きく変貌し、一切の優しさも何も感じられない、ただ目の前の敵を殲滅し、勝利するという強い意思を宿したかのような形相になる。


 


「BPがガイ・アスラを超えた!」


 


サジット・アポロドラゴンがその弓を変形させて剣にすると、炎を纏って天地神龍へと突進する。同じく剣を構え、迎え撃った天地神龍、しかし交差するように突き出した剣を一振りで弾き飛ばすと、サジット・アポロドラゴンは天地神龍を更なる一振りで両断し、破壊してしまう。


 


【騎士王蛇ペンドラゴン


コア1:Lv1:BP4000


シンボル:なし】


 


「輝竜シャイン・ブレイザー 、合体時効果により、BP8000以上の相手スピリットを破壊したとき、破壊したスピリット1体につき相手のライフのコア1個を相手のリザーブに置く!」


「ぐっ!」


 


サジット・アポロドラゴンがさらに一本の矢を放ち、少女のライフを奪う。だが、まだアタックは終わっていない。回復状態に戻ったサジット・アポロドラゴンはそのトリプルシンボルを振りかざす。


 


「ダブル合体アタック!サジット・アポロドラゴンの効果により、ファイザードとペンドラゴンを破壊!さらに、トレス・ベルーガの効果!デッキを上から6枚破棄しBP+6000!」


 


【光龍騎神サジット・アポロドラゴン


BP13000+5000+6000+6000→30000】


 


砲凰竜フェニック・キャノン、武槍鳥スピニード・ハヤト、バーニングサン、トライアングルトラップ、ダンデラビット、そして巨蟹武神キャンサードの六枚が次々と破棄される。そして、キャンサードがその中にあったことにより、トレス・ベルーガの更なる効果が起動される。


 


「その中に系統:「光導」を持つ巨蟹武神キャンサードがあったので、ダブル合体スピリットは回復する!」


「こ、ここで終われるか!!フラッシュタイミング、アイスエイジシールドを使用!ダブル合体スピリットを指定し、このターンの間、指定した相手スピリットのアタック/効果で自分のライフは減らない!」


 


少女の目の前に白い光を束ねたシールドが出現し、サジット・アポロドラゴンのアタックを辛うじて防ぐ。だが、弾はこの攻撃を防いだ少女の行動を称賛することも無く、今の勝機を逃す事となっても特に残念がる素振りは見せない。むしろ、予想通りと言った表情を見せる。


 


「防ぐと思ってたよ。ターンエンドだ」


「ここまで来て、負けられるかよ!!スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!六分儀剣のルリ・オーサをLv2で召喚!」


 


【六分儀剣のルリ・オーサ:緑(赤)・スピリット


コスト4(軽減:緑2・赤1):「系統:殻人・星魂」


コア2:Lv2:BP5000


シンボル:緑(赤)】


 


少女のデッキに眠る最後のルリ・オーサが出現する。そしてルリ・オーサの召喚によりコアブースト能力が起動する。


 


「召喚時効果で1コア追加!」


 


【六分儀剣のルリ・オーサ


コア4→5】


 


「そしてこいつが本命だ!ビッグバンエナジーを使用!」


「ビッグバンエナジー……コストは3か!」


「そうさ。こいつは手札の系統:「星竜」を持つスピリットのコストをこのターンの間、自分のライフと同じにする。つまり、私の手札の星竜はコスト3だ!」


 


少女の最後の手札が赤く光を帯びる。それは、ビッグバンエナジーの効果を受けてコストが書き換えられているということを意味していることは明白だ。


 


「召喚しろ!星竜を持つスピリットを!」


「ああ、呼んでやるさ!!降臨しろ、幾星霜もの時を経て蘇る、異界の龍!!絶対なる王の力で再度激突王に絶望を叩きこめ!!幻羅星龍ガイ・アスラ、Lv3で召喚!!」


 


【幻羅星龍ガイ・アスラ:赤・スピリット


コスト10(軽減:赤6):「系統:神星・星竜」:【超覚醒】


コア6:Lv3:BP13000


シンボル:赤】


 


地面から吹き荒れる巨大な土煙。上空から降り注ぐ赤い炎。それは、白い人型の上半身に龍の尾が生えたドラゴンが出現する。この時点で既に巨大だが、この幻羅星龍には更に上がある。それを弾は嫌というほど身体に叩き込まれている。


 


「漸く来たか……!幻羅星龍ガイ・アスラ!」


「これは……!」


 


翼が仕留められたスピリット、ガイ・アスラ。その力はアルティメットすらも真正面から叩き潰す、とんでもないものを秘めている。その姿を見るだけで、響は翼との戦いで感じ取った本能が教える恐怖を思い出してしまう。


 


「こいつで今度こそ決めてやる!アタックステップ!ガイ・アスラでアタック!」


 


ガイ・アスラが飛翔し、一直線に弾へ降下する。ダブル合体スピリットでブロックをしたとしても、おそらく今のままでは勝てない。勝つ為に必要なのは、次のドローだ。そう信じ、弾は最後の手札に眠る防御カードを繰り出す。


 


「こいつでくたばれ!」


「いいやまだだ!フラッシュタイミング、デルタバリア!!不足コストはダブル合体スピリットより確保!」


 


【光龍騎神サジット・アポロドラゴン


コア5→1:Lv3→1:BP13000→6000+5000+6000→17000】


 


「に、二枚目だと!?握っていたのか!?」


「こ、これなら!」


 


ルリ・オーサもまたコストは4以上。よって、この二体のアタックで少女は弾を仕留める事は出来なくなってしまった。手札も無い以上、このターンで撃てる手は何も無い。


 


「……くっ、どうせ残してもルリ・オーサは次のターンで破壊される。だったら超覚醒だ!ガイ・アスラをLv4に!!」


 


【六分儀剣のルリ・オーサ:緑


コア5→1:Lv2→1:BP5000→3000


シンボル:緑】


 


【幻羅星龍ガイ・アスラ


コア6→10:Lv3→4:BP16000→30000】


 


Lv4へとガイ・アスラが変化する。瞬間、ガイ・アスラの身体が激しい光を発し、天に金色の二枚の翼が広げられる。そして白い人型をしたその上半身の両手には金色の剣とトライデントが握られる。竜の下半身はさらに巨大になり、紫色の無数の脚が出現する。下にも巨大な口が開かれ、上半身と繋ぐように出現した新たな上半身から生えた四本の腕には、斧、ハンマー、剣、金剛杵がそれぞれ握られ、圧倒的な威圧感を発する。


 


「……!」


「ターンエンドだ!へっ、そいつだけで何が出来る!お前も手札はないんだ!」


「ああ、ない。もう一度ガイ・アスラが暴れ出したら俺は次こそ終わるだろう。だからこそ……このターンで奇跡を起こし、決着を付ける!スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!」


 


ドローステップで何をドローするのか。そのカード次第で、二人の勝敗は分かれる。全員が息を呑んでそのカードが何なのか、見守る中、弾はそのカードを見て、誰にも分からないぐらい僅かに、口元を緩ませた。


 


「リフレッシュステップ!メインステップ!ダブル合体スピリットをLv3にアップ!」


 


【光龍騎神サジット・アポロドラゴン


コア1→5:Lv1→3:BP6000→13000+5000+6000→24000】


 


「アタックステップ!!ダブル合体スピリット、いけ!!アタック時効果でルリ・オーサを破壊!!」


 


炎の矢がルリ・オーサを貫き、その身体を一瞬で消し飛ばす。続けて、


 


「トレス・ベルーガの効果!!」


 


【光龍騎神サジット・アポロドラゴン


B13000+5000+6000+6000→30000】


 


ニジノコ、ダンデラビット、ゴクラクチョー、太陽龍ジーク・アポロドラゴン、砲凰竜フェニック・キャノン、輝竜シャイン・ブレイザー、金牛龍神ドラゴニック・タウラスの六枚が破棄される。ドラゴニック・タウラスが破棄されたことにより、回復条件が満たされる。


 


「ダブル合体スピリットは回復する!そして、幻羅星龍ガイ・アスラに指定アタック!!」


 


サジット・アポロドラゴンの背中から無数の光が放たれ、ガイ・アスラを襲う。身体中を大爆発が包み込むが、それでもガイ・アスラには届かない。その爆発全てを吹き飛ばす炎熱を込めた矢を放ち、続けて口から解き放った火炎がガイ・アスラの身体に直撃する。それでもガイ・アスラは一歩も揺るがず、一歩、また一歩とサジット・アポロドラゴンへと近付く。


 


「BPは同じ30000!相討ちだ!!」


「これで終わりだと思うな!!」


「!」


「フラッシュタイミング!ネオ・アグレッシブレイジを使用!!このターン、ダブル合体スピリットにBP+3000!さらに真・激突を追加する!!」


 


【光龍騎神サジット・アポロドラゴン


【真・激突】


B13000+5000+6000+6000+3000→33000】


 


サジット・アポロドラゴンが炎を纏い、竜巻となってガイ・アスラへと激突する。時咆哮を響かせて接近するサジット・アポロドラゴンに対し、両手から禍々しい光の光線を放ってサジット・アポロドラゴンを仕留めようとする。だが、それを紙一重で避けると、空を強く蹴って突進し、剣に変形させた弓を振り上げる。が、そこへ闇の闘気を纏わせた斧を命中させ、ガイ・アスラはサジット・アポロドラゴンを吹き飛ばす。そのままサジット・アポロドラゴンが倒れるかと思われた次の瞬間、その身体を無理矢理振り向かせて一本の矢を構え、その照準をガイ・アスラの額へ向ける。


 


「今度こそ、超えてみせる!ダブル合体スピリット!真・激突!!」


 


矢から溢れんばかりの光が漏れる。全てのエネルギーを注ぎ込んだ、サジット・アポロドラゴン最大の一撃が放たれた瞬間、大地が振動し、空に浮かぶ雲の全てが吹き飛ばされていく。それほどのエネルギーを余波だけで発生させながら放たれた一撃は全てのエネルギーを両手に込め、その拳を叩き付けたガイ・アスラと真正面からぶつかり合う。数秒、だが数時間にすら思えるほどの衝突が続く。


 


「……!」


 


そしてその一撃は、ガイ・アスラを貫いた。貫き、その矢は少女のライフを撃ち抜く。


 


「うぁああああ!!!」


 


その痛みが、少女を現実へ引き戻す。彼女の目の前で身体中の至る所が爆発し、散っていくガイ・アスラ。ネフシュタンの絶対的な力、異界王の力は今、激突王に、ブレイヴ使いに打ち砕かれたのだ。


 


「嘘……だ……ろ……?」


「勝った……?弾さんが……弾さんが勝った!!」


「これは驚いたわね……」


「俺の勝ちだ!ネフシュタン、異界王!!いけぇ、ダブル合体スピリット!!」


「う、あ、うああああああああああ!!!」


 


剣を構え、突進するサジット・アポロドラゴン。ガイ・アスラを破壊され、シャイン・ブレイザーの効果で砕け、残りライフ2となった少女の目の前に立つ、トリプルシンボルのスピリット。そして、その戦いに決着を付けるようにサジット・アポロドラゴンがその刃を、振り下ろした。


 


 



 


 


「っ……!」


 


エクストリームゾーンの外へと出た弾は、高まる興奮を抑えながら、ネフシュタンの少女を探す。彼女はどこにいるのか。しかし、弾が顔を空へ向けると、そこにはボロボロのネフシュタンの鎧を纏ったままどこかへ逃げる少女の姿があった。


 


「……」


 


追いかけるには遅いだろう。だが、まだ何れ、彼女とは再開できるだろう。その時は、異界王やネフシュタンとは関係ない、彼女自身のデッキと、彼女自身のバトルと戦いたい。


 


「弾さん!!」


「あらあら」


 


そう、笑顔で駆け寄ってくる響と、その様子を微笑ましく見る了子を見ながら、弾は思うのだった。

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