第20話 運命の日
人を救う。命を護る。口で言うのは簡単だし、言葉にするのもきっと簡単だろう。だが、それを実際に行動に移し、成し遂げられた時の達成感と喜びは精神的にはとても大きなものがある。自分達の歌が死を目前としている人々に生きる為の希望を与え、自分達のバトルで皆を救う事。ノイズを倒したい、その一心で得たこの力には別の使い方もある。その事に奏は気付き始めていた。誰かに歌を聞いてもらう事の気持ち良さ。これからも二人で一緒に歌い続けたい。そんな思いが、ツヴァイウイングを生み出した。
「……ふぅ」
三年後。とある会場と思われる場所の舞台裏。白いフードの付いたジャケットを深くかぶり、コンテナのような箱に背を預ける形で座る翼の姿があった。彼女の近くではスタッフ達と思われる人々が忙しなく動いており、どこか緊張している姿の翼にも構っていられない程の忙しさが彼らの予定を支配しているようにも見える。
「間が持たないっていうか、何ていうかさ……始まるまでのこの時間が苦手なんだよねぇ」
そんな彼女の下に、翼と同じく白いフードの付いたジャケットのようなものを羽織った奏が現れる。翼の隣に座りこんだ奏に、その言葉を肯定するように翼は無言で小さく頷いた。
「こちとらさっさと大暴れしたいってのに、そいつもままならねえ」
無論、頭ではそれは出来ないと分かっているのだ。準備が色々必要なことだって分かるし、こういった仕事は自分達は根本的に知識が足りず、何の役にも立てない。結局、こうやって待っていることしか出来ないのだ。それが煩わしいのだろう、それを解消する為なのかフードを外して頭を掻いているようだが、その程度でこの煩わしさが消える訳も無い。
「……そうだね」
何時になく返事をする声に覇気がない。妙に静かだ、と考えた時、ある可能性に気付いて内心苦笑しながら翼にそれを問いただしてみる。
「お?もしかして翼、緊張とかしちゃったりしてる?」
「あ、当たり前でしょ!今日は大事だし……」
図星だったようだ。頬を赤らめながら答える彼女の姿は可愛らしくもあるが。気を詰めている彼女の顔に軽くデコピンを入れながら、奏はそれを元気に笑い飛ばす。
「かーっ!真面目がすぎるねぇ!」
「翼、奏。ここにいたか」
「司令?」
そんな彼女たちを見つけ、近寄ってくる弦十朗。赤いスーツを着ている弦十朗はいつも通りと言った表情で腰に手を当てて二人の様子を見ている。緊張していると思っているのだろうか。尤も、翼に関しては本当に緊張していたが。
「おっ、こりゃまた弦十朗の旦那」
「分かっていると思うが、今日は……」
「大事だっていいたいんだろ?」
彼女たちなら心配することは何も無い。その事を弦十朗自身知っているのだろう、だから敢えて二人の心持や健康状態などについて聞きはしない。しかし、自分達がやろうとしているその大きな事の重さを実感し、成し遂げてもらう為に確認を取るように口を開くが奏は何度も言われなくても分かってると言わんばかりに途中でその言葉を遮るように口を開く。
「分かってるから、大丈夫だって」
手を振りながらどこかおちゃらけている、だが余裕を含ませた様子の奏に一種の信頼感を見出す弦十朗。これならば問題はないなと笑いながら、近付く時に備え、二人に最後の言葉を投げかけるのだった。
「ふっ、分かっているならそれでいい」
三人がいるこの場所には、多くの人々が集まろうとしていた。ここで行われるのは、ツヴァイウイングのライブ。特設されたライブ会場では、表向きではツヴァイウイングの輝かしいライブが行われるとなり、ファン達が集うこととなる。しかし、裏ではある大きな計画を行っていた。
「今日のライブの結果が、人類の未来を賭けているってことに……な」
会場の真下。地下の厳重に隔離されているその一室に置かれている精密機械の数々。それらに護られる形で、白い鉱物のような何かが台座の上に安置されている姿がある。その鉱物を示す文字は、Nehushtan。ネフシュタンの鎧と後に呼ばれる、完全聖遺物である。
「あら?」
その一室を上の方から窓を通じて見下ろしている別の部屋。そこには無数のコンピュータなどがあり、数人の手慣れた様子でコンピュータを操作する白衣の人々が注意深く目の前のモニターを凝視していた。そして、その中には了子の姿もある。手元の携帯に着信音が鳴り響き、弦十朗からの電話だと知った了子は電話を繋げてそれを耳に当てる。
「まいどー!桜井了子です。こちらの準備は完了よ?」
ライブでツヴァイウイングが歌い、盛り上がる。それによって生じた、巨大なフォニックゲインを用いて完全聖遺物であるネフシュタンを起動させる。それこそが、このライブの真の目的だと言っていい。これで、全ての準備は整った。
「分かった。すぐに向かおう」
そう返事を返して通信を切ると、弦十朗は奏と翼に視線を向ける。漸くかと痺れを切らしたかのように奏は立ち上がると、ぐっと親指を立て、後は自分達に任せてくれと言わんばかりに声を出す。
「ステージの上は私達に任せておいてくれ!」
そして、その声に対して弦十朗も頷き返して見せ、了子の下に向かう為にその場を去る。そして会場の調整を行っていた係員の人達も消えて会場に観客達が集まり始める。壁に立てかけられた時計を見ながら、まだかまだかと待ちながら、奏は軽く身体を伸ばし始める。
「さて、と。難しい事は旦那や了子さんに任せてさ、私らはぱーっと……ん?」
ここまで無反応な翼に、まだ緊張しているのかと視線を向ける。すると、やはり案の定と言うべきか、難しい顔をしたまま黙りこくっていた翼の姿がそこにはあった。
「……?」
「真面目がすぎるぞ?翼」
しょうがないなと内心で呟きながら、翼の後ろに回り込むとそのまま優しくその身体を抱き締める。
「あんまりガチガチだと、その内ぽっきり折れちまいそうだ」
「……奏」
「私のアイボウは翼なんだから。そんな顔してると、私まで楽しめない」
どこか安心感が溢れていた。その温もりを感じ取りながら、翼は自分でも気付かない内に自然とその表情を柔らかく変化させていた。
「……うん。私達が楽しんでないと、ライブに来てくれた皆も楽しめないよね」
「分かってるじゃんか」
「奏と一緒なら、何とかなりそうな気がする」
顔を上げた翼の顔には、もう不安はなかった。彼女の不安をどうにかすることが出来たことに奏は安心したように喜びながら静かに頷き返す。
「行こう、奏」
「ああ!私とあんた、両翼揃ったツヴァイウイングは、どこまでも飛んでいける!」
「どんなものでも、超えて見せる!」
そして二人は手を繋ぎ、ライブ会場へと繰り出した。
★
ツヴァイウイングのライブは人々を熱狂の渦に巻き込んでいた。一曲歌い、会場の盛り上がりも最高潮に達してきた中、地下では。
「想定内の伸び率を記録していますね」
「成功みたいね」
この実験が成功するかどうか。自分達に打てる手は全て打ち、後は翼と奏次第だ。しかし、二人は見事やり遂げてくれた。このまま行けば無事に順調に実験は終わるだろうと弦十朗も安心したように胸を撫で下ろす。
「お疲れ様!」
そして地上ではツヴァイウイングの二曲目が歌われようとする。そんな中、表示されていくモニターに異変が生じ、その画面が赤く点滅して危険信号を告げ始めることとなる。
「どうした!?」
警告音と赤く点滅する画面を見聞きし、一転して険しい表情を見せる弦十朗。研究員達は慌ててその原因を究明しようと忙しなくキーボードを動かしていく。
「聖遺物内のセーフティが持ち堪えられません!」
「!?」
「このままでは聖遺物が起動、暴走します!」
不味い。そう弦十朗が直感したその時だった。ネフシュタンから激しく、禍々しい虹色の光が溢れ出したのは。まるで内部に秘められていた強い怒り、願い、覚悟が合わさったような炎となったその光は、部屋を破壊し、消滅させ、大爆発を引き起こして破壊の限りを尽くしたのは。
「「!?」」
その変化は、地上にも現れる。ネフシュタンの暴走によって発生した爆発は、ライブ会場を破壊し、突然発生した爆発にライブは中断、人々は突然の事に思考を麻痺しながらも爆発の中心地から逃げようと闇雲に逃げ出す。一体何が起こったのか。奏と翼も驚いていたが、その爆発によって発生した煙の中、宙に黒い粉のようなものが舞っているのに気付く。
「……」
ただの爆発でこんな、黒い塵みたいなものが舞う事はまずない。有り得るとすればただ一つ。炭素転換を行うあの存在がこのライブ会場に現れたという事だ。
「ノイズが……来る……!」
緊迫した表情で、奏が声を漏らした瞬間。空から無数のノイズが降り注ぎ、地中からも大地を砕いて現れる。人々を襲う為に。ノイズに触れた瞬間、人々の身体は黒く炭化し、散っていく。人の多すぎるこの場所に大量に襲撃したせいで、被害を受ける人は次々と増えてしまう。ここは、自分達がやるしかない。強い覚悟で奏は翼に口を開く。
「歌うぞ、翼!この場で槍と剣を携えているのは、私達しかいない!」
「で、でも司令からは何も……あ、奏!?」
指示など待っていられるものか。目の前にノイズが現れ、ノイズが人々を襲っている。それだけでこの力を使う理由には十分だ。ステージから飛び出した奏は、そのままシンフォギアを起動させる歌を奏で、その身体にガングニールを纏わせていく。
「……ふっ」
そのまま降り立った奏に標的を移し替えたのか、ノイズ達は奏に視線を移したように首を回転させる。目が見えないので本当にそうしたのかは分からないが、そんな素振りをしたように奏には見えた。
「やってやるさ!正面突破で全部蹴散らしてやる!ゲートオープン、界放!!」
奏の姿が多くのノイズを引き連れてエクストリームゾーンへと消えていく。別の空間へ引きずり込まれたノイズ達は一つに集約され、人型となって奏を迎え撃つ。
『スタートステップ、ドローステップ、メインステップ。マジック、リバイヴドローを使用。自分はデッキから2枚ドローする。ターンエンド』
「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!メインステップ!カグツチドラグーンを召喚!」
【カグツチドラグーン:赤・スピリット
コスト4(軽減:赤2):「系統:古竜」
コア1:Lv1:BP3000
シンボル:赤】
真っ赤に燃える炎の翼を広げる白い鎧を纏ったドラゴンが奏のフィールドに現れる。エクス・ムゲンドラに続く軽量の古竜としての強さは伊達では無い。
「アタックステップ!カグツチドラグーンでアタック!アタック時効果で1枚ドロー!」
カグツチドラグーンの効果で手札を増やし、そのままライフを奪いに行く。翼を宙へ広げ、飛翔したカグツチドラグーンが炎を纏った爪を振り上げてノイズへと殴りかかる。
『ライフで受ける』
「ターンエンド」
『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。ザニーガン、プロード・ファルコンを召喚』
【プロード・ファルコン:白・スピリット
コスト1(軽減:白1):「系統:武装」
コア1:Lv1:BP2000
シンボル:白】
【ザニーガン:白(赤)・スピリット
コスト1(軽減:白1):「系統:武装・空魚」
コア1:Lv1:BP1000
シンボル:白】
小さなロボットが中心に搭乗している衛星のような白のスピリット、プロード・ファルコンがザリガニ型の赤いボディを持つスピリット、ザニーガンと共にノイズのフィールドに召喚される。
『氷楯の守護者オーシンをLv2で召喚』
【氷楯の守護者オーシン:白・スピリット
コスト3(軽減:白2):「系統:武装」
コア2:Lv2:BP4000
シンボル:白】
氷の膜が張られたかのような巨大な鋼鉄の楯を手に持つ白銀の鎧を纏った守護者、オーシンがザニーガンとプロード・ファルコンを守るかのように最前列に出現する。
「一気にスピリットを並べ始めてきた……?」
『アタックステップ。氷楯の守護者オーシンでアタック』
「ライフで受ける!」
オーシンが楯を振り上げて奏へ勢いよく叩き付ける。白い半透明のバリアと同時に砕かれたライフの痛みに耐えながらも、奏はまだスピリットが残るそのフィールドから視線を外さないで次の一手を待つ。
『ターンエンド』
「スタートステップ!コアステップ、ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!カグツチドラグーンをもう1体Lv2で召喚!」
【カグツチドラグーン
【激突】
コア3:Lv2:BP6000
シンボル:赤】
「アタックステップ!Lv2のカグツチドラグーンでアタック!アタック時効果で1枚ドロー、さらにLv2効果!激突!」
『プロード・ファルコンでブロック』
プロード・ファルコンへ激突するカグツチドラグーン。その体当たりを真正面から受けたプロード・ファルコンは粉々に粉砕されたかのように宙を舞い、消えていく。
「ターンエンド」
『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。機人フィアラルをLv2で召喚』
【機人フィアラル:白・スピリット
コスト3(軽減:白1):「系統:武装・機人」:【装甲:赤/緑】
コア2:Lv2:BP4000
シンボル:白】
斧と盾を持つ白い鎧に身を包んだ機人、フィアラルが更なる護りを作り出す。例えカグツチドラグーンが激突してこようと、フィアラルがいれば返り討ちに出来る可能性は一気に上昇する。
『ターンエンド』
「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!来い!グランド・ドラグキャッスル!召喚!不足コストはカグツチドラグーンから確保!」
【カグツチドラグーン
コア3→0】
【グランド・ドラグキャッスル:赤・スピリット
コスト8(軽減:赤5):「系統:古竜」
コア1:Lv1:BP6000
シンボル:赤】
地面に無数のヒビが刻まれていく。巨大な音を引き立て、大地を砕きながら現れたのは、まるで城だった。城のような住処と合体した巨大な龍がフィールドに出現し、その場にいた者達全員を震わせる程の咆哮を解き放つ。
「ターンエンド」
『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。機人フィアラルを召喚』
【機人フィアラル
コア1:Lv1:BP2000
シンボル:白】
『ターンエンド』
「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!」
手札に来たこのカードを呼ぶことは出来るだろう。しかし、今はそれ以上に相手のフィールドをどうにかしなければならない。一体を対処するよりもここは、纏めて二体を仕留める方がいい。そう判断して奏はこのドローステップで引いたカードでは無く既に手札にあるマジックを取り出す。
「ムゲンドラを召喚!」
【ムゲンドラ:赤(白)・スピリット
コスト1(軽減:赤1・白1):「系統:新生」
コア1:Lv1:BP1000
シンボル:赤(白)】
エクス・ムゲンドラと比べると装甲などが無い、一回り小型化したようなムゲンドラが呼び出される。このスピリットは、軽減シンボルを稼ぎ、次へと繋ぐ一手として呼び出しておく。
「マジック、ドラゴンズラッシュを使用!」
ドラゴンズラッシュを発動したターン、系統:「翼竜」/「竜人」/「古竜」を持つ自分のスピリットが相手のスピリットとBPを比べて相手スピリットだけを破壊したとき、回復する事が出来る。その効果の恩恵を受けられるのは、系統:「古竜」を持つカグツチドラグーンとグランド・グランド・ドラグキャッスルだ。
「カグツチドラグーンとグランド・ドラグキャッスルをLv2にアップ!」
【カグツチドラグーン
【激突】
コア1→3:Lv1→2:BP3000→6000】
【グランド・ドラグキャッスル
コア1→2:Lv1→2:BP6000→8000
シンボル:赤】
「アタックステップ!グランド・ドラグキャッスルでアタック!アタック時効果、系統:「古竜」を持つ自分のスピリット1体につき、このスピリットをBP+3000!」
【グランド・ドラグキャッスル
BP8000+3000×2→14000】
「さらにグランド・ドラグキャッスルはアタックするとき、相手のフィールドで最もBPの高いスピリット1体を指定してアタックできる!氷楯の守護者オーシンを指定!」
グランド・ドラグキャッスルがオーシンへとその巨体を活かした力任せの突進を叩き込む。その巨大な質量を当然受け止められる訳も無く、オーシンの楯は砕かれ、その身体も一瞬で消滅するように消えてしまう。
「さらにドラゴンズラッシュの効果でグランド・ドラグキャッスルは回復する!再びアタック!」
『機人フィアラルの装甲:赤発揮。このスピリットは相手の赤のスピリットの効果を受けない。ライフで受ける』
フィアラル二体が赤いバリアに包まれ、グランド・ドラグキャッスルの効果を弾く。そしてそのアタックをライフで受けたことでその身体の光が更に一つ消滅していく。
「カグツチドラグーンでアタック!アタック時効果で1枚ドロー、さらに激突!」
『ザニーガンでブロック。機人フィアラル、Lv1・2・3フラッシュ時効果。このスピリットを疲労させることで、このターンの間、系統:「武装」を持つスピリット1体にこのスピリットのBPを加える。ザニーガンを指定』
【ザニーガン
BP1000+2000+4000→7000】
二体の機人フィアラルが疲労し、そのBPが全てザニーガンへと加わる。それによって逆転されるBP。だが、奏もここで引き下がる訳にはいかない。Lvが上がれば重装甲:赤を得る事となるザニーガンだけはここで仕留めるべきだ。
「フラッシュタイミング!アルティメットパワー!不足コストはグランド・ドラグキャッスルから確保!」
【グランド・ドラグキャッスル
コア2→1:Lv2→1:BP8000→6000】
「カグツチドラグーンにBP+3000!」
【カグツチドラグーン
BP6000+3000→9000】
カグツチドラグーンに更なるBPが与えられ、ザニーガンを超える。ザニーガンの放つレーザー攻撃をその身体に纏った炎が弾き飛ばし、その身体に激突すると一撃で身体を破壊する。
「ドラゴンズラッシュの効果でカグツチドラグーンは回復!二度目のアタック!アタック時効果で1枚ドロー!」
『ライフで受ける』
カグツチドラグーンが回復し二度目のアタックがノイズへ襲い掛かる。このターンで一気に二つのライフを奪われたノイズに更なる追撃をかけたい所だが、守りが余りにも手薄になるのは不味いだろう。
「ターンエンド」
『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。自分のライフが3以下の間、手札にあるこのスピリットカードを召喚するとき、コスト6として扱う』
「!?」
ノイズの手にある一枚のカード。そのコストが12からいきなり6へと書き変わる。特殊な条件下でそのコストを書き換える特殊な効果を持つスピリット。その力が降臨する。
『六巨皇ディプロドックス、Lv2で召喚』
【六巨皇ディプロドックス:白・スピリット
コスト12(軽減:白6):「系統:巨獣・機獣」
コア4:Lv2:BP20000
シンボル:白白】
大地がひび割れ、冷気が噴き出す。冷気の中から現れたのはオレンジを基調とした巨大な装甲を持つ、背中に大量の砲門を背負った獣。グランド・ドラグキャッスルと真正面から張り合える大きさを持つ巨体が、轟音を立ててフィールドに立つ。
「でか……!?」
『アタックステップ。六巨皇ディプロドックスでアタック。フラッシュタイミング、マジック、ドリームホライゾンを使用。不足コストは六巨皇ディプロドックスより確保』
【六巨皇ディプロドックス
コア4→2:Lv2→1:BP20000→10000】
『相手のスピリット1体を手札に戻す。ムゲンドラを指定』
ムゲンドラが奏の手札に戻り、ブロッカーが消えていなくなる。これで三体のアタックを受ければ残った全てのライフは砕け散る事だろう。だが、そうはさせない。
「フラッシュタイミング!ドラゴニックウォールを使用!不足コストはカグツチドラグーンより確保!」
【カグツチドラグーン
コア3→2:Lv2→1:BP6000→3000】
「カグツチドラグーンを破壊して、このバトル終了時にアタックステップを終了する!このアタックはライフで受ける!」
ディプロドックスの背の砲台から放たれた砲撃が奏のライフを撃つ。ダブルシンボルの強烈な一撃をその身に受けながらも、目の前でカグツチドラグーンが自身の身体を燃やして作り上げた炎の壁が敵の追撃を阻むのを見る。
『ターンエンド』
「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!再びムゲンドラを召喚!」
【ムゲンドラ
コア1:Lv1:BP1000
シンボル:赤(白)】
「さぁ、出番だ……!」
このカードを呼ぶならばここしかないだろう。そのカードを呼び起こす為の歌と共に、奏は自らのシンフォギアの象徴たるカードを解き放つ。
「目の前の敵を貫け!アルティメット・ジークフリード、Lv5で召喚!」
【アルティメット・ジークフリード:赤・アルティメット
コスト6(軽減:赤3):「系統:新生・古竜」
コア5:Lv5:BP20000
シンボル:極】
紅蓮の鎧を纏った金色の覇気を纏ったドラゴンが奏のフィールドに降り立つ。アルティメットの輝きを槍として携え、奏は一気に攻めかかる。
「グランド・ドラグキャッスルをLv2にアップ!」
【グランド・ドラグキャッスル
コア1→2:Lv1→2:BP6000→8000】
「アタックステップ!アルティメット・ジークフリードでアタック!Uトリガー、ロックオン!」
奏の手に出現した槍から放たれた光がノイズのデッキを破壊する。しかし、トラッシュへ落ちたのは魔星機神ロキ。コスト7のカードであった為、アルティメット・ジークフリードのトリガーはガードされることとなってしまう。
『Lv1の機人フィアラルでブロック』
アルティメット・ジークフリードのアタックを受け止めようとするフィアラル。しかし、そのパワー差を覆せるわけが無く、簡単に押し潰されてしまう。
「……ターンエンド」
『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。六巨皇ディプロドックスをLv2へアップ』
【六巨皇ディプロドックス
コア2→4:Lv1→2:BP10000→20000】
『盾星鎧シールドタンクを召喚』
【盾星鎧シールドタンク:白・ブレイヴ
コスト4(軽減:白2):「系統:武装・星魂」
シンボル:白】
両腕に巨大なシールドを取り付けた黒いキャタピラに乗った人型の戦車が召喚される。強大な防御力を与えるブレイヴは、その力を如何なく発揮させる事となる。
『盾星鎧シールドタンクを六巨皇ディプロドックスに直接合体』
【六巨皇ディプロドックス
コスト12+4→16:【超装甲:緑/白】
BP20000+3000→23000
シンボル:白白+白】
シールドタンクの両腕に装着されていた巨大な盾がその身体から分離し、代わりに本体が消滅する。盾はディプロドックスの胴体の両脇に装着され、新たな装甲となる。
「ここで合体スピリット……!?」
『ネクサス、無限なる軌道母艦をLv2で配置』
【無限なる軌道母艦:白・ネクサス
コスト3(軽減:白1)
コア2:Lv2
シンボル:白】
空間に穴が開き、そこから巨大な母艦が出現する。武装をサポートするべく誕生したネクサスを従え、ノイズはアタックステップへ突入する。
『アタックステップ。機人フィアラルでアタック』
「グランド・ドラグキャッスルでブロック!」
フィアラルが斧を振り上げて果敢に攻め込む。しかし、そのアタックはグランド・ドラグキャッスルの巨体に阻まれ、振り抜かれた尻尾はフィアラルを一撃で破壊する。
『無限なる軌道母艦、Lv2自分のアタックステップ時効果。系統:「武装」を持つ自分のスピリットすべては、BPを比べ相手のスピリットに破壊されたとき手札に戻る。合体スピリットでアタック』
「ムゲンドラでブロック!」
フィアラルを手札に回収し、続けてディプロドックスが奏へ襲い掛かる。背中の砲台が奏に向けられるが、その砲台の照準を奏からムゲンドラへと変更し、砲台から放たれた砲撃がムゲンドラを一撃で掻き消していく。
『ターンエンド』
「……このターンで決着を付ける!スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!グランド・ドラグキャッスルをLv3にアップ!」
【グランド・ドラグキャッスル
コア2→8:Lv2→3:BP8000→9000】
「アタックステップ!アルティメット・ジークフリードでアタック!Uトリガー、ロックオン!」
二度目のトリガー。奏の槍から放たれた光がノイズのデッキを撃ち抜いていく。勝敗を分けるであろう運命のトリガー。トラッシュへと落ちたカードは、
「ヒット!!」
シュライクン。コスト1のスピリットカードだ。トリガーがヒットしたことで、相手はスピリットでブロックすることが可能であれば必ずブロックしなければならない。
「合体スピリットでブロック」
疲労状態でブロックできるディプロドックスがアルティメット・ジークフリードを迎え撃つ。そんpBPは僅かにディプロドックスの方が上だが、
「アルティメット・ジークフリードのトリガーがヒットしたアタックを相手スピリットがブロックしたとき、相手のライフのコア1個をリザーブに置く!」
アルティメット・ジークフリードとディプロドックスがぶつかり合う衝撃がノイズへ襲い掛かり、そのライフを砕く。だが、ディプロドックスもただ主のライフを削らせるだけではない。
『盾星鎧シールドタンク、合体時ブロック時効果。このスピリットをBP+5000する。相手のアルティメットをブロックしたとき、さらに、このスピリットをBP+5000する』
【六巨皇ディプロドックス
BP20000+3000+5000+5000→33000】
BP33000。ほとんどのスピリットどころかアルティメットすらも真正面から蹴散らすであろう高BPを得てディプロドックスは激しい弾幕を展開し、その無数の砲撃をアルティメット・ジークフリードへと浴びせていく。このままではアルティメット・ジークリードは破壊され、残ったグランド・ドラグキャッスルもアタックした所で疲労ブロック効果で阻まれるだけだ。
「まだだ!フラッシュタイミング!アルティメット・ジークフリード、真・覚醒!グランド・ドラグキャッスルのコア1個をこのアルティメットに移動させ、BP+3000!この効果を、5回使用!」
【グランド・ドラグキャッスル
コア8→3:Lv3→2:BP9000→8000】
【アルティメット・ジークフリード
コア5→10:BP20000+3000×5→35000】
真・覚醒の力がグランド・ドラグキャッスルの力を取り込み、ディプロドックスを上回る。真正面から砲撃をその身体に浴びせられながらも突進し、発生する爆煙の中、ディプロドックスの首筋に思い切り噛みつくと、そのまま身体を持ち上げて勢いよく叩き付け、ディプロドックスを仕留める。
【盾星鎧シールドタンク
コア1:Lv1:BP3000
シンボル:白】
残ったシールドタンクがスピリットとして残る。しかしそんな事はもう関係ないだろう。このアタックで決着を付けるのだから。
「これで終わりだ!グランド・ドラグキャッスルでアタック!」
グランド・ドラグキャッスルが咆哮を上げ、ノイズへ襲い掛かる。そしてそのアタックは、ノイズの最後のライフを蹴散らし、その存在を炭化させて無数の塵へと変えるのだった。
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