第18話 雷光の激突

日本のどこかにある深い森の中。そこにはどこか現代には似合わない中世のような雰囲気を感じさせる豪勢な屋敷の一室から、通信を行っているのか、機械を通して向こう側から英語で語りかける男の声が部屋に静かに響いていた。


 


「ソロモンの杖……我々が譲渡した聖遺物の機動実験はどうなっている?」


「報告の通り、完全聖遺物の起動には相応レベルのフォニックゲインが必要になってくるの」


 


屋敷の中の一室。そこには屋敷全体の雰囲気には相応しくない、高性能コンピュータや電流椅子などが備え付けられた一室で、白に近い長い金髪を持つ一人の女性が受話器を手に語りかけていた。場所、内装、どれをとっても異質ではあるが、それ以上に異質さを演出しているのは、彼女がハイヒールとソックス、腕を覆う手袋を着けていること以外は全裸であることだろう。


 


「簡単にはいかないわ」


 


そう答えながら、その手に持つ一本の杖のようなものから緑色の光を目の前に放つ。するとその光はノイズへと変化し、それを確認して女性は手慣れた様子でノイズを消していく。彼女が今使用しているのは、まさにソロモンの杖と呼ばれる代物。以前、響達を襲撃したネフシュタンの少女も使用した、ノイズを操る巨大なポテンシャルを秘めた杖だ。


 


「ブラックアート……失われた先史文明の技術を解明し、是非とも我々の占有物としたい」


「ギブ&テイクね。あなたの祖国からの支援には感謝してるわ……今日の鴨撃ちも首尾よく頼むわね」


「あくまで便利に使うハラか。ならば、見合った働きを見せてもらいたいものだ」


「勿論理解しているつもりよ。従順な犬ほど長生きするというしね」


 


口ではそう語るが、既に向こう側が知らない幾つかの情報を彼女は握っている。その成果もある。それが先程使用した、ソロモンの杖。向こう側はまだ機動実験を行っている段階だと思っているだろうが、既にこちらは実戦にすら使用している。とっくに機動実験など終了しているのだ。上辺では彼らの機嫌を損ねないように返事を返すと、女性は受話器を置いて通信を切る。


 


「野卑で下劣。生まれた国の品格さのままで救いようのない連中。これは確かに、彼らのように世界を壊したくもなるわ」


 


心底うんざりとした様子で日本語を口から漏らしながら、女性は部屋に置かれた様々な機器が備え付けられた壁際に近付く。そこには、一人の少女が両手と両足、腹などを拘束具で縛られ、壁に張り付けられていた。


 


「ふふ、そんな男達に、既にソロモンの杖は起動しているなんて教える意義はないわよね?クリス」


「……っ」


 


全身から冷や汗を流しながら、衰弱した身体の少女は、静かに目を開く。白に近い紫色の髪を持つ、紫色の目を持つクリスと呼ばれた少女は、顔を上げて女性を見る。


 


「苦しい?可哀想なクリス……貴女がぐずぐず戸惑うからよ」


 


最初の方は容態を確かめるかのように優しい声だったのが、段々低く、厳しい声音になっていく。まるで彼女の失敗を責めているかのように。


 


「誘い出された子猫をただ連れてくればいいだけなのに……手間取ったどころか、連れてくる事も出来なかったなんて……」


「……」


「確かに、貴女じゃ馬神弾には勝てない。かつて超覚醒を使いこなした二人のカードバトラーには遠く及ばない貴女が、そのカードバトラーの一人を打ち破り、当時よりも確実に強くなっている弾に勝つ事は不可能。でも、その為にソロモンの杖で時間稼ぎをしておくようにと言った筈なのに……結果はあのザマ」


 


弾はノイズ達を退けて響達の所へ到着してしまった。無論、彼女としても弾がノイズ程度にやられるとは到底思ってはいない。それでも多少は時間を稼げていた筈だし、現に彼女、クリスが翼と戦っている間、弾はノイズとバトルしていたのだ。つまり、後一ターンでも早く翼を倒せていれば、女性の目的である響を連れ去る事が出来ていたのだ。


 


「……これで……いいんだよな……?」


「?何?」


「私の望みを叶えるためには、お前に従っていればいいんだよな……?」


 


何かに縋るように声を漏らす。その不安げな少女に、女性は断固たる意思でクリスの意思を呑み込むかのようにその口を開き、強い声音で諭すように言葉を投げかける。


 


「そうよ。だから、貴女は私の全てを受け入れなさい……」


 


そして不敵に笑うと、彼女を縛りつけている壁から離れ、近くのレバーやボタンなどが取り付けられた装置へと移動する。


 


「でないと、嫌いになっちゃうわよ?」


 


そう言いながらレバーを降ろした瞬間、クリスの全身に電撃が駆け巡り、彼女の身体に大きなダメージが叩き込まれる。


 


「が、あ、あああああああああああああ!!!」


 


激しい痛みから逃れたいという本能が彼女の身体を勢い良く揺らす。しかし、壁に固定されている彼女は動く事もままならない。


 


「悩まないで、ただ私に身を委ねなさい?貴女は世界に否定され、大切な仲間を世界に殺され、人に縋る事も出来なくなり、愛される事もなくなって孤独に染まった王様とは違う。今は私だけが貴女を愛することが出来るのだから」


 


電流を止めると、女性はクリスに近付き、その頬に手を優しく当てる。


 


「覚えておいてねクリス。痛みだけが人の心を繋ぐ絆になる。それが世界の真実だということを……さぁ、一緒に食事をしましょう」


「……」


 


最後の最後で優しい言葉を投げかけた彼女に、クリスは少し嬉しそうに笑う。どこか常軌を逸した、そんな行動である筈なのに、それを受け入れてしまうほどに彼女は依存してしまっていた。


 


(さて、今までは律義に代用品を揃えるしかないと地道に頑張っていたけど……本物が目の前に転がっている。こっちはもう気にする必要はないし、丁度引き金もある。後は……目的を確実に邪魔してくる連中を潰す為に、異界王の鎧に関する問題を解決することと……神の剣ね。まずはそれを目覚めさせる為にこの娘には頑張ってもらわないと)


「ああああああああああああ!!!」


 


今後の計画を考えながら、女性は再び、何の躊躇いも無く、レバーを降ろす。そして再び、電流がクリスの全身を駆け巡っていき、クリスは激痛に悶えるのだった。


 


 



 


 


「……はぁ」


「ふふふ、どうしちゃったの?そんなに悩みこんで」


 


新しいデッキを構築する為に手にしたボードに表示されたディスプレイを前に溜め息を吐く響。今の自分がより強くなる為にはデッキの強化が不可欠なのは分かっている。しかし、一体どうすればいいのかが分からない。激突の事なら弾に聞くのが一番なのかもしれないが、こればっかりは自分がどうにかするべき問題なのだろう。そう割り切ってはいたが、どうにも将来性が見えないでいた。


 


「もっと激突を活かせるデッキにしたいと思っているんですけど……でも、どうにも」


「そうねぇ……まぁ響ちゃんのデッキだから私が何でも口を出すというわけにはいかないんだけど……地竜が多いから、それをベースにしてみるのも面白いと思うのだけれど」


「あっ」


 


了子のアドバイスを聞き、それは盲点だったと言わんばかりに思わず呆けた声を漏らす。そういえばと思い返してみれば、自分のデッキのスピリットは星竜よりも地竜の方が多い。ならば、それを活かしたデッキを構築するのもいいのかもしれない。


 


「地竜ベースなら連鎖も入るから幅も広がると思うけど……あ、でもアルティメットのことを考えれば星竜で固めた方がいいのよね。こっちなら強化も入るわよ?」


「強化と連鎖……ですか」


 


どっちを取ればいいのか。悩みこんでいた響だったが、ふと思いつく。何も片方だけ選択するのではなく、両方とも投入するという道はないのかと。難易度は高いだろうが、今の自分のデッキを強くするのならば挑戦してみて損は絶対にしないだろう。


 


「少し、見えてきた気がします!」


「そうねぇ。じゃあ響ちゃんに私からこのカードをあげちゃおうかしら?」


「え?い、いいんですか?」


 


懐から取り出した三枚のカードを受け取りながら響は驚いた表情で了子を見る。了子が響に無言でウインクをすると、響は了子の親切心に感謝するように頷き、それを懐にしまう。が、ここで一つ疑問が解決されたからなのか、それとも何気なく心の中に浮かんだからなのか、早速了子から受け取ったカードを含めたデッキを作る為にモニターを操作しながら、少しだけ聞きづらそうな雰囲気を見せながら二課の面々に質問する。


 


「……あの。何か言うタイミングが遅すぎるという気がしなくもないんですけど、ノイズと戦う武器ってシンフォギアや十二宮Xレア以外にはないんですか?」


「……公式にはないな」


 


響の質問に対し、少し厳しい声音で答える弦十朗。その言葉こそが実情であるとも言えるだろう。しかし、だからこそまだ成人にも満たない者達を戦わせる事となってしまっているのだが。


 


「日本だって、シンフォギアは最重要機密事項として完全非公開だ。弾君の持つ十二宮Xレアも、巨大なエネルギーを秘めているということは明らかとなっているが、その力を解放する為の方法は一つしかないし、十二宮Xレアの存在だって、十三枚揃って一人がノイズと戦闘できるという事で纏めてシンフォギアと同等の最重要機密事項として我々が管理しているという扱いになっている」


 


十二宮Xレアの力を解放する方法は神々の砲台しかない。また、その運用に必要となるコアエネルギーもこの時代ではエクストリームゾーンでのバトル以外では発生しない。つまり、十二宮Xレアの力もこの時代では基本的には弾をノイズから守るための装甲として活動する以外の機能は期待できないだろう。


 


「……な、何か凄い大変な事になってますね……あんまり気にした事はなかったんですけど……」


「情報封鎖も二課の仕事だからね。それに、基本的にエクストリームゾーンで決着を付けるから、ノイズが暴れたこと以外での建物破壊とかの被害はあまりないし」


「……とはいえ、それでも無理を通す時がない訳じゃない。おかげで、今や我々のことを良く思ってない閣僚や省庁ばかりだ」


「一応、情報の秘匿は政府上層部の指示ではあるんだけれどね」


 


あおいと朔也の話を聞きながら、了子に言われた事も踏まえてデッキに入りそうなカードの最後の一枚を入れ込み、デッキを完成させる。後はこれを機械に読み込めば自動的にカードが選別され、デッキが完成するだろう。


 


「いずれシンフォギアとかも有効な外交カードとして利用しようとしているんだろうけど……」


「シンフォギアの開発は既知の理論などとは全く異なる理論や技術から作られているの。だから……他の国には到底真似出来ないのよ」


「はぁ……色々ややこしいんですね……」


 


自信満々に話を締める了子。彼女の言い方からすれば、シンフォギアは自分にしか作れないと言っているようなものだ。となれば、シンフォギアは勿論のこと、その開発者である了子も存在が公表されれば世界中が喉から手が出るほど欲しくなるものだろう。


 


「……」


「あ、弾さん」


 


丁度会話が途切れたタイミングで二課に訪れた弾が室内に入ってくる。ふと、響は丁度今構築した自分のデッキレシピに目を向ける。新しく構築したこのデッキ。ざっと見ただけでも以前の自分のデッキよりもずっと変わっている。それでも、カードを投入しながらそのカードをどのタイミングで使うかなどは軽くは考えていたのだ。それに、弾という強敵を相手に戦えるデッキならば、今後も安心して付き合っていける筈。また、今の自分の力がどこまで通用するかも見てみたい。等と色々理由を心の中で羅列していくが結局のところその心は、


 


「弾さん!私とバトルしてください!」


「突然だな……」


 


軽く笑いながら響を見る。響の手には一つのボードが握られており、恐らく先程までデッキを練っていたのだろう。そしてそのデッキを使って弾と戦いたいと思っている。なら、断る理由もないだろう。


 


「そうだな、是非確かめてみてくれないか?今の彼女のデッキを」


「……ふっ、自信があるんだな」


「はい、勿論!」


 


やる気を満ち溢れさせた様子を見せる響。先程までの響達の会話を弾は知らなかったが、そんな暗く重々しい雰囲気を振りはらう為にもバトルをしたいと思っているのだろう。弦十朗も、響にとって良いスパーリングになると思ったのだろう、弾に響とバトルしてくれるように頼む。無論、挑まれたバトルを弾が断る事は有り得ない。


 


「よし、そのバトル、受けよう」


「!ありがとうございます!」


「「ゲートオープン!界放!!」」


 


二人はゲートを開き、バトルフィールドへと移行する。新しいデッキがどこまで通用するかは不明だが、ここまできたら自分の全力を相手に叩きつけるのみだ。


 


「スタートステップ、ドローステップ、メインステップ。森林のセッコーキジをLv2で召喚」


 


【森林のセッコーキジ:緑(赤)・スピリット


コスト1(軽減:緑1・赤1):「系統:爪鳥」


コア2:Lv2:BP2000


シンボル:緑(赤)】


 


先行を取った弾が手始めに召喚したのは、刀を背中に背負った緑色の翼を持つ、鎧を着込んだキジ。緑と赤の二つの軽減シンボルを満たすことの出来る小型スピリットを召喚し、一先ず様子を見る事にする。


 


「ターンエンド」


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!メインステップ!ライト・ブレイドラ、ダーク・ディノニクソーを召喚!」


 


【ライト・ブレイドラ:赤・スピリット


コスト0:「系統:星竜」:【強化】


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:赤】


 


【ダーク・ディノニクソー:赤・スピリット


コスト2(軽減:赤2):「系統:地竜」


コア1:Lv1:BP2000


シンボル:赤】


 


銀色の身体を持つブレイドラ、そして身体に丸鋸がある黒い身体に赤い目を持つ小さな地竜、ダーク・ディノニクソーが現れる。ブレイドラ、そしてディノニクソーも弾が使用したことのあるカードであり、それらが変化した姿であるこのスピリット達は、弾にとっては一種の懐かしさを覚えるものである。


 


「星竜と地竜の混合デッキ……と言ったところか?」


「まぁそんな所ですね。さらにネクサス、神鳴る霊峰を配置!」


 


【神鳴る霊峰:赤・ネクサス


コスト4(軽減:赤2)


コア0:Lv1


シンボル:赤】


 


響の背後に暗雲が発生する。同時に大地が振動して一つの霊峰が出現し、響のフィールドに現れる。


 


「ここはこれでターンエンド!」


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。森林のセッコーキジをLv1へダウン」


 


【森林のセッコーキジ


コア2→1:Lv2→1:P2000→1000】


 


「ブレイヴドローを使用」


 


ブレイヴドローの効果で弾はデッキからカードを2枚ドローする。その後、デッキを上から3枚オープンし、その中のブレイヴ1枚を手札に加え、残ったカードを好きな順番でデッキの上に戻す。弾のデッキから輝竜シャイン・ブレイザー、ブレイドラ、バーニングサンの三枚がオープンされ、弾はブレイヴ、輝竜シャイン・ブレイザーを手札に加えて残った二枚を、バーニングサン、ブレイドラの順番でカードをデッキの上に戻した。


 


「ターンエンドだ」


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!鎧竜エドモントソードを召喚!」


 


【鎧竜エドモントソード:赤・スピリット


コスト5(軽減:赤3・緑1):【連鎖:条件緑シンボル


コア1:Lv1:BP4000


シンボル:赤】


 


四ターン目、響が召喚したのは巨大な四本の刃のような角を持つ、四足歩行をする恐竜型スピリット。響は今まで、地竜のスピリットを使用することは多かったが、赤デッキの常とも言うべきコア不足に悩まされていたのだろう。それを解消する為のスピリットということだろうか。


 


「ダーク・ディノニクソーをLv2にアップ!」


 


【ダーク・ディノニクソー:赤(緑)


コア1→2:Lv1→2:BP2000→4000


シンボル:赤(緑)】


 


ダーク・ディノニクソーのLvが上がると共にその身体が緑色に発光する。緑の力を得たことで、エドモントソードの力を発揮する為の条件は揃ったというべきか。


 


「いきますよ弾さん!バーストをセットしてアタックステップ!エドモントソードでアタック!アタック時効果で、BP4000以下のスピリット2体を破壊!ライト・ブレイドラがいることで1強化追加でBP5000以下を破壊!」


 


エドモントソードの角から赤い光が放たれ、森林のセッコーキジを爆発させて吹き飛ばす。鎧竜エドモントソード、Lv1・2アタック時効果は、系統:「地竜」を持つ自分のスピリット1体につき、BP4000以下の相手のスピリット1体を破壊する。さらに、響のフィールドにLv2から自身の色とシンボルを緑として扱う事の出来るダーク・ディノニクソーが存在することでアタック時効果に続けて更なる効果が発揮する。


 


「連鎖発揮!ボイドからコア1個を自分のスピリットに置く!エドモントソードにコアを追加!」


 


【鎧竜エドモントソード


コア1→2】


 


「……いいアタックだ。この一撃はライフで受ける!」


 


エドモントソードの角が弾へ襲い掛かる。弾のライフを奪い取った響は、一先ず追い打ちをかけることはせずに一旦様子を見る意味も込めて二体のスピリットはブロッカーに回す。


 


「ターンエンド!」


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。響、今度はこちらからいくぞ!」


「……!はい!」


 


コアは揃っている。ならば後は、このスピリットを呼ぶだけ。手札に存在する、このデッキを作るときに投入した十二宮Xレアの一枚を手に、弾はそれを掲げる。


 


「こい、緑の十二宮Xレア!巨蟹武神キャンサード、召喚!!」


 


【巨蟹武神キャンサード:緑・スピリット


コスト6(軽減:緑3):「系統:光導・殻人」


コア1:Lv1:BP6000


シンボル:緑】


 


弾がカードを掲げると共に天空に無数の星が浮かび上がる。それは緑色の光を輝かせる蟹座の星座となり、そこから泡に包まれた巨大なスピリットが現れる。和を連想とさせる深緑色の兜や鎧を纏い、背中から蟹の脚に酷似した機械の脚が生えている。また、その巨体を支える二本の足もまた所持しており、両手から生えた金色の鋏で泡を勢いよく砕いてその巨体を空へ投げ出し、大地へと着地する。


 


「み、緑の十二宮Xレアですか……!凄くメカメカしいですね……」


「これにはどんな力が……」


 


キャンサードの、目に見ただけで感じ取ることの出来る妙な威圧感。その重量感溢れる姿をバトルフィールドの内外で見ていた全員が息を呑みながらその目に焼き付ける。


 


「アタックステップ!巨蟹武神キャンサードでアタック!」


 


キャンサードが両手の鋏を打ち合わせて甲高い金属音を鳴らすと、響へ向かって走り出す。同時に、その瞳から赤い光線が二本放たれ、それぞれの光線がライト・ブレイドラとダーク・ディノニクソーを射抜く。


 


「え!?」


「キャンサードがいるとき、系統:「光導」/「星魂」を持つ自分のスピリットがアタックしたとき、スピリットでブロックする場合、相手はスピリット2体でなければブロックできなくなる。キャンサードは系統:「光導」を持っているぞ!」


「ライフで受ける!」


 


キャンサードが直線状に走る先にいたライト・ブレイドラとダーク・ディノニクソーを蹴り飛ばしながら響へと襲い掛かる。振り上げた鋏を叩き付けられ、まずは一撃を命中させる。


 


「ターンエンドだ」


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!三札之術を使用!」


 


響もまた、ブレイヴドローに似た、最大三枚の手札を補充できるマジックで手札補充を行おうとする。デッキから2枚のカードをドローし、その後デッキの上から1枚をオープンし、それが赤のスピリットなら手札に加えられる。そしてオープンされたのは、了子から受け取った、この新たなデッキに選んだ一枚。


 


「……来た!」


「!それは……」


 


雷光龍ライト・ジークヴルム。赤のスピリットであり、響はそれを手札に加える。しかし、弾が反応したのは、そのスピリットが持つ、ジークヴルムという名。


 


(ライト・ジークヴルム……この時代でも、まだ俺の知らないジークヴルムに会えるなんてな……)


「ダーク・ディノニクソーをLv3にアップ!」


 


【ダーク・ディノニクソー


コア2→4:Lv2→3:BP4000→6000】


 


「アタックステップ!エドモントソードでアタック!アタック時効果で破壊出来るスピリットはいないけど、連鎖!エドモントソードに1コア追加!」


 


【鎧竜エドモントソード


コア2→3:Lv1→2:BP4000→6000】


 


「ライフで受ける!」


 


再びエドモントソードの一撃が弾のライフを奪う。しかし、残る弾のライフは3に対し、響のフィールドのアタックできるスピリットは2体だけ。ここはフルアタックをする意味は薄いだろう。


 


「ターンエンド!」


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。牙皇ケルベロードを召喚」


 


【牙皇ケルベロード:青・ブレイヴ


コスト5(軽減:赤2・青2):「系統:異合・皇獣」


コア1:Lv1:BP5000


シンボル:青】


 


キャンサードの力をより効果的に発揮させる為に手札から呼び出される、青のブレイヴ。赤い装飾が施された黒い身体を持ち、その顔には目元を隠す鋼の兜が確認出来る。弾も愛用する、言わずと知れた連続攻撃を可能とする強力なブレイヴの使い方など、一つしかない。


 


「牙皇ケルベロードを巨蟹武神キャンサードに合体!」


 


【巨蟹武神キャンサード:緑+青


コスト6+5→11


コア1→2:BP6000+5000→11000


シンボル:緑+青】


 


ケルベロードの身体が消え、赤と黒の二色に青い棘の取り付けられた翼へと変化する。その翼は背中の機械の脚を消滅させたキャンサードの背中に装着され、全身から青い光を解き放つ。


 


「……!く、来る……!」


「合体スピリットをLv2にアップ!」


 


【巨蟹武神キャンサード


コア2→4:Lv1→2:BP6000→10000+5000→15000】


 


「アタックステップ!いけ、合体スピリット!」


 


バトルフォームの赤いラインを青色に変化させ、命令を下す。牙皇ケルベロードと合体したキャンサードは、両手の鋏を打ち鳴らして合図を送ると走り出す。


 


「牙皇ケルベロード、合体時効果!デッキを5枚破棄してターンに1回、このスピリットを回復させる!そしてキャンサードの効果でスピリット2体でなければブロックは出来ないぞ!」


 


ブレイヴドロー、ダンデラビット、獣装甲メガバイソン、ダンデラビット、サジッタフレイムの順にカードがトラッシュへと送られ、キャンサードが回復する。そしてダブルシンボルのアタックが響へと襲い掛かろうとする。


 


「ライト・ブレイドラとダーク・ディノニクソーでブロック!」


「キャンサードの効果を受けたアタックがブロックされたとき、バトルするスピリット1体を選択し、その1体とだけバトルする!ダーク・ディノニクソーを選択!」


 


連鎖の要となっているダーク・ディノニクソーを蹴り上げる。一撃の蹴りでダーク・ディノニクソーが破壊されてしまうが、牙皇ケルベロードをフィールドに残したくない響にとってみれば、ここは仕方のない選択肢でもある。


 


「スピリット破壊により、バースト発動!双光気弾!デッキから2枚ドロー!さらにコストを支払い、フラッシュ効果を発揮!相手の合体スピリットと合体しているブレイヴ1つを破壊!牙皇ケルベロードを破壊!」


 


炎が放たれ、キャンサードの背中に装着されている牙皇ケルベロードが破壊される。ブレイヴが剥がされ、合体スピリットが消えたことにより、弾のバトルフォームのアーマーは青から赤色へと元に戻る。


 


【巨蟹武神キャンサード:緑


コスト6


BP10000


シンボル:緑】


 


(……先にブレイヴを破壊しに来たか。良い判断だ)


 


巨蟹武神キャンサードには、スピリット二体でなければブロック出来なくなる効果の他にももう一つの効果がある。それは、Lv2のとき、自分の合体スピリットがいる間、このスピリットのアタックによって相手のライフを減らしたとき、相手のライフのコア1個をリザーブに置く効果。疑似的なトリプルシンボルに匹敵するアタックを響は事前に防げた意味でも今の双光気弾の発動の価値は高い。


 


「ターンエンドだ。さぁ響、見せてみろ!新しい力を!」


「はい!スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!鎧竜エドモントソードをLv1にダウン!」


 


【鎧竜エドモントソード


コア3→1:Lv2→1:P6000→4000】


 


「……来る!」


「赤き光よ、その鼓動を響かせろ!雷光龍ライト・ジークヴルム、Lv3で召喚!!」


 


【雷光龍ライト・ジークヴルム:赤・スピリット


コスト6(軽減:赤3):「系統:星竜」:【強化】


コア5:Lv3:BP9000


シンボル:赤】


 


雷鳴が響の背後で轟く。そして背後から這い出るように現れたのは、銀色のドラゴンの身体を持つジークヴルム。雷皇龍とは異なり、紫色の目を持つ光の力によって変化した新たなジークヴルムの姿に弾は言葉には出さずとも、興奮したように表情を変化させる。


 


(来た……!これが、新しいジークヴルム!)


「行きますよ弾さん!ライト・ジークヴルムはLv3のときに強化を得て、さらにLv2・3のとき、強化を持つ自分のスピリットすべてに激突を与える!」


 


【ライト・ブレイドラ


【激突】】


 


【雷光龍ライト・ジークヴルム


【激突】】


 


「激突を追加する効果……!」


「アタックステップ!雷光龍ライト・ジークヴルムで巨蟹武神キャンサードに激突!」


 


ライト・ジークヴルムが咆哮を響かせ、雷光を纏って突進する。そのアタックは、回復状態のキャンサードへと激突され、キャンサードはライト・ジークヴルムの突進を受け止めるとそのまま投げ飛ばす。


 


「良い激突だ。だが、BPは僅かにこちらの方が上だぞ!」


「分かってますよ!フラッシュタイミング、エクスキャベーションを使用!不足コストはライト・ブレイドラより確保!」


 


【ライト・ブレイドラ


コア1→0】


 


「ライト・ジークヴルムにBP+3000!」


 


【雷光龍ライト・ジークヴルム


BP9000+3000→12000】


 


「……BPを上げて、無理矢理十二宮を突破しに来たわね」


「ふむ……良い一手だ」


 


ライト・ジークヴルムがBPを上げ、キャンサードを上回る。再び電光を強く纏い、そのままキャンサードへと激突し、その身体を破壊するという快挙を成し遂げてみせる。


 


「ターンエンド!」


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。今度はこっちの番だな。ブレイドラ、森林のセッコーキジを召喚」


 


【ブレイドラ:赤・スピリット


コスト0:「系統:翼竜」


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:赤】


 


【森林のセッコーキジ


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:緑(赤)】


 


黄色い毛並みを持つブレイドラと二体目の森林のセッコーキジが現れる。二体のスピリットが並び、赤のシンボルをフィールドへと並べ始めた、その事が意味するのはただ一つ。響も、弾の僅かな気配の変化を感じ取る。


 


「……これって……」


「龍神の弓、天馬の矢、戦いの嵐を鎮めよ!光龍騎神サジット・アポロドラゴン、召喚!」


 


【光龍騎神サジット・アポロドラゴン:赤・スピリット


コスト8(軽減:赤4):「系統:光導・神星」


コア1:Lv1:BP6000


シンボル:赤】


 


弾の背後で太陽が出現する。プロミネンスの中を駆ける四本の足を持つ白き馬、その上半身に存在する、赤、金、緑の三色の鎧を持つ巨大なドラゴン。その右手には巨大な弓が構えられており、背中には龍の翼が生えている。それが、炎を纏って弾の背後からフィールドへと現れ、紅く燃えるように輝く射手座の星座の光と共に咆哮を上げる。


 


「さ、サジット・アポロドラゴン……!弾さんの切り札!?」


「バーストをセット、そしてアタックステップ!いけ、サジット・アポロドラゴン!鎧竜エドモントソードに指定アタック!さらにフラッシュタイミング、マジック、バーニングサンを使用!手札のブレイヴ、輝竜シャイン・ブレイザーをノーコストで召喚し、サジット・アポロドラゴンに合体!」


 


【輝竜シャイン・ブレイザー:赤・ブレイヴ


コスト5(軽減:赤2・青2):「系統:星竜・機竜」


シンボル:赤】


 


【光龍騎神サジット・アポロドラゴン


コスト8+5→13


BP6000+5000→11000


シンボル:赤+赤】


 


白い翼を持つ機械龍、シャイン・ブレイザーが弾の目の前に出現した赤い光と共に光線へと変化し、サジット・アポロドラオンに浴びせられる。輝竜シャイン・ブレイザーの身体が消滅し、背中の翼がサジット・アポロドラゴンの翼と入れ替わりになるように合体し、6枚の新たな白い翼が空へと広げられる。そして、サジット・アポロドラゴンの手から放たれた一本の炎の矢が、鎧竜エドモントソードを射抜く。


 


「続けて、合体スピリットでライト・ジークヴルムに指定アタック!」


 


サジット・アポロドラゴンが弓を構えようとする。その前にライト・ジークヴルムは雷光を纏って突進し、サジット・アポロドラゴンの攻撃を阻止しようとする。その攻撃を右手に持つ弓で受け止めたサジット・アポロドラゴンは、左手に一本の矢を出現させると、それをライト・ジークヴルムの額に突き刺すのと同時にライト・ジークヴルムの身体が燃えるように爆発する。


 


「輝竜シャイン・ブレイザー、合体時効果によりBP8000以上の相手スピリットを破壊したとき、破壊したスピリット1体につき、相手のライフのコア1個をリザーブに置く!」


 


更にサジット・アポロドラゴンは一本の矢を響へと放つ。ライフを削られた響は感じ取った衝撃に僅かに身体を反らすだけでしっかりとその衝撃を全身で受け止める。


 


「ターンエンド」


「いよいよ来ましたね……でも、まだまだここからですよ!スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!ライト・ブレイドラ、ドラゴン・アンヌラーを召喚!ライト・ブレイドラはLv2!」


 


【ライト・ブレイドラ:赤・スピリット


コア3:Lv2:BP2000


シンボル:赤】


 


【ドラゴン・アンヌラー:赤・スピリット


コスト4(軽減:赤2):【強化】


コア1:Lv1:BP3000


シンボル:赤】


 


背中から金環日食を模した突起物が生えたドラゴンがライト・ブレイドラと共に召喚される。サジット・アポロドラゴンがいるこの状況でスピリットを出すのは、基本的には悪手ではあるが、ここは一気に攻め込むべきだと判断したようだ。


 


「砲凰竜フェニック・キャノンを召喚!」


 


【砲凰竜フェニック・キャノン:赤・ブレイヴ


コスト5(軽減:赤2・白2):「系統:機竜・星魂」


コア1:Lv1:BP3000


シンボル:なし】


 


響のフィールドに出現する赤のブレイヴ、砲凰竜フェニック・キャノン。機械の身体を持つ赤い不死鳥が、二本の赤い銃口を弾のフィールドへ向ける。


 


「召喚時効果!BP4000以下の相手スピリット2体を破壊!1強化追加でBP5000以下の相手スピリット2体を破壊する!森林のセッコーキジとブレイドラを破壊!」


 


森林のセッコーキジとブレイドラに対し放たれる弾丸。それがスピリット達を焼いていき、回復状態のスピリットをすべて一掃してみせる。


 


「さらに砲凰竜フェニック・キャノンをドラゴン・アンヌラーに合体!」


 


【ドラゴン・アンヌラー


コスト4+5→9:【強化】【激突】


コア1→2:Lv1→2:BP3000→4000+3000→7000】


 


フェニック・キャノンに機械の不死鳥の頭、二台の銃口の三ヶ所だけとなり、ドラゴン・アンヌラーの背中に背負われる。


 


「神鳴る霊峰をLv2にアップ!」


 


【神鳴る霊峰


コア0→3:Lv1→2】


 


「アタックステップ!ドラゴン・アンヌラーの効果で自分のアタックステップの間、強化を持つ自分のスピリットすべてをBP+2000!」


 


【ライト・ブレイドラ


BP3000+2000→5000】


 


【ドラゴン・アンヌラー


BP4000+3000+2000→9000】


 


「ドラゴン・アンヌラーでアタック!神鳴る霊峰、Lv2効果で激突を持つ自分のスピリットがターンの最初のアタックをしたとき、そのスピリットを回復させる!」


「これで三回分の攻撃……」


「すべてが命中すれば、弾君のライフを一気に削り取れる!」


「ライフで受ける!」


 


ドラゴン・アンヌラーが空へ飛び上がると、弾のライフを奪い取る。その一撃で砕ける弾のライフ。しかし、そのアタックを受けた弾は僅かに口元を釣り上げる。


 


「こっちもバーストを発動させてもらう!バースト、アルティメットウォール!このバトル終了時、アタックステップを終了する!」


「!」


 


響の勝利を狙ったアタックを1枚のバーストで防ぐ弾。これで次のターンに待っているのは、確実に射手座の十二宮Xレアの猛攻だ。


 


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。合体スピリットをLv3にアップ!」


 


【光龍騎神サジット・アポロドラゴン


コア1→5:Lv1→3:BP6000→13000+5000→18000】


 


「アタックステップ!射抜け、合体スピリット!サジット・アポロドラゴン、合体時効果により合体スピリットを破壊!」


「ブレイヴは分離させます!」


 


【砲凰竜フェニック・キャノン


コア1:Lv1:BP3000


シンボル:なし】


 


「続けてフェニック・キャノンに指定アタック!」


 


さらにフェニック・キャノンに放たれた矢がその身体を撃ち抜こうとする。


 


「フラッシュタイミング!ドラゴニックウォールを使用!不足コストは、ネクサスより確保!」


 


【神鳴る霊峰


コア3→2:Lv2→1】


 


「赤のスピリットであるフェニック・キャノンを破壊し、このバトル終了時にアタックステップを終了する!」


 


炎の壁がフェニック・キャノンを犠牲に現れ、弾のアタックステップを強制的に終了させる。ここまでやっても尚喰らい付いてくるその粘り強さ、そしてまだ諦めないその瞳。どれをとっても響はまだ死んでいない。そして、ここまで追い込ませれば、響が真のカードバトラーならば彼女のデッキにあるあのカードは、きっと応えてくれるだろう。そう信じ、弾はターンを終了させる。


 


「ターンエンド」


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!」


 


この状況を打開できるカードはこれしかない。そう強く思いながらデッキから引いたカード。それは、アルティメット・ジークヴルム。


 


「……よし!ダーク・ディノニクソーをLv3で召喚!」


 


【ダーク・ディノニクソー


コア4:Lv3:BP6000


シンボル:赤(緑)】


 


先にダーク・ディノニクソーを呼び出したのは十中八九、軽減シンボル確保の為。その証拠に、響は一度呼吸を整えさせると、弾を倒す為に自分の切り札をその呼び出す為に、歌を響かせる。


 


「……!」


「響け、金色の稲妻!!アルティメット・ジークヴルム、Lv5で召喚!不足コストはネクサスから確保!」


 


【神鳴る霊峰


コア2→0】


 


【アルティメット・ジークヴルム:赤・アルティメット


コスト6(軽減:赤3):「系統:新生・星竜・竜人」:【真・激突】


コア4:Lv5:BP17000


シンボル:極】


 


ジークヴルム達よりもずっと神々しく、より気高い存在にも錯覚させる究極のドラゴン。雷鳴を宿らせる金色の鎧を纏う、赤と青の皮膚を持つ龍。緑色の眼を輝かせ、アルティメット・ジークヴルムがフィールドへと降り立つ。


 


「来たか!響のアルティメット!」


「アタックステップ!アルティメット・ジークヴルムでアタック!Uトリガー、ロックオン!」


「武槍鳥スピニード・ハヤト、コスト5!」


 


響の手から放たれた光が弾のデッキトップのカード、武槍鳥スピニード・ハヤトをトラッシュへと落とす。コスト5、ギリギリヒットのコストを引き当てて響は内心冷や汗を流しながらもヒット効果を発揮させる。


 


「ヒット!アルティメット・ジークヴルムにBP+10000!」


 


【アルティメット・ジークヴルム


BP17000+10000→27000】


 


「……ふっ、やるな響」


「このBPは早々超えられないでしょう!弾さん!」


「いいや、倒してやるさ!フラッシュタイミング!バーニングサンを使用!」


「二枚目のバーニングサン!?」


「手札のトレス・ベルーガを召喚し合体!そして回復!」


 


【トレス・ベルーガ:青・ブレイヴ


コスト5(軽減:青2・赤2):「系統:異合」


シンボル:青】


 


【光龍騎神サジット・アポロドラゴン:赤+青


コスト8+5+5→18


BP13000+5000+6000→24000


シンボル:赤+赤+青】


 


三つの首を持つ青き獣、トレス・ベルーガ。その姿がサジット・アポロドラゴンの背後から青い一筋の光と共に放たれ、サジット・アポロドラゴンと衝突する。瞬間、眩き青の閃光がサジット・アポロドラゴンから放たれて全身の鎧をトレス・ベルーガの顔のような装飾が成された金色の鎧へと変化させ、背中の翼は太陽のように神々しく輝く。


 


「やっぱり手札にありましたか……!」


 


弾の身体を激しい闘気が駆け巡ったかのように変化が起こり、そのアーマーが黒く染まっていく。サジット・アポロドラゴンの真の力を解放し、弾は全力で響の力を受け止めようとする。


 


「でも、回復したってことは真・激突の効果でブロックは強制ですよ!」


「分かっているさ。だがまだだ!フラッシュタイミング、ブレイブチャージを使用!」


「え!?」


「これはまた珍しいマジックを……」


「このターンの間、自分のスピリット1体のアタック時効果をブロック時効果としても発揮させる!迎え撃て、ダブル合体スピリット!!」


 


サジット・アポロドラゴンが咆哮を張り上げ、その弓に二本の炎の矢を構える。


 


「ブレイブチャージにより、アタック時効果をブロック時効果として発揮する!このスピリットに合体しているブレイヴ1枚につき1体、BP10000以下のスピリットを破壊する!ライト・ブレイドラとダーク・ディノニクソーを破壊!」


 


二本の炎を纏った矢が放たれ、二体のスピリットを焼き尽くす。弾のいた時代よりもずっと未来の時代であるこの世界では、一部のカードにエラッタが行われており、その影響もあって合体アタック時効果はすべて、このスピリットのアタック時効果に総括されている。その為、ブレイブチャージは様々な可能性を秘めたマジックであると言ってもいい。


 


「さらにトレス・ベルーガの効果!デッキを6枚破棄し、BP+6000!」


 


【光龍騎神サジット・アポロドラゴン


BP13000+5000+6000+6000→30000】


 


リブートコード、白羊樹神セフィロ・アリエス、アルティメットウォール、イグア・バギー、森林のセッコーキジ、太陽龍ジーク・アポロドラゴン。六枚のカードが破棄され、BPを増やすと共にトレス・ベルーガの更なる効果を発揮する。


 


「系統:「光導」を持つ白羊樹神セフィロ・アリエスがあったため、ダブル合体スピリットは回復する!」


「こ、こんな一手があったなんて……!」


 


アルティメット・ジークヴルムが電撃と炎を纏ってサジット・アポロドラゴンへと殴りかかる。その攻撃に対し、弓を剣に変形させて迎え撃ったサジット・アポロドラゴンはアルティメット・ジークヴルムを斬り払うように吹き飛ばすと背中から炎を纏った六本の光の弾丸を放ち、アルティメット・ジークヴルムを襲う。それを空へ逃れるように飛翔して避けたアルティメット・ジークヴルムは急降下してサジット・アポロドラゴンを襲うが、それを再び剣で真正面から受け止めるとそのまま吹き飛ばし、同時に自分も大地を飛び出しながらその口に炎熱を溜め、回避行動に移れないその身体に劫火を放ち、燃やしつくしてしまう。


 


「……」


 


大量の爆煙が発生する中からゆっくりと現れるサジット・アポロドラゴン。アルティメットさえもものともしないその圧倒的な力は、対する相手に恐怖することすら無意味だと錯覚させているかのようにも見て取れる。


 


「た、ターンエンド」


「やっぱりこの瞬間がたまんないね……!スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップはそのまま、アタックステップ!いけ、ダブル合体スピリット!合体アタック!!」


 


サジット・アポロドラゴンが剣を携え、響へと飛び掛かる。もう今の響に打つ手などない。だが、とても充実したバトルであったことはお互いに感じ取っている。


 


「私の負けです!ライフで受ける!!」


 


そして、トリプルシンボルのアタックが響のライフを全て奪い取り、バトルフィールドの外へと二人は戻ってくる。外へと戻ってきた響は、先程のバトルを振り返りながら、大きな溜め息を吐く。


 


「結構惜しいと思ったんですけど……結局負けちゃいました」


「いや、今回はカードに救われただけさ。確実に強くなっていると思うよ」


「ほ、本当ですか!?」


 


嬉しそうに声を上げ、はしゃぐ様子を見せる響。シンフォギアを手にしてから、確実に成長している。そう、この一言で実感したような気がしたのだった。

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