第17話 鳥獣爆進
ネフシュタンの少女とのバトルから数日後。ネフシュタンの鎧の手掛かりに関する調査などもひと段落した所で、弦十朗は弾や響を集めて二課の休憩室へと集めていた。
「気になるのは、ネフシュタンの鎧を纏った少女の狙いが響君だという事……」
「それが何なのかは全く不明……」
響と翼の違い。どちらもシンフォギアを扱えるという事実は変わらないし、過去の言葉で表すならば二人とも究極シンボルの光主だ。それに、仮に光主という観点で狙うならば、弾の事を知っている以上は激突王と称され、歴代の光主の中でもトップクラスの実力を持つ弾が狙われる筈。普通に装者として狙うならば、翼の方が実力が高い以上、響よりも翼を狙うのが当然だろう。確かに、響がこの中で一番未熟だから、という面は否定できないが翼と戦闘し、完膚なきまでに叩きのめした以上、拉致していくなら彼女であるのが一番適している筈だ。
「……個人を特定しているならば我々二課の存在も知っているだろうな……」
「内通者、ですか……」
「何でこんな事に……」
「……とにかく、今は落ち込んでいる暇はないんじゃないか?」
「……ああ、そうだな」
内通者、響が狙われる理由、ネフシュタン。様々な問題が山積みだが、それらを解決する為にも今は自分達も動くべきだろう。弾もまた、様々な事が引っかからないわけではないが、後ろだけ見て進まないでいる事の愚かさは十二分に承知している。少しでも状況を好転すべく彼等が動き出そうとしているそんな中、響は落ち込んだ顔で終始無言のまま俯いていた。
「……」
だが、それもある意味で当然かもしれない。聖遺物の力、シンフォギアを持っていながらも、自分はその力を十二分に発揮できているとは言い切れない。あの時、翼ではなく自分がネフシュタンと戦ったところで、ガイ・アスラに勝利することは不可能であっただろうから。未熟なままの自分がいるからこそ、二年前も、今回も他の人が傷ついてしまった。さらに言うならば、今回は響を守る為に翼があんな目に遭ったといっても過言ではない。無論、響を責める人物など誰もいる訳が無い。しかし、それでも後悔の念は強くその身に残ってしまうものなのだ。
「……」
無言のまま、ゆっくりと立ち上がると休憩室を後にしようとする響。彼女が苦しんでいる理由を知っている二課の面々は、彼女を止めることなど出来はしない。二課を出て、リディアンの屋上で一人、考えに耽っている中、ふと響は心の中で何かの声を聞いた。
(……?)
龍の咆哮。それが何なのか、響はもう一度その声を聞こうとする。やり方は知らないが、自然と深い心の奥底に自分の意識が落ちていくのが感じられ、その先で響は、金色の鎧を纏った龍を見た。
(……アルティメット・ジークヴルム……?)
アルティメット・ジークヴルムは、まるで響を囲むようにその周りを飛んでいた。飛びながら、その口を開き、響へと龍の言葉で語りかけてきている。無論、響にその言葉を理解することは出来ない。だが、彼等が響を励まそうとしていること、前に進めと言っている事を感じ取る事は出来た。
(……)
もしかしたら、エクストリームゾーンやバトルフィールドで戦っている内にそこに現れる彼の姿に、自分の頭、いや心が無意識の内に自我を与えて出来上がった幻が心の中に生まれたのかもしれない。或いは、本当に自我があるのかもしれない。だが、いくら考えてもそんな事に答えなんて出ないだろうし、出そうとするだけきっと無意味の筈だ。
(……そう、だよね。私だけが……止まっているんだよね。二課の皆も、弾さんも前に進もうとしているのに、私だけ止まってちゃ、駄目だよね……)
渇を入れるかのように両頬を叩く。そして龍達に響が笑いかけた瞬間、彼女が沈んでいた心の空間は消え、澄み渡る青空が戻ってくる。さっきまでいた空間はやっぱり幻だったのかと首を傾げていると、
「響」
「……あれ?未来?」
未来が声をかけてくる。響が屋上に一人で向かっているのを見たのだろう、彼女が気になって未来も追ってきたのだ。
「最近、一人でいることが多くなってきたんじゃない?」
「そ、そうかな?そうでもないと思うけど……」
何故かは分からないが、先程まで落ち込んでいたのと、それを自分のドラゴン達が励ましてくれたという現象を知られたくないと思い、照れ隠しでもするかのように頭を掻きながら返事を返す。
「それに私、一人じゃ何にも出来ないし……は、はは……」
響の隣に座ると、未来は響の手を優しく握る。隠してはいるが、響の心境の変化は、未来には既に察せられているようだ。ずっと一緒にいた親友なのだから、それも当然なのだろうが。
「……未来には隠し事、出来ないね」
「だって響、無理してるから」
「……」
未来の言葉に、申し訳なさそうに視線を逸らす。話したい気持ちは大きいが、それは出来ない。ネフシュタンの鎧を操る謎の少女の狙いが自分である以上、自分にとって大切な存在である未来にも危害が及ばないとは限らない。それも、もし未来がシンフォギアや二課の存在を知り、下手に情報を知れば敵は未来にもその魔の手を伸ばしてくるかもしれない。下手に伝える訳にはいかないし、それに今自分が直面しているこの問題は、自分が乗り越るべきだ。そう、何故かは分からないが響はそう感じ取っていた。だからこそ、未来の気持ちを嬉しくも感じながら、それをやんわりと断る事にする。
「ありがとう……でもごめん。多分これは、私が自分で何とかしなきゃいけないと思うから……だから、もう少し一人で考えさせて」
「……分かった」
響の言葉には、確かな決意のようなものがあった。それを感じ取った未来は、響の手をゆっくりと強く握り、小さく言葉を返すに留める。未来の手から感じる温もりを感じながら、響も未来の手を握り返す。
「……ありがとう」
「……響、悩んだり迷ったりして、その結果で前に進むのもいいけど……響は響のままでいてね」
「……私のまま……」
「そう」
立ち上がり、青空を見ながら優しく語りかける。今の響の事情は深くは聞くまい。だが、それでも親友として自分にもきっと出来る事、支えられる事がある筈だ。
「変わってしまうんじゃなくて、響のまま成長するんだったら、私も応援する。だって、響の代わりはどこにもいないし、いなくなってほしくないからね」
「……私のままで……」
自分を見失えば、戦いに敗北する。それは、バトルスピリッツだけではなく、人間としても当然の摂理だ。一時の感情に押し潰され、怒りに我を見失って自分でいられなくなれば、それは敗北に直結してしまう。
「響は響のままじゃなきゃ嫌だよ」
自分のまま強くなる。その為には、今の自分を強くする為の覚悟や目的が必要となる。ただ目的も何も無くがむしゃらに強くなった所で、そんな薄っぺらい覚悟では鉄の意思も鋼の強さも感じられはしないだろう。ならば自分が戦う理由は何なのか。
「……」
かつて、弦十朗達に向かって叫んだ言葉を思い出す。自分の力で誰かを助けられるかもしれない。救える命があるかもしれない。今、自分を目的とする敵が現れた事により狙われる危険の大きい、守らなくてはいけないのは何か。それは、目の前にいる掛け替えのない親友と過ごす、何気ない日常ではないのか。それすらも守れずに、このシンフォギアを、自分が持つ力を未熟だとしても扱っていると言い切れるのか。
「……ありがとう、未来。私、私のまま行けそうな気がする」
手を開き、強く握る。何か、道が開けたような、そんな気がした。今、自分が操るシンフォギア、そしてデッキのドラゴン達にも相応しいカードバトラーになる為に、ある決心を固める事が出来た。
「そうだ、こと座流星群見る?動画撮っておいたんだ」
「本当!?」
未来には急用が入って一緒に見れなくなったということになっているのだが、どうやら響の為に撮っておいてくれたようだ。未来との友情に感謝しながら、未来から渡されたスマートフォンを操作していき、その動画を再生する。見る事の叶わなかったこと座流星群を見れると思いながら画面を覗き込むのだが、そこには一面真っ暗な映像しか映っていなかった。
「……真っ暗だけど……」
「ごめん……光量不足だって」
「意味ないじゃん!?」
思わず叫んだ響のツッコミが響く。そして顔を見合わせた二人は笑い合う。そんなさり気無い日常の一コマの中、響は自分の頬を涙が流れている事に気付き、それを拭いながら笑い声を上げ続ける。
「あはは……おかしくって涙出てきちゃった……」
「次は絶対に見ようね?流星群」
「うん!」
「約束だよ?」
「うん、約束する!」
改めて二人で誓い合う。そして響は、澄み渡る青空を見上げたのだった。
★
「お願いします、弾さん!私をもっと強くしてください!」
「……」
翌日。二課の休憩室で弾が響に出会って開幕で言われた言葉に弾は悩みながら彼女を見る。強くなりたいという意思は理解出来るのだが、弾は他人に何かを教えるという柄ではないし、そういう器用な事が出来るとは思えない。かといって、響の熱意を無駄には出来はしないだろう。
「……困ったな。俺は何かを人に教えられはしないぞ?精々……反面教師になるぐらいかな」
「で、でも弾さん凄く強いじゃないですか!何か修行とかしていたんじゃないんですか?熊を伏せたりとか素振りとか!」
「そんな事はしていないさ……ただ、やっぱり経験は重要だと思う。いろんな相手と戦って経験を積めば、確実に強くなる……そうは思う」
当時、激突王だった頃から実力はそれなりにあったが、そんな自分が特に修行などをしているという訳ではない。だが、グラン・ロロや未来世界で戦ったその全ての経験が今の自分の実力を裏付ける要素となっていることは確かだ。しかし、それは自分に合ったやり方だったとしても、響にそれが適しているとは言い難い。とはいえ、経験を積むというのは強くなる上では必須の条件であると言っても過言では無いので強ち間違ってはいないというのも困りものだ。
「やっぱり、戦いあるのみですか……」
唸るように考えこむ響。しかし、弾の言葉にも一理ある。今は戦いの経験を積んで自分の戦い方をより研ぎ澄ましていくべきだろう。
「二人とも、どうかしたのか?」
「「?」」
休憩室に入っている二人を確認しに来たのだろう、弦十朗がそこに現れる。いつになく悩んでいる素振りの弾と響の様子が気になったのか声をかけてくれた彼に響は自分が強くなりたいという事を話すと、弦十朗も深く考え込む。そして次第にある考えに辿り着いたのだろう、人差し指を上げながら響にある提案をする。
「強くなりたい……ならば、やはり響君には経験不足を解消する必要があるだろう。やはり、ここはバトルをするべきじゃないか?」
「やっぱりそうですか……じゃ、じゃあ相手を……」
「よし。ならばここは、俺が一肌脱ぐとしよう」
響を鍛える為の相手として立候補したのは、まさかの弦十朗。弦十朗の強さは、以前に弾とのバトルを見て響も知っている。装者とも互角以上に渡り合える力を持つカードバトラーである弦十朗ならば相手にとって不足はないだろう。
「本当ですか!?」
「ああ。どうだい?響君」
「喜んで!」
ぐっと拳を握り、応える響。お互いに意思は決まった。ならば、二人のカードバトラーが口にする言葉はただ一つだけだ。
「「ゲートオープン!界放!!」」
人工的に作られたという印象を見受けられるスタジアムのようなバトルフィールドへと転移する響と弦十朗。戦闘着といっても差し支えのないシンフォギアを纏い、気合いを入れるべく両手を打ち付けた響は、二課の職員達がバトルで着用する銀色の鎧のようなバトルフォームを纏った弦十朗を見る。
「さぁ来い!響君!全力でぶつかってくるんだ!」
「はい!スタートステップ!ドローステップ!メインステップ!翼竜人プテラディアをLv2で召喚!」
【翼竜人プテラディア:赤・スピリット
コスト2(軽減:赤1):「系統:竜人・翼竜」:【覚醒】
コア2:Lv2:BP3000
シンボル:赤】
青い翼をもつ、二本の短刀を腰に差した竜人が響のフィールドに現れる。コスト0のドラゴンヘッドに続く、二番目に軽い覚醒スピリットでもあるプテラディアは、フィールドに現れると静かに音を立てずに地面に降り立つ。
「ターンエンド!」
「あら、これは珍しい組み合わせ」
一方、バトルフィールドの外、二課の休憩室に取り残された弾は、近くにあった危機を操作してバトルフィールドの光景をモニターに映して観戦をしていた。そこに現れた了子は、弦十朗と響が戦っている所を見て意外そうに声を上げる。
「響も悩んでいるからな。このバトルはきっと彼女にとって良い経験になると思う」
「ふふ、達観しているのね」
「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、メインステップ。タマムッシュを召喚!」
【タマムッシュ:緑・スピリット
コスト3(軽減:緑1):「系統:殻虫」
コア1:Lv1:BP2000
シンボル:緑】
青い硬質的な殻に覆われた玉虫型のスピリットが弦十朗のフィールドに現れる。数多くいる召喚時にコアをブーストできるスピリットで、序盤中盤で堅実な働きをすることが可能である。
「タマムッシュ、召喚時効果により、このスピリットが持つLvと同じ数、コアをボイドからこのスピリットに置く!タマムッシュのLvは1!よって1コアをこのスピリットに追加!」
【タマムッシュ
コア1→2】
「ターンエンド!」
「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!翼竜人プテラディアをLv1にダウン!」
【翼竜人プテラディア
コア2→1:Lv2→1:BP3000→1000】
「そしてネクサス、焔竜の城塞都市を配置!」
【焔竜の城塞都市:赤・ネクサス
コスト5(軽減:赤4)
コア0:Lv1
シンボル:赤赤】
背後に出現する、聳え立つ岩肌。巨大な岩壁によって覆われたその自然の防壁の内側には一つの城塞都市があり、岩壁もまた一体の龍を象っているかのようにも見える。
「ターンエンド!」
「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。颶風高原を配置!」
【タマムッシュ
コア2→1】
【颶風高原:緑・ネクサス
コスト3(軽減:緑1)
コア0:Lv1
シンボル:緑】
タマムッシュからコストを支払う為にコアを1つ拝借して配置された颶風高原。そのカードが配置されると共に弦十朗のフィールドに緑色の光を帯びた風が吹き荒れていく。以前の弾とのバトルでも見せた、弦十朗のデッキのコアブースト手段の一つであり、彼の切り札と組み合わせる事でその力は絶大な効力を発揮すると言ってもいい。
(も、もう……!?)
手札に目を移す。しかし、そこにネクサスを破壊するカードはない。あれを放置する訳にはいかないのだが、ネクサスを破壊する手段が無い今はどうしようもない。
「続けてクロタネホークをLv2で召喚!」
【クロタネホーク:緑・スピリット
コスト4(軽減:緑3):「系統:爪鳥」:【暴風:2】
コア2:Lv2:BP5000
シンボル:緑】
クロタネソウの翼をもつ鷹が弦十朗のフィールドに出現する。青い花の翼を持つクロタネホークの出現に反応した颶風高原は、緑色の旋風を巻き上げていき、クロタネホークのサポートを行う。
「颶風高原の効果により、暴風を持つスピリットが召喚されたとき、そのスピリットが暴風で指定した数だけボイドからコアをそのスピリットに置く!クロタネホークは暴風:2を持っているため、2コア追加!」
【クロタネホーク
コア2→4:Lv2→3:BP5000→8000】
コアを増やされ、そのBPは8000にまで上昇する。BP8000は並のスピリットでは超えることは出来ない巨大な壁として目の前に立ち塞がる事となるだろう。
「アタックステップ!クロタネホークでアタック!!」
「ライフで受ける!」
クロタネホークが風を纏って降下し、その鋭い爪を響に叩き付ける。先制攻撃を喰らい、まずは一つライフを奪われるがこの程度なら寧ろ歓迎する所でもある。
「ターンエンド!」
「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!」
クロタネホークが疲労している今、激突を使ってもどうにもならないだろう。メテオヴルムの効果ならば倒す事は可能ではあるのだが、その為のコアが足りない。しかし、クロタネホークを倒せなくてもタマムッシュを倒すことは可能な筈だ。
「響け、炎の流星!!龍星皇メテオヴルム、召喚!!」
【龍星皇メテオヴルム:赤・スピリット
コスト7(軽減:赤3):「系統:星竜・勇傑」:【激突】
コア1:Lv1:BP6000
シンボル:赤】
空に暗雲が立ち込めていく。そこから複数の流星が赤く燃え上がりながら地面に落ちていく。その中の一つが地面に墜落し、大きな激突音を響かせながら大量の砂煙を巻き上げていく。その中から咆哮を響かせて現れたオレンジ色の燃える炎のような皮膚を持つドラゴン。緑色の眼を光らせて現れた流星のドラゴンは、砂煙を払いながらその姿を呼び起こす。
「……」
「ふふ、良い笑顔」
「……そうだな」
「それは、かつて使っていたXレアだから?」
「……そうだな」
やはりいつ見ても感慨深いカードである事に間違いない。メテオヴルムやジークヴルムと戦った日々を忘れる事は出来ない。自分の信じたXレアを他にも信じて戦う人がいる。その事実だけでも嬉しく思えてくる。
「あら、さっきからずっとそうだな、ばっかりじゃない。答え方にバリエーション持たせないと会話のドッジボールは出来ないわよ?」
「そうだな……?そうか」
以前にもそんな事を指摘されたような気がする。違った方向での懐かしさも思い出しながら、メテオヴルムを呼び出した響のフィールドに弾は視線を戻していく。
「翼竜人プテラディアをLv2へアップ!」
【翼竜人プテラディア
コア1→2:Lv1→2:BP1000→3000】
「アタックステップ!メテオヴルムで激突!!」
「タマムッシュでブロック!」
メテオヴルムの突進にその小さな身体を精一杯に広げて立ち塞がるタマムッシュ。その身体を全力でメテオヴルムが殴り飛ばすと、タマムッシュはその力を受け止めきれずに呆気なく吹き飛び、その身体は光と共に霧散してしまう。
「焔竜の城塞都市の効果!自分のアタックステップ時に相手のスピリットを破壊したとき、破壊したスピリット1体につき1枚カードをドロー!そして翼竜人プテラディアでアタック!」
「ライフで受ける!」
プテラディアが両手を腰に差した短刀に伸ばす。引き抜かれた短刀を手に翼を広げ、弦十朗へと飛び上がり、その刃を叩き付けて弦十朗のライフを奪い取る。
「ターンエンド!」
「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。いくぞ、響君!鳥獣烈神ガルードを召喚!」
【鳥獣烈神ガルード:青・スピリット
コスト7(軽減:青2・緑2):「系統:獣頭・爪鳥」:【暴風:5】
コア1:Lv1:BP7000
シンボル:青】
白い翼が空に羽ばたく。青い毛並みを持ち、緑の装甲を身体中に纏った、顔には金色の仮面と無数の羽の装飾を取り付けた巨大な鳥獣が出現する。青のXレアでありながらも緑の力を宿した巨大な鳥は、舞い降りると同時に颶風高原の風を吹かせる。
「げ、弦十朗さんのXレア!?」
「颶風高原の効果により、ボイドからコアを5個、ガルードに追加!」
【鳥獣烈神ガルード
コア1→6:Lv1→2:BP7000→12000】
「さらに、飛甲虫イットウカブトを召喚!不足コストは、クロタネホークから確保する!」
【クロタネホーク
コア4→2:Lv3→2:BP8000→5000】
【飛甲虫イットウカブト:緑・ブレイヴ
コスト4(軽減:緑1):「系統:殻虫」
シンボル:なし】
ガルードを呼び出した後に弦十朗が召喚したのは、角が刀になっているカブトムシ型のブレイヴ。この状況でブレイヴを呼び出した事が意味するのは、ただ一つだろう。
「ブレイヴ……ま、まさか!」
「そのまさかだ!俺は、鳥獣烈神ガルードに飛甲虫イットウカブトを合体!」
【鳥獣烈神ガルード:青+緑
コスト7+4→11
BP12000+3000→15000】
イットウカブトの姿が一本の刀となり、ガルードの手に握られる。ブレイヴの力を得て、ガルードは自身が持つその効果を最大限に発揮させる事が可能になったと言ってもいい。
「!緑のブレイヴか!」
「あらあら……これは響ちゃん、厳しいかしら?」
「イットウカブト、召喚時効果により相手スピリット1体を疲労させるが……既に二体とも疲労しているな。アタックステップ!いけ、ガルード!合体アタック!」
ガルードが刀を構え、一気に飛び出す。瞬間、イットウカブトからガルードの身体の中に緑色のエネルギーが流れ込み、その身体を光らせるように力を注ぎこむ。
「イットウカブトの合体時効果により、このスピリットが自分のターンの最初にアタックしたとき、このスピリットを回復する!」
「ライフで受ける!」
響にはライフで受けるしか選択肢は存在しない。刀身を叩きつけられ、そのライフを砕かれる響。が、その瞬間にガルードが持つその効果が発揮され、ガルードの羽ばたきによって生じた暴れ狂う風が響のデッキを吹き飛ばす。
「ガルードのアタック時効果だ!このスピリットのアタックで相手のライフを減らしたとき、相手のデッキを12枚破棄する!」
ドラゴンヘッド二枚、翼竜人プテラディア、晴天竜ウィンドレイク二枚、ディロフォーザ、砲凰竜フェニック・キャノン、砲竜バル・ガンナー、ガイミムス、焔竜の城塞都市、シンクロニシティ、双光気弾。合計十二枚のカードが一気に破棄され、響のデッキは四分の一以上が吹き飛ばされる。
「ああ、デッキが!」
「いいか響君!君の強くなりたい意思は確かに大事だ!だが、意思だけではバトルは勝ち抜けない。俺のデッキ破壊は君が以前戦ったノイズが使用していた粉砕デッキよりもずっとハードだ!合体スピリット!二度目のアタック!」
回復したガルードが再び刃を振り上げる。しかし、このアタックを受けても響のデッキはまだ残るし、残るクロタネホークがアタックしても自分のライフは1つ残る。
(で、でもまだこのアタックを受けてもデッキは……そ、それに今回は以前みたいに破棄される前に手札にアルティメット・ジークヴルムが既に来てる!次のターンでアルティメットを呼び出して……!)
「一度見えた勝機を逃してはカードバトラーとしては十分じゃない!君も戦う覚悟をこの先も持ち続けるならば肝に銘じておくんだ!フラッシュタイミング!ストームアタック!!不足コストはクロタネホークと合体スピリットから確保する!」
【クロタネホーク
コア2→1:Lv2→1:BP5000→3000】
【鳥獣烈神ガルード
コア6→5】
「相手スピリット1体を疲労させ、その後自分のスピリット1体を回復する!疲労させるスピリットはいないが、回復効果は適用される!合体スピリットを回復!」
「……へ?ええ!?」
「……完全に目論見が外されたわね。それにしてもえげつないわね」
「そうだな。あの様子を見た限り、手札には強力なカード……アルティメットでも来ていたんだろうが……」
唖然となる響に振り下ろされる二撃目の太刀筋。響の残りライフが3から2へと減り、その分のコアがリザーブへ移動してリザーブに置かれたコアの数が2つになる。しかし問題はそこではなく、ガルードのアタックでライフが削られた事により、響のデッキから続けざまに12枚のカードが再び破棄されることとなる。
「あ……は、はは……」
晴天竜ウィンドレイク、ディロフォーザ、火星神龍アレス・ドラグーン、雷皇龍ジークヴルム二枚、シンクロニシティ、三札之術二枚、ドラゴニックウォール二枚、エナジーバースト、龍星皇メテオヴルムの12枚が破棄される。ここまでやられると最早渇いた笑いしか出てこない。
「これが、最後の合体アタックだ!」
「ら、ライフで受ける!!」
ガルード、三回目のアタック。そのアタックは響のライフを三つも奪い取り、残っていた残り僅かなデッキからドラゴンヘッド、翼竜人プテラディア、火星神龍アレス・ドラグーン、砲凰竜フェニック・キャノン、ガイミムス、焔竜の城塞都市、シンクロニシティ、エナジーバーストらを破棄し、デッキに残っていた全てのカードを吹き飛ばしてしまう。
「これで、デッキアウトだ。ターンエンド!」
「う、うう……アルティメット・ジークヴルムを次で出そうと思ってたのに……スタートステップ!!」
響がスタートステップを宣言する。その瞬間、デッキが0枚である響の敗北が決定し、勝敗の決まった二人はバトルフィールドの外へと出てくる。
「もう、弦十朗君ももう少し手加減してあげてよかったんじゃないの?」
「バトルスピリッツはやるなら全力だからな。しかし響君、どうだった?俺とのバトルは」
「そうですね……」
緑のコアブースト能力に青のデッキ破壊。両方が両立し、響のデッキを一気に削り取る事に成功した。それだけでなく、仮にデッキ破壊が出来なくても連続攻撃を活かして響のライフを奪い取る事も可能で、現にデッキを全て破棄しただけでなく先程のバトルではクロタネホークがアタックすれば響のライフも0にすることが出来ていたのだ。
「凄いと思います……色々と」
「はは、そうか。何か参考になればいいと思うんだが……だが、アルティメットが強力でも出せない時もある、ということは理解してくれたかな?」
「身に染みました」
アルティメットといえど、デッキには一枚しかないのだ。無論、アルティメットに頼らないデッキにしているつもりではあるのだが、今の自分のデッキではやはり足りないものもあるだろう。それを補う為に色々と考える必要がありそうだ。
「でも、色々と課題が見えてきたと思います!」
「その意気だ、きっと君はもっと強くなれる!」
「はい!」
今はまだでも、もっと強く。小さくても、大きな一歩を響は感じ取るのだった。
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