第15話 幻羅に断ち切られし翼

「!分かった、俺もすぐ二人の所へ行く!」


 


翼とネフシュタンの少女が戦っていたその時。バトルを終えた弾は弦十朗からそこでネフシュタンを操る謎の少女が現れ、翼が彼女と交戦しているということを告げられる。


 


「ネフシュタンの力はあまりにも大きいようだ。シンフォギアという鎧を通しても一撃で翼が大きなダメージを受ける程の力……そして、スレイヴ・ガイアスラというネフシュタンの力が」


「……ガイ・アスラ?まさかあのガイ・アスラか!?」


 


弾の目が見開かれる。スレイヴ・ガイアスラと弦十朗が言っている所から、自分の知るガイ・アスラとは別物なのだろうが、無関係であるわけがないだろう。二人の下へ向かう弾の足が速くなる。今、弦十朗達の知るスレイヴ・ガイアスラの情報を聞きながら、弾は自分の知るガイ・アスラが小型となっている存在なのだと確信する。だとするなら、超覚醒をベースとしたデッキをその少女が構築しているのなら確実に、あのスピリットがいる筈だ。


 


「……知っているのか?」


「その少女は、ネフシュタンの鎧がかつての歴史に名を遺す程の人物が使っていたバトルフォームの残骸から作られたって、そう言ったんだな」


「ああ……しかし、それが」


「もし、俺の予想が正しいのなら……ネフシュタンの鎧を作り上げる為に使われたバトルフォームは……!」


 


その言葉を告げようとした次の瞬間。弾は目の前から感じた気配に立ち止まる。そんな弾の目の前に現れたのは、無数のノイズ。今回発生したノイズは全て倒した筈なのに、何故か新手が来ている。


 


「どうした!?」


「ノイズの追加だ。切らせてもらう」


「!……分かった、無事でいてくれ」


「ああ、待っていてくれ」


 


通信を切り、弾は迫るノイズ達に対して、デッキを構える。奴等が自分を素直に通しはしない事などとっくにわかっている。ならば、これらを打倒して二人の下に向かうしかない。


 


「ゲートオープン!界放!!」


 


 



 


 


翼 ライフ:4 リザーブ:1 トラッシュ:11 手札:3


 


 


ネフシュタンの少女 ライフ:4 リザーブ:2 トラッシュ:3 手札:6


 


フィールド


【炎楯の守護者コロナ・ドラゴン:赤・スピリット


コスト3(軽減:赤2):「系統:星竜」


コア2:Lv1:BP2000


シンボル:赤】


 


【スレイヴ・ガイアスラ:赤・スピリット


コスト6(軽減:赤3)+6→12:「系統:滅龍・星竜」:【超覚醒】


コア5:Lv3:BP8000+5000→13000


シンボル:赤】+【鳳凰竜フェニック・ソード】


 


 


弾も駆け付けようとしている中、翼とネフシュタンの少女のバトルは第九ターン目を迎えていた。ターンプレイヤーは翼。しかし翼のフィールドにはカードが存在せず、対するネフシュタンの少女のフィールドには回復状態の炎楯の守護者コロナ・ドラゴンと鳳凰竜フェニック・ソードと合体したスレイヴ・ガイアスラが存在する。誰の目から見ても劣勢であることは明らかだ。しかし、翼はまだ勝負を諦めてはいない。いや、諦められる訳が無い。


 


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!フォビッド・バルチャーを召喚!」


 


【フォビッド・バルチャー:青・ブレイヴ


コスト5(軽減:青2):「系統:戦獣・爪鳥」


コア1:Lv1:BP4000


シンボル:なし】


 


翼のフィールドに出現する、鋼のような無数の羽を持つ黒い翼を持つ怪鳥。鋭い爪を生やした脚を持ち、首輪や翼に巻きつけられた鎖で縛られているそのブレイヴは召喚と共に鳴き声を上げる。


 


「フォビッド・バルチャー、召喚時効果!トラッシュにある紫/緑/青のネクサスすべてをノーコストで配置する!」


 


【俊星流れるコロッセオ:青・ネクサス


コスト3(軽減:青2)


コア0:Lv1


シンボル:青】


 


【青玉の巨大迷宮:青・ネクサス


コスト3(軽減:青1)


コア0:Lv1


シンボル:青】


 


【海帝国の秘宝:青・ネクサス


コスト4(軽減:青2)


コア0:Lv1


シンボル:青青】


 


背後で俊星が降り注ぐコロッセオ、サファイア色の巨大な迷宮、三体の龍がとぐろを巻いているかのような姿をした一つの宝石を守る彫像物、合計三つのネクサスが同時に展開される。手札交換でトラッシュへ送られた俊星流れるコロッセオをフェニック・ソードの召喚時効果で焼かれたネクサス共々配置し、損害を即座に取り戻していく。


 


「これで翼さんのフィールドが立て直された!」


「ちっ……」


「続けて現れいでよ!巨人大帝アレクサンダー 、召喚!!」


 


【巨人大帝アレクサンダー:青・スピリット


コスト6(軽減:青3):「系統:闘神・勇傑」:【強襲:2】


コア4:Lv1:BP6000


シンボル:青】


 


風に靡く赤いマント。身体に纏われた鋼の鎧。左腕に取り付けられた自らを護る盾。右手に握られた全てを貫かんとする強大な槍。青のXレア、巨人大帝アレクサンダーは召喚と共にその槍の柄を地面に打ち付けて音を立てる。


 


「フォビッド・バルチャーを巨人大帝アレクサンダーに合体!!Lv2へ!」


 


【巨人大帝アレクサンダー


コスト6+5→11


コア4→5:Lv1→2:BP6000→10000+4000→14000】


 


フォビッド・バルチャーの身体が消滅し、翼だけとなる。アレクサンダーからも赤いマントが消滅し、その背中にフォビッド・バルチャーの翼が合体し、青い閃光を解き放つ。


 


「アタックステップ!いけ、合体スピリット!合体アタック!」


 


翼の命令を受け、アレクサンダーは片手で器用に槍を回転させると、それを手に少女のフィールドへと果敢に斬り込んでいく。それと同時にアレクサンダーの槍に青い光が灯る。


 


「巨人大帝アレクサンダー、Lv2アタック時効果!コスト4以下の相手スピリット1体を破壊し、そのスピリットのコストだけ相手のデッキを破棄する!コロナ・ドラゴンを指定!」


 


アレクサンダーが槍を横に薙ぎ払う。それと同時に放たれたエネルギーの斬撃がコロナ・ドラゴンを襲うが、その攻撃をコロナ・ドラゴンは巨大な盾を構える事で受け止めてしまう。


 


「残念、コロナ・ドラゴンがいる限り、コスト3以下の自分のスピリットすべては相手の効果で破壊されたとき、疲労状態でフィールドに残れるのさ」


「だが破壊されないわけではない!デッキは3枚破棄させてもらうぞ!」


 


ビッグバンエナジー、コノハガニン、ダンデラビットの三枚がトラッシュへ落とされていく。コロナ・ドラゴンは破壊されない効果ではなく、破壊されたときに発揮される効果。故に、あくまで一度破壊されてから解決することとなる為、アレクサンダーの相手スピリットを破壊することでデッキを破棄する効果は通常通り起動することとなる。


 


「まだだ!強襲:2!青玉の巨大迷宮を疲労させ、この合体スピリットを回復!」


(さてどうしたものか。ライフチャージは使えないとなると……)


 


ちらと手札に目を向ける。彼女の手札にあるライフチャージは緑のマジック。翼の配置した俊星流れるコロッセオの効果により、少女は自分のフィールドにないシンボルの色と同じ色のマジックを手札から使用できなくなっているのだ。それだけでなく、自由に使えるコアが少ないというのは少々頂けない状況だ。それを打開する為にも、ここはこれを犠牲にするのが一番いいだろう。


 


「合体スピリットでブロック!」


「え!?」


(まさかカウンターでマジックが……!?)


 


突進するアレクサンダーの槍をフェニック・ソードで受け止めるスレイヴ・ガイアスラ。そのままアレクサンダーを力任せに吹き飛ばすが、地面を大きく抉りながら後退するように着地したアレクサンダーを覆い尽くす影となったスレイヴ・ガイアスラの剣が赤く燃え上がり、それは巨大な刃となってアレクサンダーへと襲い掛かる。しかし、鋭い一閃がアレクサンダーから放たれ、スレイヴ・ガイアスラの手に握られたフェニック・ソードが弾き飛ばされていく。


 


「……」


 


そして、BPで勝るアレクサンダーが翼を広げてスレイヴ・ガイアスラの胸をその槍で貫きながら床へと叩き付ける。その一撃はスレイヴ・ガイアスラを粉砕し、大爆発が引き起こされる。


 


(何も無かった……?)


「や、やった!」


「ブレイヴは分離して残させてもらう!」


 


【鳳凰竜フェニック・ソード:赤・ブレイヴ


コスト6(軽減:赤3):「系統:機竜・星魂」


コア1:Lv1:BP5000


シンボル:なし】


 


吹き飛んだフェニック・ソードが赤い刃の右翼と青紫色の刃の左翼を持つ機械のフェニックスへと変化する。ドラゴンのようにも見えるそのブレイヴはスピリットとなって少女のフィールドに疲労状態で現れる。


 


「……何を考えているかは知らないが、こちらは更に行かせてもらうわ!合体スピリットで再びアタック!海帝国の秘宝を疲労させ、強襲で回復!さらにLv2アタック時効果で再びコロナ・ドラゴンを破壊し、デッキを3枚破棄!」


(ちっ、ネクサスのことを考えれば残さなきゃいけないにしろ、サンドバッグ状態のままなのはやはり痛い……)


 


炎楯の守護者コロナ・ドラゴン、獣装甲メガバイソン、六分儀剣のルリ・オーサの3枚がデッキから破棄される。そしてアレクサンダーの効果処理が終わり、その後コロナ・ドラゴンの破壊耐性効果が発揮され、再びコロナ・ドラゴンは疲労状態でフィールドに残る事となる。


 


「ライフで受ける!」


 


少女を守るように出現した青い半透明の球体。そのバリアがアレクサンダーの槍の一撃を真正面から受け止め、少女のライフをさらに一つ奪い取る。


 


「ターンエンドよ」


「ふふ……」


 


薄気味悪さを感じさせる笑みを浮かべる少女。スレイヴ・ガイアスラが破壊された事で少女は、自由に使う事もままならなかったコアを補充することに成功している。キースピリットである筈のスレイヴ・ガイアスラを倒してくれてありがとう、そう言わんばかりの様子だ。


 


「何がおかしいのかしら」


「いや、何でもないさ。スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!六分儀剣のルリ・オーサをLv2で召喚!」


 


【六分儀剣のルリ・オーサ:緑(赤)・スピリット


コスト4(軽減:緑2・赤1):「系統:殻人・星魂」


コア2:Lv2:BP5000


シンボル:緑(赤)】


 


少女のフィールドに現れる青緑色の殻を持つ昆虫の人型スピリット、ルリ・オーサ。強力なコアブーストを行うその召喚時効果が、彼女のフィールドの赤スピリット2体、ルリ・オーサとコロナ・ドラゴンにそれぞれ1つコアを追加していく。


 


【炎楯の守護者コロナ・ドラゴン


コア2→3:Lv1→2:BP2000→3000】


 


【六分儀剣のルリ・オーサ


コア2→3】


 


「贅沢にいっちまいなぁ!!スレイヴ・ガイアスラ!2体連続召喚!不足コストはルリ・オーサとコロナ・ドラゴンより確保!」


「なっ……!?」


「さ、三枚積んでいただと!?」


 


【炎楯の守護者コロナ・ドラゴン


コア3→1:Lv2→1:BP3000→2000】


 


【六分儀剣のルリ・オーサ


コア3→2】


 


【スレイヴ・ガイアスラ


コスト6(軽減:赤3)


コア:1:Lv1:BP4000


シンボル:赤】


 


【スレイヴ・ガイアスラ


コスト6(軽減:赤3)


コア:1:Lv1:BP4000


シンボル:赤】


 


更なる絶望。そう言うかのように少女のフィールドに現れたのは、更なる2体のスレイヴ・ガイアスラ。このままであればそのBPは4000と今のアレクサンダーには遠く及ばないが、超覚醒と言う怒涛の連続攻撃を可能とする驚異的な能力を所持しており、その力は前のターンに嫌というほど味わったばかりだ。


 


「一気に2体も……!」


「バーストをセットしてアタックステップ!スレイヴ・ガイアスラでアタック!超覚醒でルリ・オーサのコアを移動させ回復!」


 


【六分儀剣のルリ・オーサ:緑


コア2→1:Lv2→1:BP5000→3000


シンボル:緑】


 


【スレイヴ・ガイアスラ


コア1→2】


 


「合体スピリットでブロック!!」


 


スレイヴ・ガイアスラが両手に炎を生み出し、それを纏ってアレクサンダーへと殴りかかる。その一撃を左手の盾で受け止めると、そのまま盾を押し出してスレイヴ・ガイアスラを空へと打ち上げると、右手に握った槍を投げ、その身体を貫かせて粉砕してみせる。


 


「2体目のスレイヴ・ガイアスラでアタック!フラッシュタイミング、ライフチャージを使用!不足コストは、ルリ・オーサより確保!」


 


【六分儀剣のルリ・オーサ


コア1→0】


 


「コスト3以上の自分のスピリット1体を破壊することで、ボイドからコア3個を自分のリザーブに置く!フェニック・ソードを破壊!」


 


フェニック・ソードの身体が緑色の光に包まれて消滅し、フェニック・ソードに乗っていた1コアと新たな3コアがリザーブへ補充されていく。この状況でのコアブースト。それには当然、少女なりの狙いがあると言ってもいい。


 


「続いてフラッシュタイミング!メガ・ネウラーを神速召喚!」


 


【メガ・ネウラー:緑・スピリット


コスト3(軽減:緑1・赤1):「系統:怪虫」:【神速】


コア2:Lv1:BP3000


シンボル:緑】


 


巨大なトンボのような姿をしたスピリットが神速によって出現する。通常のトンボを遥かに超えるその大きさから生える六本の足が、その不気味さをより強く強調しているようにも見てとれる。


 


「メガ・ネウラーの召喚時効果でボイドからコア1個を赤/白のスピリットに置く!コロナ・ドラゴンに1コア追加!」


 


【炎楯の守護者コロナ・ドラゴン


コア1→2】


 


「そしてコロナ・ドラゴンのコアをスレイヴ・ガイアスラに超覚醒で移動!」


 


【炎楯の守護者コロナ・ドラゴン


コア2→1】


 


【スレイヴ・ガイアスラ


コア1→2】


 


スレイヴ・ガイアスラに更に加わるコア。それがスレイヴ・ガイアスラを回復させ、回復したスレイヴ・ガイアスラは次のアタックへの準備を整えながらも相手へ猛攻を仕掛けていく。


 


「そうはいかない!フラッシュタイミング、マッスルウォール!不足コストは合体スピリットより確保!」


 


【巨人大帝アレクサンダー


コア5→4:Lv2→1:BP10000→6000+4000→10000】


 


「このアタックはライフよ!」


 


スレイヴ・ガイアスラのアタックが翼に襲い掛かる。しかし、その拳は翼の目の前に出現した青い巨大な壁に阻まれてダメージを翼には届かせはしなかった。


 


「マッスルウォールの効果でこのターンの間、回復状態の相手スピリットのアタックでは自分のライフは減らない!」


「姑息な手を……スレイヴ・ガイアスラでもう一度アタック!超覚醒は無しだ!」


 


マッスルウォールの防御効果が適用されるのは、回復状態の相手スピリットのアタックのみ。超覚醒を使わず、疲労状態となっている今のスレイヴ・ガイアスラのアタックは、マッスルウォールの壁を力任せに引き裂いて再び両手に炎を纏わせ、翼へと振り上げる。


 


「……ライフで受ける!!」


 


先程味わった激痛を思い出したのだろう、一瞬ライフで受ける事を躊躇してしまう。しかし、今の自分が取れる選択肢など、ライフで受ける以外にないのだ。ライフで受ける選択肢を取った翼の目の前に、紅く光る六角形が束ねられた防壁が出現し、スレイヴ・ガイアスラの叩き付けた拳のエネルギーが中心に集約される。集約されたエネルギーは、再び翼の胸を撃ち抜いた。


 


「っ、ぁあああああ!!」


「つ、翼さん!!」


 


身体中が痛みに悶える。再び与えられた激痛は、翼の体力を精神を次々と削っていき、再びバランスを崩して倒れそうになる。倒れそうになる自分の身体を右手に太刀を出現させ、それを支えにすることでどうにか膝を付けずに立つ。


 


(これが、完全聖遺物のポテンシャルだっていうの……!?)


「たった二つだろ?あの激突王はシンフォギア以上に脆いバトルフォームを砕かれながらもこの痛みの中で最後まで立っていたんだからなぁ……?」


「……な、に……?」


「激突王……って、弾さん!?何で弾さんの事を!?」


(まぁ私も又聞きした程度だけど)


 


激突王といえば、彼女達には弾の事しか想像できない。しかし、激突王の情報などこの世界には存在しない筈。それを知っているというのはどういうことなのか。


 


「過去から来たカードバトラーだろ?それこそ、今の人類史以前の人間だ。どうやってこんな遠い未来に来たかまでは知らないが、あいつが来る前にこっちは目的を完遂させてもらうさ。その為の駒も大量に仕向けて時間稼ぎを行わせているんだから」


「大量の……駒?」


「こいつでノイズをポンポンってな」


 


ネフシュタンの少女が左手でくるくると杖を回す。今の言葉をそのまま受け取るのなら、少女はノイズを操れるという事になる。だが、それ以上に少女は、弾が過去から来たカードバトラーだといった。それも、今の響達が使っている聖遺物があった古代文明の時代よりもずっと昔の時代から来た存在だと。それにしては随分と今の文化に弾は馴染んでいるが、当時は今と同じ、下手すれば今以上のテクノロジーが存在していたということになるのだろうか。


 


「今はバトルに集中しな!」


(っ……こいつの力は、聖遺物だけじゃない……本人のカードバトラーとしての技量が洗練されている……!)


 


バトルを通じて、ネフシュタンの力がもたらす超覚醒をこの少女は上手く操っている事に翼は気付いていた。これに対抗する方法があるとすれば、自分の手札にある、シンフォギアがもたらす切り札、アルティメットしかない。これを呼び出し、トリガーに成功すればスレイヴ・ガイアスラごと少女のスピリットを破壊し、ブロッカーを無力化させられる。後は、強襲を合わせた四回以上のアタックで相手のライフを十分に狙いに行ける。


 


「へへ、考え事かい?」


「お前を倒す為のだ!スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!リボル・アームズを召喚!」


 


【リボル・アームズ:青・ブレイヴ


コスト4(軽減:青1・白1):「系統:造兵」


コア1:Lv1:BP3000


シンボル:なし】


 


「召喚時効果でボイドからコア2個をネクサスに!青玉の巨大迷宮にコアを追加!」


 


【青玉の巨大迷宮


コア0→2】


 


「その召喚時効果、貰った!相手スピリット/ブレイヴの召喚時効果発揮後、バースト発動!双翼乱舞!デッキから2枚ドロー!」


「構うものか!フォビッド・バルチャーを分離!」


 


【フォビッド・バルチャー


コア1:Lv1:BP4000】


 


アレクサンダーからフォビッド・バルチャーが分離し、アレクサンダーの背中に赤いマントが再び出現する。


 


「アレクサンダーをLv2にアップ!」


 


【巨人大帝アレクサンダー


コア4→5:Lv1→2:BP6000→10000】


 


「壁のつもりかい?わざわざブレイヴを分離させてスピリットを並べて……!?」


 


スピリットを並べた。それがただ壁を作り出す為ではない事に気付き、少女ははっと目を見開く。だが、今気付いたところでもう遅い。翼は右手に握る最後の一枚を呼び出す為にその力を引き出す歌を紡ぎ出す。


 


「!翼さんの歌……ってことは!」


「くそ、ここで呼び出すつもりか!?」


「我が刃よ、防人の歌と共にその剣を顕現せよ!アルティメット・オライオン、召喚!不足コストは、青玉の巨大迷宮より確保!」


 


【青玉の巨大迷宮


コア2→0】


 


【アルティメット・オライオン:青・アルティメット


コスト8(軽減:青3・極1):「系統:新生・闘神」


コア1:Lv3:BP15000


シンボル:極】


 


大地が砕け、そこから巨大な剣が現れる。そしてそれを握る、金髪をなびかせる筋肉質な青い身体の巨人がその姿を出現させ、身体に纏われた金色の衣を輝かせる。


 


「……!コスト8、随分と大型がおいでなすったか……!」


「アルティメット・オライオン召喚時効果!Uトリガー、ロックオン!!」


「っ……鳳凰竜フェニック・ソード、コスト6!!」


 


翼の右手に出現した短刀が少女のデッキへ放たれ、一枚のカードをトラッシュへ叩き落とす。しかし落とされたのはコスト6のカード。ヒットこそしたものの、クリティカルヒットとはならなかった。だが、今はこれだけでも十分だ。


 


「ヒット!コスト合計12まで相手スピリットを好きなだけ破壊する!コスト6のスレイヴ・ガイアスラ、コスト3のメガ・ネウラー、コロナ・ドラゴンを破壊!!」


 


コスト合計は12。アルティメット・オライオンが剣を掲げると、頭上から無数の青い剣の雨が降り注ぎ、それが三体のスピリットを残すことなく貫いていき、スレイヴ・ガイアスラが大爆発を引き起こして他の二体のスピリットをも隠していく。


 


「コロナ・ドラゴンの効果でコスト3以下の二体のスピリットは疲労状態で場に残る!」


 


爆煙が晴れる。その先にいたのは、疲労状態でフィールドに残ったメガ・ネウラーとコロナ・ドラゴンの二体。だが、ここまでは既に予想済み。その上で三体のスピリットを破壊したのだから。


 


「リボル・アームズをアレクサンダーに合体!」


 


【巨人大帝アレクサンダー


コスト6+4→10


コア5→6:BP10000+3000→13000】


 


リボル・アームズの身体が分離され、その各パーツがアレクサンダーの鎧に装着される。鋼色の鎧に新たに追加される黄色と焦げ茶色の縞々模様のカラーリング。それがもたらすのは、攻撃に役に立つ能力だ。


 


「このターンで決めさせてもらう!アタックステップ!合体スピリットでアタック!!この瞬間、リボル・アームズの合体時効果により、コスト4を指定!このターン、相手はコスト4のマジックを使用できない!さらにアレクサンダー、Lv2効果で炎楯の守護者コロナ・ドラゴンを破壊!デッキを3枚破棄!」


 


ダンデラビット、ドラゴニックウォール、絶甲氷盾の三枚が少女のデッキから破棄される。さらにアタックステップを終了させる多くのマジックが属するコスト4を縛られたことで少女は手札から上手くマジックを使用することが出来なくなってしまう。


 


「コロナ・ドラゴンは残す!」


「いける!この連続攻撃なら……!」


「強襲により、俊星流れるコロッセオを疲労させて合体スピリットを回復!」


「フラッシュタイミング!グラストラップを使用!アレクサンダーを疲労させ、このターンの間回復できなくする!このアタックはライフで受ける!」


 


アレクサンダーの槍が叩きつけられ、ライフを残り二つにまで減らす。だが、その一撃も然程効いていないというかのように少女は口元に笑みを浮かばせる。その視線の先では、緑色に光るツルに絡まれ、縛られたまま倒れるアレクサンダーの姿があった。


 


「これで終わりかい?」


「っ……ターンエンド……!」


「そ、そんな……」


「ったく、お前なんか所詮前座でしかないんだよ!スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!リバイヴドローを使用!デッキから2枚ドロー!そしてバーストをセット!」


 


二枚のカードをドローし、その内の一枚をセットする。そして、そのバーストが翼が蓄積させてきたダメージを全て無に還す引き金となる。


 


「オリンピアの天使長オフィエル、召喚!」


 


【オリンピアの天使長オフィエル:黄


コスト8(軽減:黄4):「系統:天霊」


コア5:Lv3:BP8000


シンボル:黄】


 


少女のフィールドに突如として現れる黄色のスピリット。水のような鮮やかささえ思わせる水着のような水色の服装を纏った、青と緑の翼を其々持つ長い黒髪の女性、赤と緑を基調としていた筈の彼女のデッキに何故投入されているのか。その疑問も、すぐに解決することとなる。


 


「オフィエルの召喚時効果!自分のバースト1つを破棄することで、自分のライフが5になるようにボイドからコアを置く!」


「何!?」


 


セットした絶甲氷盾が破棄され、少女のライフが初期状態の5にまで一気に回復する。翼が苦労して削ったその全てを一気に無力化されたという事実が与える絶望感は、計り知れない。だが、


 


「っ……だが、幾ら回復しようと私にはアルティメット・オライオンもいる……!」


「何がアルティメットだ……あんたはどうやら、この戦いのメインが自分のアルティメットだって考えてるみたいだが、全然違うんだよ。そもそも、私の狙いもそいつを拉致していくことなんだからな」


「……え!?」


 


バイザーの奥の瞳が、響に向けられる。何故、響が対象なのか。そんな思って当然の疑問には答えずに少女は、その手に存在する、絶対的な力を解き放つ。


 


「お前に鎧なんざ、過ぎた代物さ!降臨しろ、幾星霜もの時を経て蘇る、異界の龍!!絶対的なる王の力で全ての力を撃ち滅ぼせ!!幻羅星龍ガイ・アスラ、召喚!不足コストは、メガ・ネウラーとオリンピアの天使長オフィエルから確保!」


 


【メガ・ネウラー


コア2→0】


 


【オリンピアの天使長オフィエル


コア1→0】


 


【幻羅星龍ガイ・アスラ:赤・スピリット


コスト10(軽減:赤6):「系統:神星・星竜」:【超覚醒】


コア1:Lv1:BP8000


シンボル:赤】


 


瞬間、響と翼は、本能的に恐怖を感じ取っていた。悪寒を感じ取り、冷や汗が頬を流れる。地面から吹き荒れる巨大な土煙。上空から降り注ぐ赤い炎。それは、白い人型の上半身に龍の尾が生えた、スレイヴ・ガイアスラにも似た姿となって降臨する。2体のスピリットを喰って現れたその存在、それが放つ畏怖が、魂をも震わせているようにすら感じ取れた。


 


「何だ……このスピリットは……」


「ターンエンド。出ただけでこの反応なんて、まるで出来損ない。あんた本当に戦士なの?」


「……!」


 


震える手を握り、翼は何とか気を落ちつけようとする。しかし、こんな力を持つ相手から、ネフシュタンの鎧を奪い取る事が出来るのか。単純に攻撃して、百歩譲って勝つ事が出来たとしても、果たして彼女からネフシュタンの鎧を剥ぎとれるのか。シンフォギアよりもずっと強固なあの鎧にダメージを与える方法があるとすれば、翼には一つの考えしかなかった。


 


(……あれなら)


 


命を燃やす歌。かつて、奏がその身を散らすこととなったその歌は、自分に強大な力をもたらしてくれる。それを使えば或いは。しかし、それをやれば確実に自分は致命傷を負う事となる。最悪の場合は死にすら至るだろう。だが、


 


(……いや、ここで躊躇っているから、私はあの時奏を……!そう、迷っている暇なんてない。私は、私の持てる力の全てで、奴を倒し、取り戻す!そして、私は前に進んでみせる!!)


 


自分の迷いを振り払い、デッキに手をかける。


 


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!リボル・アームズを分離!」


 


【リボル・アームズ


コア1:Lv1:BP3000


シンボル:なし】


 


「アルティメット・オライオンをLv4へアップ!」


 


【アルティメット・オライオン


コア1→4:Lv3→4:BP15000→24000】


 


「牙皇ケルベロードを召喚!」


 


【牙皇ケルベロード:青・ブレイヴ


コスト5(軽減:赤2・青2):「系統:異合・皇獣」


シンボル:青】


 


翼の場に出現したのは、弾も愛用するブレイヴ、牙皇ケルベロード。その力は、強襲を持つアレクサンダーと組み合わされる事で更に輝くと言っても過言ではない。


 


「アレクサンダーに直接合体!!」


 


【巨人大帝アレクサンダー


コスト6+5→11


BP10000+5000→15000


シンボル:青+青】


 


ケルベロードの身体が消滅し、赤と黒の翼となる。それはアレクサンダーの背中に合体し、本日三種類目の合体を疲労することとなる。


 


「はっ、ダブルシンボルになった所でどうにかできると本気で思ってるのか!?」


「……私は、お前を全力で叩き潰す」


「出来るならやってみろよ!」


「……見ておけ、立花」


「……え?」


 


静かな声で語りかける翼。響は、翼がいったい何を言っているのか、まるで理解できなかった。ただ、唯一理解できるという事は、翼が何か、とんでもないことをしようとしている事だけ。


 


「つ、翼さん何を!?」


「これが……防人の、私の覚悟……奪われたものを取り戻すという、鉄の意思だ!」


 


そして、翼の口から、一つの歌が紡がれる。その歌は、シンフォギア起動のものでも、アルティメットを呼び出す為の歌でもない。その歌が何なのか。響はまだ知らなかった。しかし、少女は違う。その歌が、何を意味するのか、知っていた。


 


「まさか、これは絶唱!?正気か……!?」


 


絶唱。その歌が翼の限界を超えた力をその身に宿らせていく。全身から爆発的にエネルギーが溢れ出し、口から血が流れ出し、地に落ちていく。翼の身体は巨大な閃光に包まれ、激しい衝撃がその髪を揺らしていく。


 


「翼……さん……!?」


「アタックステップ。合体スピリットでアタック。強襲の効果で青玉の巨大迷宮を疲労させて回復、Lv2効果でコロナ・ドラゴンを破壊してデッキを3枚破棄」


 


ファイザード、ダンデラビット、メガ・ネウラーの3枚が破棄され、コロナ・ドラゴンが自身の効果で疲労状態で場に残る。そしてアレクサンダーがその槍の先端に膨大なエネルギーを集約させ、少女へと放とうとする。そのアタックを見て、息を呑んだ少女は腹を括ったように半ばヤケ気味にこの場で一番取るべき選択肢を見せる。


 


「ら、ライフだ!ライフで受ける!!」


 


瞬間、少女の目の前に先程まで翼が少女のアタックを受ける時に発生したものと同じ六角形の光が無数に束ねられた防壁が出現する。違うのは、それが赤では無く青色に変わっていること。そこに槍を全力で叩き付けたアレクサンダーの力が爆発的に高められ、その一撃は少女の両肩にそれぞれ一発ずつ光線となって叩き込まれ、一気にライフを二つ奪っていく。


 


「ああああああああ!?」


 


二連続のあまりの激痛に少女は耐え切れず、悲鳴を上げる。響が視線を向けると、その両肩の装甲は砕けて素肌がその下から見えており、その素肌も表面が黒く焼け焦げている。


 


「まだ、アタックステップは終わってない……合体スピリットでアタック。強襲の効果で俊星流れるコロッセオを疲労させて回復、Lv2効果でコロナ・ドラゴンを破壊してデッキを3枚破棄」


「翼さん!もう止めてください!そんなこと続けたら……どっちも死んじゃいますよ!?」


 


響の必死な、悲鳴にも似た叫びが上げられる。だが、この場にいる全員が、既に知っていた。絶唱という存在を知っていても、知らなくても、もう翼を止められないという事を。目から血の涙を流しながら、翼は再びアレクサンダーに命令を与え、コロナ・ドラゴンを破壊してデッキを3枚吹き飛ばす。コノハガニン、双光気弾、獣装甲メガバイソンらが破棄され、また疲労状態で残ったコロナ・ドラゴンを見ながら少女は、これ以上はやらせないと言わんばかりに声を張り上げる。


 


「フラッシュタイミング!!ドラゴニックウォールを使用!赤のスピリット、コロナ・ドラゴンを破壊してこのバトル終了時にアタックステップを終了する!!」


 


コロナ・ドラゴンが砕け散り、炎の壁が少女を護るように出現する。そして、アレクサンダーのアタックが振り上げられる。


 


「このアタックはライフで受ける!!」


 


防壁を突き抜け、次なる一撃が腹にめり込む。腹の装甲を粉々に打ち砕き、その衝撃に込み上げてくるものを必死に抑えながら、少女はふらふらとその場から数歩後ろへ後ずさる。


 


「……はぁ、はぁ……くそ、耐えた、耐えたぞ……!」


「次はない……次こそ、仕留めて……!ターン、エンド……ごふ」


 


エンドステップへ移行され、ターンを終わらせられる。翼の精神はまだ屈しておらず、次こそはと燃えているが、その身体はとっくに限界を迎えている。おびただしいまでの大量の血を流し、最早立っている事が不思議なくらいだ。


 


「……せめてもの礼儀って奴だ。次で終わらせてやるよ。スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。ファイザードをLv3で召喚」


 


【ファイザード:赤・スピリット


コスト0:「系統:翼竜」


コア26:Lv3:BP4000


シンボル:赤】


 


額から黄色い角を生やした、白い翼を生やしたオレンジ色の毛並みの小さな竜が現れる。超覚醒の為のフィールドに用意できるリザーブを出し、少女は最後のアタックステップを開始する。


 


「アタックステップ。幻羅星龍ガイ・アスラでアタック」


 


ガイ・アスラが飛翔し、翼へと急降下してくる。既に身体は限界で徐々に意識も薄くなっているが、それでもバトルだけは手放さない。最後までやりきるのが、防人でありカードバトラーなのだから。


 


「負けない、アルティメット・オライオンでブロック……」


 


降下してくるガイ・アスラをアルティメット・オライオンが受け止め、投げ飛ばす。そのBPは25000。通常のスピリットがいくら足掻いても単体でそのBPを超えることなど出来ないだろう。そう、普通のスピリットであれば。しかし、ガイ・アスラは普通ではない、例外に該当するスピリット。


 


「無駄なんだよ。超覚醒でファイザードのコア9個をガイ・アスラに移動して回復……そして、Lv4だ」


「スピリットなのに……Lv4……!?」


 


【ファイザード


コア26→17】


 


【幻羅星龍ガイ・アスラ


コア1→10:Lv1→4:BP8000→30000】


 


Lv4へとガイ・アスラが変化する。瞬間、ガイ・アスラの身体が激しい光を発し、天に金色の二枚の翼が広げられる。そして白い人型をしたその上半身の両手には金色の剣とトライデントが握られる。竜の下半身はさらに巨大になり、紫色の無数の脚が出現する。下にも巨大な口が開かれ、上半身と繋ぐように出現した新たな上半身から生えた四本の腕には、斧、ハンマー、剣、金剛杵がそれぞれ握られ、圧倒的な威圧感を発する。


 


「嘘、BP30000……」


 


唖然となり、呟くように声が漏れる響。その目の前では、飛び上がり、上段からガイ・アスラを両断しようとするアルティメット・オライオンの攻撃を剣とトライデントで受け止め、その身体にハンマーをめり込ませて吹き飛ばし、一撃でアルティメットを撃沈させるガイ・アスラの絶対的な力があった。


 


「まだコアは17個ある。いけ、ガイ・アスラ、再びアタック。超覚醒で回復しろ」


 


【ファイザード


コア17→16】


 


【幻羅星龍ガイ・アスラ


コア10→11】


 


「合体スピリットで、ブロック」


 


アルティメットが破壊された。その事実を受け止められないのか、それとも受け入れるほどの余裕すらも既に存在していないのか。既に焦点すらずれ、光を失いつつあるその瞳で、翼はブロックを宣言する。槍を手に果敢にガイ・アスラに挑むアレクサンダー。しかし、その姿をつまらないと言わんばかりにガイ・アスラは斧で一振りし、両断して破壊する。


 


「ガイ・アスラ、Lv4アタック時効果だ。このバトルの間に破壊された相手スピリットのすべてのコアをボイドへ置く」


 


リザーブのコアを使えば、ケルベロードは残せる。しかし、それを行う思考判断も翼には出来ないのか、ブレイヴを残す素振りすら見せずにアレクサンダーはブレイヴごと破壊され、コアごと消滅して消えていく。


 


「ガイ・アスラでアタック。超覚醒だ」


 


【ファイザード


コア16→15】


 


【幻羅星龍ガイ・アスラ


コア11→12】


 


「リボル・アームズでブロック」


「無駄なんだよ……もう、お前は詰みなんだよ」


 


見ているこっちが痛々しくすら感じる。リボル・アームズの身体が金剛杵に貫かれて破壊される。翼を動かしているのは、このターンを凌ぐという感情だけなのだろう。それが、ブロックへと突き動かしているのだ。


 


「だったら……全部ぶっ壊してやる。ガイ・アスラでアタック、超覚醒」


 


【ファイザード


コア15→14】


 


【幻羅星龍ガイ・アスラ


コア12→13】


 


「フォビッド・バルチャーでブロック」


 


ガイ・アスラへ飛び掛かるフォビッド・バルチャー。その身体をトライデントの一振りで両断し、ガイ・アスラはその存在をコアごと打ち砕いていく。


 


「もう守るものなんてないんだよ……くたばりな!ガイ・アスラでアタック!超覚醒!」


 


【ファイザード


コア14→13】


 


【幻羅星龍ガイ・アスラ


コア13→14】


 


ガイ・アスラが翼の眼前に迫る。振り上げた六本の得物の全てが、翼の目の前に出現した赤い六角形を無数に束ねた防壁に一度に叩きつけられ、今まで以上の膨大なエネルギーが収束し、翼を貫く。


 


「……!!」


「翼さん!?」


 


残るライフは2つ。その一撃は翼を大きく吹き飛ばし、地面へと倒す。衝撃が全身に駆け巡り、口から大量の血が吐き出される。そして、その魂の奥に輝く金色の光に、ヒビが入った様な音が、翼の魂には聞こえてきた。


 


「死体蹴りなんざ趣味じゃないが……これがバトルだ。最後までやらせてもらう!いけ、ガイ・アスラ!超覚醒!」


 


【ファイザード


コア13→12】


 


【幻羅星龍ガイ・アスラ


コア14→15】


 


ファイザードに尻尾を叩き付け、そのコアを吸収して起き上がったガイ・アスラの一撃が先程と同じように、今度は倒れたままの翼を襲う。残った二つのライフの内の一つを奪い取り、最後の一つだけとなる。同時に、その痛みを感じる感覚すらも失った翼は、その瞳の奥でより強くはっきりとしたヒビが刻まれている何かを認識した。


 


(……ああ、そうか。これは……私の)


「やめて……」


「これで最後だ。いけ、ガイ・アスラ!!アタック!!」


「やめてえええええええ!!!」


 


響の断末魔にも似た叫びが響く。その叫びは無意味だと無情に切り捨てるかのように、幻羅星龍は、目の前の敵を、その心のシンボルごと打ち砕くべく、その得物を振り上げ、翼へと叩き付けた。


 


(……あ)


 


目の前が真っ黒になる。意識が途切れる。最後に翼が認識したのは、消える自分の全てのライフ。そして、自分の心の奥底にある、シンフォギアを操る為の力、究極シンボルがひび割れていく姿だった。


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