第13話 目覚める獅子

ノイズと響がバトルフィールドに突入する。丁度その頃、弾は階段を数段飛ばしで降りながら先を目指す。バトルのために多くのノイズが一つに融合、合体した個体と彼女がバトルしていることで地下鉄の走る駅へ続く通路はノイズの気配が感じなくなっている。エスカレーターを下り、改札機を通り抜けた先で弾が目撃したもの。それは、


 


「こいつは大きいな……」


 


ピンク色の、他のノイズと比べて大きな人型が無数のノイズを従えるように立っていた。その頭からブドウの房のようなものが背中にかけて伸ばされており、他の個体とは明らかに異質だということは一目で明らかだ。


 


「……」


 


そのノイズの身体が振動するように震える。周囲に漂うノイズ達がその一体に吸収され、そのブドウの房のような形をした箇所にブドウの実のような球体が次々と生えるように出現していく。今まで見た事のない変化に弾は表情を引き締めていくが、やることは変わらない。


 


仮にノイズとのバトルで敗北した場合、バトルフォームが破壊され、それを纏っていた者はバトルで受けたダメージも含め、大きな疲労感などを抱く事となる。そこはグラン・ロロや未来世界でのバトルとあまり変わらず、余程バトルに慣れているか身体能力が強かったりしなければバトル後はもう一度バトルを行うような精神も体力も残らない。だが、ノイズを相手とした場合、敗北してバトルフォームが外されて隙を晒すということは、あまりに危険だと言わざるを得ない。その隙を狙われ、一瞬で炭化されてしまうのだから。


 


「いくぞ」


 


だが、弾は負ける未来など想像はしない。彼が最初から見据えるのは勝利へ向けた道筋だけなのだから。結果的にお互いを殺し合うようなバトル、弾はそれを心の底から楽しめるとは思ってはいないし、ノイズとのバトル自体は弾自身もこれが自分に与えられた使命だと割り切っている。だが命を賭けた戦い、その相手が感情を持たない無機質かもしれない存在であったとしても、相手のデッキの戦略、カードが自分にいろんな方向から襲い掛かる瞬間、相手のキースピリットが呼び出される瞬間。バトルの中で生きてきたかのような弾は、その瞬間に昂ぶる気分を感じ得ずにはいられない。だからこそ、弾は戦う。そこに自分という人間を作り上げる要素はあるのだから。


 


「ゲートオープン、界……!?」


 


ゲートを開き、ノイズをバトルフィールドへと引き込もうとする。しかし、その前にノイズはその房から生やした弾の身長の半分くらいの直径を持つ球体を外して地面に落とす。地面に落ちた球体はそのまま弾へと一直線に転がっていき、弾を襲う。


 


「く……」


 


球体を避けるように脇に移動する。弾の脇を通り過ぎた一球は、そのまま壁にぶつかると爆発を引き起こす。


 


「!」


 


他の球体も弾へ向かって転がってくる。触れれば炭化して終わり、避けても爆風をまともに喰らえば即死。弾をバトルスピリッツでは無くリアルファイトで殺そうとしたノイズは、全ての球体を外して弾に向けて転がすと、自分は駅の奥へと逃げるように去っていく。それを追い掛ける為、襲い掛かる群れを器用に全て触れることなく避けていくと、背後で次々と響き渡る爆発音と連続して襲い掛かる風圧を感じ取りながら弾は逃げたノイズを追って駅のホームへと入る。


 


「見つけたぞ!」


 


線路の上に立つノイズ。そのブドウの房に小さな球体が次々と生えてきており、それは徐々に膨らむように大きくなっていく。このまま再び球体を作り出して弾を襲おうというのだろう。しかし、今までバトルスピリッツを見せればすぐにバトルに応じるように攻撃を止めたノイズがバトルでは無くリアルファイトで倒しにかかるとは。この例外は、このノイズだからなのか、或いは、


 


(誰かがそう命令しているのか?)


 


意図的なものが要因となっているからなのか。だが、そこは今考えるべき所では無い。弾がすべきことはただ一つ。駅のホームを走り、線路の上を走るノイズへ追い付くと駅のホームから飛び出してノイズへと落下していき、一気に異空間へのゲートを開く。


 


「ゲートオープン、界放!!」


 


かつて異界王をゲートを開いてバトルフィールドへ強制的に引き込んだように。如何に物理的な手段で敵を倒す事の出来る力を持っている者がいても、バトルフィールドやエクストリームゾーンに移動してしまえばそこで彼等が行える戦闘手段はバトルスピリッツでしかない。そして、バトルスピリッツならば弾は最大限の力を発揮することが可能となる。


 


「先行は貰う。スタートステップ、ドローステップ、メインステップ。ブレイドラをLv3で召喚」


 


【ブレイドラ:赤・スピリット


コスト0:「系統:翼竜」


コア4:Lv3:BP3000


シンボル:赤】


 


山吹色の毛並みを持つ刃の翼を持つ小型ドラゴン。その小さな姿は愛嬌を感じさせるには十分な魅力を出していることだろう。


 


「ターンエンド」


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、メインステップ。ネクサス、大旗艦ドラグニックを配置』


 


【大旗艦ドラグニック:赤・ネクサス


コスト4(軽減:赤2)


コア0:Lv1


シンボル:赤】


 


ノイズの背後にドラゴンの姿をした巨大な戦艦が出現する。どこか生物的にも見える無機質な物体は、使用者であるノイズを護るようにそのドラゴンの眼を弾に向けて光らせる。


 


(大旗艦ドラグニック……迂闊に攻め込めなくなるな)


『ターンエンド』


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、メインステップ。ベアードイーグルをLv2で召喚。不足コストはブレイドラのLvを下げて確保」


 


【ブレイドラ


コア4→1:Lv3→1:BP3000→1000】


 


【ベアードイーグル:赤・スピリット


コスト4(軽減:赤2・極1):「系統:皇獣」


コア2:Lv2:BP4000


シンボル:赤】


 


翼や胸に赤い結晶が埋め込まれた、額から金色の角を生やした鳥が出現する。柔らかい羽毛を持つその鳥は、今回の戦いで弾がドローソースの一枚として採用されたものでもあり、弾自身自分のデッキの中のカードの中、この状況で一番適しているのがこのカードだろうと確信を得ている。


 


「アタックステップ、ベアードイーグルでアタック!アタック時効果で1枚ドロー」


 


ベアードイーグルが翼を広げ、地を蹴って空へ飛び立つ。そのまま、ベアードイーグルはドラグニックの防御網の中を真正面から突っ切ってノイズへその鋭い爪を叩きつけようとする。


 


『ライフで受ける』


 


ノイズを護るように出現する赤い半透明な球体のバリア。ベアードイーグルの爪が叩き付けられ、そのままライフが奪われようとする。だが、ベアードイーグルはそのアタックでライフを砕かず、ノイズを護るバリアを壊さないままその場から離れてしまう。


 


「悪いが、このアタックでライフは砕かない」


 


ベアードイーグル、Lv1・2アタック時効果。アタックを宣言した時に自分はデッキから1枚ドローする。その後、ベアードイーグルのアタックがブロックされず、ベアードイーグルのアタックで相手のライフが実際に減らされるとき、相手のライフを減らさないことでデッキからさらに1枚カードをドローすることが出来るのだ。


 


「もしあんたに感情があったらアテが外れた事に対してどんな反応をしていたかな……ネクサスの効果は起動しない」


 


ノイズが繰り出したネクサス、大旗艦ドラグニック。このネクサスには相手のアタックステップに相手によって自分のライフが減ったとき、BP5000以下の相手のスピリット1体を破壊する効果が秘められている。だが、ベアードイーグルの効果により、本来アタックで減る筈のライフが減少しなかったため、効果が起動せず、弾のスピリットを破壊出来なくなってしまったのだ。


 


「ターンエンド」


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。イグア・バギーを召喚』


 


【イグア・バギー:白(赤)・スピリット


コスト1(軽減:白1・赤1):「系統:機獣・星魂」


コア2:Lv2:BP3000


シンボル:白(赤)】


 


背中に小さな砲台を背負った、緑の機体を持つ四輪バギーが出現する。弾も用いる赤と白のどちらの軽減も満たせる小さいながらも強力なポテンシャルを秘めた小型スピリットを呼び出し、さらに次なる一手をノイズは手札から呼び出す。


 


『ダンデラビットを召喚』


 


【ダンデラビット:緑・スピリット


コスト3(軽減:緑1):「軽減:遊精・星魂」


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:緑】


 


(赤、白、そして緑のカード……)


 


耳から稲穂を生やした、白い毛並みを持つ赤い眼の兎がイグア・バギーの隣に現れる。緑のスピリットが持つコアブースト能力を宿したスピリットを用いて次のターンに向けての準備をしていく。


 


『ダンデラビット、召喚時効果。ボイドからコア1個を自分のリザーブに置く。さらに、ボイドからコア1個を、このスピリット以外の系統:「星魂」を持つ自分のスピリット1体の上に置く。イグア・バギーをLv2にアップ』


 


【イグア・バギー


コア1→2:Lv1→2:BP1000→3000】


 


『イグア・バギーをLv1にダウン』


 


【イグア・バギー


コア2→1:Lv2→1:BP3000→1000】


 


『大旗艦ドラグニックをLv2にアップ』


 


【大旗艦ドラグニック


コア0→3:Lv1→2】


 


『ターンエンド』


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。モルゲザウルスをLv2で召喚」


 


【モルゲザウルス:赤・スピリット


コスト3(軽減:赤2):「系統:地竜」


コア2:Lv2:BP3000


シンボル:赤】


 


棘の付いた鉄球を尻尾の先に生やす二足歩行をする赤い恐竜が現れる。その顔には兜が、胸には鎧が装着されており、自身を武装している。


 


「アタックステップ。ベアードイーグルでアタック。アタック時効果で1枚ドロー」


『ライフで受ける』


 


再びベアードイーグルが飛び上がり、ノイズへ襲い掛かる。しかし、弾はこのアタックでもノイズのライフは奪わず、ベアードイーグルの効果で更なるカードをデッキからドローして手札を増やした。


 


「ターンエンド」


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ。ネクサス、大旗艦ドラグニック、Lv2効果。自分のドローステップ時、ドローの枚数を+1枚する。リフレッシュステップ、メインステップ。大旗艦ドラグニックをLv1にダウン』


 


【大旗艦ドラグニック


コア3→0:Lv2→1】


 


(コアを集め始めた……来る……!)


『ダンデラビットを転召』


「!」


 


ダンデラビットの身体が光に包まれ、その身体を中心とした、巨大な雪の結晶を模した白い紋章が地面に刻まれていく。雪の紋章の端々から立ち昇る白い光の柱の中で無数の光の粒子と化したダンデラビットの姿が、新たな存在へと再構築されていく。


 


『天王神龍スレイ・カエルスをLv2で召喚』


 


【天王神龍スレイ・カエルス:白黄・スピリット


コスト6(軽減:黄2・白2):「系統:神星・戯狩」:【転召:星魂/ボイド】


コア2:Lv2:BP7000


シンボル:黄白】


 


青が織り交ぜられた黄色い翼が左右から三枚ずつ、合計六枚生える。赤い光を宿らせた、無機質に尖った縦髪を持つ、金色の四本脚を持つ獣。金色の身体を持つ、天王星を司る進化したスピリット。スレイ・カエルスがダンデラビットが変換された光の粒子によって新たに創造され、その翼を天に広げ、その雄叫びを上げる。


 


「転召か!」


 


転召。条件を満たすフィールド上の自分のスピリットを糧にするデメリット効果であり、この特殊な召喚条件を用いて呼び出されるスピリットは総じて強力な効果を秘めている傾向が強い。手札より召喚するカードを掲示し、コストを支払う。その後、転召によって指定された条件に該当するスピリットが持つコアを指定された場所に移動した後に転召スピリットを召喚するのだ。今回、スレイ・カエルスが指定した条件は「星魂/ボイド」。よって「系統:星魂」を持つダンデラビットの上に置かれたコアすべてをボイドへ送る事で初めてスレイ・カエルスは召喚条件を満たす事ができるのだ。


 


『ターンエンド』


 


強力なスピリットを呼び出し、ターンを終える。次のターンで戻ってきたコアを使ってLvを上げ、出来る限り万全の状態で攻撃しようとしているのだろう。だが、今の自分の手札のカードではスレイ・カエルスを破壊できるようなものはない。


 


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ」


 


このターンでスレイ・カエルスを破壊するカードはない。だが、このターンで無理なら次のターンで仕留めるだけだ。このターンの行動を決め、弾はドローしたスピリットカードを手に取る。


 


「太陽よ、炎をまといて龍となれ!太陽龍ジーク・アポロドラゴン召喚!不足コストはブレイドラ、モルゲザウルス、ベアードイーグルより確保!」


 


【ブレイドラ


コア1→0】


 


【ベアードイーグル


コア2→1:Lv2→1:BP4000→2000】


 


【モルゲザウルス


コア2→1:Lv2→1:BP3000→2000】


 


ブレイドラが不足コスト確保の為に消滅する。そして、弾の背後から這い出るように現れた太陽龍が、壁を伝って行くように降り、一歩、また一歩と地面に踏み出してバトルフィールドへ現れる。そして、身体を起こして二本足で立つと、龍の咆哮を張り上げる。


 


「アタックステップ!いけ、ジーク・アポロドラゴン!イグア・バギーに指定アタック!」


 


回復状態の相手スピリット1体を指定し、そのスピリットにアタックできる太陽龍。その効果で指定されたイグア・バギーが太陽龍へ向けて背中の砲台から弾丸を放っていく。しかし、太陽龍の身体はその弾丸を全て弾き飛ばしていき、地を駆けてイグア・バギーへ接近してその身体を掴むと、勢いよく持ち上げてそのまま地面に叩き付け破壊する。


 


「ターンエンド」


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。バーストをセット』


 


最初にノイズが場に呼び出したのは一枚のバーストカード。だが、ノイズの仕掛ける攻撃はこの程度で終わる訳が無いだろう。スレイ・カエルスの効果を最大限に活かす方法を弾は知っている。そして、このノイズもまた、スレイ・カエルスの力を最大限に発揮する為に次なる一手を用意してくる筈だ。そんな、若干期待にも似た感情を弾が抱いていると。ノイズもまたそれに応えるかのように一枚のカードをその手から呼び覚ます。


 


『獣爆マナティ・マローダを召喚』


 


【獣爆マナティ・マローダ:白・ブレイヴ


コスト4(軽減:白2):「系統:機獣」


シンボル:白】


 


大きなエンジン音とプロペラの回転が響く。出現した黒い機体を持つ戦闘機は、その登場と同時に弾にある可能性を即座に思い至らせる。


 


「ブレイヴ……来るか!」


『獣爆マナティ・マローダを天王神龍スレイ・カエルスに直接合体』


 


【天王神龍スレイ・カエルス


コスト6+4→10


BP7000+4000→11000


シンボル:黄白+白】


 


マナティ・マローダの黒い胴体から戦闘機のような両翼だけが分離し、身体の方は光と共に消滅していく。同時にスレイ・カエルスの金色の翼も焼失し、代わりにマナティ・マローダの翼がその背中に合体し、合体スピリットが誕生する。


 


『獣爆マナティ・マローダ、召喚時効果。相手のスピリット1体を手札に戻す。太陽龍ジーク・アポロドラゴンを手札に戻す』


 


太陽龍の姿が光に包まれ、弾のフィールドから消える。消えた太陽龍を再び手札に戻した弾だが、そのバウンスに呼応するようにスレイ・カエルスから金色の光が放たれ、ノイズのライフにもう一つの光が増える。


 


「!」


『天王神龍スレイ・カエルス、Lv2・3合体時効果。相手のスピリットが手札に戻ったとき、戻ったスピリット1体につき、ボイドからコア1個を自分のライフに置く』


 


6つ目のライフが光り、生命線を太くしていく。対する弾は太陽龍を失い、フィールドには2体のBPの低い赤スピリットのみとなってしまう。そして、ノイズはそのフィールドに対してもスレイ・カエルスの力を利用する糧へと変えていく。


 


『アタックステップ。合体スピリットでアタック』


 


スレイ・カエルスが漆黒の翼で風を受けながら浮き上がり、弾へ向かって飛んでいく。トリプルシンボルのアタック、それを命中させるためにノイズは手札にある1枚のマジックを取り出していく。


 


『フラッシュタイミング。バーストブレイクを使用。BP合計5000まで相手のスピリットを好きなだけ手札に戻す。ベアードイーグルとモルゲザウルスを手札に戻す』


 


ベアードイーグルとモルゲザウルスのBPはどちらも2000。合計4000となり、バーストブレイクの効果で二体ともバウンスされる事となる。そして、さらに二体の相手スピリットが手札に戻った事により、スレイ・カエルスの効果が起動。二体バウンスされたことでライフをさらに2つ増やし、ライフ合計は8個にまで膨れ上がる。そして、メインのアタック。ブロッカーのいない弾が取れる選択肢はただ一つ。


 


「ライフで受ける!」


 


トリプルシンボルのアタックが弾のライフを一気に奪い取る。その強烈な衝撃と痛みを感じ取りながら、攻撃を耐えたという事実を噛み締めるように不敵な笑みを浮かべる。


 


『ターンエンド』


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。ブレイドラ、イグアバギーを召喚」


 


【ブレイドラ


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:赤】


 


【イグア・バギー


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:白(赤)】


 


二枚目のブレイドラと、相手も使用したイグア・バギーの二体が弾のフィールドに現れる。軽減シンボルを満たす為に呼び出されたこの二体を用いて、相手の厄介なネクサスを破壊する。


 


「マジック、ネクサスコラプスを使用。大旗艦ドラグニックを破壊!」


 


ネクサスへ降り注ぐ炎の流星。それはノイズの背後で浮いていた龍の戦艦を一撃で焼き焦がし、燃やし尽くしていく。そしてこちらの低BPスピリットを焼き尽くす邪魔なカードを剥がす事は完了した。しかし、そのマジックの使用は、スレイ・カエルスが力を発揮するトリガーとなる。


 


『天王神龍スレイ・カエルス、Lv1・2・3効果。相手がマジックの効果を使用したとき、相手のスピリット1体を手札に戻す。ブレイドラを手札に戻す』


 


ブレイドラがバウンスされ、手札へと戻っていく。相手のスピリットが再び手札に戻った事により、スレイ・カエルスの効果が起動、相手のライフがさらに増え、9個となる。


 


「イグア・バギーをさらに2体召喚」


 


【イグア・バギー


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:白(赤)】


 


【イグア・バギー


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:白(赤)】


 


「……いくぞ」


 


続いて、さらに2体イグア・バギーを呼び出す。ここで弾が揃えたかったのは、白のシンボル。それを用意することで、弾は自分の手札にドローされた一枚の十二宮Xレアを呼び出す。未来世界で共に戦い抜いた仲間であり、ライバルである男。彼が最後に選んだ切り札が、このバトルを勝利へと導いてくれると信じて弾はそのカードを呼び出す。


 


「月の光よ照らせ!大いなる獅子座の誇りを!獅機龍神ストライクヴルム・レオ、Lv2で召喚!」


 


【獅機龍神ストライクヴルム・レオ:白・スピリット


コスト8(軽減:白4):「系統:光導・神星」:【重装甲:紫/緑/白/黄】


コア2:Lv2:BP9000


シンボル:白】


 


弾の背後で月が輝く。夜空へと変わった星に無数の光が立ち昇り、それらは獅子座の星座を描き出す。獅子座より生み出された、白銀の光を纏った獅子は、空をゆっくりと踏みしめるように地へと降りて行き、ゆっくりと着地すると鋭い剣の縦髪を広げ、背中に装着されたブースターの取り付けられた翼を起動させてその光を一筋の竜巻と共に振り払う。緑色の眼と金色の爪を輝かせる機体を持つ獅子が、咆哮を上げる。


 


「アタックステップ!獅機龍神ストライクヴルム・レオでアタック!」


『ライフで受ける』


 


ストライクヴルム・レオが大地を駆ける。素早くノイズの前に接近し、振り上げた金色の爪をノイズへと叩きつけてライフを奪い取ると、瞬間ノイズの伏せたバーストが起動し、ノイズを護るように氷山が出現して吹雪が吹き荒れていき、ストライクヴルム・レオを寄せ付けずにその場から撤退を強制させる。


 


「!」


『自分のライフ減少後、バースト、アルティメットウォールを発動。このバトルが終了したとき、アタックステップを終了する。その後、コストを支払うことで、このカードのフラッシュ効果を発揮する。コスト3以下の相手スピリット3体を手札に戻す。イグア・バギー3体を手札に戻す』


 


吹雪が弾のフィールドへとその効力を広げていく。ストライクヴルム・レオにはその吹雪は何の苦しみも与えないが、三体のイグア・バギーは吹雪に呑まれてそのまま消え、弾の手札に戻っていく。そして三体のスピリットが手札に戻ってしまった事で再び天王神龍スレイ・カエルスの合体時効果が発揮され、ノイズのライフは折角減らしたのに3つ回復され、二桁越えの11となってしまう。


 


「こんなライフ、初めてみるな……ターンエンドだ」


 


流石にこんなに多いライフは弾自身経験したことはなかった。とはいえ、この多いライフも弾からすれば中々良い戦略で来ているというぐらいであり、闘志が削がれるどころか逆に燃やす事にしかならないのだが。


 


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。エメラルドの海に散らばる島々をLv2で配置』


 


【エメラルドの海に散らばる島々:緑・スピリット


コスト4(軽減:緑2)


コア2:Lv2


シンボル:緑】


 


ノイズの背後に新たなネクサスが出現する。緑色のエメラルドの海が広がり、その中に火山や高山、生い茂った森などが見える島々が現れる。


 


『合体スピリットをLv3にアップ』


 


【天王神龍スレイ・カエルス


コア2→5:Lv2→3BP7000→10000+4000→14000】


 


『アタックステップ。合体スピリットでアタック』


 


スレイ・カエルスが飛翔し、弾へ向けて一直線に降下してくる。ブロッカーがいない今、弾にその攻撃をスピリットで受け止める事は出来ない。だが、まだ終わりはしない。


 


「フラッシュタイミング!マジック、デルタバリアを使用!」


 


弾のマジック使用により、スレイ・カルエスのバウンス効果がストライクヴルム・レオへと波動となって襲い掛かる。しかし、その波動は重装甲:白と黄を持つストライクヴルム・レオの身体に触れた瞬間に弾かれるように消えてしまい、無力化されることとなる。


 


「このアタックはライフで受ける!」


 


デルタバリア発動時、弾を護るように三角形の光のバリアが出現する。そのバリアに正面衝突したスレイ・カエルスのアタックは弾のライフを一つだけ砕くものの、最後の一つを奪い取る事は出来なかった。それは、デルタバリアの持つフラッシュ効果。このターンの間、相手のスピリット/マジックの効果と、コスト4以上の相手のスピリットのアタックでは、自分のライフは0にはならないのだ。


 


『ターンエンド』


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ」


 


リフレッシュステップ時にストライクヴルム・レオが回復する。その瞬間、ノイズの張ったネクサス、エメラルドの海に散らばる島々から緑色の光が放たれ、それはスレイ・カエルスを包みこんでいく。


 


『エメラルドの海に散らばる島々、Lv1・2相手ターン時効果。相手のスピリットが回復したとき、自分のスピリット1体を回復させる。合体スピリットを回復』


「問題ない。一気に仕留めさせてもらうぞ!メインステップ!イグア・バギー2体を召喚!」


 


【イグア・バギー


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:白(赤)】


 


【イグア・バギー


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:白(赤)】


 


「マジック、アグレッシブレイジを使用。ストライクヴルム・レオにこのターンの間、激突を与える」


 


弾がマジックの効果を使用したことでスレイ・カエルスの効果により、重装甲:白を持つストライクヴルム・レオではなく重装甲を持たないイグア・バギーが弾の手札へと戻っていく。それにより、ノイズのライフは12に増えてしまう。だが、行動はそれだけにとどまらない。


 


『エメラルドの海に散らばる島々、Lv2効果。相手のドローステップ以外で相手の手札が増えたとき、相手は相手の手札1枚を破棄する』


「ベアードイーグルを破棄。さらに2体のイグア・バギー、そして砲凰竜フェニック・キャノンを召喚!」


 


【イグア・バギー


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:白(赤)】


 


【イグア・バギー


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:白(赤)】


 


【砲凰竜フェニック・キャノン:赤・ブレイヴ


コスト5(軽減:赤2・白2):「系統:機竜・星魂」


コア1:Lv1:BP3000


シンボル:なし】


 


バウンスされたイグア・バギーを含めた2体、そして赤い翼をもつ小型の、フェニックスを模したブレイヴが召喚される。二台の砲門を持つフェニック・キャノンがその標的に選んだのは、エメラルドの島々。


 


「砲凰竜フェニック・キャノンの召喚時効果により、エメラルドの海に散らばる島々を破壊する!」


 


ネクサスへ向けて降り注ぐ炎の雨。再びネクサスを破壊し、ストライクヴルム・レオの邪魔をする効果を持つネクサスを除去することは出来た。


 


「ホーク・ブレイカーを召喚」


 


【ホーク・ブレイカー:白・ブレイヴ


コスト5(軽減:白2・緑2):「系統:機獣」:【重装甲:赤】


コア2:Lv1:BP7000


シンボル:なし】


 


フィールドに出現した白のシンボルの中から白い機械の鷹が現れる。青い無機質な羽と緑のカラーリングを持つ、スピリット状態の時、全ての自分のスピリットに重装甲:赤を与える強力な効果を持つブレイヴ。しかし、この状況においてその効果が活かされる事はないだろう。むしろ、それ以上にこのカードがこの状況で力を輝かせる舞台は一つしかないだろう。


 


「ホーク・ブレイカーを獅機龍神ストライクヴルム・レオに合体!Lv3へ!」


 


【獅機龍神ストライクヴルム・レオ


コスト8+5→13


コア2→4:Lv2→3:BP9000→12000+3000→15000】


 


ホーク・ブレイカーが翼だけとなり、ストライクヴルム・レオもまた、背中のブースターが装備された翼が消滅する。空いたその空間にホーク・ブレイカーが新たな翼となって合体し、ストライクヴルム・レオが咆哮を上げる。


 


「ストライクヴルム・レオ、Lv3合体時効果により、系統:「光導」/「星魂」を持つ自分のスピリットすべてに白のシンボル1つを追加する!」


 


【イグア・バギー


シンボル:白+白】


 


【イグア・バギー


シンボル:白+白】


 


【イグア・バギー


シンボル:白+白】


 


【砲凰竜フェニック・キャノン


シンボル:白】


 


【獅機龍神ストライクヴルム・レオ


シンボル:白+白】


 


「アタックステップ!いけ、合体スピリット!激突だ!」


『合体スピリットでブロック』


 


どちらも互いに避ける事なく、真正面から体当たりでぶつかりあう。その衝撃で二体は別々に吹き飛ばされるが、そのまま空中で復帰したスレイ・カエルスが空からストライクヴルム・レオへ襲い掛かる。ストライクヴルム・レオは吹き飛ばされた際の衝撃すらも自身の飛行の速度に加え、己の目元に緑のバイザーを降ろし、その口を開いてその奥にある発射口に力を集約させていく。そしてチャージが終わり、スレイ・カエルスへと振り返ったストライクヴルム・レオの口から放たれた光のレーザーはスレイ・カエルスを一瞬にして呑み込み、その身体を粉々に爆発させてしまう。


 


【獣爆マナティ・マローダ


コア1:Lv1:BP4000】


 


「まだいくぞ、イグア・バギーでアタック!」


 


分離して元の姿を取り戻したマナティ・マローダの隣を走るイグア・バギー。そのアタックが、ストライクヴルム・レオに白い光を与える。


 


「ストライクヴルム・レオは、このスピリット以外の系統:「光導」/「星魂」を持つ自分のスピリットが疲労したとき回復する!ダブルシンボルのアタックはどうする!」


『ライフで受ける』


 


イグア・バギーが地面から飛び出してその車輪をノイズへ叩き付け、ライフを奪い取る。そして一体目のイグア・バギーと入れ替わりになるように獅子座が咆哮を上げる。


 


「再び合体スピリットでアタック!」


『ライフで受ける』


 


ストライクヴルム・レオの振り下ろした金色の爪が、ノイズのライフを再び奪う。これによってストライクヴルム・レオは疲労する。だが、まだアタックし終えているというわけでは決してない。


 


「続け、イグア・バギーでアタック!合体スピリットは回復!」


『ライフで受ける』


 


二体目のイグア・バギーの背中の砲門がノイズへ弾丸を次々と叩き込む。その激しい猛攻にノイズのライフはこのターンで一気に半分持っていかれてしまった。


 


「再度合体スピリットでアタック!」


『ライフで受ける』


 


ストライクヴルム・レオの口が開かれ、そこから放たれた白銀のレーザーがノイズを襲う。ライフを続けざまに奪い取り、一度見定めた獲物を逃す事はない。正に獅子座の誇りを体現したかのような猛攻を弾は、限界まで続ける。このターンで全てのライフを奪い取るつもりでこの猛攻を更に続けていく。


 


「三体目のイグア・バギーでアタック!合体スピリットは回復する!」


『ライフで受ける』


 


イグア・バギーの体当たりが、三度ストライクヴルム・レオを起こす。相手のライフは残り2つ。対するストライクヴルム・レオのシンボルは2つ。仮に相手の手札にこのアタックを防げるカードがあったとしても、待っているのはフェニック・キャノンとそのアタックによって回復するストライクヴルム・レオだけだ。


 


「これで終わりだ!合体アタック!!」


 


ストライクヴルム・レオが咆哮を上げる。そして、相手のライフを全て奪い取り、弾を勝利へ導く為に走る。


 


『ライフで受ける』


 


ライフで受ける宣言をしたその身体に、白銀のレーザーが叩き込まれる。その光は、ノイズの身体を粉々に打ち砕き、黒い消し炭にでもなったかのように変色させ、霧散するように散らせていくのだった。

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