第12話 龍星皇VS神造巨兵


「どうして、世界から争いが無くならないんでしょうね?」


 


弾と慎次のバトルから数日後。紅茶を一口飲みながら、響は少しだけ哀しそうに呟く。世界から争いが無くならない理由。そして、この二課に対し何ならかの意思がノイズの襲撃という形で襲ってきている現状。これらを踏まえ、普段からよくない頭を痛めながら呟く響に明確な答えなど出せる者は誰にも居ない。


 


「私達、ノイズとかだけじゃなくて人間とも争っていますし……」


「……それはきっと、人類は昔から光と闇を抱え、呪われているから……じゃない?」


 


彼女の耳元で囁く女性の声。その声の近さにその主と自分の位置を察した響は、視線を横に移してそこにいる張本人、了子を見る。そして、


 


「きゃあああああ!?」


「あーら、ウブねぇ……誰かのものになる前に私のものにしちゃいたいかも」


「りょ、了子さんだからってセクハラで訴えますよ!?いえ、これパワハラですか!?」


 


悲鳴を上げ、頬を紅潮させながら慌てて立ち上がり、自分を落ちつけるかのように叫ぶ。そんな彼女を二課の面々は苦笑しながらも見ていく中、弾は静かに彼女の先程の疑問に手元の端末に表示された資料を見ながらある人物を思い起こす。


 


(争い……か。未来での戦いで、俺が消えた後も規模の大きさは兎も角、争いは永遠に続いているんだろうな……だが、あんたの作った時代、あんたがもし皆を導いていたのなら、そこには争いがない世界があったのかもな)


 


かつて戦った宿敵であり、世界の事を最も考えていた男、異界王。その男は世界への怒りを手に世界を滅ぼそうとした。だが、その滅びの先に彼は未来を見据えていた。だからこそ、世界を滅ぼそうとしたのだ。今の自分にはその先に何があったのかなど、最早分からない事だ。しかし、それでも想像せずにはいられない自分もいるという事だ。


 


 



 


 


「うぅ……」


 


さらに数日後。響にとってはこの上なく不幸な出来事としか言いようがないだろう。今日はこと座流星群が観測できる日。未来とも一緒に見ることを約束しており、響自身もまたこの日を楽しみにしていたというのに、そんな日に限って出現したノイズを倒す為に、響は弾、翼と共にノイズの撃退に駆り出されていた。既に翼は一人先立って出動しており、響は弾と合流してから現場に向かう事になっている。


 


「響、何なら俺と翼に任せておいていいんだぞ?」


「いえ、そうもいきませんよ」


 


少しだけ哀しそうに溜め息を零しながら、弾と共に現場へ向かう響。弾の操縦するバイクに乗りながら共に向かい、現場の近くにある駐車場の一角にバイクを止め、二人はそこから徒歩で向かう。


 


「今回のノイズの襲撃は何時も以上の大群……弾さんと翼さんだけだと被害が拡大するかもしれないっていうじゃないですか。だから……」


「……響、損な性格だってよく人に言われないか?」


「あはは……否定は出来ませんね……」


 


先程よりも更に深いため息を零しながら響は空を見る。少し遠い場所では時期にこと座流星群が降る事なのだろうと思うと、後悔してもしきれない。


 


「でも、このままでいいんでしょうか。未来にシンフォギアの事とか、言えないせいできっと……」


「……確かに、この情報はとても重要だ。扱いにも慎重にならざるを得ない……でも、それはあくまで建前でしかないんじゃないか?」


「建前……ですか?」


「今の自分の姿を知られてしまう事を無意識の内に恐れている……とか」


「……」


 


頬に手を当てて弾の言葉を受け止める。確かに、そう言われればそんな気もするし、だからといって本当にそうなのかと自問してみるとそうでもないのではないかという否定の回答も出てきてしまう。思考がぐるぐる回って、自分でも訳が分からなくなって頭がパンクしそうになった所で響は思考を打ち切る事にするしかない。


 


「自分でもよく分かりませんね……」


「まぁ、そんなものさ。ただ考えただけじゃ結局見つからない。実際に動かなきゃ、見えない所もある」


「そういうものですかね……」


 


地下鉄に続く地下への階段。そこに辿り着いた響と弾が見たのは、無数のノイズ達。それらは弾がデッキを構えると共に一つに固まり、人型を作り出していく。


 


「この奥にもノイズがいるんですよね……」


「ああ。ここは二手に分かれる必要があるな」


「じゃあ、弾さんは先に行ってください!」


「……分かった」


 


響にこの場を託し、弾は階段を降りて奥へと走っていく。その弾に向かってノイズから無数の触手が放たれるが、弾はその攻撃の全てを見極めて全て避け、無事に地下鉄の通る駅へと走る。弾の方が強いとノイズも本能的に判断したのか、それは定かではない。だが、逃げる様に移動しているようにも捉えられるその背中を追おうとノイズが動き出した所で階段から飛び出し、ノイズの前に立ちはだかった響はデッキをノイズへ突き付ける。


 


「お前は行かせない!いくぞ!ゲートオープン!界放!!」


 


エクストリームゾーンへのゲートが開かれ、ノイズと響はその空間へ誘われる。シンフォギアを纏い、響は目の前で蠢くノイズを注意深く見ながら、先行を奪い取る。


 


「スタートステップ!ドローステップ!メインステップ!ダークディノハウンドを召喚!」


 


【ダークディノハウンド:赤・スピリット


コスト3(軽減:赤1):「系統:地竜」:【覚醒】


コア1:Lv1:BP3000


シンボル:赤】


 


黒い身体に鋭い爪が生え、両肩から長い牙のようなものが生えている赤のスピリットが響のフィールドへ真っ先に呼び出される。覚醒を持つコストの軽いスピリットであり、戦況を整えるには丁度いい一体とも言えるだろう。


 


「ターンエンド!」


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、メインステップ。光の衛士アドリアンを召喚』


 


【光の衛士アドリアン:青・スピリット


コスト1(軽減:青1):「系統:闘神」:【強化】


コア1:Lv1:BP2000


シンボル:青】


 


ノイズの場に出現した赤いシンボルが砕かれ、その中から青い逞しい肉体を持つ人間が現れる。その体には金色を基調とした鎧が装着されており、その得物として一本の槍がその手に握られている。


 


「青デッキ……!」


『ネクサス、崩壊する戦線を配置』


 


【崩壊する戦線:青・ネクサス


コスト4(軽減:青2)


コア0:Lv1


シンボル:青】


 


ノイズが青のネクサスを場に繰り出す。それと共にノイズの背後の空がオレンジ色に染まっていき、不穏な煙が立ち昇っていく。崩壊する戦線、その言葉を連想させるそんな霧を見ながら、響は一層気を引き締める。


 


『バーストをセット。ターンエンド』


 


さらに自分の場を固めるようにバーストを出し、その裏向きとなっているカードを響に見せつける。それを視界に入れながら、響は手札にも目を通していく。


 


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!ネクサス、焔竜の城塞都市を配置!」


 


【焔竜の城塞都市:赤・ネクサス


コスト5(軽減:赤4)


コア0:Lv1


シンボル:赤赤】


 


響の背後に出現する、岩肌を覗かせる、自然が構築した岩の城塞。その城塞の中には都市部を確認することができ、竜の影が城塞都市からちらと認識することができる。


 


「ターンエンド!」


 


そして、ここはダーク・ディノハウンドで攻撃は仕掛けず、ターンを相手に渡す。バーストがライフ減少のものであった場合、強力なスピリットを呼び出される可能性を考慮したのだろう。


 


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。海賊ラッコルセアを召喚』


 


【海賊ラッコルセア:青・スピリット


コスト2(軽減:青1):「系統:獣頭」


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:青】


 


黒いタンクトップを着用し、額に赤いバンダナを巻いた白い毛並みを見せるラッコが現れる。長ズボンを履き、胸に貝を模したマークが刻まれた二足歩行する獣はアドリアンと共に並んでノイズの防衛ラインをさらに強固にしていく。


 


『光の衛士アドリアンをLv2にアップ』


 


【光の衛士アドリアン


コア1→4:Lv1→2:BP2000→3000】


 


『ターンエンド』


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!」


 


相手がアタックしない事でコアが増えず、展開に支障を来している。相手のネクサスが何ならかの効果を秘めているのは分かるのだが、如何せん響には馴染みのないネクサスであったが故なのだろう、逆に不気味さを感じさせてしまい、響にはある種のプレッシャーとしてこれを感じ取っていた。


 


「ここは……サーベカウラスを召喚!」


 


【サーべカウラス:赤・スピリット


コスト4(軽減:赤2):「系統:地竜」:【覚醒】


コア1:Lv1:BP3000


シンボル:赤】


 


緑色の硬い皮膚を持つ地竜スピリット、サーべカウラス。黄色い目を開き、その緑の顔からは両耳にあたる部分から細長い骨のように硬い棘が生えており、背中からもそれは伸びている。また、その四本の足首から一本ずつ小さい棘が生えており、フィールドに出現した赤のシンボルの中から現れ、小さく鳴き声を上げる。


 


「さらダークディノハウンドをLv2にアップ!」


 


【ダークディノハウンド


コア1→3:Lv1→2:BP3000→5000】


 


「ここは……攻める!アタックステップ!ダークディノハウンドでアタック!」


 


ダークディノハウンドが響の指示を受け、地を走る。アドリアンとラッコルセア、二体の間を中央突破していき、ノイズへと勢いよく飛び掛かる。その爪を振り上げ、勢いよく叩きつける事でノイズのライフを奪い取ろうとする。


 


『ライフで受ける』


 


ノイズのライフを1つ奪い取り、先制攻撃を決める。しかし、その先制攻撃によってライフが減った事によってノイズがセットしたバーストが起動する。


 


『自分のライフ減少後によりバースト発動、妖華吸血爪』


 


紫のバースト、妖華吸血爪。自分のライフ減少後に発動され、効果により自分はデッキからカードを2枚ドローする。ノイズはこの効果でカードを2枚ドローするが、フラッシュ効果を発揮する為に必要なコスト5を支払った場合、スピリット一体を不足コスト確保のために消滅させてしまう為かフラッシュ効果は使用しなかった。


 


「ターンエンド!」


 


響も、増えた手札が気になるのか、ブロッカーを残して深追いせずにおく。この判断は間違っていないと思いながらも、相手からどこか不安を感じずにはいられなかった。


 


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。光の衛士アドリアンをLv1にダウン』


 


【光の衛士アドリアン


コア4→1:Lv2→1:BP3000→2000】


 


『二枚目の崩壊する戦線を配置』


 


【崩壊する戦線


コスト4(軽減:青2)


コア0:Lv1


シンボル:青】


 


二枚目の崩壊する戦線が、既に配置されている崩壊する戦線の隣に出現する。再びネクサスを呼び出して戦況を整え、ここで遂にこのデッキのメインとなる能力を持つスピリットの一体をノイズは呼び出そうとする。


 


『光の騎士ホープをLv2で召喚』


 


【光の騎士ホープ:青・スピリット


コスト4(軽減:青2):「系統:闘神」:【粉砕】【強襲:1】


コア2:Lv2:BP5000


シンボル:青】


 


白を基調とした、青い装飾の見える騎士甲冑を纏った、青い肌にオレンジ色の髪を持つ男性が現れる。その手には一本の眩き剣が握られ、自身の戦士としての風格を漂わせる、


 


『バーストをセット。アタックステップ。光の騎士ホープでアタック。アタック時効果、粉砕』


 


ホープが剣を振り抜く。瞬間、青い風がフィールドを突き抜けて響の全身へ襲い掛かる。響自身には少し強い風という印象であったが、その風は響のデッキを二枚吹き飛ばしていき、三札之術とクナノミがトラッシュへと破棄される。


 


「デッキが……!?」


 


粉砕。それを持つスピリット/アルティメットのアタック時、そのLvの数値分だけ相手のデッキを上から破棄するデッキ破壊効果。青が得意とするデッキ破壊の為の力は、他のカードとの連携により更なる力を発揮する。


 


『1強化により、アルティメット以外の自分の相手へのデッキ破壊効果の枚数を+1枚する』


 


青の強化が持つのは、デッキ破壊効果の強化。それにより、アドリアンの身体が光に包まれ、その手から振るわれた槍から放たれた青い波動が響のデッキから更に一枚のカード、神鳴る霊峰を破棄する事となる。


 


『崩壊する戦線、Lv1・2効果。お互いのアタックステップ時、粉砕の効果で相手のデッキを破棄するとき、破棄するカードを+2枚する』


「今度はネクサスで!?しかも……2枚あるってことは……!」


 


二枚の崩壊する戦線が光を帯び、ネクサスからも青い旋風が巻き起こる。その風は響のデッキを更に吹き飛ばしていき、二枚のネクサスの効果によってティロック・ケファレ、サーベカウラス、雷皇龍ジークヴルム、ゴルニック・イーグルの四枚が破棄されていき、一回のアタックで一気に七枚のカードが破棄されることとなる。


 


「こ、こんなに……」


『海賊ラッコルセア、Lv1・2自分のアタックステップ時効果。自分のスピリットの粉砕の効果で相手のトラッシュにスピリットカードが1枚以上置かれたとき、ボイドからコア1個を自分のスピリット1体の上に置く。光の騎士ホープに1コア追加』


 


【光の騎士ホープ


コア2→3】


 


『光の騎士ホープ、Lv2・3効果、強襲:1。ネクサス、崩壊する戦線を疲労させこのスピリットを回復』


 


さらにホープは回復し、次の攻撃の準備へ入る。その上でホープは剣を両手で握ってフィールドを駆けると地面を蹴って空に跳び上がり、そのまま剣を響へ向かって振り上げる。


 


「ライフで受ける!」


 


剣が叩き付けられ、響のライフを奪う。その衝撃と痛みが全身を襲うが、それに怯んでいる暇はない。ノイズは再び響のデッキを破棄するべく、ホープに次なる命令を下す。


 


『光の騎士ホープでアタック』


 


粉砕によりホープのLv分二、強化で一、二枚のネクサスによって四枚、七枚が再び破棄されていく。ドラゴンヘッド、クナノミ、焔竜の城塞都市、エナジーバースト 、双光気弾、ゴルニック・イーグル、クナノミ。これら七枚が破棄され、ラッコルセアの効果によりボイドからコア1個がホープに追加される。


 


【光の騎士ホープ


コア3→4:Lv2→3:ATK5000→8000】


 


「ライフで受ける!」


『ターンエンド』


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!」


 


響のデッキの残り枚数は十八枚。これ以上デッキを破壊される前に勝利する必要がある。その為には粉砕を持つスピリットとそれを補助するネクサスを破壊する必要がある。そして、このドローステップでネクサスに対する最も効果的なカードをドローする事が出来た。


 


「マジック、ネクサスコラプスを使用!ネクサス2つまでを破壊する!!」


 


崩壊する戦線へと降り注ぐ炎熱。それがノイズの背後の空を焼き尽くし、再び元の深緑色の空に戻していく。まだ響のマジックは止まらない。次に仕留めるべきなのは、粉砕を持つ光の騎士ホープだ。


 


(今私が自由に使えるコアは残り8個……これじゃメテオヴルムをLv3で召喚することはできない……でも、このマジックなら!)


 


龍星皇メテオヴルムのカードを手札に見ながら、召喚を断念する。代わりに別の一枚を右手で手に取り、響はマジックを使用する。


 


「続けてネオ・フレイムテンペストを使用!BP8000以下の相手スピリット1体を破壊する!光の騎士ホープを破壊!」


 


巨大な火炎の竜巻がホープへと襲い掛かる。その炎はホープの全身を広大な熱量で焼き尽くしていき、一瞬にしてその存在をフィールドから消し飛ばしていく。


 


「ターンエンド!」


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。ネクサス、巨人の足跡湖二枚を配置』


 


【巨人の足跡湖:青・ネクサス


コスト3(軽減:青1)


コア0:Lv1


シンボル:青】


 


【巨人の足跡湖


コア0:Lv1


シンボル:青】


 


ノイズが再びネクサスを展開する。巨大な足跡を刻まれた地が浮上し、その足跡には水が満ちて湖となる。右足と左足、それぞれ別々の形をしたネクサスもまた、粉砕をサポートするためのものなのだろう。


 


『光の衛士アドリアン、海賊ラッコルセアをLv2にアップ』


 


【光の衛士アドリアン


コア1→4:Lv1→2:BP2000→3000】


 


【海賊ラッコルセア


コア1→3:Lv1→2:BP1000→3000】


 


『ターンエンド』


 


粉砕のデッキ破壊を戦術とするなら、下手にライフを奪いにいくのは悪手なのだろう。粉砕によるビートダウンではなく、デッキアウトを狙う戦術は、コアブーストの手段をカード効果としてデッキに組み込んでいない響の攻め手を遅らせるにはあまりにも十分すぎた。


 


「くぅ……スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!」


 


ドローすればするほど、デッキは擦り減っていく。コアを潤っていない状態でこれを仕掛けるのは少々無謀に近く、勇気がいる行動だが、相手が大型のスピリットを呼び出す前に相手のスピリットを仕留めておかなければならない。


 


「響け稲妻!雷皇龍ジークヴルム、召喚!」


 


【雷皇龍ジークヴルム:赤・スピリット


コスト6(軽減:赤3):「系統:星竜・古竜」:【激突】


コア1:Lv1:P4000


シンボル:赤】


 


響の背後が薄暗くなる。それと同時に雷鳴が鳴り響き、響の背後で稲妻が連続して落ちる。それを合図としてエクストリームゾーンの壁の外側から這い出るように現れた、紅い胴体に黄色い皮膚を持つ稲妻の星竜が翼を広げ、姿を見せる。雷皇龍は響の呼び掛けに応えるように咆哮を上げ、フィールドへ舞い降りる。


 


「続けて降り注げ、響け流星!!龍星皇メテオヴルム、召喚!不足コストはダークディノハウンドとサーべカウラスより確保!」


 


【ダークディノハウンド


コア3→1:Lv2→1:BP5000→3000】


 


【サーべカウラス


コア1→0】


 


【龍星皇メテオヴルム:赤・スピリット


コスト7(軽減:赤3):「系統:星竜・勇傑」:【激突】


コア1:Lv1:BP6000


シンボル:赤】


 


稲妻に続き、空に黒い暗雲が広がっていく。その雲を突き抜けて降り注いだ流星群が地面に衝突して爆発し、その中の一つが爆煙を振り払い、オレンジ色の翼が広げられる。緑色の眼を光らせ、そのオレンジ色の龍の身体を光に反射させ、メテオヴルムがジークヴルムと共に咆哮を上げて降臨する。


 


「アタックステップ!!ジークヴルムで激突!!」


 


ジークヴルムのアタックが宣言され、地面を強く蹴って空へと飛び上がる。そのまま相手のフィールドへと急降下してくるジークヴルムのアタックを、激突の力により二体のスピリットのどちらかはブロックを強要されてしまう。


 


『海賊ラッコルセアでブロック』


 


ラッコルセアが両足で強く地面に踏ん張りながら両手を広げ、ジークヴルムを受け止める体勢に入る。しかし、ジークヴルムは急降下と同時に思い切りラッコルセアを蹴り付けて吹き飛ばし、その反動で空中へと再び舞い上がり、口から火炎放射を放ち、ラッコルセアを焼き尽くすことで破壊する。


 


「焔竜の城塞都市の効果により1枚ドロー!」


 


ネクサス、焔竜の城塞都市にはLv1効果により、自分のアタックステップ時、相手のスピリットを破壊したとき、破壊したスピリット1体につき、自分はデッキから1枚ドローできるのだ。


 


「続けていけ、メテオヴルム!光の衛士アドリアンに激突!!」


 


メテオヴルムの顔が変形し、両腕と両膝、そして翼が折り畳まれる。そして全身を巨大な炎が包みこみ、さながら炎の槍となってブロックを強要されたアドリアンへと激突する。メテオヴルムのアタックを槍を両手に持ち受け止めようとするが、それも全く意味を成さず、槍を打ち砕かれながらその体は吹き飛ばされてしまう。


 


「再び焔竜の城塞都市の効果で1枚ドロー!私はこれでターンエンド!」


 


二つの爆発が二体のスピリットをそれぞれ消し飛ばし、一気にがら空きとなるノイズのフィールド。もしあのバーストがライフ減少のものでこちらのスピリットを破壊するものであるならBPの低い二体のXレアは格好のカモでしかないのだから、準備の整っていない段階で攻めるのはよろしくないはずだ。


 


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。マジック、ストロングドローを使用』


 


デッキからカードを3枚ドローし、その後手札2枚を破棄する青のマジック、ストロングドロー。その効果によりデッキからカードを3枚ドローし、その内の2枚、牙皇ケルベロードとリボル・アームズを破棄する。


 


『ターンエンド』


「スピリットを出さなかった……?」


 


とはいえ、スピリットを変に出せばメテオヴルム達の餌食になるだけだ。そう考えればノイズの選択肢も決して誤っているとは言えはしない。しかし、これはチャンスだ。ここでライフを一気に四つ奪い取れる手段を手にすれば、響は一気に勝利に向かって動く事が出来る。


 


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!」


 


ドローしたのはマジックカード。自分の手札にスピリットやアルティメットは存在せず、これではライフを全て奪い取る事は出来はしない。その事実が少しだけ不満だったが、これも時の運と諦めて今の自分が出来る事をするしかないだろう。


 


「メテオヴルムをLv3に、ジークヴルムをLv2にアップ!」


 


【龍星皇メテオヴルム


コア1→6:Lv1→3:BP11000】


 


【雷皇龍ジークヴルム


コア1→4:Lv1→2:BP4000→6000】


 


「バーストをセットしてアタックステップ!ジークヴルムでアタック!」


 


響のフィールドにバーストカードが出現し、アタックステップが宣言される。雷皇龍は飛翔すると、一直線に敵の懐へと潜り込んで右手を振り上げる。その拳には炎が纏わせられ、コアを奪う一撃がノイズへと振り下ろされようとする。


 


『ライフで受ける』


 


叩きつけられた拳によって砕けるライフ。しかし、そのアタックはノイズの仕掛けたバーストを起動させる為の手段としても必要な行動である。


 


『自分のライフ減少後によりバースト発動、妖華吸血爪』


 


ノイズが伏せていたのは二枚目の妖華吸血爪。その効果によりデッキからカードを2枚ドローし、減っていた手札を再び補充し直す。


 


「ここでドローを……ターンエンド」


 


手札が増えたということは、次のターンが一番危ない。ここは防御の手段を用意して待ち構える。そして、ノイズのターンが始まる。


 


『スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。光の戦士ガイウスをLv3で召喚』


 


【光の戦士ガイウス:青・スピリット


コスト2(軽減:青2):「系統:闘神」:【強化】


コア4:Lv3:BP5000


シンボル:青】


 


銀色に輝く槍と盾を握る、白銀の鎧を纏った闘神が出現する。青の強化を所持し、デッキ破壊を底上げするこの能力がどこまで影響を及ぼしてくるのか。


 


『神造巨兵オリハルコン・ゴレムをLv3で召喚』


 


【神造巨兵オリハルコン・ゴレム:青・スピリット


コスト7(軽減:青4):「系統:造兵・勇傑」:【粉砕】【強襲:2】


コア4:Lv3:BP10000


シンボル:青】


 


瞬間、大地がひび割れていく。そこから吹き上がる巨大な土煙の中より現れる金色の爪。全長数メートルに届くであろう青く巨大な造兵が降臨し、金色の獣のような装飾の兜を見せる。デッキ破壊の力、粉砕を持つその巨大なゴレムは、デッキ破壊の力、粉砕と連続攻撃の力、強襲を共に備え持つ。


 


「青のXレア!?」


『巨人の足跡湖をLv2にアップ』


 


【巨人の足跡湖


コア0→1:Lv1→2】


 


【巨人の足跡湖


コア0→1:Lv1→2】


 


『アタックステップ。巨人の足跡湖、Lv2効果。自分のアタックステップ時、自分のフィールドに青のスピリット/ネクサスしかない間、自分のスピリットすべてをBP+3000する』


 


【光の戦士ガイウス


BP5000+3000+3000→11000】


 


【神造巨兵オリハルコン・ゴレム


BP10000+3000+3000→16000】


 


ネクサス、巨人の足跡湖が光り輝き、その力はガイウスとオリハルコン・ゴレムに纏われる青いオーラの形となって降り注ぐ。一気にBPを上昇させ、二体のBPは響の場のメテオヴルムが持つBP10000すらも容易く超える事となる。


 


『神造巨兵オリハルコン・ゴレムでアタック。アタック時効果、粉砕』


 


オリハルコン・ゴレムの全身を青い風が包みこみ、それはガイウスが持つ強化の光も受けて更に破棄枚数を増やす。だが、オリハルコン・ゴレムが持つデッキ破壊能力の力を増すのは、Lvや強化だけではない。ノイズのフィールドに存在する全てのカードが光り輝き、青のシンボルが浮き上がっていく。


 


「!?」


『神造巨兵オリハルコン・ゴレム、Lv1・2・3アタック時効果。このスピリットの粉砕で破棄するカードを、自分の青のシンボル1つにつき+1枚する』


 


ノイズの場に存在する青のシンボルの合計は、光の戦士ガイウス、神造巨兵オリハルコン・ゴレム、巨人の足跡湖二枚がそれぞれ一つずつ持つ、合計四つ。そこに1強化、Lv3のオリハルコン・ゴレムの粉砕を組み合わせる事で響のデッキから破棄されるカードは合計八枚に増え、更に駄目押しと言わんばかりに背後に聳える巨人の足跡湖が光を放つ。


 


『巨人の足跡湖、Lv1・2効果。お互いのアタックステップ時、自分と相手のバースト1つにつき、自分のスピリットの粉砕/大粉砕で破棄するカードを+1枚する』


「バースト……あ!?」


 


バーストがあるのは、響のフィールドのみ。自分と相手が伏せているバーストの合計数は一、それが二枚フィールドにあることで更に二枚の破棄枚数が追加され、合計破棄枚数は十枚となる。オリハルコン・ゴレムが両腕を勢いよく振り抜き、自身が纏う青く光る風を斬撃のように放ち、響のデッキを更に吹き飛ばしていく。


 


「!?」


 


焔竜の城塞都市、ドラゴニックウォール、リボーンフレイム、ティロック・ケファレ、ダークディノハウンド、サーベカウラス、雷皇龍ジークヴルム、神鳴る霊峰、ティロック・ケファレ、そして、


 


「あ!?アルティメット・ジークヴルム!?」


 


アルティメット・ジークヴルム。デッキに一枚しか入っていない、響の切り札ともいえるカードがトラッシュへと落とされてしまう。デッキに残っていたカードが次々と破棄され、その残り枚数は僅か四枚。次に粉砕の一撃を受ければ、響のデッキは完全に消し飛ぶだろう。だが、今はそれ以上にアルティメットを落とされたことへの衝撃が大きい。


 


「っ……!」


『神造巨兵オリハルコン・ゴレム、Lv2・3アタック時効果、強襲。巨人の足跡湖を疲労させることでこのスピリットを回復』


 


オリハルコン・ゴレムの足元に白い光の円が出現し、そこから放たれた淡い光がオリハルコン・ゴレムの身体を包む事で疲労状態から回復させる。これで、次にオリハルコン・ゴレムのアタックを受ければ響はデッキアウトに陥る事が確定となってしまう。だからこそ、これ以上オリハルコン・ゴレムを好き勝手に動かさせる訳にはいかない。


 


「くぅ……!こうなったら、意地でも倒してやる!!相手のアタックによりバースト、ドラゴニックウォール!!このターンの間、メテオヴルムのBPを+5000!」


 


【龍星皇メテオヴルム


BP11000+5000→16000】


 


「さらにフラッシュ効果を発揮!不足コストはジークヴルムより確保!」


 


【雷皇龍ジークヴルム


コア4→2:Lv2→1:BP6000→4000】


 


「自分の赤のスピリット1体を破壊することで、このバトルが終了したとき、アタックステップを終了する!ダークディノハウンドを破壊!」


 


ダークディノハウンドが熱源となり、巨大な炎の壁となって響を護るように展開される。そして、オリハルコン・ゴレムのアタックがそのまま響へと襲い掛かろうとする。


 


「このアタックはメテオヴルムでブロック!」


 


オリハルコン・ゴレムの振り抜いた爪が、メテオヴルムへと襲い掛かる。地面に深く突き刺さる爪を避けるように脇に跳び、オリハルコン・ゴレムが爪を引き抜くのと同時に地を蹴って飛び掛かり、その体を体格に任せて突き飛ばす。地面を転がるオリハルコン・ゴレムだがすぐにその回転を止めて起き上がり、メテオヴルムを迎え撃つ。自身を炎の槍へと変形させ、真正面から激突するメテオヴルムを真上に振り上げた両腕を地面に叩きつける事によってその勢いを殺すと、右腕でその胴体を押さえ付けて左腕を振り上げてその命を仕留めにかかる。


 


「さらにフラッシュタイミング!エナジーバーストを使用!不足コストはジークヴルムより確保!」


 


【雷皇龍ジークヴルム


コア2→1】


 


「このターンの間、メテオヴルムにBP+3000!!」


 


【龍星皇メテオヴルム


BP11000+5000+3000→19000】


 


メテオヴルムに更なる力が宿り、その身体が赤く燃え上がる。そして振り下ろされたオリハルコン・ゴレムの左腕に向けて口を開いたメテオヴルムはその口から劫火を放ち、その左腕を吹き飛ばす。その威力で自分を押さえ付けていた右腕が離され、そのまま後ろへと仰け反るオリハルコンゴレム。そのまま倒れ込むオリハルコン・ゴレムを起き上がり、圧し掛かるようにして押さえ付けたメテオヴルムは、そのまま翼を広げ、地面を擦りつけるようにして勢いよく壁に叩き付け、その身体を打ち砕く。


 


『ターンエンド』


「スタートステップ……コアステップ……ドローステップ……!リフレッシュステップ……!メインステップ!」


 


ドローしたのは、スピリットカード、ドラゴンヘッド。もし、今日という日にノイズが現れていなければどうなっていたのか。自分は未来と共に流星群を見ていた事だろう。


 


「ドラゴンヘッドを召喚……」


 


【ドラゴンヘッド:赤・スピリット


コスト0:「系統:翼竜」:【覚醒】


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:赤】


 


紅い角を持つ顔だけのドラゴンが現れる。三体のドラゴンを従え、響は最後の準備を整えていく。


 


「アタックステップ!ドラゴンヘッドでアタック!フラッシュタイミング、ネオ・フレイムテンペストを使用!ガイウスを破壊!」


 


二枚目のネオ・フレイムテンペストが造り出した炎の竜巻がガイウスを燃やし尽くす。そしてがら空きとなったフィールドへドラゴンヘッドはその口を開けてライフを奪いにかかる。


 


『ライフで受ける』


「……見たかった」


 


怒りを吐き出すように。この行き場のない怒りを、八つ当たりのようにノイズへぶつけるように、響は魂の叫びを上げる。


 


「流れ星、見たかった……未来と一緒に……!ジークヴルムでアタック!!」


 


ジークヴルムが咆哮を上げ、ノイズへ炎を放つ。その炎はブロッカーの存在しないノイズを更に焼いていく。


 


『ライフで受ける』


 


炎がノイズを焦がす。その炎の先で、感情を荒ぶらせ、昂ぶらせていく響の目は、徐々に赤く染まっていき、まるで何かに浸食されていくかのようにその身体が徐々に黒く染まらせていく。


 


「皆の何でもない日常を奪うあんた達を、絶対に、許さない!!メテオヴルムで、アタック!!」


 


暴走したまま、満面の笑みを見せる響の叫びに呼応するようにメテオヴルムが飛び出す。瞬間、響の両腕のガントレットから音が鳴って開き、ブースターとなって虹色の光を噴出していく。空高く飛び上がり、流星となってノイズへと落ちるメテオヴルム。そのアタックは、ノイズの最後のライフを打ち砕いてその姿を炭化させ、消し飛ばすのだった。


 


「……はぁ……はっ……」


 


ドラゴン達が咆哮を上げる。それを聞いた瞬間、響は自分が勝利したことを悟ったのか、その目の赤い光が黄色い元の瞳の色に戻っていく。黒く染まった全身も剥がれ落ちるように散っていき、自分の姿を取り戻させる。だが、響は自分がそんな暴走に近い状態にあったという自覚が全くない。だが、例えそれを自覚していたとしても、今の響にはやるべきことがある。他にもノイズ達はいる。弾や翼もそれらを倒す為に動いているのだ。自分も次の戦いに向かわなくてはいけない。そう悟り、エクストリームゾーンの外へと出ていくのだった。


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