第11話 分身の忍

響もノイズとの戦闘に慣れ、バトルの経験も積んでその実力は弾と翼が彼女と初めて会った頃と比べれば見違える程の成長を見せている。とはいえ、まだまだ発展途上だし、翼もまた、弾の出現により自身が井の中の蛙であった事を実感し、以前よりも自分らしく強くあろうとしている。そして弾自身もまた、デッキを日々強くし、カードバトラーとして上へ向かおうとしている。戦士達はそれぞれが自分の方法で自分らしく強くあろうとするのだ。


 


「……」


 


この日もまたそうだ。弾は二課の一室を借り、椅子に座って目の前に広げられたモニターを操作しながらデッキ構築をしていた。以前とは違った趣向の、だが今の自分が扱う事の出来るデッキを作り、本当にそのデッキレシピでいいのかを何回も頭の中で考え、改善点を見つけてそこを修正していく。それを幾つか繰り返し、この場で自分の考え得る限りのデッキを構築してから弾は一息吐く。


 


「こんなところか」


 


完成したデッキを手に、静かな静寂の中を自分の声で打ち破る。こうして自分が戦う事が出来るのも仲間達のおかげだ。異界グラン・ロロでは他の光主、異界魔女マギサ、ズングリー、セルジュ達のおかげで、そして未来世界では光主達や人類軍の者たちの協力があったから。そしてこの世界でもまた、二課の皆のおかげで自分はこうやって戦う事が出来ると言ってもいい。その事に小さくない感謝をしながら、弾はその後招集されるまでの少しの時間の間、仮眠を取るかのように瞳を閉じた。


 


「……ん……んん……」


 


そして、弾がデッキを構築しているのと同じ時間。二課の本部の上に建築された、二課の存在を隠蔽する為の施設であるリディアン音楽院に通う生徒達が宿泊している学生寮で響は右手にシャーペンを持ちながら、半分眠りかけていた。シンフォギアを纏う装者と学生の二足の草鞋は彼女には厳しいのか、それともこの数ヶ月でボロが出てきたのか、完全に疲弊しているように見える。


 


「もう響、寝たら間に合わないよ?」


「……!あ、ひゃい!」


 


目の前でパソコンを操作する未来の心配する声を掛けられ、飛び跳ねるように意識を覚醒させて返事を返す。学生として、出されたレポートを書こうとしている響。その内容は、ノイズの事について調べる事。学校での成績がイマイチな響は追試を受けるかどうかの瀬戸際にまで追い込まれており、それを回避する為にこのレポートを提出しなければならなくなっているのだ。


 


「最近疲れてるみたいだけど……そんなにデッキ構築にのめり込んでるの?」


「んー、まあそうかなーでもへっちゃらだよー」


 


実際、ノイズと戦う為にデッキ構築にも精を出しているのだから決して間違いは言っていない。しかし、事情を知らされていない未来からすれば学業を疎かにしてまでのめり込むのはどうかという話になってきてしまうのもある意味当然の話だろう。


 


「全然へっちゃらそうに見えないよ……」


 


心配した様子で声を掛ける未来。半ば強がるように声を上げようとした響だったが、ふと彼女のスマートフォンからメールの着信音が鳴り響いた事でその言葉を呑み込む。こんな時間に一体誰なのだろうかと響は疑問を抱きながらメールを開くと、そこには二課からの要請が書かれていた。


 


「また用事?本当に大丈夫?」


「だ、大丈夫だよ」


 


ノイズ関連で何度か呼び出しを受けている様子は、傍から見れば成績が悪すぎるせいで教師から呼び出しを喰らっているようにしか見えないのだろう。適当に誤魔化しつつも自分の留守を未来に頼みながら部屋着から制服に着替える。そんな響に未来はパソコンの画面を見せ、数十年前に撮られたある映像をネットにアップした動画を画面に映す。


 


「……用事はいいけど、こっちの約束もちゃんと守ってよね?」


「分かってる分かってる!」


 


こと座流星群。そう呼ばれるこの現象を以前から見ようと約束をしており、響の忙しさにその約束も叶うかどうか。響としても未来との約束を守りたいと思っており、その為にもこのレポートは書ききらなければいけないのだ。その事を念頭に入れながら響は二課へと走る。


 


「すみません、遅くなりました!」


 


若干息を切らしながら部屋に入ってきた響は、そこでくつろいでいる弾達を見る。響が到着したことを確認し、了子は部屋にいる全員を見回し、ミーティングを開始する。


 


「では、全員揃ったところでミーティングを始めましょ。全員モニターを見て」


 


了子の言葉に従い、全員が巨大なモニターに目を向ける。そこには、この二課を中心とした周囲の地域の地図が表示されており、そこには無数の赤い点が点灯する。


 


「こいつを見てくれ。これをどう思う?」


「凄く……いっぱいです」


「……はっはっは!そうだな!」


「……はぁ」


 


響の回答に思わず大笑いする弦十朗。翼も、響の率直な言葉に苦笑しながら溜め息を漏らすしかない。そんな中、弾は一人静かにその赤い点を見続ける。


 


「この地図……この周辺のか。この赤い点は?」


「これは、ここ一ヶ月におけるノイズの発生地点を表示したものだ……っと、話をする前に弾君と響君がノイズについて知っている事は」


「資料に掲示されている程度なら」


「私も、テレビとかネットで調べた程度です」


 


ノイズは無感情で、バトルに対しても焦り等の感情を確認する事はない。強いて言うなら戦う為の機械といったものか。そしてノイズは何故か人間だけを狙う。ノイズに襲われ、触れた人間は炭化してしまうこと。加えて、時と場所を選ばずに何処にでも発生する事などの特徴がある。ノイズは遥か太古の時代より存在を確認されていたが、世界的に特異災害として認定されたのは十三年前。ノイズはその体こそ目視出来るものの、その存在は別の空間にある為、質量兵器などがその体を貫く事はない。その為ノイズは自分の身体の一部を人間たちがいる空間に移動させる形で人間達を襲う。


 


そんな存在を相手に注目されたのが、エクストリームゾーン。遥か太古、神々の時代にまで遡る別の空間に存在するバトルフィールドであり、この空間であれば人間でもノイズを自分が存在する空間に固定し撃破する事が出来るようになることが証明されたのだ。そして、そのエクストリームゾーンで行う事の出来る唯一の戦い、それこそがバトルスピリッツ。バトルを制する者はノイズをも制する。それこそがこの世界の新たな常識となったのだ。


 


とはいえ、通常のカードバトラーではノイズとはまともに戦う事が出来ない。ライフを1つ、ノイズの使用するカードのアタックや効果で砕かれればその身体は即座に炭化を引き起こし、戦うカードバトラー自身が消滅を引き起こす事となる。それ故に、各国では軍隊とは別の対ノイズ専用とも言えるカードバトラー部隊、軍力を持たざる国交的な観点で言えば実に平和的な軍隊が建設されるに至っているのだ。


 


「とはいえ、ノイズにはまだ不明瞭な所も多い。それに、世界各地に残る神話や伝承などにはノイズや太古の技術とかが関係したものもある」


「ええ。中でも世界的に有名なのは世界創造の剣刃伝説かしら」


「伝説って?」


「ええ。通常のノイズ発生率はそこまで高くはないのだけれど……これを見ると分かる通り、その発生率が異常なの」


「確かに……何か原因があるのか?」


 


通常、人が一生で一度会うかどうかの遭遇率しか持たないノイズ。だが、それがこうも頻繁に発生するというのは確かに異常だと言えるだろう。何ならかの作為的な思想が関わっている事も視野に入れるべきだろう。


 


「んー、完全に、とは言い難いけど無関係、とも言いにくい代物が眠っているのよね実は」


「やはり、サクリストD、デュランダルを狙って何者かがノイズをこの地に……」


「サクリストD?」


「デュランダル……?」


 


響と弾が疑問に思うのも無理はない。何も知らない彼らの疑問は当然のものなのだから。そんな二人にデュランダルの事を説明すべく、藍色の髪の女性オペレーター、友里あおいが口を開く。


 


「ここよりさらに下層、アビスと呼ばれる最下層に保管され、日本政府の管理下で我々が研究しているほぼ完全状態の聖遺物。それがデュランダルよ」


「翼さんの天羽々斬や響ちゃんの胸のガングニールの欠片は装者が歌って、シンフォギアとして再構築させないとその力を発揮できないけれど、弾君の十二宮Xレアのような完全状態の聖遺物は一度起動した後は百パーセントの力を常時発揮し、さらには装者以外の人間でも操作できるだろうと研究の結果が出ているんだ」


「その仮説は、弾君のいた時代での出来事を踏まえればほぼ正しい事が明らかになったけどね。ちなみにこれが私の提唱した桜井理論」


 


あおいの言葉に付け足す形で男性オペレーター、藤尭朔也も口を出す。その後、弾のいた未来世界で十二宮Xレアを多くのカードバトラーが使用したことを踏まえ、完全聖遺物が起動すれば適正の無い者でも操れる事を証明する。


 


「だけど、完全聖遺物の起動には相応のフォニックゲイン値が必要なのよね。しかも、バトルで使用するとなれば結構なコアエネルギーが必要になってくるし」


「取り扱いには注意するべきって事か……だが、このまま腐らせておくわけにもいかないんじゃないのか?」


「まぁそうなんだけど……二年前にね」


 


二年前。ツヴァイウイングのライブを兼ねた、完全聖遺物、ネフシュタンの鎧の機動実験。それは失敗し、大きな被害をもたらした事によって再びその時と同等の失敗が起こる可能性を危惧し、実験許可が日本政府から降りる事はまずないだろう。


 


「それに、一応日本政府としてはデュランダルを使用する場合、ノイズとの戦闘、つまりバトルスピリッツにしか使わないと宣言しているからここにあるのだけれど……アメリカが安保条約を盾にして再三のデュランダルの引き渡しを要求してきていてね。機動実験はおろか、扱いすらも慎重にしなきゃ国際問題に発展しかねない程なのよ」


「そうなのか……」


 


ならばデュランダルの事については現状を維持するしかないのだろう。この一連のノイズ出現、これもまさか他の国の作為的なものなのか。そこらへんの調査も二課で進めているそうだが、今はそれが精一杯といったところか。そして、ここで会話が途切れる。


 


「……予定よりミーティングの時間余っちゃったわね。万が一何かで話が盛り上がった時の為に余分に取っておいたんだけど」


 


困った様子で了子が声を漏らす。しかし、現に話す事はないのだから仕方ない。もう話が終わりになった事を確認した弾は先程構築したデッキを再び取り出して中身をもう一度見直す作業に入る。


 


「そう言えば弾君はまた新しいデッキを?」


「ああ。出来るなら誰かバトルしてもらいたい」


「では折角ですし、僕が相手しましょう」


「「?」」


 


弾のバトルの申し出。それを受けたのは響でも翼でもなく、表向きはアーティストである翼のマネージャーを務めている慎次だった。その予想外の申し出に響と翼も驚きながら彼を見る。


 


「ほぅ、君がいくのか?」


「ええ、前々から是非弾君とはやってみたいと思っていて」


 


彼もまた、弾に感化され、弾とのバトルを臨むようになったカードバトラーのようだ。無論、弾は挑まれたバトルを拒む訳が無い。席から立ち上がって慎次と向き合う。


 


「俺も、あんたと一度やってみたいと思ってたんだ」


「そう思って頂けるとはありがたいですね。では行きましょう」


 


お互いにデッキを持ち、バトルフィールドへ向かうその言葉を口にする。そして、二人の身体が光に包まれ、バトルフィールドへと転移していくのだった。


 


「「ゲートオープン!界放!!」」


 


 



 


 


「彼がバトルするなんて……」


「どんなデッキを使うんですか?」


「それは……まあ、見てもらった方が早いと思うわ。ただ……決して生半可な実力なんかじゃないということは言い切れる」


 


突然始まるバトル。今回弾が構築したのはどんなデッキなのか。そして翼のマネージャーとして、二課の職員として活動している慎次はどんなデッキを使い、どれほどの強さを持っているのか。ワクワクしながら、二人のバトルを映すモニターを他の皆と共に見るのだった。


 


「先行は貰いますね。スタートステップ、ドローステップ、メインステップ。風楯の守護者トビマルを召喚!」


 


【風楯の守護者トビマル:緑・スピリット


コスト3(軽減:緑2):「系統:爪鳥」


コア1:Lv1:BP2000


シンボル:緑】


 


先行を取ったのは慎次。彼は最初に守護者の名を持つ、風を纏った盾を持つ三本の鋭い爪を両方の翼から生やした鳥が現れる。胸に輝く三つの緑の宝石が光り輝き、その守りの風をフィールドに吹かせる。


 


「ターンエンドです」


「緑のデッキですか……」


「無難な一手ね」


 


守護者は自分のコスト3以下のすべてのスピリットを相手の効果破壊から守り、効果で破壊された該当スピリットを疲労状態でフィールドに残す事ができる。この力の前では、弾は行動に気を付けなければならない。


 


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、メインステップ。アクゥイラムをLv2で召喚」


 


【アクゥイラム:赤・スピリット


コスト3(軽減:赤1):「系統:空牙・星魂」:【激突】


コア2:Lv2:BP3000


シンボル:赤】


 


弾が呼び出したのは、小型の激突を持つ星魂スピリット。アルタイルの星を司る、ワシ座を司るスピリットであり、紅い角、鋼鉄のように硬い羽を持つ鷲が弾のフィールドに現れる。


 


「アタックステップ、アクゥイラムで風楯の守護者トビマルに激突!アクゥイラム、アタック時効果によりBP+2000!」


 


【アクゥイラム


BP3000+2000→5000】


 


激突の効果により、トビマルはそのアタックを強制的にブロックせざるを得なくなる。空へ上がり、一気に急降下してきたその突進を盾を構えて受け止めるが、その激突の威力に押し負ける形で盾ごと吹き飛ばされ、バトルフィールドの外壁に叩きつけられてそのまま緑色の光と共に姿を消す。


 


「ターンエンド」


(これは厳しくなったというべきか……)


 


弾のフィールドに立つアクゥイラム。このスピリットの存在により慎次は低コストのスピリットを並べづらくなったと言ってもいい。早急にこのスピリットを迎撃する手段を用意したいものだ。


 


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。ネクサス、巻き上がるダンガロ山脈を配置!」


 


【巻き上がるダンガロ山脈:緑・ネクサス


コスト3(軽減:緑1)


コア0:Lv1


シンボル:緑】


 


慎次の背後で巨大な暴風が吹き荒れる。真っ白に染め上げられたその暴風は、次第にその色を半透明色に変色させていき、その中にある、巨大な風によって宙に浮きあがった氷と岩で構築されたかのような山脈を映し出す。


 


「緑のネクサス……」


「続けて水忍ガモンをLv2で召喚!」


 


【水忍ガモン:緑・スピリット


コスト1(軽減:緑1):「系統:爪鳥」


コア2:Lv2:BP2000


シンボル:緑】


 


両足に水グモを取り付けた灰色の羽を持つアヒルが出現する。その首元には額当てが巻かれており、そこにある金属が光を反射する。


 


「バーストをセットしてアタックステップ!水忍ガモンでアタック!」


 


水忍ガモンは翼を広げると、水の無いバトルフィールドの地面をまるで水があるかのように滑っていき、弾へと迫る。疲労したアクゥイラムではブロック出来ず、さらに次のターンでは疲労している為アクゥイラムの激突の餌食にもならない。だが、このアタックは弾にとっても決して悪い話という訳ではない。


 


「ライフで受ける!」


 


水忍ガモンが空へと跳び上がり、弾へその嘴を叩きつける。先制攻撃を喰らい、弾のライフがまずは一つ砕ける。


 


「ターンエンドです」


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。リバイヴドローを使用」


 


デッキから2枚ドローする。または自分のトラッシュにあるスピリット1体を手札に戻す。赤のマジックを用い、弾はデッキから2枚のカードをドローする。


 


「バーストをセット。そしてアタックステップ!アクゥイラムでアタック!」


 


【アクゥイラム


BP3000+2000→5000】


 


「ライフで受ける!」


 


アクゥイラムの急降下が慎次に襲い掛かる。水忍ガモンは疲労している為、ライフでしか受けるしか選択肢がないが、今回はそれでいい。


 


「ターンエンド」


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。タテガミウルフをLv2で召喚!」


 


【タテガミウルフ:緑・スピリット


コスト3(軽減:緑2・極1):「系統:剣獣」:【分身:1】


コア2:Lv2:BP4000


シンボル:緑】


 


慎次が呼び出したのは、茶色の毛並みを持つ狼。単体での能力値は決して然程でもないように見えるが、それを抜きにしてもその幅広い活躍の出来る効果には目を見張る部分があると言っていい。


 


「おっ、来たか!」


「あのスピリットって……」


 


タテガミウルフ。そのスピリットを見た弦十朗はいよいよ慎次のデッキが動き始めてきた事を確信する。そんな彼の確信を裏付けるように、慎次は自分のデッキの戦い方を弾へと繰り出していく。


 


「タテガミウルフ、召喚時効果!分身:1!」


「!!」


 


慎次のデッキの上から1枚のカードが裏向きでフィールドへと出現する。分身。それは緑をメインとしたスピリットが所持している能力の一つであり、それぞれのスピリットが指定したタイミングでデッキの上のカードを裏向きのままフィールドに出し、それにリザーブからコアを置く事で分身スピリットとして生成され、この生成は召喚とは扱わない。さらに分身スピリットは合体できず、手札/デッキに戻るとき、トラッシュへと破棄されてしまうが、それ以外は緑のシンボルを持つBP3000のスピリットとして戦う事ができるのだ。


 


「この瞬間、ネクサス、巻き上がるダンガロ山脈のLv1・2効果を発揮!自分が分身スピリットを出すとき、リザーブからコアを置く代わりにボイドからコア1個を置いて分身スピリットを出すことができる!」


 


【分身スピリット(名前なし):緑・スピリット


コスト0:「系統:分身」


コア1:Lv1:P3000


シンボル:緑】


 


タテガミウルフが分身し、同じ個体がもう1体出現する。緑のシンボルを持っている為、十分にアタックでも活躍できることだろう。


 


「分身……成程、バトルではこうなるのか」


「まだまだ!水忍ガモン、Lv2・3効果!ターンに1回、自分の分身スピリットが出たとき、ボイドからコア1個をそのスピリットに置く!」


 


【分身スピリット


コア1→2】


 


「最後にネクサス、戦場に息づく命を配置!」


 


【戦場に息づく命:緑・ネクサス


コスト4(軽減:緑3)


コア0:Lv1


シンボル:緑】


 


巻き上がるダンガロ山脈の隣に明るい光が降り注ぐ。その先に生えているのは小さな一本のタンポポ。荒れた戦場の地で目覚めた小さな生命が誕生する。


 


「……ここは、敢えてターンエンドです」


 


弾の伏せたバーストが気になるのだろうか。ここでのアタックは悪手になると判断してそのままターンを終える。その選択は、決して間違っている訳では無く、弾はその勘の良さと読みに感心する。


 


(良い判断だ。だが……こちらはバーストがあっても仕掛けさせてもらう)


 


しかし、ここで様子を見るのが相手のバトル。守りを固めてくるならば、こちらは罠を踏みに行く事になると分かっていても一気に攻め込ませてもらおう。


 


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。イーズナをLv3で召喚」


 


【イーズナ:黄(赤)・スピリット


コスト1(軽減:黄1・赤1):「系統:戯狩」


コア3:Lv3:BP3000


シンボル:黄(赤)】


 


黄色のスピリットであり、赤のスピリットとしても扱う、山猫のような姿をしたスピリットが弾の場に現れる。黄と赤の二つの色の軽減を満たす事の出来る小さいながらも有能なスピリットだ。


 


「マジック、ブレイヴドローを使用。デッキからカードを2枚ドローする」


 


その後、デッキを上から3枚オープン。輝竜シャイン・ブレイザー、光龍騎神サジット・アポロドラゴン、魔導双神ジェミナイズの3枚が公開され、その内のブレイヴ、輝竜シャイン・ブレイザーを手札に加え、残りは光龍騎神サジット・アポロドラゴン、魔導双神ジェミナイズの順番でデッキの上に重ねて戻した。


 


「弾さんの手札にブレイヴが!」


「アタックステップ!アクゥイラムでアタック!」


 


【アクゥイラム


BP3000+2000→5000】


 


「そのアタック……待ってました!」


「!」


「バースト、トライアングルバースト!相手スピリットのアタック後に発動し、手札のコスト4以下のスピリット、もしくはアルティメットを召喚!ジョーニン・トンビを召喚!コアは3体のスピリットより1コアずつ確保し、Lv2!」


 


【水忍ガモン


コア2→1:Lv2→1:BP2000→1000】


 


【タテガミウルフ


コア2→1:Lv2→1:BP4000→3000】


 


【分身スピリット


コア2→1】


 


【ジョーニン・トンビ:緑・スピリット


コスト4(軽減:緑2):「系統:爪鳥」:【強化】【分身:1】


コア3:Lv2:BP6000


シンボル:緑】


 


顔に傷跡を刻んだ、忍びの装束を纏うトンビがトライアングルバースト発動によって出現した召喚陣より出現する。最後の手札のモンスターを用いて呼び出されたそのスピリットは、首に巻いた赤いマフラーを空に靡かせながらアクゥイラムの前に立ちはだかる。


 


「その激突はジョーニン・トンビでブロック!」


 


BP5000のアクゥイラムの突進をジョーニン・トンビが真正面から受け止める。そのまま自分の身体を回転させることでアクゥイラムを受け流し、生まれた隙を活かしジョーニン・トンビが素早くその体を貫き、アクゥイラムを破壊する。


 


「トライアングルバーストだったか。だが、これで隠されていた手は引きずり出すことができた」


「肉を斬り骨を断つ、ということでしょうか」


「さぁ、どうかな?ターンエンドだ」


「使ってるスピリット……まるで忍者みたいですね」


「忍者よ」


「へ?」


 


緑の分身をメインとしているのが慎次のデッキなのだろう。しかし、慎次の使用しているスピリットを見ているとどうも忍者を連想せざるを得ない。そんな響に対して翼から何の躊躇いも無く告げられた言葉。その言葉に思わず思考が固まる。


 


「えーと、それって」


「ああ、そう言えばまだ言っていなかったな。彼は忍者なんだ」


「アイエエエ!?」


「スタートステップ、コアステップ、戦場に息づく命の効果により、自分のコアステップ時にボイドからコアを自分のリザーブに置かないことで自分はデッキから1枚ドローする!ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ!ジョーニン・トンビのLvを下げて水忍ガモンをLv2へ!」


 


【ジョーニン・トンビ


コア3→2:Lv2→1:BP6000→4000】


 


【水忍ガモン


コア1→2:Lv1→2:BP1000→2000】


 


水忍ガモンのLvを上げることで再び分身スピリットを呼び出した際のサポートを行えるようにする。そして、


 


「現れろ、剣操りしシノビ!剣聖仙忍ジライヤ、召喚!不足コストはジョーニン・トンビより確保!」


 


【ジョーニン・トンビ


コア2→1】


 


【剣聖仙忍ジライヤ:緑・スピリット


コスト6(軽減:緑3):「系統:剣使・爪鳥」:【抜刀】


コア1:Lv1:BP5000


シンボル:緑】


 


バトルフィールドに出現する巨大な土煙。その中から巨大なガマガエルが出現し、その上に羽で器用に二本の刀を領邦の翼で握るフクロウが現れる。和服を纏い、黒いガマガエルの上で座禅を組むそのスピリットの口元には巻物が咥えられているのが見える。


 


「ジライヤ、召喚時効果!抜刀!!手札より翡翠の小太刀 日輪丸をノーコストで召喚!」


 


【翡翠の小太刀 日輪丸:緑・ブレイヴ


コスト4(軽減:緑2・白1):「系統:剣刃」


シンボル:緑】


 


自分の手札にある、抜刀を発揮したスピリットと合体可能な系統:「剣刃」を持つブレイヴをノーコストで召喚できる効果。翡翠の小太刀 日輪丸の合体条件はコスト4以上、よってコスト6の剣聖仙忍ジライヤの抜刀によって呼び出せる。


 


「来るか!」


「翡翠の小太刀 日輪丸を、ジョーニン・トンビに直接合体!!」


 


【ジョーニン・トンビ


コスト4+4→8


BP4000+3000→7000


シンボル:緑+緑】


 


ジョーニン・トンビの両足で持たれる小太刀。緑色の刀身を持つ、こんじきの柄と太陽の柄を持つ剣が握られ、そのBPとシンボルが上昇する。


 


「ジライヤの更なる召喚時効果!自分のスピリット1体の分身を発揮させる!ジョーニン・トンビの分身を発揮!巻き上がるダンガロ山脈により、ボイドからコアを1つ使って呼び出し、水忍ガモンの効果でボイドからコアを1個乗せる!」


 


【分身スピリット(名前なし)


コア2:Lv1:BP3000


シンボル:緑】


 


ジョーニン・トンビの姿を模した分身が慎次のフィールドに現れる。新たな分身スピリットを含む合計六体のスピリットを従え、弾へと襲い掛かる。


 


「アタックステップ!水忍ガモンの効果により、自分のアタックステップの間、自分の分身スピリット1体につき、系統:「爪鳥」を持つ自分のスピリットすべてをBP+1000!分身スピリットが2体いることでBP+2000!」


 


【水鳥ガモン


BP2000+1000×2→4000】


 


【ジョーニン・トンビ


BP4000+3000+1000×2→9000】


 


【剣聖仙忍ジライヤ


BP5000+1000×2→7000】


 


「合体スピリットでアタック!この瞬間、日輪丸の効果!合体しているこのスピリットの分身を発揮させる!分身スピリット、更に生成!!」


 


【分身スピリット(名前なし)


コア1:Lv1:BP3000


シンボル:緑】


 


ネクサスにより、事実上のコアブーストが行われる形で呼び出される分身スピリット。それにより、水忍ガモンの効果によって更に3体のスピリットはBPを増やす。


 


【水鳥ガモン


BP2000+1000×3→5000】


 


【ジョーニン・トンビ


BP4000+3000+1000×3→10000】


 


【剣聖仙忍ジライヤ


BP5000+1000×3→8000】


 


「さらに日輪丸と合体しているスピリットがアタックするとき、相手はバーストを発動できない!」


「バースト封じか!ライフで受ける!」


 


ジョーニン・トンビの太刀がダブルシンボルの一撃となって弾のライフを奪い取る。一気に二つのライフを奪われた弾は僅かに仰け反りながらも口元に獰猛な笑みを浮かべ、それを耐え切る。


 


「ここは、一気に!続け、分身スピリット!」


 


タテガミウルフの姿をした分身スピリットが弾へと迫る。そしてその一撃を前に、イーズナが身構えるが弾が取った選択肢は、


 


「フラッシュタイミング!マジック、シンフォニックバーストを使用!このアタックはライフで受ける!」


 


弾が発動したマジックにより、可視化された黄色い旋律がフィールドを巡る。その中を分身スピリットは突破し、弾のライフを砕く。それと同時に弾のバーストが起動し、炎が放たれる。


 


「この瞬間、ライフ減少によりバースト発動!救世神撃覇!!BP合計6000まで相手スピリットを好きなだけ破壊する!回復状態の分身スピリット2体を破壊!」


 


炎がジョーニン・トンビの姿をした分身スピリット達を焼き払う。そしてトラッシュへ送られることで初めて判明する、その裏向きとなっていたカードの正体を見て慎次は僅かに表情を曇らせる。


 


「ストームアタックと火忍ハシビロウが分身になっていたのか……ターンエンド」


「な、何とか凌ぎましたね……」


「でも、状況は圧倒的に不利。次のターンのドローカードは高コストの魔導双神ジェミナイズだと確定しているわ……でも、何で救世神撃覇の効果でドローしなかったのかしら」


「あ、確かに……」


 


救世神撃覇はバースト効果発揮後、さらにコストを支払う事でメイン効果でカードを1枚ドロー出来る。しかし弾は敢えてそれをしなかった。それを行えば次のターン、切り札である光龍騎神サジット・アポロドラゴンをドロー出来たというのに。


 


(コアは十分だった……とすると、デッキの上に射手座の十二宮Xレアを残しておきたかった理由があるということ……)


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。十二宮Xレアよ!双子座の力をここに!魔導双神ジェミナイズ、Lv2で召喚!」


 


【魔導双神ジェミナイズ:黄・スピリット


コスト7(軽減:黄4):「系統:光導・導魔」


コア2:Lv2:BP6000


シンボル:黄】


 


地面に双子座の黄色い光が出現する。地面を砕き、そこから白と黒、二つの人型をした無機質にすら思える細い腕を持つ奇妙な姿をした奇術師二人が背中合わせに繋がったような姿を持つスピリットが出現する。


 


「ふ、双子座の十二宮Xレア!」


「黄色の十二宮Xレア……あれをドローしたかったのはどういう狙いがあるのか……ふふ」


「イグア・バギーを召喚!」


 


【イグア・バギー:白(赤)・スピリット


コスト1(軽減:白1・赤1):「機獣・星魂」


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:白(赤)】


 


緑色のボディを持つバギーが弾の手によって呼び出される。イグア・バギーが召喚された事により、弾のフィールドに立つジェミナイズから金色の波動が放たれていく。


 


「ジェミナイズの効果、系統:「神星」/「光導」/「星魂」を持つ自分のスピリットが手札から召喚されたとき、デッキの上から1枚をオープンする。それがスピリットかブレイヴならば、ノーコストで召喚する」


「っ……この為に救世神撃覇でドローを行わなかった!?」


 


弾が呼び出したのは系統:星魂を持つイグア・バギー。そして弾のデッキトップは、ブレイヴドローによってあるカードで確定している。それこそが、


 


「さらに十二宮Xレア。射手座より来たれ、光龍騎神サジット・アポロドラゴン!Lv2で召喚!不足コストはイーズナより確保!」


 


【イーズナ


コア3→0】


 


【光龍騎神サジット・アポロドラゴン:赤・スピリット


コスト8(軽減:赤4):「系統:光導・神星」


コア3:Lv2:BP10000


シンボル:赤】


 


弾の手で小さな太陽が燃え上がる。そして空に赤い射手座の光が輝き、背後に出現したコロナの炎の波を駆け抜け、サジット・アポロドラゴンが炎を纏って出現し、その龍の翼を広げる。四本の足を持ち、弓を構えた光龍騎神は咆哮を上げて弾のフィールドに降臨する。


 


「じゅ、十二宮Xレアの連続召喚!!」


「アタックステップ!いけ、サジット・アポロドラゴン!剣聖仙忍ジライヤに指定アタック!」


 


サジット・アポロドラゴンが弓を構え、矢を放つ。それは遠くにいるジライヤに回避の隙を与えることなく一瞬で突き刺さり、その体が爆発して消える。光龍騎神サジット・アポロドラゴン、Lv1・2・3効果。系統:「光導」/「星魂」を持つ自分のスピリットすべては、アタックするとき相手のスピリット1体を指定してアタックすることができる。当然、その恩恵を受けられるのは射手座だけではない。


 


「続け、ジェミナイズ!水忍ガモンに指定アタック!」


 


ジェミナイズの両手に魔力の黄色い光が宿る。それを水忍ガモンへと叩き付け、その体を砕く。


 


「ターンエンド」


「十二宮Xレア同士のコンビネーションがここまで厄介だとは……」


 


ブロッカーこそ1体だが、これで弾は一気に盛り返したと言ってもいい。しかし、ここまで追い込んでおきながら負ける気は慎次には当然ない。


 


「さぁ、どう出てくる?」


「そうですね……ドローカード次第、としか言えませんね。スタートステップ、コアステップ、戦場に息づく命の効果でコアを増やさずにドロー。ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ!ナイトイーグルをLv3で召喚!」


 


【ナイトイーグル:緑・スピリット


コスト5(軽減:緑3):「軽減:爪鳥」:【分身:1】


コア5:Lv3:BP11000


シンボル:緑】


 


新たな旋風が巻き起こり、そこから赤い布を首に巻いた巨大なワシが出現する。緑色の羽を生やした茶色い翼を持ち、その緑の兜とグリーブがナイトイーグルの姿を更に目立たせる。


 


「ナイトイーグル、Lv2・3効果!自分の分身スピリットすべてのLv1BPを11000として扱う!」


 


【分身スピリット


BP3000→11000】


 


「ブレイヴ、翡翠の小太刀 日輪丸をジョーニン・トンビからナイトイーグルへ交換!!」


 


【ジョーニン・トンビ


コスト4


BP4000


シンボル:緑】


 


【ナイトイーグル


コスト5+4→9


BP11000+3000→14000


シンボル:緑+緑】


 


ジョーニン・トンビが足で握っていた小太刀がナイトイーグルへと投げ渡される。それを自分の足で掴み、その切っ先を弾へと向ける。


 


「バーストをセットしてアタックステップ!合体スピリットでアタック!ナイトイーグル、アタック時効果、そして日輪丸のアタック時効果により分身:1が二度発揮!巻き上がるダンガロ山脈の効果で分身スピリット用のコアはボイドより確保!BPは11000!!」


 


【分身スピリット


コア1:Lv1:BP11000


シンボル:緑】


 


【分身スピリット


コア1:Lv1:BP11000


シンボル:緑】


 


「BP10000越えのスピリットが一気に四体も!?」


「これは厳しいか?」


 


二体のナイトイーグルの姿をした分身スピリットが生成される。そのBPは11000。弾のスピリット達ではとても迎撃出来ない。


 


「イグア・バギーでブロック!」


 


ナイトイーグルの小太刀がイグア・バギーを両断する。そしてがら空きとなったフィールドへ慎次は更なるスピリットを送り込む。


 


「分身スピリットでアタック!」


「フラッシュタイミング!マジック、バーニングサンを使用!不足コストはサジット・アポロドラゴンのLvを下げて確保!」


 


【光龍騎神サジット・アポロドラゴン


コア3→2:Lv2→1:BP10000→6000】


 


「手札のブレイヴ、輝竜シャイン・ブレイザーをノーコストで召喚し、光龍騎神サジット・アポロドラゴンに合体!そして回復!」


 


【輝竜シャイン・ブレイザー:赤・ブレイヴ


コスト5(軽減:赤2・青2):「系統:星竜・機竜」


シンボル:赤】


 


【光龍騎神サジット・アポロドラゴン


コスト8+5→13


BP6000+5000→11000


シンボル:赤+赤】


 


白い機械の翼をもつドラゴンが呼び出され、サジット・アポロドラゴンと重なる。そしてドラゴンの翼が消滅し、その天馬の背中に白い新たな翼が出現する。


 


「さらに魔導双神ジェミナイズ、Lv2・3効果!自分がコストを支払ってマジックを使用した時、その効果発揮後、自分のマジックをノーコストで使用できる!マジック、バキュームシンボルを使用!このターンの間、相手スピリットすべては指定した色のシンボル1つを失う!緑を指定!」


「なっ!?」


 


これにより、慎次の場でアタックできる全てのスピリットは緑のシンボルを失いこのターンでは弾の最後のライフを奪い取れなくなる。


 


「合体スピリットでブロック!さらにフラッシュタイミング、マジック、リバイヴドローを使用!不足コストはジェミナイズと合体スピリットより確保!」


 


【魔導双神ジェミナイズ


コア2→0】


 


【光龍騎神サジット・アポロドラゴン


コア2→1】


 


「合体スピリットにBP+2000!」


 


【光龍騎神サジット・アポロドラゴン


BP6000+5000+2000→13000】


 


「迎え撃て、合体スピリット!」


 


ナイトイーグルの分身に照準を定め、サジット・アポロドラゴンの背中の翼が開かれ、その体から光輪が出現する。そこから放たれた金色の稲妻が分身スピリットを焼き尽くす。


 


「ターンエンド……!まさか、凌がれるとは……!」


「ここで決めさせてもらう!スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ!ブレイヴドローを使用!」


「ここで2枚目のブレイヴドロー……!」


 


デッキからカードを2枚ドローし、デッキの上から3枚オープン。戦神乙女ヴィエルジェ、砲凰竜フェニック・キャノン、トレス・ベルーガの3枚の内、トレス・ベルーガを手札に加え、残りは戦神乙女ヴィエルジェ、砲凰竜フェニック・キャノンの順番でデッキに戻す。


 


「ライト・ブレイドラをLv3で召喚!」


 


【ライト・ブレイドラ:赤・スピリット


コスト0:「系統:星竜」:【強化】


コア5:Lv3:BP3000


シンボル:赤】


 


ここで弾が呼び出したのは、銀色のブレイドラ。BPパフォーマンスは通常のブレイドラに劣るが、その代わりとも言える能力をこのカードは所持している。


 


「合体スピリットをLv3にアップ!」


 


【光龍騎神サジット・アポロドラゴン


コア1→5:Lv1→3:BP6000→13000+5000→18000】


 


「アタックステップ!合体スピリットでジョーニン・トンビに指定アタック!さらにサジット・アポロドラゴン、Lv3合体時効果により、このスピリットと合体しているブレイヴ1つにつき1体、BP10000以下のスピリットを破壊する!1強化追加でBP11000以下の相手スピリットを破壊する!分身スピリットを破壊!」


 


赤の強化はアルティメット以外のBP破壊効果の上限を+1000する。それにより、分身スピリットを対象に取れるようになったサジット・アポロドラゴンの弓から放たれた矢がジョーニン・トンビの姿をした分身スピリットを貫き、破壊する。


 


「輝竜シャイン・ブレイザー、合体時効果!BP8000以上の相手スピリットを破壊したとき、そのスピリット1体につき1つ、相手のライフのコアをリザーブに置く!」


「っ……!」


 


慎次のライフのコアが1つ砕け、残りライフは3つとなる。だが、まだサジット・アポロドラゴンのアタックは終了していない。光輪を出現させ、無数の稲妻がジョーニン・トンビを焼き尽くす。


 


「ジョーニン・トンビの破壊時効果により、分身:1が発揮される……!」


 


【分身スピリット


コア1:Lv1:BP11000


シンボル:緑】


 


破壊され、散っていくジョーニン・トンビ。それと入れ替わりになるかのように分身スピリットが出現する。


 


「フラッシュタイミング!マジック、バーニングサン!不足コストはライト・ブレイドラより確保!」


 


【ライト・ブレイドラ


コア5→4:Lv3→2:BP3000→2000】


 


「手札からトレス・ベルーガを召喚、そしてサジット・アポロドラゴンに合体!そして回復!」


 


【トレス・ベルーガ:青・ブレイヴ


コスト5(軽減:青2・赤2):「系統:異合」


シンボル:青】


 


【光龍騎神サジット・アポロドラゴン:赤(青)


コスト8+5+5→18


BP13000+5000+6000→24000


シンボル:赤+赤+青】


 


三つ首の青い獣が出現し、サジット・アポロドラゴンと重なる。金色の鎧がその体に纏われ、それと同時に弾のバトルフォームもまた黒く染まり、その顔は鬼のような形相へと変わっていく。


 


「で、出た!弾さんのダブル合体!!」


「本気の彼……しかも、デッキの上から2枚目のカードは系統:光導を持つカードが……!」


「成程……これはとんでもない力だ」


「トレス・ベルーガ、合体時効果!デッキからカードを6枚破棄しBP+6000!その中に系統:「光導」を持つ戦神乙女ヴィエルジェがあったので、ダブル合体スピリットは回復する!」


 


【光龍騎神サジット・アポロドラゴン


BP13000+5000+6000+6000→30000】


 


砲凰竜フェニック・キャノン、戦神乙女ヴィエルジェ、イグア・バギー、アクゥイラム、ダンデラビット2枚が破棄され、BPをさらに増やし、回復する。加えて、そのアタックが慎次へと襲い掛かる。


 


「ダブル合体スピリットで合体スピリットに指定アタック!Lv3合体時効果により、2体の分身スピリットを破壊!!」


 


再びその弓から放たれる2つの矢。それがジョーニン・トンビとナイトイーグル、それぞれ別の姿をした分身体を撃ち貫き、その体を破壊する。


 


「輝竜シャイン・ブレイザーの効果により、ライフを2つ貰う!」


「く……!」


 


残ったのは最後の1つのライフ。ライフ減少により慎次はバーストを発動する事は出来る。しかし、


 


(シャドーリーフでは最早敗北は免れない……)


 


彼の伏せたバーストは、この状況を打開するのに十分な力を秘めてはいなかった。だが、最後までこの勝負に向き合うのがカードバトラーとしての役目だ。戦意を失わず、ダブル合体スピリットへ向かうナイトイーグルを見る。弓を剣に変え、炎の刃を生み出してダブル合体スピリットが一閃を放つ。その一閃は、ナイトイーグルが防御の為に繰り出した小太刀を弾き飛ばし、さらにそこに向かってダブル合体スピリットは咆哮と共にその体を両断する。


 


「……弾君の勝ち、ですね。中々充実したバトルでした」


「ああ。俺もだ。このバトルが出来て、良かったと思うよ。輝竜シャイン・ブレイザーの効果だ!最後のライフを貰う!!」


 


ダブル合体スピリットの剣が振り上げられ、慎次へと迫る。最後のライフ、それを奪い取るその剣を、最後までその目に焼き付けるのだった。


 


 



 


 


「二人とも、良いバトルだったぞ」


「あはは……結局負けちゃいましたけどね。でも、中々面白いバトルでしたよ」


「弾さんも凄かったです!やっぱり強いなぁ……」


 


バトルフィールドから戻った二人を二課の面々が迎える。それを見ながら、了子は顎に手を当ててバトルの内容を考える。


 


(十二宮Xレアのその脅威さは単体が持つその力もだが、やっぱり十二宮Xレア同士のコンビネーション……とはいえ、それをこうも簡単に行うのは流石というべきかしら?)


 


微笑ましくも、温かい光景。それを見ながら、了子は考えるのを止めないのだった。


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