第10話 武槍鳥は太陽神龍と翔ける

「……」


 


カードを並べていく未来。明日、馬神弾に会うという事で、デッキ調整をしていた彼女。今、響は急に用事が入ったから少し出ていくと言い、二課の方へ向かっている。その為、部屋では一人だ。最も、そのおかげで彼女は全力でデッキ構築が出来るという面もあるのだが。


 


「馬神弾、か」


 


響が憧れるほどの高い実力を持つカードバトラー。カードに対する知識に優れており、響曰く、ぱっと見は素っ気無いが実は優しくて正義感に溢れておりバトルに強い。響もカードバトラーなのだから、強い人物に憧れたり慕ったりするその気持ちは未来にも理解出来る。


 


「響があれほど夢中になるんだもん、きっとバトルも強いんだろうなぁ……ふふ」


 


決して気があるとかそういう訳ではない。そんな事は分かっており、そこは安心しているが、やっぱり知りたかった。その弾という男の何処に響は惹かれたのかを。そして、そんな弾をもし自分が倒す事が出来たら響はどう思うのだろうか。


 


「きっと、褒めてくれるだろうなぁ……頑張らないと……ね」


 


純粋にその強いカードバトラーと戦い、勝利したい。その感情もあるだろう。だが、それと同時に彼女の心の中に響に良いところを見せたいという面があるのもまた、強く芽生えているのだった。


 


 



 


 


翌日。響と未来はそれぞれ私服の格好で弾に会う為にある場所に向かっていた。普通であれば男女の集まりと言えばそれなりの雰囲気のあるような場所が選ばれるのだが、弾本人の希望もあってカードショップでの待ち合わせになる事になった。


 


「……本当にバトスピの事しか考えてなさそうな人だね」


「まぁ、それが弾さんだからね……」


 


響も苦笑しながら言葉を返す。既に弾はカードショップに入っているのだろうか、待ち合わせ場所のカードショップの外にはいなかった。


 


「折角だし、その弾っていう人にバトル挑んでみようかな?」


「あ!私まだやったことないのに!」


「え、そうなの?」


 


意外そうに首を傾げる未来。そんな強い人物で、デッキも見てもらったりしているのに一回もバトルをした事がないというのか。そんな未来の疑問を悟りながら響は軽く笑いながら頬を掻く。


 


「あはは……いや、自分のデッキ見てもらった後にその人とやるのは抵抗あるし、それに弾さんも弾さんで色々と忙しそうだったからあんまりバトルする機会が無くって……」


「そうなんだ。でも、出来るなら私が先にバトルさせてもらうね?」


「うーん、仕方ないかなぁ……」


 


本当は自分もやりたくて仕方が無いのだが、未来と弾のバトルも見てみたい。それに、弾とバトルをすればきっと未来も弾の事を知る事が出来る筈だろう。そう思い、少しだけ名残惜しそうに未来の願いを承諾して共にカードショップの中に入る。バトルフィールドも設置されているカードショップはこの街にも幾つかあり、響達が訪れたこのカードショップもその中の一つである。中は寂れているとも言えず、かといって賑わっているとも言えない微妙な状態。そんな中、ある机の上で数枚のカードを無言で広げている弾の姿が二人の目に止まる。


 


「あ、弾さん」


「あの人が……?」


 


弾の服装はいつも響が良く見る格好。まぁそれが弾らしいと言えば弾らしくもあり、自分達と待ち合わせをしていながらこうしてカードを吟味しているのも弾らしい。


 


「……?響か」


 


二人で弾に近付いていくと、弾も二人の事に気付いたのか、カードから目を離し、数枚のカードを纏めながら響達に目を向ける。響の隣にいる見慣れない少女、彼女が未来なのだと気付く。


 


「彼女が?」


「はい!」


「そうか。俺は馬神弾、よろしくな」


「小日向未来です」


 


互いに自己紹介を終えた所で、未来は弾に対して印象は決して悪くはないという第一印象を受けていた。確かに響の言うとおり、声には熱は籠っておらず、冷めていて素っ気無いが、だからといってマイナスに繋がる印象ではない。しかし、これだけではあまりにも弾という人物像を明らかにするには不明確すぎる。


 


「響から少し聞いているよ。大切な友達だって」


「そ、そうですか……」


 


だが、弾という人間が悪い人物ではない、という事だけは何故かこの時点でも確信できた。そして、弾が纏っている物静かな雰囲気も、人間としてではなく、カードバトラーとして見るとそれは強者の証明になっているようにも感じられた。しかし、いざ目の前にするとバトルをしてほしいと切り出すタイミングを見つけられない。弾が無口なせいで自然なタイミングで言う事が出来ず、未来が困っていると、そこで助け舟を出してくれたのは響だった。


 


「弾さん、実は未来が弾さんとバトルがしたいって言っていたんですけど、大丈夫ですか?」


「そ、そうなんです!凄い強いって聞いたので、是非戦いたいなって思って!」


 


助け舟を出してくれた響に感謝しつつそれに便乗する形で弾にバトルを挑む未来。その挑戦を聞いた弾は、口元に笑みを浮かべながらそれを承諾する。


 


「勿論、俺も戦ってみたいと思っていた所だ」


「それじゃ、バトルフィールドへ行きましょう!」


 


バトルフィールドへ行く為のゲートに立つ。そして弾と未来が同時に声を上げる。


 


「「ゲートオープン!界放!!」」


 


人口のスタジアムのようなバトルフィールドへと移動する二人。弾はいつも通りの赤いラインが刻まれた金色のアーマーを纏い、対する未来はこの世界で一般流通している、赤い胸当てが見える、赤い宝石が印象的な白い篭手とグリーブを付けた肌に密着するタイプの黒いスーツを着用している。


 


「変わったバトルフォームですね?オーダーメイドですか?」


「そんなものさ。先行はもらう、スタートステップ」


(ふ、普通に使っちゃうんですね……ま、まぁシンフォギアと違って普通に使う分には見慣れないバトルフォームで済むんだろうけど……)


 


弾の格好に疑問を抱く未来。だが、これから起こるバトルでは些細な心配に過ぎないだろう。スタートステップを宣言し、先行を取った弾のターンからスタートする。


 


「ドローステップ、メインステップ。モルゲザウルスを召喚」


 


【モルゲザウルス:赤・スピリット


コスト3(軽減:赤2):「系統:地竜」


コア1:Lv1:BP2000


シンボル:赤】


 


鉄球の尻尾を持つ赤い皮膚の恐竜。その頭や身体には硬い兜や鎧の姿が見える。


 


「赤のスピリット……」


「ターンエンド」


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!メインステップ!ミブロック・ソルジャーを召喚!」


 


【ミブロック・ソルジャー:白・スピリット


コスト4(軽減:白2):「系統:機人」


コア1:Lv1:BP2000


シンボル:白】


 


袴などを着用した、青い和服を見に付けた大きな刀を握る機械の人間が未来のフィールドに出現する。ミブロック・ソルジャーが召喚された事で、その効果が起動し、弾のフィールドのモルゲザウルスのカードが弾かれるように浮き上がり、弾はそれを手札に握る。


 


「ミブロック・ソルジャー召喚時効果!相手のスピリット1体を手札に戻します!私はこれでターンエンド!」


(良いスピリットだ……しかし、ミブロックか)


 


ミブロック・ソルジャーをただのバウンス要因として投入しているとは考えにくい。となれば、彼女のデッキには確実にあのカード達が眠っている筈だろう、そう睨みながら弾は第三ターンを開始する。


 


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。モルゲザウルスを再び召喚、Lv2だ」


 


【モルゲザウルス


コア2:Lv2:BP3000


シンボル:赤】


 


「アタックステップ。いけ、モルゲザウルスでアタック!」


 


モルゲザウルスが地面を走り、尻尾を振り上げる。また、それと同時にモルゲザウルス自身の身体に赤いオーラが宿り、力を力が漲っていく。


 


「モルゲザウルス、アタック時効果によりBP+2000」


 


【モルゲザウルス


BP3000+2000→5000】


 


BP5000となり、ミブロック・ソルジャーではもう届かない所までその力を高められてしまった。しかし、最初からこのアタックをブロックするつもりは未来にはない。


 


「ライフで受ける!」


 


モルゲザウルスが地面を蹴り上げて空中へと飛び出し、その尻尾を未来を守るべく出現した赤い半透明の球体の形をしたばりあへと叩きつける。スピリットのアタックによって砕けた障壁、その時の衝撃が未来の着用するバトルフォームの胸当てに埋め込まれていた5つのコアの内の1つを砕く。


 


「ターンエンド」


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!ザニーガンをLv2で召喚!」


 


【ザニーガン:白(赤)・スピリット


コスト1(軽減:白1):「系統:武装・空魚」:【重装甲:赤】


コア3:Lv2:BP3000


シンボル:白(赤)】


 


赤い装甲を持つザリガニのような姿をした戦闘機、ザニーガンが現れる。両腕の鋏となる部分にはレーザーの発射口が取り付けられており、その腹の部分からは二門の細長い砲台が姿を見せている。


 


(ザニーガンか)


 


自身を色とシンボルを赤としても扱い、さらにLv2からは重装甲:赤を得る、小さいながらも強力なスピリット。特に赤のカードを投入している弾にとって重装甲は中々厄介な存在と言えるだろう。


 


「そしてネクサス、獣の氷窟をLv2で配置!」


 


【獣の氷窟:白・ネクサス


コスト4(軽減:白2)


コア1:Lv2


シンボル:白】


 


未来の背後に出現する巨大な氷の洞窟。獣が住んでいた痕跡が見えるその洞窟が、スピリット達を縛る壁となる。


 


「そしてバーストをセット!ターンエンド!」


 


バーストを場に出し、ネクサスによって自身もダメージを与える事が出来ない為ターンを終える。ネクサス、獣の氷窟にBP4000以下のスピリットのアタックではお互いのライフは減らなくなる効果があるためだ。


 


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。森林のセッコーキジを召喚」


 


【森林のセッコーキジ:緑(赤)・スピリット


コスト1(軽減:緑1・赤1):「系統:爪鳥」


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:緑(赤)】


 


弾の場に緑のシンボルが出現し、それが砕けて中から緑色の羽を持つ、甲冑を纏ったキジが現れる。その腰と背中には刀が一本ずつ帯刀してある様子が確認出来る。


 


「……緑のスピリット?」


「マジック、ブレイヴドローを使用」


 


自身の色とシンボルを赤としても扱う森林のセッコーキジの効果により、コストは2軽減されている。ブレイヴドローの効果により弾はデッキからカードを2枚ドロー。その後、デッキの上の3枚、太陽龍ジーク・アポロドラゴン、ブレイドラ、刃狼ベオ・ウルフがオープンされ、その中のブレイヴ、刃狼ベオ・ウルフが手札に加えられる。その後、残った2枚はブレイドラ、太陽龍ジーク・アポロドラゴンの順番でデッキの上に戻した。ここで、未来のネクサス、獣の氷窟Lv2の効果が発揮され、相手のスピリット、マジックの効果で相手の手札が増えた事でその枚数分カードをドローする。弾の手札は3枚増えたため、未来もまたデッキからカードを3枚ドローした。


 


「ブレイヴドローを使ったのは敢えてですか?」


「ああ。おかげで、俺のデッキも回ってきたようだ」


 


弾の言葉に偽りはない。次の弾のデッキトップのカードは太陽龍ジーク・アポロドラゴン。弾の持つ強力なスピリットであり、それが控えているという情報が未来に対して小さくない揺さ振りを与える。


 


「いくぞ、アタックステップ!モルゲザウルスでアタック!」


 


【モルゲザウルス


BP3000+2000→5000】


 


モルゲザウルスのBPが5000へと増えた事により、獣の氷窟の妨害ラインを突破する。再び振り上げられた尻尾の一撃を前に未来が取った選択肢は、


 


「ライフで受ける!でも、ライフ減少によりバースト発動!」


 


自身のライフを捧げる事。ライフが砕かれた次の瞬間、未来は自身の伏せたバーストを起動させる。バースト起動と同時にフィールドに吹き荒れる激しい吹雪。それと同時に未来のライフに4つ目の光が戻る。


 


「!」


「絶甲氷盾!ボイドからコアを1つライフに置きます!これで、私のライフは4つに回復!」


「やるね……俺はこれでターンエンド」


「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!ザニーガンと獣の氷窟をLv1にダウン!」


 


【ザニーガン


コア3→1:Lv2→1:BP3000→1000】


 


【獣の氷窟


コア1→0:Lv2→1】


 


(……来る……!)


「未来、もしかしてそのまま召喚するつもりなのかな?」


 


バトルフィールドの外、カードショップの席に腰掛けてモニターに映る弾と未来のバトルを見ながら響は呟く。バトルフィールドでのバトルとあって二人は店にいる客達からの注目の的だ。


 


「いきます、弾さん!」


「こい!君のカードを見せてみろ!」


「来て、私の選んだこのデッキの力!氷の覇王ミブロック・バラガン、Lv2で召喚!!」


 


【氷の覇王ミブロック・バラガン:白・スピリット


コスト7(軽減:白4):「覇皇・機人」


コア3:Lv2:BP9000


シンボル:白】


 


氷のように冷たい鋼鉄の鎧。翼のように大きく広げられた鋼鉄の羽に、左肩から盾のように巨大な鋼鉄の武装が取り付けられており、その鋼鉄の和服が静かに靡く。その右手には紅く光るレーザーの刃を出現させた刀が握られている。


 


「Xレアか!」


「バーストをセット!そしてアタックステップ!ミブロック・バラガンでアタック!」


 


ミブロック・バラガンが地を蹴って空中へと飛び出し、弾へ向かう。疲労して項垂れるモルゲザウルスが首を上げ、森林のセッコーキジが翼を背中の刀の持ち手にかける。だが、弾はブロックなど宣言しない。


 


「そのアタック、ライフで受ける!」


 


ミブロック・バラガンの刀が弾のライフを奪い取る。衝撃や痛みは大きく緩和されていても、Xレアのアタックである事に変わりはない。その重みを確かめながら弾は笑みを零す。


 


「いいアタックだ!」


「……?ターンエンド!」


 


少しだけその笑みに意味深な感覚を感じ取ったが、すぐに頭を振りかぶり、ターンを渡す。恐らく弾は次のターンで太陽龍を呼び出す。その為の準備としてミブロック・バラガンを呼び出したのだ。今の自分ならば凌げる。そう信じて。


 


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。ネコジャラン2体を召喚」


 


【ネコジャラン:緑(青)・スピリット


コスト2(軽減:緑1・赤1・青1):「系統:遊精」


コア1:Lv1:BP2000


シンボル:緑(青)】


 


【ネコジャラン


コア1:Lv1:BP2000


シンボル:緑(青)】


 


弾の場に現れる、緑色の艶やかな毛並みを持つ猫が2匹現れる。


 


(あれって司令も使っていた……弾さんもデッキに入れてみたんだ)


 


自身がLv1の時に青、Lv2の時に赤のスピリットとして扱う事の出来る強力な疑似三色シンボルスピリット、それを並べ始めた様子を見て未来もまた弾が太陽龍を呼び出す準備をしているのだと理解する。そして、


 


「太陽よ、炎をまといて龍となれ!太陽龍ジーク・アポロドラゴン召喚!」


 


【太陽龍ジーク・アポロドラゴン:赤・スピリット


コスト6(赤2・青2):「神星・星竜」


コア1:Lv1:BP4000


シンボル:赤】


 


背後で炎が燃える。そしてバトルフィールドの外から赤き身体を持つ、身体中に真っ白な龍エネルギーを秘めた球体を埋め込んだ龍が一歩、また一歩と静かに、だがその風格を感じさせながら内側へと入ってくる。弾の前で立ち上がった太陽龍は、氷の覇王を前に咆哮を上げる。


 


「これが、弾さんの……!」


「刃狼ベオ・ウルフを召喚!不足コストはモルゲザウルスのLvを下げて確保!」


 


【モルゲザウルス


コア2→1:Lv2→1:BP3000→2000】


 


【刃狼ベオ・ウルフ:緑・ブレイヴ


コスト5(軽減:緑2・赤2):「系統:剣獣・星魂」


シンボル:緑】


 


緑色の武士の鎧を纏った、両腕から後ろの方に刃が伸びる剣を握る狼が出現する。弾の使用する新たなブレイヴは緑。その力を最大限に活かすのは、当然太陽龍だ。


 


「ベオ・ウルフをジーク・アポロドラゴンに直接合体!」


 


【太陽龍ジーク・アポロドラゴン:赤+緑


コスト6+5→11


BP4000+3000→7000


シンボル:赤+緑】


 


ベオ・ウルフの狼の身体が消滅し、二本の剣のみが残る。そしてその二本の剣を太陽龍がその両腕に握り、合体が完了した瞬間、その身体の球体は緑色に強く光り輝き、弾のアーマーの赤いラインもまた緑色にその輝きを変える。


 


「おお!今日の弾さんは緑色!」


「アタックステップ!」


「っ、この瞬間、ミブロック・バラガンの効果!ミブロック・バラガンを手札に戻し、モルゲザウルスとネコジャラン2体を手札に戻す!」


 


ミブロック・バラガンが白い光と共に姿を消す。それと同時にモルゲザウルスとネコジャラン2体の姿が無数の小さな結晶に包まれる形で変化して消え、弾のフィールドから3枚のカードが弾かれるように空中に飛ばされる。


 


「だが、合体スピリットまでは戻せないみたいだな」


「はい、合体されたせいで残念ながら」


 


少しだけつまらなそうに頬を膨らませながら未来が言葉を返す。氷の覇王ミブロック・バラガン、Lv2・3アタック時効果。相手のアタックステップ開始時、自分のスピリット1体を手札に戻すことでそのスピリットのコストまで相手のスピリットを好きなだけ手札に戻す事ができる。今回未来が戻したのはコスト7のミブロック・バラガン、よって弾の場にあるコスト3のモルゲザウルスとコスト2のネコジャラン2体、合計コスト7分のスピリットを手札に戻す事ができたのだ。


 


「駆けろ、合体スピリット!ザニーガンに指定アタック!」


 


太陽龍が二本の刃を手にザニーガンへと走る。一振りでザニーガンを仕留め、爆発によって散っていく機体。そを確認することなく太陽龍は未来の目の前へと飛び出す。


 


「!バースト、幻影氷結晶!自分のスピリットが相手によって破壊されたとき、バースト発動時に破壊されたスピリットをトラッシュから手札に戻す!ザニーガンを手札に!」


「だが、ベオ・ウルフの合体時効果も発動されているぞ!BPを比べ、相手のスピリットだけを破壊したとき、相手のライフのコア2個をリザーブに置く!」


 


未来に剣が叩き付けられ、一気にライフを2つ奪い取る。残っていたライフは4つから2つになり、大きなダメージを受ける事となる。


 


「っ……!」


「ターンエンド」


 


太陽龍が持つ指定アタックでベオ・ウルフの効果を発揮する。単純なようにも見えるが強力な一撃だ。


 


「え、えげつないなぁ弾さん……」


「……やっぱり、強いですね……」


 


弾のスピリット達を一斉に手札に戻す事は出来た。しかし、全て低コストであり出そうと思えばすぐにでも出す事が出来てしまうだろう。自分のバウンスも結局弾の展開を少しだけ遅れさせただけに過ぎないのだ。


 


「……でも、響が夢中になるのも分かる気がします」


 


自分が全力で挑んでも弾はその上を行っている。そんな感覚に陥る程に強い。今まで戦った事のない、見たことも無い遥か先の境地に辿り着いているこの青年とのバトルは、未来の心も自然に躍ってしまう。バトルの前に考えていたことから何まで、全部小さな事だったのだと悟らされてしまうほどに。しかし、それでも勝ちたい。その想いだけが消える事は無かった。


 


「けど、そんな人だからこそ……私は勝ちたいです!」


「ならば叩きつけろ!君の力を!俺はそれを真正面から叩き潰す!」


「いいなぁ……二人とも凄く楽しそう」


 


見ているこっちが羨ましくなってしまう。それほどまで弾の表情は充実しているかのように熱く燃えたぎる闘志を浮かべており、未来もまた、笑顔をこのバトルで見せていた。


 


「言いましたね!スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!ザニーガンをLv1、ミブロック・パトロールをLv2で召喚!」


 


【ザニーガン


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:白(赤)】


 


【ミブロック・パトロール:白・スピリット


コスト3(軽減:1):「系統:機人」


コア2:Lv2:BP5000


シンボル:白】


 


再びザニーガン、そして腰に刀を指した、青と銀を基調とした鋼の和服を纏った機人が現れる。鋼鉄の髷を持つ、赤い二つのレンズの目を光らせ、ミブロック・パトロールはミブロック・ソルジャーと共に並ぶ。


 


「再び氷の覇王ミブロック・バラガンを召喚!ザニーガンからコアを移動させてLv3!」


 


【ザニーガン


コア1→0】


 


【氷の覇王ミブロック・バラガン


コア4:Lv3:BP12000


シンボル:白】


 


「バーストをセットして、アタックステップ!ミブロック・パトロールでアタック!」


「ライフで受ける!」


 


ミブロック・パトロールが腰から刀を抜き、弾へと叩きつける。ライフを砕く衝撃を全身で味わいながら弾は未来の次のアタックを受け止める為に身構える。


 


「続けて、ミブロック・バラガンでアタック!」


「こちらもライフで受ける!」


 


ミブロック・バラガンが振り抜いた光の一閃が弾のライフを更に奪い取る。お互いにライフは残り2つ。勝負も佳境に近付いてきた事を感じ取り、弾は不敵な笑みを浮かべていく。


 


「ターンエンド!」


「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。モルゲザウルス2体をLv2で召喚」


 


【モルゲザウルス


コア2:Lv2:BP3000】


 


【モルゲザウルス


コア2:Lv2:BP3000】


 


「森林のセッコーキジとリザーブのコアを全て合体スピリットに移動し、Lv3にアップ!」


 


【森林のセッコーキジ


コア1→0】


 


【太陽龍ジーク・アポロドラゴン


コア1→5:Lv1→3:BP4000→9000+5000→14000】


 


森林のセッコーキジが消滅し、太陽龍が最大Lvへと上昇する。太陽龍のアタックでBPを比べて未来のスピリットが破壊されればベオ・ウルフの効果で2のダメージを受けて敗北。ブロックしなくてもダブルシンボルで弾の勝利。仮に何ならかの方法で太陽龍の攻撃を防げても、太陽龍の効果でブロッカーを消せば自身のアタック時効果でBP5000になれるモルゲザウルス2体がライフを奪いに行ける。


 


(このアタックステップが、執念場……!)


「アタックステップ!ミブロック・バラガン、Lv2・3効果!相手のアタックステップ開始時、自分のスピリット1体を手札に戻すことでコスト合計まで相手のスピリットを好きなだけ手札に戻す!ミブロック・ソルジャーを手札に戻し、コスト3のモルゲザウルスを手札に戻す!」


 


ミブロック・ソルジャーとモルゲザウルスが同時に姿を消す。これでモルゲザウルス1体のアタックでライフは奪い取れなくなる。だが、肝心の合体スピリットはそのまま。弾はここは指定アタックを行わずにアタックを仕掛ける。


 


「いけ、合体スピリット!ジーク・アポロドラゴン、合体時効果によりBP9000以下の相手スピリットを破壊する!ミブロック・パトロールを破壊!」


 


太陽龍の口から放たれた炎がミブロック・パトロールを燃やし尽くす。大爆発を引き起こし、その煙を払い除けて太陽龍の姿が未来の目の前に現れる。だが、それを見た未来は臆することなく伏せられたバーストを起動させる。


 


「相手スピリットのアタックによりバースト発動、高速三段突!!このターンの間、自分のスピリットすべてをBP+3000!」


 


【氷の覇王ミブロック・バラガン


BP12000+3000→15000】


 


「そしてフラッシュ効果を発揮!不足コストはミブロック・バラガンのLvを下げて確保!」


 


【氷の覇王ミブロック・バラガン


コア4→3:Lv3→2:BP12000→9000+3000→12000】


 


「相手スピリット1体をデッキの下に戻す!合体スピリットをデッキの下に戻す!!」


「!」


 


未来の前方に出現した光の刀。それが太陽龍の行く手を阻み、その一瞬の時間の間に素早く未来の前へと割り込んだミブロック・バラガンはその刀を握り、一段目の突きで太陽龍の体勢を崩し、二段目の突きで両手に握られていた刃をその手から同時に離れさせ、最後の一突きで太陽龍を吹き飛ばし、光と共に消滅させる。


 


「白のバーストか!ブレイヴは分離させる!」


 


【刃狼ベオ・ウルフ


コア1:Lv1:BP3000


シンボル:緑】


 


「まだですよ!ミブロック・バラガンの効果で、自分のバースト発動後、自分のバーストをセットしていないとき、自分の手札にあるバースト効果を持つカード1枚をセットできる!新たにバーストセット!」


 


未来の場に再びバーストカードが出現する。そして合体を解除され、狼の姿に戻ったベオ・ウルフは両腕に逆手に持った剣を振り上げ、アタックを続行。そのまま未来へと攻撃を仕掛ける。だが、未来のライフはネクサス、獣の氷窟の効果によって削る事は出来ない。


 


「やはり、凌いでみせたか」


「……私がこの攻撃を防ぐって思っていたんですか?」


「ああ。バトルを通じて、君の実力を知った。そして君自身が、とても友達思いなのも」


「……え?」


 


そんな事、一切言っていないのに何故理解出来るのか。思わず目を丸くし、弾の顔を見る。しかし弾は特におかしな事は何も言っていないと言わんばかりに堂々と自分の言葉を相手へとぶつけていく。


 


「俺の事、あんまり信用していない感じだったからな。響の事が心配だったんだろ?」


「あー……まぁ、否定はしないんですけど……でも、もういいんです」


「ふっ……そうか」


 


だが、自分達はバトスピで対話し、お互いを知った。相手の事を知り、純粋にバトルに打ち込める人物であると。だからこそ、未来もまた、このバトルに全力で臨み、弾を超えようとしている。そんな彼女の勝利へ向かうその強い意志を確かに感じ取りながら、弾は太陽龍を失った自分の手札とフィールドを一目見る。そして、


 


「モルゲザウルスでアタック!アタック時効果により、BP+2000!」


 


【モルゲザウルス


BP3000+2000→5000】


 


「フラッシュタイミング!次元断を使用!不足コストは、ミブロック・バラガンより確保!よってLv1へ!」


 


【氷の覇王ミブロック・バラガン


コア3→1:Lv2→1:BP9000→6000+3000→9000】


 


残したとしても次のターン、ミブロック・ソルジャーを呼び出してバウンスされると見越してのアタック。しかし、それに対して発動された次元断の力がモルゲザウルスへと襲い掛かる。


 


「このバトルで自分のライフを減らした相手スピリット1体を破壊!このアタックはライフで受ける!!」


 


未来のライフがモルゲザウルスの叩き付けた尻尾の鉄球の一撃によって砕かれる。それと同時にモルゲザウルスの背後に次元の隙間が開かれ、そこから放たれた斬撃がモルゲザウルスを吹き飛ばして破壊する。さらに、


 


「ライフ減少によりバースト、絶甲氷盾!ライフを1つ回復!!」


 


未来のライフが1から2へと回復する。これにより、再びデッキにまだ眠るライフ減少をトリガーとするバーストカードを起動する為のライフコストを賄う事が出来た。


 


「そうだ、もっと力を見せてみろ!ターンエンド!!」


「はい!スタートステップ!コアステップ、ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!ミブロック・ソルジャーをLv2で召喚!」


 


【ミブロック・ソルジャー


コア3:Lv2:BP4000


シンボル:白】


 


「ミブロック・ソルジャー召喚時効果で刃狼ベオ・ウルフを手札に戻します!!」


 


ミブロック・ソルジャーが剣を振るうのと同時に光がベオ・ウルフを襲い、その身体を手札へと戻していく。新たに増えた手札を握りながら、相手の場に並ぶ2体のスピリットを見る。


 


「ミブロック・バラガンをLv3に、獣の氷窟をLv2にアップ!」


 


【氷の覇王ミブロック・バラガン


コア1→4:Lv1→3:BP6000→12000】


 


【獣の氷窟


コア0→1:Lv1→2】


 


「バーストをセットしアタックステップ!」


 


最後の準備として手札からバーストを繰り出す。このバーストが、ミブロック・ソルジャーの第二の効果を起動させる鍵となる。


 


「ミブロック・ソルジャー、Lv2効果!お互いのアタックステップの間、自分がバーストをセットしている間、カード名にミブロックと入っている自分のスピリットすべてのBPを+2000!」


 


【ミブロック・ソルジャー


BP4000+2000→6000】


 


【氷の覇王ミブロック・バラガン


BP12000→14000】


 


手札から伏せた最後の絶甲氷盾。ライフ2でこれを伏せるのは多少勇気が必要になったが、太陽龍を除去した今ならば早々ダブルシンボルも出てこない。それに、これでミブロック・ソルジャーもライフを狙いにいける。勝利を狙うならば、ここで仕掛けるしかない。


 


「これで、未来にはBP5000以上のスピリットが2体……弾さんは、ブロッカー0!いける、いけるよ、未来!!」


 


その光景を見ながら、ぐっと拳を握り、応援する響。彼女の声は聞こえてこないが、未来は響が自分の背中を押してくれているような感覚を感じ取り、口元に笑みを浮かべてミブロック・ソルジャーのカードに手を触れる。


 


「ミブロック・ソルジャーでアタック!!」


 


ミブロック・ソルジャーが刀を抜き、弾へと襲い掛かる。ここでライフを奪えれば勝利に大きく近付く。そしてその攻撃を前に弾は手札から1枚のマジックを取り出す。


 


「フラッシュタイミング!」


「!!」


「マジック、サンダーブランチを使用!」


「黄色のマジック!?」


 


天空から雷が降り注ぎ、ミブロック・ソルジャーとミブロック・バラガンの身体を電流が駆け巡っていく。そして二体は身体を痺れさせたせいで力が抜けたのか、地面に膝を付ける。


 


「このアタックはライフで受ける!」


 


それでも、ミブロック・ソルジャーは自分の身体を無理矢理立たせると、弾へと刀を叩きつける。その瞬間、未来の背後のネクサスが光り輝き、ミブロック・ソルジャーの身体を無理矢理自分のフィールドへと寒風で引き戻していく。だが、弾のライフが削られる事は無かった。


 


「そんな……」


 


サンダーブランチ。メインステップで使えないこのマジックは、このターンの間、合体していない、または転召を持たない相手のスピリットすべてのLv1/Lv2/Lv3/BPを2000として扱う効果を適用させる。この効果によりミブロック・ソルジャーとミブロック・バラガンはBPを2000で固定されてしまい、そこにミブロック・ソルジャーの持つBP+2000の効果を加えても合計BPは4000。それによって未来は自分のネクサス、獣の氷窟が持つBP4000以下のスピリットのアタックではお互いのライフは減らない効果が適用され、弾のライフを減らせなかったのだ。


 


「ま、まさか未来のネクサスを逆に利用するなんて……」


「た、ターンエンドです」


 


敵の力を利用して自分を守る。まさかこんな一手で凌いでくるとは流石に予想外だった。響と未来が驚く中、弾は自分の手札にまだ来ないあのカードを思い浮かべる。この状況を覆すには、あのカードを手札にドローするしかない。しかし、弾は引けなかった場合の事など考えない。そんな事はその時になって考える。


 


「危なかったよ。でも……次は俺の番だ。いくぞ、スタートステップ、コアステップ、ドローステップ」


 


静かに、だが確信を持ってデッキから一枚をドローする。そのカードを静かに、だが素早くめくった弾は、そこに待ち望んでいたXレアのカードがあることを見て、僅かに雰囲気を変える。


 


「リフレッシュステップ、メインステップ。ブレイドラ、ネコジャラン2体を召喚。ネコジャラン2体はLv2で召喚する」


 


【ブレイドラ:赤・スピリット


コスト0:「系統:翼竜」


コア1:Lv1:BP1000


シンボル:赤】


 


【ネコジャラン:緑(赤)


コア3:Lv2:BP4000


シンボル:緑(赤)】


 


【ネコジャラン:緑(赤)


コア3:Lv2:BP4000


シンボル:緑(赤)】


 


剣の翼を生やした小さなドラゴン、ブレイドラが自身の色とシンボルを赤へ変えた二体のネコジャランと共に現れる。そして、


 


「駆け上がれ!神の名を持つ赤き龍!太陽神龍ライジング・アポロドラゴン召喚!コアは、二体のネコジャランのLvを下げることで確保!」


 


【ネコジャラン:緑(赤→青)


コア3→1:Lv2→1:BP4000→2000


シンボル:緑(赤→青)】


 


【ネコジャラン:緑(赤→青)


コア3→1:Lv2→1:BP4000→2000


シンボル:緑(赤→青)】


 


【太陽神龍ライジング・アポロドラゴン:赤・スピリット


コスト7(軽減:赤3):「系統:神星・星竜」


コア4:Lv2:BP9000


シンボル:赤】


 


弾の目の前。フィールドの上空で真っ赤に燃える太陽が出現し、大地を熱していく。その熱は地中の中に眠るその龍を呼び起こし、激しい風圧が吹き荒れると共に地面が砕け散る。砕けた地面から出現する、太陽のように赤く燃える紅蓮の身体。膝、両肩、胸、頭に埋め込まれた光り輝く翠色の宝石。金色の装甲が全身を包み、空へと金色の翼を広げ、太陽神龍は太陽の炎を払い、降臨する。


 


「に、二体目!?もう手札にいたって……!」


「さらにブレイヴ、武槍鳥スピニード・ハヤトを召喚!不足コストはブレイドラ及びネコジャラン1体より確保!」


 


【ブレイドラ


コア1→0】


 


【ネコジャラン


コア1→0】


 


【武槍鳥スピニード・ハヤト:緑・ブレイヴ


コスト5(軽減:緑2・赤2):「系統:爪鳥」


コア1:Lv1:BP5000


シンボル:緑】


 


茶色い翼をもつ、巨大な鷲のような鳥が出現する。その翼には翠色の装飾に包まれた爪が姿を見せており、そこからそれぞれ一本ずつの刃が確認出来る。その顔や頭は翠色の兜で覆われており、尾は無数に枝分かれしておりそのすべてに剣、槍、刀、刺す叉などの武器が姿を見せる。


 


「太陽神龍ライジング・アポロドラゴンに武槍鳥スピニード・ハヤトを合体!!」


 


【太陽神龍ライジング・アポロドラゴン:赤(緑)


コスト7+5→12


コア4→5:Lv2→3:BP9000→11000+5000→16000


シンボル:赤+緑】


 


スピニード・ハヤトが空へ舞い上がる。その下から翼を広げ、飛翔した太陽神龍がスピニード・ハヤトと並列になるように飛び、太陽神龍の背中とスピニード・ハヤトの身体が重なった瞬間、フィールド全域を染め上げる激しい緑の閃光が溢れる。太陽神龍の金色の装甲にはさらに緑の装甲が追加され、胸、両肩、両腕を新たに緑の装甲が覆っていく。その身体は茶色に近い赤色へと染まり、身体の緑の宝石は全てが明るい緑色に光り輝く。その翼はスピニード・ハヤトの翼がドラゴンの翼のサイズにまで巨大化したものとなり、無数の武器の尾羽が空へと向けられる。合体を完了し、大地に着地した太陽神龍は、弾のバトルフォームのラインが再び緑色に輝くのと同時に咆哮を張り上げる。


 


「太陽神龍と緑の合体!」


「アタックステップ!」


「ミブロック・バラガン、Lv2・3効果!ミブロック・ソルジャーを手札に戻してネコジャランを手札に戻します!」


 


ミブロック・ソルジャーが消え、今度はネコジャランが戻る。だが、コスト12となった太陽神龍にとっては最早関係のない話だ。さらに、ミブロック・バラガンの効果が発揮されるそのタイミングは、スピニード・ハヤトの持つ効果を起動させるタイミングでもある。


 


「こちらもいくぞ!武槍鳥スピニード・ハヤト、合体時効果により白を指定!飛翔しろ、合体スピリット!氷の覇王ミブロック・バラガンを指定アタック!!」


 


太陽神龍の効果により、自分の系統:星竜を持つスピリットは相手スピリット1体に指定アタックが出来る。その効果によって指定されたミブロック・バラガンは赤く燃えるように光る刀を手に太陽神龍へと真正面からぶつかり合う。叩きつけられたその拳を刀で受け止めて受け流し、体勢を崩したライジング・アポロドラゴンの背中へと斬りかかる。しかし、スピニード・ハヤトの尾羽である無数の武器がその身体に絡みつく事で身動きを封じ、太陽神龍はそのまま天高く飛翔する。


 


空中から地面へ叩きつけようとするライジング・アポロドラゴンの行動を察知したミブロック・バラガンは器用に片手だけを動かして尾羽を斬り落とし、地面に落ちる事で難を逃れる。だが、ミブロック・バラガンが身体を起こした瞬間には太陽神龍は炎を纏い、落下してくる準備を整えていた。防御の為に構える刀とぶつかり合い、激しい激突音が鳴り響く。そしてその結果は、刀を砕かれ、その身体をミブロック・バラガンが焼き尽くされる事によって勝敗を決する事となった。


 


「ミブロック・バラガン!!」


「ライジング・アポロドラゴン、Lv3合体時効果!BPを比べ、相手のスピリットだけを破壊した時、相手のスピリット/ブレイヴ/ネクサス、どれか1つを破壊する!獣の氷窟を破壊!」


 


太陽神龍の口から放たれた劫火が未来の背後の洞窟を燃やし尽くし、全ての氷を溶かし尽くす。スピリットもネクサスも全て失い、残ったのはライフ減少で起動する絶甲氷盾のみ。


 


「スピニード・ハヤトの効果によりライジング・アポロドラゴンは回復する!」


「!?」


 


武槍鳥スピニード・ハヤト、合体時効果。自分のアタックステップ開始時に色を一色指定し、このアタックステップの間、このスピリットは指定した色のスピリットにブロックされたとき回復する。今回、弾が指定したのは白。指定アタックにより、白のミブロック・バラガンが強制的にブロックされた事でスピニード・ハヤトの効果が適用され、ライジング・アポロドラゴンは回復したのだ。


 


「これで最後だ!合体アタック!!」


 


回復した太陽神龍が、赤と緑のダブルシンボルで未来のライフを奪いにかかる。その手札には防御の為のカードはない。自身の完全な敗北を悟った未来は、静かに目の前で拳を振り上げる太陽神龍を見た。


 


「ライフで受ける!!」


 


 



 


 


「未来!凄いバトルだったよ!」


「そ、そうかな?でも、結局負けちゃったけどね」


「いや、今回はドローに救われていただけさ。次にやる時はきっと分からないさ」


 


バトルフィールドの外へ出てきた未来と弾。二人の激しいバトルを目の当たりにした響は興奮した様子で二人に近寄ってくる。


 


「ありがとう、いいバトルだったよ」


「はい!私も、弾さんと楽しいバトルが出来てとてもよかったです!」


 


感謝の気持ちを込めて手を差し出す弾。その手を未来もまた握り返し、弾に笑顔を返すのだった。







一言

ひゃあ!我慢できねえ!伏せたバーストは使える所で使っちまえ!


未来の着ているバトルフォームにどこか覚えがある人。もの自体は一緒です。

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