第9話 装者のバトル
「メテオヴルムでアタック!」
「うーん……ライフで受けるしかないね」
「へっへーん、三連勝!」
ぐっと拳を握り、喜びを露わにする響。寝巻を着ている彼女がいるのは、彼女が通う私立リディアン音楽院が管理する学生寮の一室。二人でルームシェアをするこの一室で響はバトルスピリッツをしていた。デッキはアルティメットを除いた四十枚。そして、彼女とバトルをしているのは、黒髪が印象的な少女、小日向未来。響きの大切な親友で、今までも自分を支えてくれた存在である。
「それにしても、どうしちゃったの?最近の響、妙に強くなったっていうか……」
「うーん……実は、すっごく強いカードバトラーを見つけちゃって。その人に度々デッキを見てもらったりとかもしているんだ」
「へえ……いいなぁ、響だけ。それって男の人?」
「え?そうだけど……どうかした?」
「ふうん……?」
少し不満そうに目を細める未来。しかし、響の目は純粋な憧れや尊敬の眼差しをしているのを見て何かに安心したのかその視線をすぐに元に戻す。
「どんな人?」
「うーん……何ていうか、ぱっと見は素っ気無いけど、実は優しくて正義感に溢れていて、それでいてバトルが強いし、いろんなカードの事を知ってる!特に激突の事なんて辞書要らずなぐらい詳しいよ?」
「だからデッキを見てもらっていたの?」
「まぁそれもあるけど……もっと強くなりたいな!って思ってね」
シンフォギアの事は極秘情報となっている。その為部外者である未来にその事を伝える事は出来ない。だが、カードバトラーが更なる高みを目指すというのは当たり前の事。だからこそ、未来もそのこと自体に何も違和感は感じていなかった。
「ねぇ響、今度その人に会わせてよ。私も会ってみたいなぁ……響がそこまで夢中になる人に是非、ね」
「……うん、いいよ?きっと弾さんも喜ぶだろうし」
シンフォギアの事とか抜きにしてもただ単に会うだけならば特に咎められる事はないだろう。今、弾は二課の計らいでマンションの一室に住む事が出来るようになっており、そこで一人生活をしている。とはいえ、やっていることは基本的にデッキ構築やカードの知識を得る事ばかりらしいのが現状らしいが。とにかく、弾にも未来の事を紹介して上げた方がいいだろうと思いながら返事を返す響。
「けど、いつなら大丈夫かな?」
「やっぱり今週の週末とか?」
「じゃあそれがいいかな?」
自分がシンフォギアを纏う戦士である事。ノイズと戦っている事。大切な親友である未来にその事を内緒にしているという事実に後ろめたさを感じてしまう。だからこそ、伝える事が出来ない事以外は内緒にしないようにしよう。そう、響は心に誓うのだった。
★
「と、いう訳なんですけど……構いませんか?」
「ああ、俺は別に構わないよ」
翌日。二課で会った響は弾と今週の週末に会う事が出来るかどうかの約束を取り付ける事に成功する。傍から見ると完全に男女の約束のそれにしか見えなくはないのだが、そのような雰囲気を全く感じさせないのは響の相手が弾だからだろう。
「……となると、デッキから十二宮Xレアを抜く必要が出てくるのか」
「え?ずっと入れている訳にはいかないんですか?」
「ああ、日常でバトルする時は基本的に十二宮Xレアを使わないでくれって頼まれているんだ」
「あー、確かにそうですよね……希少価値ですからね」
世界に一枚しかないといっても過言ではないカードなのだ。デッキにもし投入してそれが手札に来た場合、チャンスが来れば弾はカードバトラーとして間違いなく召喚する事となるだろう。だが、そうなれば弾の使用する十二宮Xレアの存在が露わになってしまう。未来世界のような環境であればともかく、この基本的に平和な空間でそんなものは使えないだろう。
「でも弾さんとしてはやっぱり使いたいですか?」
「まぁ、それがカードバトラーって奴さ。とはいえ、俺だって世間体の事はちゃんと理解している。大人しく自重しておくさ」
他愛ない会話を交わしながら二人は作戦室へと向かう。今後の活動についての確認などを行う為だという。
「二人とも来たか」
「はい!」
既に部屋の中には翼や弦十朗、了子らの姿があり、大きなモニターには様々なデータが表示されている。この手の情報は弾や響には到底理解出来ないが、了子等からすれば多くの情報を秘めたものなのだろう。
「それじゃ三人揃った所で作戦会議!って言いたい所なのだけれど……正直な所、ノイズに対しては現状維持、としか言えないのよね」
明るい声で意気込むように言うが、すぐに作戦会議というものが崩壊してしまう。それも仕方のない事だろう。異界王を倒す、魔族と和解する、十二宮Xレアを全て集める。今までは目的があったからこそ、弾を始めとした皆が未来に向かって動く事が出来たのだ。無論、この世界でだってノイズを倒すという目的こそあるが、それもノイズが出現してから倒しに行くという完全な後手だ。
「こちらから、予めノイズが出る場所で待ち構える事は出来ないのか?」
「それが出来れば苦労はしないんだけどねぇ……急に何の前触れも無く現れちゃうから困るのよ。ま、だからこその特異災害なんだけど」
弾の疑問、それは出来ればすぐにでもそれをする事だろう。しかし、それが出来ないのは確実にこの世界の今の限界だった。とはいえ、何時までも手を拱いたままと言う訳では無く、了子達も頑張っているのだろう。ならば、専門家ではない自分がどうこう言える立場ではとてもない。そこで弾は何も言わない事にする。
「そ・こ・で」
勿体ぶるように片目でウインクをして、右の人差し指を軽く振る素振りを見せ、弾達の注目を集める。意味深な様子を見せた彼女は、さぞ妙案を思い付いたと言わんばかりに弾、響、翼を指差した。
「「「?」」」
「最近戦い続きだったし、やっぱり一緒に戦う人の事は知りたいでしょ?それに……やっぱり響ちゃんは翼ちゃんや弾君と比べて戦闘経験の少なさが目立っちゃってるじゃない?それを克服してもらおう!ってわけ」
「つまり……バトルですか?」
「そゆこと」
だが、バトルならば響としても望む所だ。弾や翼、弦十朗等の実力者がこの二課には多くいる。自分を鍛えるにはこれ以上に最適な環境は無いだろう。現に、弾にデッキを診断してもらったり、実際にバトルを見たりしているおかげでシンフォギアを手にする前と比べてその実力は大きく伸びている。
「……でも、確かにそうですね。いろんなバトルを経験すれば、自分を伸ばせる筈でしょうし」
「うんうん、そうでしょう?というわけで翼ちゃん、バトルの相手、お願いできるかしら」
「……へ?」
唐突に話を振られ、思わず間の抜けた声が翼から漏れる。しかしすぐに了子の意思を理解すると、
「ええ、私は構いませんが……」
「翼さんとバトル出来るんですか!やった……凄く光栄です!」
「折角だ、胸を借りるつもりで挑んでみるといい」
「はい!」
そのバトルを承諾する。そして、弦十朗の後押しも受けて響は翼と共にバトルフィールドへと飛び込むのだった。
「「ゲートオープン!界放!!」」
バトルフィールドへ飛び込む。それと同時に二人の口から唄が口ずさまれ、二人の身体にシンフォギアが纏われる。二課に存在するバトルフィールド。青い床を持つ、青空が特徴的な機械的なスタジアムはエクストリームゾーンという異空間に存在するものではなく、バトルフィールドは間違いなくこの空間に存在しているという違いがある。また、エクストリームゾーンと比べてライフが砕かれた際に受ける痛みが大幅に軽減されているのも特徴だ。
「先行は貰います!スタートステップ!ドローステップ!メインステップ!アンキラーザウルスを召喚!Lv2!」
【アンキラーザウルス:赤・スピリット
コスト2(軽減:赤1):「系統:地竜」
コア2:Lv2:BP3000
シンボル:赤】
バトルフィールドに出現した赤いシンボルの中から赤い殻のように固い皮膚を持つ、背中に棘、尾にドリルを持つアンキロサウルスを模したスピリットが出現する。
「ターンエンド!」
「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、メインステップ。ネクサス、海帝国の秘宝を配置!」
三体の青い龍を模した彫刻がとぐろを巻く宇宙のように神秘的な景色が内側に存在する宝石を護る。そう思わせる姿をしたネクサスが翼の背後に出現する。
「続けてバーストをセット!」
更に翼のフィールドにバーストがセットされる。これ以上の展開は出来ないということだろう。しかし、だからといってもバーストと言う壁を疎かには出来ない。
「ターンエンドよ」
「いきなりバーストですか……スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!ディロフォーザを召喚!不足コストはアンキラーザウルスのLvを下げて確保!」
【アンキラーザウルス
コア2→1:Lv2→1:BP3000→2000】
【ディロフォーザ:赤・スピリット
コスト4(軽減:赤):「系統:地竜」:【覚醒】【激突】
コア1:Lv1:BP3000
シンボル:赤】
頭にとさかを持つ緑色の身体を持つ恐竜が現れる。覚醒と激突をどちらも持つ頼れるスピリットである。激突と覚醒をベースとしたデッキである響が新たに投入した激突カードだろう。
「ディロフォーザ……」
「アタックステップ!ディロフォーザでアタック!」
「ライフで受ける!」
翼へと飛び掛かるディロフォーザ。叩きつけられた頭によってライフが砕かれ、衝撃が翼へと襲い掛かる。しかし、エクストリームゾーンでのものと比べるとその勢いは著しく弱められており、特に気にする程度の痛みでもない。さらに、このアタックでライフが減少したことにより、その場に伏せられたバーストが起動する。
「ライフ減少によりバースト、フラッドストリーム!コスト合計5まで相手スピリットを好きなだけ破壊する!私が破壊するのは、コスト4のディロフォーザ!」
バーストから放たれた青い閃光がディロフォーザへと降り注ぎ、その体を破壊する。残しておけば後の展開の起点を潰されることにもなりかねない。そう考えればこの選択は正しいと言えるだろう。
「フラッシュ効果は使わないわ」
「う、ディロフォーザが……ターンエンドです」
アンキラーザウルスはブロッカーとして残しておく選択肢を選んだようだ。そして、バーストによって上手くスピリットを倒した翼のターンが始まる。
「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。獣士コヨーテ2体を召喚」
【獣士コヨーテ:青・スピリット
コスト3(軽減:青1・極1):「系統:獣頭」
コア1:Lv1:BP3000
シンボル:青】
【獣士コヨーテ
コア1:Lv1:BP3000
シンボル:青】
翼が呼び出した2体の青のスピリット。腰に剣を指した、右手に刃の大きいナイフを握る獣人が同時に出現し、遠吠えを上げる。
「翼のデッキの長所が出てくるな」
「ああ、青で統一されたデッキは基本的に手札消費が激しくなる……それを克服する為のネクサスと、ドロー効果……しかし、随分と楽しそうだな」
「これも、君のおかげじゃないか?」
「さぁ、どうかな?俺はただ、彼女とバトルをしただけさ」
弾達がモニターを通じて二人のバトルを観戦する。そんな中で見ることの出来た、バトルの最中に翼が時折覗かせる楽しそうな表情。きっとこれも、弾の影響なのだろう。そして翼はアタックステップを宣言する。
「海帝国の秘宝をLv2にアップさせ、アタックステップ!」
【海帝国の秘宝
コア0→1:Lv1→2】
「獣士コヨーテでアタック!アタック時効果によりデッキから2枚ドローし、手札2枚を破棄する!でも、海帝国の秘宝、Lv2効果により自分のアタックステップ時に自分の青のスピリット/アルティメットの効果で破棄する自分の手札の枚数を-1枚する!よって、破棄するカードは1枚!」
デッキから2枚のカードをドローし、その後手札の俊星流れるコロッセオをトラッシュへと破棄し、手札を増やすのと同時にトラッシュにネクサスを溜めていく。そして、獣士コヨーテが振り上げたナイフが響へと襲い掛かる。
「ライフで受けます!!」
響へ叩きつけられたナイフが、そのライフを奪う。ライフを砕かれるその衝撃に身構えていた響だったが、バトルフィールドである事により大幅に軽減された衝撃に思わず拍子抜けしてしまう。
「さらにもう一体の獣士コヨーテでアタック!!アタック時効果によりデッキから2枚ドローし、手札1枚を破棄!」
続けて青玉の巨大迷宮が破棄される。そして、この二体のアタックにより翼は獣士コヨーテを召喚したことで失った手札損失を全て取り返した事になる。
「こっちもライフで受けます!!」
そして、こちらのアタックも迷うことなく響はライフで受ける。ライフで受けることでコアをブーストさせ、次へと繋げるためにも。
「ターンエンドよ」
「むむむ……ここは、あのカードが来るのを……!スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!」
ドローステップ。強く意気込み、このデッキのキーカードがドロー出来る事を祈りながらデッキトップに手を置き、静かにドローする。そして、響の視界に飛び込んできたのは、赤の強力なXレア、龍星皇メテオヴルム。そのカードをドローした響は表情を明るくさせる。
「リフレッシュステップ!メインステップ!響け流星!!龍星皇メテオヴルム、召喚!」
【龍星皇メテオヴルム:赤・スピリット
コスト7(軽減:赤3):「系統:星竜・勇傑」:【激突】
コア1:Lv1:BP6000
シンボル:赤】
響のフィールドへと降り注ぐ流星。その中から赤い翼を広げるオレンジ色の身体を持つ巨大な龍が現れる。緑色の目を光らせて出現したメテオヴルムは、高らかに咆哮を上げる。
「遂にXレアを繰り出したな」
「ここは……このままターンエンドです!」
まだLv1のメテオヴルムでアタックするべき時ではないし、その激突も十分には活かせないだろう。であれば、ここは一度待つのが最善の筈、様子を見るのは決して悪い一手では無い。
「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。フォビッド・バルチャーを召喚!」
【フォビッド・バルチャー:青・ブレイヴ
コスト5(軽減;青2):「系統:戦獣・爪鳥」
コア1:Lv1:BP4000
シンボル:なし】
身体中を重りを付けた鎖によって絡め取られ、縛られた怪鳥が姿を見せる。首元には鋭い無数の棘が姿を見せる首輪がはめられており、見るからに凶暴そうな雰囲気を確認出来る。
「翼さんのブレイヴ……!」
「フォビッド・バルチャー召喚時効果!自分のトラッシュに存在する紫/緑/青のネクサスすべてをノーコストで配置する!私のトラッシュにあるネクサスは俊星流れるコロッセオ、青玉の巨大迷宮の2枚!この2枚を配置するわ!」
【俊星流れるコロッセオ:青・ネクサス
コスト3(軽減:青2)
コア0:Lv1
シンボル:青】
【青玉の巨大迷宮:青・ネクサス
コスト3(軽減:青1)
コア0:Lv1
シンボル:青】
翼の背後に存在する秘宝。その両隣にサファイア色の巨大な迷宮と俊星が空から降り注ぐ巨大なコロッセオが出現する。どちらも、相手の行動を抑制する強力なネクサスだ。
「二枚の同時展開か……」
「フォビッド・バルチャーを獣士コヨーテに合体!さらにLv2にアップ!」
【獣士コヨーテ
コスト3+4→7
コア1→2→3:Lv1→2:BP3000→5000+4000→9000】
フォビッド・バルチャーの身体が消滅し、翼だけとなる。そして、その翼は獣士コヨーテの背中と一つとなり、無数の黒鋼の羽根を宙に舞わせる。
「こ、ここで合体スピリットを!」
「アタックステップよ!いきなさい、合体スピリット!コヨーテアタック時効果でデッキから2枚ドローし、手札1枚を破棄!碧海の剣聖マーマリアンを破棄するわ!」
合体スピリットがその翼を広げ、手にした鋭利なナイフを響へ向けて放とうとする。二体のブロッカーがフィールドにはいるが、ブロックをすればどちらかが破壊される事となる。ならばここは、
「ライフで受ける!」
再びライフを差し出す事を決意する。再び獣士コヨーテのアタックが響のライフを奪い、三つ目の輝きを奪い取っていく。
「……やっぱりブロックはしなかったわね。私はこれでターンエンドよ」
「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!メテオヴルムをLv3にアップ!」
【龍星皇メテオヴルム
コア1→6:Lv1→3:BP6000→11000】
「刀竜ステゴディータをLv2で召喚!」
【刀竜ステゴディータ:赤・スピリット
コスト3(軽減:赤1):「系統:地竜」:【激突】
コア2:Lv2:BP4000
シンボル:赤】
メテオヴルムのLvが上昇するのと同時に出現する、背中から無数の刀の刃を生やしたステゴザウルスをモチーフとしたオレンジ色の皮膚を持つ恐竜型スピリットが現れる。
「アタックステップ!メテオヴルムで合体スピリットに指定アタック!!」
「メテオヴルムにはLv3の時、激突を持つ自分のスピリットすべてに相手スピリットに指定アタックできる効果がある……響の奴、このターンで一掃する気だな」
メテオヴルムが炎を纏って合体スピリットへと襲い掛かる。自身を炎の槍としたその一撃を避けるように空へ飛び出した獣士コヨーテを追尾するように軌道を変えたメテオヴルムの一撃は背を向けた合体スピリットへと激突し、大爆発と共にフォビッド・バルチャーを爆発から回避させるために分離させ吹き飛ばす。
【フォビッド・バルチャー
コア1:Lv1:BP4000
シンボル:なし】
「さらに刀竜ステゴディータで獣士コヨーテに激突!」
さらにステゴディータが激突の効果を用いて獣士コヨーテへ突進する。その一撃はBPによって負けていたコヨーテの身体を吹き飛ばして破壊する。
「青玉の巨大迷宮の効果によりコスト3以下のスピリットは1ターンに1度しか攻撃できない。これでアタックステップは終了よ」
「アンキラーザウルスはコスト2だからアタックできませんね……ターンエンドです!」
スピリット達を殲滅して戦力を削いでいく。とはいえ、まだ油断は出来ないだろう。相手はあの翼なのだから。
「やるわね……でも、こっちも負けはしないわ!スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!」
ドローしたカードを見て、僅かに口元に笑みを浮かべる翼。一体どんな強力なカードをドローしたというのか。メテオヴルムを繰り出した響に対し、彼女がぶつけるカードとは。
「現れて、青のXレア!巨人大帝アレクサンダー、召喚!!」
【巨人大帝アレクサンダー:青・スピリット
コスト6(軽減:青3):「系統:闘神・勇傑」:【強襲:2】
コア4:Lv1:BP6000
シンボル:青】
瞬間、地面から大量の砂煙が巻き上がる。地面が砕ける音と共に現れたのは、紅いマントを靡かせる左手に巨大な盾を握る、じゃが根の鎧を纏った巨人の戦士。その右手に握られた一振りの槍が、空へと突き上げられる。
「!巨人大帝アレクサンダーか……強襲は厄介な効果になるな」
「フォビッド・バルチャーを巨人大帝アレクサンダーに合体!!Lv2に!」
【巨人大帝アレクサンダー
コスト6+5→11
コア4→5:Lv1→2:BP6000→10000+4000→14000】
再びフォビッド・バルチャーの身体が消滅し、翼だけとなる。そしてアレクサンダーからも赤いマントが消滅し、背中にフォビッド・バルチャーの翼が合体される。
「今度はアレクサンダーとの合体!」
「海帝国の秘宝をLv1に下げ、そのコアを俊星流れるコロッセオに移動してLv2へ!」
【海帝国の秘宝
コア1→0:Lv2→1】
【俊星流れるコロッセオ
コア0→1:Lv1→2】
「アタックステップ!合体スピリットでアタック!Lv2アタック時効果により、刀竜ステゴディータを破壊!」
アレクサンダーの槍がステゴディータを薙ぎ払い、一撃で破壊する。巨人大帝アレクサンダー、Lv2アタック時効果により、コスト4以下の相手のスピリット1体を破壊し、そのコストと同じ枚数、相手のデッキを上から破棄する。響のデッキの上から砲竜バル・ガンナー、サーベカウラス、溶岩の大瀑布の三枚が破棄され、トラッシュへと落ちていく。
「さらに強襲!!青玉の巨大迷宮を疲労させて回復!」
「ここは……アンキラーザウルスでブロックです!アンキラーザウルスの効果でアタックステップの間、激突を持つメテオヴルムがいる事でBP+1000!」
【アンキラーザウルス
BP2000+1000→3000】
「BP3000じゃ合体スピリットは越えられないわ!」
「まだです!フラッシュタイミング、ファイアーウォールを使用!自分の赤のスピリット1体を破壊し、このバトル終了時にアタックステップを終了させる!アンキラーザウルスを破壊!」
ブロックを宣言し、走るアンキラーザウルス。その体が巨大な炎の壁となってアレクサンダーを押し返し、このアタックステップを終了させる。
「……ターンエンドよ」
強襲の効果を活かしきれず、結果としてアレクサンダーを回復状態で残す事となってしまった。もし、この妨害が無ければ強襲:2を用いて3回の攻撃が行われ、響のライフを全て奪い取る事が出来ていたのだが。この窮地を何とか凌いで見せた響は安堵の息を零しながら次の自分のターンを宣言する。
「ふぅ……スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!ドラゴンヘッド2体を召喚!」
【ドラゴンヘッド:赤・スピリット
コスト0:「系統:翼竜」:【覚醒】
コア1:Lv1:BP1000
シンボル:赤】
【ドラゴンヘッド:赤・スピリット
コスト0:「系統:翼竜」:【覚醒】
コア1:Lv1:BP1000
シンボル:赤】
赤い角を持つ顔だけのドラゴン2体を呼び出し、フィールドに赤のシンボルを増やす。そして、増えたシンボルを全て用いて更なるドローへと響は繋げていく。
「三札之術を使用!」
デッキから2枚ドローし、その後、デッキの上を1枚オープン、それが赤のスピリットであれば手札に加えられるマジック。それにより、響は手札を2枚増やし、デッキの上をオープンする。そして現れたのは神鳴る霊峰。ネクサスの為、響はそのままデッキの上にカードを戻した。
「ここでアレクサンダーを倒す為には……これしかない!ごめん……ドラゴンヘッド!ティロック・ケファレを召喚!不足コストは、ドラゴンヘッド1体より確保!」
【ドラゴンヘッド
コア1→0】
【ティロック・ケファレ:赤・ブレイヴ
コスト3(軽減:赤1・紫1):「系統:地竜・機竜」
シンボル:赤】
響のフィールドに召喚される、機械仕掛けの二足歩行をする恐竜型ブレイヴ、ティロック・ケファレ。その召喚と共にドラゴンヘッド1体が消滅し、消えていく。
「!響の新しいブレイヴか!」
「龍星皇メテオヴルムに合体!!」
【龍星皇メテオヴルム
コスト7+3→10
BP11000+4000→15000
シンボル:赤+赤】
ティロック・ケファレが赤い光となってメテオヴルムへと降り注ぐ。それと同時にメテオヴルムの翼が鈍い鋼色の機械の翼へと変化していき、更なる力を得る。
「……!」
「バーストをセットしてアタックステップ!メテオヴルム、Lv3アタック時効果で合体スピリットへ指定アタック!ティロック・ケファレ、アタック時効果によりBP+4000!」
【龍星皇メテオヴルム
BP11000+4000+4000→19000】
メテオヴルムの優位性はさらに強まる。身体中に高密度の炎を纏い、流星の槍となってアレクサンダーへと放たれる弾丸となる。その一撃を前に、両足を踏みこみ、翼を広げて両手で槍を握り、真正面から迎え撃ったアレクサンダーの槍をへし折り、その体を壁へと叩きつけるように破壊した。
【フォビッド・バルチャー
コア1:Lv1:BP4000】
「ターンエンド!」
残りライフ2ではライフを守る事も視野に入れなければならない。相手の強力なスピリットを倒す事は出来るが、それでもこのバトル、どちらが不利かと聞かれれば確実に響の方だろう。しかし、だからといって決して油断を翼がする事はない。全力で相手を叩き潰す。ここまで考えて、どこか弾に影響されている自分に気付き、思わず苦笑を漏らしてしまう。
「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!門番アルパーカー2体を召喚!」
【門番アルパーカー:青(緑)・スピリット
コスト1:「系統:獣頭・創手」
コア1:Lv1:BP1000
シンボル:青(緑)】
翼のフィールドに出現した二つの青のシンボルから出現する二足歩行で立つ白いアルパカ型スピリット。これにより、翼のフィールドに3体の青のスピリットが揃い、あのカードの召喚条件を満たす事になる。
「青のスピリットが3体……まさか!」
「……来るな」
彼等の予感を現実のものにするかのように翼の右手に握られた一枚のカードが光り輝き、フォニックゲインを解放する為の歌がバトルフィールド中に流れる。
「来る……!」
「我が刃よ、防人の歌と共にその剣を顕現せよ!アルティメット・オライオン、召喚!不足コストは俊星流れるコロッセオ、門番アルパーカー1体、フォビッド・バルチャーより確保!!」
【俊星流れるコロッセオ
コア1→0:Lv2→1】
【門番アルパーカー
コア1→0】
【フォビッド・バルチャー
コア1→0】
【アルティメット・オライオン:青・アルティメット
コスト8(軽減:青3・極1):「系統:新生・闘神」
コア1:Lv3:BP15000
シンボル:極】
奏でられた歌が、巨大な金色のシンボルを作り出す。そこから激しい青の閃光が解き放たれ、その中から青い巨人が一振りの刃を手に出現し、その金色の髪を揺らす。
「翼さんのアルティメット!」
「召喚時Uトリガー、ロックオン!!」
翼の手に出現した短刀が遥か遠くにいる響のデッキへと一直線に放たれ、デッキの上から一枚のカードをその衝撃で宙へと浮かせる。そしてそこからトラッシュへと落とされるのはネクサス、神鳴る霊峰。先程のターン、三札之術の効果によって戻したカードであり、そのコストは4。翼にとってみればその情報はアルティメット・オライオンの効果を成功させる上で余りにも頼もしすぎるものだと言ってもいいだろう。
「クリティカルヒット!まずは、コスト合計12まで相手スピリットを好きなだけ破壊するわ!私が破壊するのは、コスト10の合体スピリットとコスト0のドラゴンヘッド!」
アルティメット・オライオンの左手に第二の剣が光と共に出現し、その二本が蒼い炎を纏う。そしてドラゴンヘッドとメテオヴルムに同時に斬りかかり、二体を同時に斬り捨てる。
「ああ、メテオヴルム!!」
「さらにクリティカルヒットの効果!相手のデッキを12枚破棄!!」
「うぇえ!?」
アルティメット・オライオンのUトリガーには更なる効果がある。それは、ヒットしたカードのコストが5以下であればそれはクリティカルヒットとなり、追加効果を発揮するのだ。そして、アルティメット・オライオンが持つクリティカルヒットの効果は、相手のデッキを12枚破棄する事。響はデッキから刀竜ステゴディータ、砲竜バル・ガンナー、サーベカウラス、ディロフォーザ、雷皇龍ジークヴルム、神鳴る霊峰、溶岩の大瀑布、ネオ・ダブルドロー、神鳴る霊峰、雷皇龍ジークヴルム、溶岩の大瀑布、アンキラーザウルスの12枚を一度に破棄される事となる。
「ぶ、ブレイヴは分離!」
【ティロック・ケファレ
コア1:Lv1:BP4000
シンボル:赤】
「……そして!!」
「!」
「自分のスピリットが相手によって破壊された事でバースト、フレイムブラスト!!デッキから2枚カードをドローし、さらにコストを支払い、フラッシュ効果を発揮!!BP4000以下の相手スピリット1体を破壊する!門番アルパーカーを破壊!!」
響が伏せたバーストから炎が立ち昇る。そしてその炎はアルパーカーを焼き尽くし、翼の攻め手を封じる。これで翼のフィールドにはアルティメット・オライオンのみ。仮にアルティメットでアタックしても響のライフはまだ1残り、このターンで決着を付けられはしない事となる。
「……まさか、こう返されるなんて思わなかったわ」
「えへへ……でも、ここでアルティメットを出されるなんて思いませんでした」
「ふふ……この状況、立花さんならどう返してくるかしら?ターンエンドよ」
どちらも、表情が柔らかい。響はこの状況をどうすればひっくり返せるのか。翼は響がどんな一手を打ってくるのか。お互いに考えながら、それを楽しみながらバトルに臨めている。響もだが、翼も確実に変わったと感じさせる一面だ。
「スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!」
目には目を。アルティメットにはアルティメットを。それが響の考える、アルティメット・オライオンに対抗する術だ。弾のようにBP20000越えのスピリットは用意できないが、あのカードなら。そう願い、そのカードがドロー出来るように必死に祈りながら、おそるおそるカードをめくっていく。そして、出てきたカードを見た響は、嬉々とした表情を見せた。
「!!リフレッシュステップ!メインステップ!ドラゴンヘッド、刀竜ステゴディータを召喚!ステゴディータはLv2!」
【ドラゴンヘッド
コア1:Lv1:BP1000
シンボル:赤】
【刀竜ステゴディータ
コスト3(軽減:赤2)
コア2:Lv2:BP3000
シンボル:赤】
(彼女もスピリットを並べ始めた……!)
何か、大きなものが来る。そう翼が悟った瞬間。今度は響の手から金色の光が放たれ、彼女の口から歌が口ずさまれる。巨大な高密度のエネルギーが一つに集約され、それは龍となる。
「今度は響が出す番か……!」
「響け、金色の稲妻!!アルティメット・ジークヴルム、Lv5で召喚!!」
【アルティメット・ジークヴルム:赤・アルティメット
コスト6(軽減:赤3):「系統:新生・星竜・竜人」:【真・激突】
コア4:Lv5:BP17000
シンボル:極】
黄金の鎧を纏う、雷の龍。空が暗雲で黒く塗りつぶされ、そこから雷鳴が鳴り響く。その中から現れた赤き身体を持つ稲妻の化身たるドラゴンが、アルティメット・オライオンに向かい合い、咆哮を上げる。
「アルティメット同士の激突か!」
「アタックステップ!アルティメット・ジークヴルムでアタック!!Uトリガー、ロックオン!!」
響の手から放たれた光の波動が、翼のデッキを吹き飛ばす。このトリガーがヒットすれば、アルティメット・ジークヴルムのBPは+10000。バトルでの勝利はほぼ確実となる。しかし、
「……残念だけど、このカードはバルカンバイソン!コストは6よ!」
「え!?」
コスト6未満のカードでは無いため、アルティメット・ジークヴルムのトリガーはガードとなる。それにより、BP加算が行われない事となってしまう。
「で、でもBPはまだこっちの方が上!アルティメット・オライオンに真・激突!!」
アルティメット・オライオンがブロックし、2体がぶつかり合う。このままではBP15000のアルティメット・オライオンが敗北する事は免れない。
「フラッシュタイミング!ハンマーインパクトを使用!アルティメット・オライオンにBP+2000!」
【アルティメット・オライオン
BP15000+2000→17000】
「!?BPが同じに!?」
アルティメット・ジークヴルムが拳を放ち、ラッシュを仕掛ける。その全てを剣を操り巧みに受け流していき、隙を見つけて鎧に鋭い突きを放ち、アルティメット・ジークヴルムを吹き飛ばすアルティメット・オライオン。しかし、アルティメット・ジークヴルムは着地と同時に地面を蹴ってアルティメット・オライオンへと炎を纏った拳を放ち、再び剣を突き出したアルティメット・オライオンの刃が自身を貫くのと同時にその体に深く拳をめり込ませ、同時に2体は破壊を迎える。
「アルティメット・ジークヴルム!!」
「さぁ、どうするのかしら?」
「……いえ、ここは攻めます!!刀竜ステゴディータでアタック!」
「ライフで受ける!」
ステゴディータの突進が翼のライフを奪う。まさか、アルティメットが破れるとは。トリガーの成功を疑わなかった響にとっては余りにも予想外な出来事だった。
「た、ターンエンドです」
「シンフォギアの象徴たるアルティメットも完全じゃない。今の貴女のようにガードされればその力は十二分に発揮できない事だってあるの。力を過信しすぎても、呑まれるだけよ?立花さん」
「は、はいそうですね……身に染みました」
「……ふふ、それじゃ、次はこっちからたっぷりと礼をさせてもらうわ!スタートステップ!コアステップ!ドローステップ!リフレッシュステップ!メインステップ!再びいでよ、巨人大帝アレクサンダー!Lv2で召喚!!」
【巨人大帝アレクサンダー
コスト6(軽減:青3):【強襲:2】
コア5:Lv2:BP10000
シンボル:青】
「二体目が……!」
翼の手札には既に眠っていたアレクサンダー。その力が今、アルティメットもキースピリットも失った響へと叩き込まれる。
「……勝負あったな」
「ああ。彼女に防御マジックが無ければ……」
「アタックステップ!巨人大帝アレクサンダーでアタック!Lv2アタック時効果によりティロック・ケファレを破壊!そしてデッキを3枚破棄!」
三札之術、フレイムブラスト、ファイアーウォールの三枚を破棄され、その槍でティロック・ケファレが薙ぎ払われる。
「ネクサス、海帝国の秘宝を疲労させ強襲発揮!巨人大帝アレクサンダーは回復!」
「ドラゴンヘッドでブロック!」
アレクサンダーの前に立ちはだかるドラゴンヘッド。だが、その小さな力もティロック・ケファレ同様にアレクサンダーは薙ぎ払って殲滅する。
「二度目のアタック!再びアタック時効果によりステゴディータを破壊!そしてデッキを3枚破棄し、さらに青玉の巨大迷宮を疲労させ強襲により回復!!」
サジッタフレイム、ゴルニック・イーグル、サーベカウラスらが破棄され、最後のスピリットを倒される。そして眼前に迫るアレクサンダーの一撃、それを前に響に残った選択肢は、ただ一つしかなかった。
「ライフで受けます!!」
アレクサンダーの槍が叩きつけられ、響のライフを崩す。だが、アレクサンダーはアタックを終えても尚、響の前から動かない。再び槍を振り上げ、翼の最後の言葉を待つ。
「これが最後のアタックよ!!巨人大帝アレクサンダーでアタック!」
「これも、ライフで受けます!!」
響の最後のライフが奪われる。それと共にバトルが終了し、二人の姿はバトルフィールドから外へと消えていく。
「……あーあ、負けちゃいましたか……」
「でも、筋は良いと思うわよ。ただ今回は、アルティメットの力を過信しすぎたのが原因ね」
「確かに……あの時、トリガーがガードされるなんて全く思ってすらいませんでしたから」
バトルフィールドの外へ戻ってきた響と翼。彼女達に飲み物を手渡しながら、労いの言葉を投げる了子。
「二人とも、ナイスバトルだったわよ。響ちゃんも惜しかったわねぇ」
「あはは、そうですか?」
女性陣で話が盛り上がっているのを見ながら、弾は先程のバトルを思い返し、そして自分の事を考えるのだった。アルティメットが持つその特性が決して絶対的なものではないという事。ノイズと言う存在、そして自分が戦い続けるこの先に何のビジョンを見据えるのかを。
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