第6話 ダメダメな坂本龍馬
放課後
私は大会議室にて新聞部主催の集会に出席していた。規模は三十人程度の参加者だ。
『あ、あ、テスト、テスト』
「部長、マイク入っています」
『だから、マイクテストだ。龍馬様は座っているだけでいい』
ホント私を利用することしか考えてない。高校の覇権を握ると言うが何が欲しいのであろう?
『えーこれより第一回、龍馬様と明るい未来のシンポジュウムは開会します』
部長が話すだけなのにシンポジュウムなのか?
『昨今の暗いニュースを踏まえて、この世界の革命をここに宣言します……』
その後、部長の演説が続き。私は退屈していた。大体、この世界で一番、偉いのは女子高生のはず。それが革命をうたっているのだ。胡散臭い話そのものであった。
『最後に龍馬様から挨拶です』
は?
座っているだけでいいはず。私が拒絶すると。
『おー流石、カリスマの龍馬様です。お言葉は得られませんが皆さんを愛しています』
大きな拍手が上がり集会は終わる。
「おぇ……」
私は吐き気がしてきた。これが幕末の動乱を生きた坂本龍馬の転生した姿である。
「私は悪くない、私は悪くない……」
呪文の様に自己肯定感を上げる。すると、条絵が私の手を握ってくる。
「大丈夫です、龍馬様は間違っていません」
私は落ち着きを取り戻して。条絵の手を握り返す。
本当にダメな坂本龍馬だ。
集会の後の事である。私は新聞部の部室でパイプ椅子に座り震えていた。何故、こんな思いをして坂本龍馬をせねばならないのか?
ソシャゲ―で遊ぶ気力すら無かった。私がふさぎ込んでいると。
「うちの胸の中で泣くといい」
条絵は私の顔を抱きしめてムギューとする。
柔らかい……。
私は昔、飼っていた。猫の事を思い出す。膝の上に乗りゴロゴロしながら寝ていた。幸福ホルモンのオキシトニンが溢れている気分であった。
それは無条件の幸福であった。
「クロ、天国で元気しているかな?」
私がぽつりと呟く。
「はい、龍馬様の友達ですもの、笑顔で暮らしていますよ」
「ありがとう、条絵……」
私は少し心が凛とした。それは世界に向き合う力を得た気分だ。
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