第2話 坂本龍馬のお悩み相談室


 そして……新聞部の会議室がざんげ部屋とかした。


「中等部三年女子、中島です。妹が家出をしました」


 また、難題を押し付ける。小さな子供の家出など警察の案件だ。


「夜には帰ってくるのですが、学校に行きません」


 それって家出なのか?


 ただ単に学校や家に居場所が無いだけだろ。


「龍馬様、どうか、妹の家出を解決して下さい」


 ぬぬぬぬ、難しいな……。


「担任とスクールカウンセラーと両親で会議でもしたら?」

「それはどう言うことですか?」

「だから、学校にも家庭にも、居場所が無いだけでは……」

「流石、龍馬様、言うことが違う。早速、実行にします」


 ……これでいいのか?


 クライアントは笑顔で帰っていった。私は腕を組み小一時間、考える。さっきからこんな話ばかりだ。


 私が疲れていると。部長がお茶を持ってくる。


「お疲れ様、後、五人のお悩み聞いて下さい」


 地道だな。私の適当なアンサーでいいのか?


 ホント、救世主の道のりは長いな。


 私がお悩み相談でクタクタになって帰ると。条絵が付いてくる。


「何故に?」

「龍馬様の家にホームステイなのです」

「は?」

「簡単に言えば居候です」


 この遊女と暮らすのか?嫌な予感しかしない。条絵のオーラは性的そのものであった。


「大丈夫です、性的表現有りにしています」

「イヤ、そう言う問題ではない」


 すると、最寄り駅からの帰り道の公道で突然のキスをされる。


 甘い大人のキスだ。


「は、離せ、条絵……」


 私は抵抗するが徐々に力が抜けていく。不意に条絵が離れると寂しさの感情が生まれたのが印象的であった。これでは私が調教されているみたいだ。


「お楽しみは夜からですよ」


 条絵が女狐の様に微笑む。これが性のマウントを取られる事か……。


 ぬぬぬぬ。


 私は甘い大人のキスの続きをして欲しく仕方がない。いつの間にか、ガチ百合の抵抗感が無くなっていた。恋愛経験の無い私には衝撃的な出来事であった。


 そして、自宅に帰ると冷蔵庫に向かい、ドアを開くとコーラを一気飲みする。プッハァー。冷えたコーラは止められませんな。


 私は冷えたコーラで条絵の大人のキスで火照った体を静めるのであった。


「うちは先にジャワ―を浴びるわ」


 条絵が何処からか着替えを用意してお風呂場に行く。よく見ると条絵の荷物とおもわられるダンボール箱があった。これはマジで同居だ。私は腕を組み小首を傾げていると。母親が仕事から帰ってくる。


「あら、龍馬ちゃん、どうしたの?」

『龍馬ちゃん?』


 私の名前は龍実のはず……。


 まさか、坂本龍馬の転生した姿だと言いたいのか?


「母さん?龍馬ちゃんでいいの?」

「私も驚いたの、家の娘が坂本龍馬の生まれ代わりだなんて」

「何処で知ったの?」

「救世主が降臨したとSNSでバズっているわよ」


 違う、これは炎上だ!私は強制的に救世主を押し付けられたのだ。


「とにかく、母さん、家の中では『リョミ』と呼んで。


 すると、条絵がジャワ―から戻ってくる。


「龍馬様、どうしたのです?」

「まあ、条絵さん、家の子が龍馬じゃ嫌だと言うの」


 うん?これは二人にすでに面識があるのか。


「龍馬様には人権は無いです。かまわず、龍馬様でいいかと」


 あーーーーぁ


 私が途方に暮れていると。


「了解したわ、条絵さん。結論が出たので、今日から龍馬ちゃんで行きますよ」


 終わった、私の人生が終わった。そんな、夕暮れの一コマであった。

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