坂本龍馬の生まれ変わりだと遊郭美人に言われる。あれ?お龍さんは?

霜花 桔梗

第1話 何故に救世主!?

 私の名前は『坂前龍実』ただの女子高生である。退屈な日本では女子高生には一番優しいので今の生活には満足している。


 とある、朝、ショートホームルームで転校生が紹介される。その転校生は京都の出身の背の高い女子だ。


「はい、注目、転校生の『凛野条絵』さんだ、仲良くするように」


 転校生など関係ないかと思っていたら。


「うちは坂前さんの隣がいいです」

「そうか?なら席替えだ」


 おいおい、馴れ馴れしいな。条絵さんが隣に座ると。


「龍馬様やっと会えた」

「はい?」


 私の名前は龍実だ。決して坂本龍馬ではない。


「前世の記憶が無いのですね。あんなに京の遊郭で愛し合ったのに」


 は?ガチ百合か?


 私が条絵さんに問いかけると。


「はい、今はガチ百合です。うちは龍馬様の遊郭での嫁でした。例え龍馬様が女子に転生されても、この愛は変わりません」



 私から乾いた笑いが噴き出る。それは楽しい坂本龍馬としての人生の始まりであった。


 放課後、私は部活の新聞部に向かっていた。条絵と腕を組んで歩く。実にいやらしい状態だ。


 うん?


 新聞部の部室の前に人だかりができている。


「あ、龍馬様だ!」

「龍馬様、サインして、じゃなかった。私を救って」

「俺が先だ!この悩みを解決してくれ!」


 何だ、この群衆は?これでは私が救世主ではないか。昨日まで普通の女子高生だぞ。


 確かに幕末の動乱を生きた坂本龍馬だ、頼りたくなる気持ちは分かる。


「龍馬様、民の悩みを聞くのも良きことかと」


 条絵は他人事の様に言う。大体、新聞部を選んだものサッカーのスター選手にお近づきになる為だ。この高校はサッカーに力を入れでいるのだ。結果、スター選手が生まれ大人気になるのだ。私にジャーナリズムなど、これ一つも無い。

とにかく、部室に入ろう。渋々、群衆をかき分けて部室の中に入る。


 そして、部室の奥に進むと居るのは部長だけらしい。


「やらかしてくれたな、龍実君」


 部長の加奈先輩が難しい顔をしてパイプ椅子に座り、机に向かっている。ふと、パソコンの画面を見るとメールがこれでもかと届いている。


 ここは弁解しないと抹殺される雰囲気だ。


「部長、不可抗力です。坂本龍馬としての自覚はこれ一つもありません」


 困ったな、部長の機嫌が悪い。当たり前か部室をめちゃくちゃにしてしまったのだ。


「君は今日から新聞部の広告塔だ。救世主として世界を救いたまえ」


 部長が真面目な顔をしてムチャを言う。広告塔は酷い、私が抗議すると。


「私は野心が生まれたのだよ、坂本龍馬公式新聞とてして、この高校の覇権を握ろうと思う」


 あああ……目がマジだ。


 こうして強制的に救世主になったのだ。

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