第6話

 私は空腹だった。


 せっかく家を出て来ても、私はお金という物を持っていなかった。


 寝る場所がないから草むらに横たわる。

 あちこち刺されて痒くてたまらない。


 こんな生活をしていたら低体温でそのうち亡くなるだろう。


 しかし、次の日には犬に発見されてしまった。


 うとうとしていると犬が吠えられた。

 私はびっくりして飛び起きて、その方向を見ると、シェパードが私を睨みつけていた。


 私は噛まれるだろうと動かずに立ち止まっていた。

 脳内と心臓をかき混ぜられるような感覚に襲われた。

 危機が迫っているということだ。


 もう、終わりだ。

 私は覚悟をした。


「どうしたの!」

 

 女性が大声で叫びながら駆け寄って来るのがわかった。

 白髪の品のいい女性だった。

 私を見て驚いていた。

 バツが悪かった。

 醜い姿を世の中に晒してしまった。

 誰にも気付かれない場所で隠れていたかったのに。


「あらぁ!珍しいおさるさん!」


 その人は叫んだ。


 その時、私は気が付いた。


 私は猿だったのだ。

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