第7話

 その人は私を家に招いてくれた。

 まるで親戚の子どものように!


 今考えると、その人自体がちょっとおかしかったのかもしれない。


 そして、テーブルに座らせてくれ、素敵な茶器で私に紅茶とケーキをご馳走してくれた。

 そんなにおいしい物を食べたのは生まれて初めてだった。


 なんて素敵な人なんだろう。

 私はありったけの言葉でお礼を言った。


 しかし、通じていないようだ。

 その代わりに両手を合わせてお礼をした。


 それからは手話で話した。

 手話は得意だ。

 Eテレを見ていたからである。


 もし、世の中に出て行くチャンスがあったら、手話を使って何かをしてみたかった。

 ボランティアのような何かだ。


 その人もたまたま手話をやっていたから、私が言うことを理解してくれた。


「なんて頭のいいおさるさんなの!きっと、大学とか研究所にいたんじゃないかしら!」


 私は有頂天だった。褒められたのは初めてだった。しかも、そんなに知的な人々が集まる場所にいたのではないかと言われるなんて、最高に名誉だと感じていた。私は小学校さえ行っていないのに。


 短時間に私たちは本当に親密になった。初めてできた友達だった。

 私は言葉がわかると伝えた。あなたが私の言葉を理解できないから手話を使っているということも。


 そして、話の中でその場所が彼女の家であり、ご主人が亡くなってからは、お手伝いさんたちと住んでいることも知った。公園だと思ったら、個人の家だったのだ。ご主人は会社を経営していた資産家で、子息は成人して医者などになっていた。


「このままずっとここにいていいのよ」とその人は言ってくれた。


 夜は豪華な夕食をごちそうになって、清潔で暖かいベッドで休ませてもらうことができた。そして、その日の午後には車に乗せられて外出し、人生で初めてお医者にかかったのである。連れていかれたのが動物病院だったので、そこで改めて自分が動物だということを思い知った。

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