第5話

 私は塀に囲まれた場所を見つけた。塀の向こうには気がうっそうと生い茂っていた。これはきっと私が住んでいる市にある有名な公園だろうと思った。緑に囲まれてひっそりと暮らしたい。それが私の唯一の願いだ。緑は私のこころを落ち着かせてくれる。


 私が選んだのは結局は自分を滅ぼすことだった。


 私は生きている価値などない。


 そして、今は生きる意味を失ってしまった。

 さっきまでは戦っていた。

 将来に希望があった。


 今は戦う対象を失ってしまい、暴れても私にかまってくれる何かはもうない。


 あれが私の家族だったのだ。


 あんな社会的にごみのような人たちでも、家族という枠組みの中に私を入れてくれていた。


 私は家族を愛していた。

 特に母を。

 母に愛してもらいたかった。

 今は手の届かない場所に行ってしまったが、私が母を許したことで、私は家族に迎え入れられたような気がした。


 もう、憎しみは消えた。

 心配なのは兄のことだ。

 家族を失って、将来的に結婚も難しくなるだろう。


 しかし、ちょっと面白かった。

 彼が苦しむ姿をできれば見たかったと思う。

 私が傍にいて恋人のように寄り添ってやればよかったのかもしれない。


 私はサディスティックな喜びに酔いしれる。

 笑うと気持ち悪いと言われるけど、誰も見ていないから思い切り笑う。


 私は緑色の木々の中を走り回る。

 私の中の生が躍動している。


 それと同時にどうしたら◎ねるかを考える。

 今度生まれ変わることがあったら植物になりたいと思う。

 目立たないけど、世の中の役にたっている何かに。

 そこには存在意義が認められている。


 自然の一部になりたい。

 喋れない、表情のない何かになりたい。

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