第3話

今日は桜と澪が体調不良で休みだった。なのでトイレも移動教室も杏奈と2人きりだった。

授業が終わりやっとお昼になった。いつも通り机をくっつけようとした途端眉を下げて残念そうに杏奈が言った。「ごめんエリカ。私今日委員会の仕事があってお昼一緒に食べられないの。」私は笑顔で言った。「そっか…それは仕方ないね。委員会頑張ってね。」ありがとうと言って杏奈は慌ただしく教室を出て行った。どうしよう。エリカは焦った。このまま教室で1人でお弁当を食べるなんてごめんだ。かといって他に一緒に食べてくれる仲がいい友達もいない。だったら他の場所を探すしかない。人目につかないところを探しにエリカは教室を出た。そうはしたものの空き教室もベランダや屋上も人が多い。みんなそれぞれにお気に入りの場所がありなかなかいいところが見つからない。気がついたらエリカは校舎から出て外に来てしまった。グラウンドを眺めていると奥に綺麗な桜の木がある。あそこならきっと誰もいない。やっとお弁当が食べれる。エリカは意気揚々と桜の木に向かって歩いていった。思った通り誰もいなくて安心した。大きめの石に腰掛け一息ついた。風に揺られ桜の花びらが一枚落ちてきた。雲ひとつない青空に眩しいほど輝く太陽が桜の木の間から見えた。人目さえ気にならなければ1人もいいなと思った。

しばらく景色を堪能してそろそろ食べようとお弁当に手をかけた瞬間だった。後ろからジャリっと砂を踏む音がした。「うわっ」1人だと思っていたエリカはびっくりして声を上げる。後ろを振り向くと同じようにびっくりした顔で男子生徒もエリカを見ていた。エリカは息を呑んだ。あまりにも綺麗な男子生徒がそこにはいた。細身で背丈が高くスタイルがいい。地毛にしては明るめな茶色の髪が太陽に照らされキラキラと金色に光っていた。

エリカを見る瞳はまるで宝石のようで思わず吸い込まれそうになった。消えてしまいそうなくらい儚げな雰囲気を持つ彼に見惚れてしまいぼーっと恍惚状態になっていた。すると彼は口を開いた。


「月城エリカ」

私は彼を知っている。柊紡だ。

柊紡はうちの学年でも群を抜いてイケメンだ。そんな彼に自分が認知されてるのが嬉しかった。男子に可愛いと言ってもらえる機会が多い私は彼も同じように思ってくれているのかと期待した。しかし次の瞬間その期待は打ち砕かれた。

「ブスだなお前」

短い言葉だったが私の心を傷つけるのには十分すぎた。衝撃が強すぎて言葉が出てこない。エリカはしばらくフリーズしていた。

ブス?私が?そんなふうに思われていたなんて…。固まっているエリカを鼻で笑って紡は校舎の方へと踵を返した。さっきまでぐーぐーなってたお腹の音が一気に止んだ。お弁当を持つ手がだらりと力なく下がった。

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桜のようなあなたと出会って 月光 @Anju0121

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