肉と言ったら牛!豚!そして鶏!


 えぇ、いますとも!

 この世界にも、えー……一応、鶏?みたいなヤツが!


 魔王が現れてからは恐竜っぽくなったけどね。


 でも羽毛があって、二足歩行で、腕が翼で、クチバシがあって、鶏肉みたいな味で、卵も生む。

 これだけ条件揃ってたら鶏としか言いようがないわな。


 脚が硬い鱗に覆われてて、1メートルくらいの背の高さで、翼幅は2メートルくらい。嘴は大きなオレンジ色で、貫通力がハンパ無い。いかなる防具も紙同然だからね。

 

 野生の鶏はその嘴で獲物の心臓をグサッと一突きした後に、かぎ爪でがっしりと掴んで崖の上の巣まで運んでいく。


 上空から音速で急降下してくるわけだからね。怖い怖い。


 何その鶏クッソヤベエな、とか思ってるキミ。

 大丈夫。


 基本突っついてくるだけだから単調だし、一点集中だから躱せば良い。

 でも急所突かれると死ぬポ。


 だから普通に苦労してきた冒険者なら、なんとかなるもんだ。でも金に物言わせて高い防具に頼ってる貴族のボンボンとかはヤバイ目に合う。基礎体力ついてないと防具が壊れたときに困るもんだよ。


 成金上がりのリア充なんで死んでしまえ。 


 おっと、話が逸れたね。


 では今日は、卵も産んでくれるし肉も美味い、ありがたい鶏達を紹介しよう。



——— 鶏舎 ———


 さぁ目の前におりますのは、二十羽ほどの鶏達。

 魔法結解バリアで構築された鶏舎のなかでうるさく鳴いております。


 え、なんで魔法かって?


 だって物質で作ったら壊れるもん。アダマンタイト=ミスリル合金でもいつの間にか穴開いてるよ。


 え、どうやって魔法結解バリアを構築するのかって?


 しらないよ、そんなもん。こちとら賢者さんの魔法を書き込んだ錬金術師君の魔法陣を使ってるだけだもん。


 自分で勝手に錬金術師と賢者を探してくれ。


 それはさておき、鶏は社会的動物だから、数もそれなりに多い。

 ていうか勝手に増える。先週二羽買ってきたばっかなのに、もう二十羽とかふざけんなよ。数減らしたほうがいいんじゃないかな?


 ん?マスタードラゴン君、キミいつの間に来たの。涎が汚いわよ、あなた。


 え、ちょっと、あなた?

 人の心の声を盗み聞きした?


 コ、コイツ、首を縦に振りやがった。

 ダメよ、これでも貴重な収入源なのよ!?


 ダメダメダメ! 


 ノオオオオォォォオオォォォオオ!!!



——— 餌 ———


 うぅ……二羽に逆戻りしてしまった。 


 マスタードラゴンの野郎、満足げにゲップしてるし。

 てか、焼き鳥みたいに香ばしいんだけど。

 流石ドラゴン、火を噴くだけある。 


 でも大丈夫、餌あげてればまた勝手に増えてくれるさ!


 しかし、そうは言っても鶏たちは牛や豚ちゃん達と違って、雑食ではありません。

 適当に生ごみあげてれば良いんじゃね?とか思った貴方!


 死にますよ。


 というのは、鶏は肉食だから。

 お腹空かせた鶏達にゴミなんかあげた日にはもう、キレられて悲惨なことに……。 


 まぁ、そういうことだから。

 ちゃんと肉をあげようね。


 野生の鶏達は小さなモンスターを狩って食べてるから、同じようなことを用意してあげなきゃならない。

 適当に小さめのモンスターを捕まえておいて、魔法結解バリアの中にポイッ!


 ディナーイズサーブド。


 ピギャアとかいう悲鳴が聞こえるけど、気にしない気しない。


 え、酷い?

 べつに酷くないよー。

 弱肉強食の世界だよー。



——— 卵 ———


 さて我が牧場をツアーしている諸君。

 教えてあげよう。


 鶏の一番のヴァリューは卵にある!


 こうやって地面に穴を掘って、卵を固定して、ウォーハンマーを使って割るのさ!


 ムンッ!


 防具破壊アーマーブレイク!!


 バリンと硬い殻を割ったら、ドロリ!

 まさに卵が!!


 この世界で初めて生卵見たときは感動したなー。

 冒険中に目撃したから最初はウ〇コかと思ったけど。

 だって同じ穴からプリッと出すんだよ?後で調べたら総排出口っていうんだって。ビビった。


 びくびくしながら覗いてみると、なんとターマーゴーがー!

 早速かち割って火魔法で調理したさ。


 勇者君、こんなの食べたことないって感動してさ、その辺り一帯の鶏狩りつくしちゃったのも、今では良い思い出だよ。

 勢いあまって近場の群生地を襲撃しちゃったからねー。その所為で卵の供給に悪影響があって、王国中卵不足になったんだけどね。


 魔王倒したし、それくらい大目に見てもらったさ♡


 え、モンスターの排卵の仕組み?

 分裂するから繁殖しないのに、どうやって卵を産んでるのかって?


 ほほぅ、なかなか良い質問するじゃないか。

 見直したよ、キミィ。



——— 排卵 ———


 排卵の事を説明するには、まず魔石のことを説明しないとね。


 全てのモンスターは体内に魔石を持っていて、これが動力源になってる。心臓みたいなもんだ。


 基礎代謝以上摂取した場合、過分は脂肪になるんじゃなくて、その魔石に蓄積される。

 でも蓄積されたエネルギー量が魔石のキャパを超えると、許容量オーバーで爆発してしまう。


 それを本能的に防ぐために、分裂をして魔石を二つに分けるんだ。でも綺麗に二分割してしまったら手元に残る魔力が少なすぎるから、チョロっと小さい魔石をひねり出す感じ。

 で、そのチビ魔石を体内に埋め込まれてぷりっと出てくるのが、がモンスターの幼体ってわけ。


 鶏の場合、魔石の許容量が低めなんだ。ちょっと良いもん食わせるとすぐ分裂する。


 で、鶏の幼体が卵で、一日経過すると雛になる。で、また一日経過すると鶏に進化する。


 二日サイクルで回るから、気を付けてないとすぐに大繁殖しちゃう。


 前回大繁殖した鶏の討伐クエスト終わらせた時は、王様呼んで焼き鳥パーティーしたな。

 あれは美味かった、うん。


 とにかく、卵はすぐに雛に進化しちゃうから、卵を出荷する場合、加工が必要なのだ。

 生まれてからすぐに時間停止魔法ストップをかけると、魔法が効いてる間は卵のままでいてくれる。いわゆる生卵。


 ちなみにこの世界の生卵の保存期間は時間停止魔法ストップのクオリティ依存。という事は、それが使える人がいないと生卵は出荷できない。


 面倒なことに、時空系魔法を使える人ってあまりいないんだ。超レアな魔法らしい。まぁ、時空列いじれる人がゴロゴロいたら世界崩壊するわな。


 殆どの養鶏場では魔法使いをバイトで雇って時間停止魔法ストップをかけてる。数千匹の鶏を飼育してる大規模養鶏場で、魔法使いが二人いる程度。


 こいつらバイト代高いから、人件費がバカにならない。需要高いからってぼったくりやがって。


 俺っちの牧場?

 もちろん雇ってるさ。


 めんどくさ、ゴフン、使えないからね、時間停止魔法ストップ

 時空系魔法を専攻してるヤングワンを一人見つけてこき使ってるバイトさせてるよ。


 え、人件費?


 そんなもんかけてないよ。


 だって採用調査したら催眠耐性のスキル上げてなかったことが判明したからね。エビルバクっていう悪霊モンスターの催眠をね、ちょっとね。


 だからあいつの頭の中では給料弾んでるはず。


 違法だって?


 僕ちん知らないなー。



——— 終わりに ———


 肉食で放置したら殺されるけど、ちゃんと餌をあげてれば卵ウハウハな鶏達。


 卵は基本出荷で毎日の収入源。

 鶏肉が欲しかったら時間停止魔法ストップかけないで成体になるまで進化させてあげて、精肉加工したらオッケー。


 鶏舎用の魔法結解バリアと卵用の時間停止魔法ストップが使える人を雇ったら結構簡単に飼育できるモンスターだから、安定した収入源をすでに持っていて、お金に余裕がある人はぜひお試しあれ。

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