第17話 帰ってきた

「ソニー。大丈夫か?」

「ライト、さん?何故ここに?」


 わたくしは屋敷を出てから少し経っただけのはずですのに。

 何故?


「なんの用で連れていかれたのかと気になってしまってだな…その、馬車を出してもらったのだ」

「そうだったのですね…」


 わたくしは、ホッとしてライトさんに寄りかかった。


「ソニー?」

「すみません。もう少しこのままで…」

「それは良いが…」


 その瞬間、地面にあったはずの足の感覚は消えていた。

 ライトさんに抱き抱えられたからだ。


「えっ、お、おろしてください!重たいでしょう?」

「いいや、重たくない。このまま馬車に乗せるが良いか?」

「—はい」


 恥ずかしくて、顔が赤くなってしまっているだろうけれど、そんなことを気にする余裕ももうない。

 そして、馬車に乗った。


「あ、ありがとうございました…」


 わたくしはおろされた。

 その隣にライトさんが座る。

 そして馬車に揺られ、ノーツ領へ向かう。

 その間にライトさんと話始めた。


「ソニー、嫌なことはされなかったか?」

「一番最初に出てくる質問がそれですのね」


 わたくしは思わず笑った。


「君のことが心配だったからな」

「ふふっ、ありがとうございます。嫌なことはされていませんわよ」

「そうか、よかった。それでは、何の用だったのだ?」


 正直にお話ししてよろしいのでしょうか?

 いえ、隠すようなことではないですわよね。


「第三王子に婚約を申し込まれたのです」

「第三王子に?会ったことがあったのか?」

「えぇ。昔のことですけれどね」

「それで、どう答えたのだ?」


 ライトさんは、わたくしがどう答えたかが気になるようで、ソワソワし出した。


「もちろんお断りしましたわ。ライトさんがいますもの」

「そうか…」


 ホッとしたような反応をされた。

 不安にならなくても、その申し込みを受けるわけがありませんのに。


「必ず戻ると言ったでしょう?」

「そうだが…もしものことがあったらと思ってな」


 そんな話をしていたら、いつの間にか着いていた。

 ライトさんが先に降りられる。


「ソニー」


 わたくしにお手を差し出された。

 その手をとる。


「ありがとうございます」


 そして降り、屋敷の中に入った。

 数時間いなかっただけですのに、懐かしく感じる。


「ソニーさん!帰ってきたのね」

「ソニー嬢。おかえり」


 アリア様とロイド様が迎え入れてくださった。


「ただいま、ですわ」


 言い慣れない言葉ですが、今はこの言葉を伝えたかったのです。


「ソニー、こちらに来てくれ」

「はい」


 わたくしはライトさんについていく。

 着いた場所は最初にお通しされた場所だった。


「座ってくれ」

「失礼します」


 言われた通り座る。


「ライトさん、なんですの?」

「ああ。改めて話がしたくてな」

「話し、ですの?」


 なんでしょうか?

 改まった話し。まさか、わたくしの直してほしいところとか?

 婚約破棄とかだったら嫌ですわ…


 なんだったとしても、受け止めますわ!

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