第16話 お父様との対決

「ソーがそこまで言うのなら、私は大人しく身をひくとしよう。君がそこまでハッキリと言えるようになっているとは思っていなかった。よっぽど良い男なのだな。ライト・ノーツとやらは」


 良かったですわ。

 わたくしのあの言葉で帰ってくださるということで。

 そして、わたくしは微笑んで、自信を持って答える。


「はい。とても良い方ですよ。ライトさんは」

「ふっ、そうか。ソー、また会いに来ても良いだろうか。今度は、友達として」


 第三王子がそんな簡単に出歩いて良いのでしょうか?

 本人が言っておられるのですし、良いということなのですかね。


「もちろん。ですが、次はノーツ領にてお待ちしておりますわ」


 この屋敷にいるつもりはもうないですからね。

 話が終わり次第帰らせていただきたいと思っていますし。


「あぁ、承知した。では、私は帰らせていただく。失礼したな」

「はっ、お気をつけてお帰りくださいませ!」


 お父様が声を張り上げ言う。

 ルー様が見えなくなったところで、お父様に突き飛ばされた。


 わたくしは床に倒れた。


「な、なにをしますの…」

「随分と生意気になったものだな、ソニーよ」


 お父様はわたくしを見下ろす。

 いつものように蔑むような目をしておられる。


「私の命令に逆らったことはなかったのに。私の、ルート様との婚約を断るなという命令に背いたな。それもあの男の影響か?」

「お父様は、わたくしが家事をしたり、誰とも仲良くなるなという命令を快く思っていたとでも?ずっと、ずっと嫌だったのですよ!誰かとお話をしたかった。楽しいことをして笑いたかった。それすらも許されない環境の中で、わたくしがどれだけ、どれだけっ」


 泣きたいわけではないのに、涙が溢れてくる。

 

「ふんっ、相変わらず弱いままではないか。お前は誰にも愛されない。誰とも仲良くなどなれない。ノーツ領でも酷い扱いを受けるが良い」


 弱いまま。強くはなれない…

 今までのわたくしなら、この言葉を間に受けてしまっていただろう。

 ですが、教えていただいたのです。

 わたくしが嬉しそうにしていれば、目の前にいる方も嬉しそうに笑ってくれるのだと。


 ライトさんがそれを表情で教えてくださいました。

 だから、わたくしは強くなれる。

 彼の元に帰るために。


「いいえ。ライトさんは、アリア様は、ロイド様は、わたくしを酷いようにはしませんわ!わたくしはあちらで幸せに暮らすのです!ですから、帰らせていただきますわ‼︎」


 ずっと怖い存在だと、逆らってはいけないのだと思っていたお父様にハッキリと言うことができた。


「そこまで言うのならあちらに帰るが良い。ただし、私は送らない。一人で歩いて帰るのだな!」


 ここからあちらの領までは、とても遠い。

 ですが、ここで弱音を吐いてはいけない。


「分かりましたわ!」


 わたくしは勢いよくアディール家を出た。

少しずつ歩き始める。


「やはり、厳しいですわね…ドレスも動きづらいですし…」


 そう言った瞬間、わたくしの目の前にでかい影ができた。

 下を向いていたので、顔をあげると、そこには—

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