第12話 アディール家

 アディール家。それは、頭脳明晰、容姿端麗。

 そう言われる人が多い家系だ。

 その家にわたくしは産まれた。


 わたくしだけではない。

 もう一人同じ日に産まれた。

 それがリリヤ・アディール。

 わたくしのお姉様だ。


 お姉様は、なんでもできた。

 お勉強もでき、淑女のマナーも全てが完璧。

 それなのに、わたくしはなにもかにも中途半端。

 お姉様には劣る。

 それがわたくしに対しての家族の認識。


 だからわたくしは蔑まれるようになった。

 家事をさせられるようになった。

 誰かと仲良くすることを許されなくなった。


 そうされるようになってから苦しかった。

 けれど、誰にも言うことはできなかった。

 誰にも言わず、一人で抱え込んだ。


 今回婚約が決まり、やっと屋敷から出れると思いとても嬉しかった。

 もう辛い想いをしなくていい。

 苦しい想いをしなくていいんだって…


 一人で静かに泣いた時もあったけれど、そんな時間も、もうなくなるんだって。

 これからは笑顔でいれる日々が増えるんじゃないかって。


 そう思ったのに、何故私わたくしはまたこの屋敷に戻ってこなければならないのでしょうか—?

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