第10話 オシャレを知る

 次の日の朝、ドアをノックする音が聞こえました。


「どうぞ」

「ソニーさん、おはよう。今日はよろしくね」

「はい、お願いします。あの、今日は何をするのでしょうか?」

「あら、言ってなかったかしら?」

「聞いておりませんわ」


 アリア様には何も聞かされていない。

 なので、今日何をするのかわたくしには分からないのですわ。


「まあ!言った気でいましたわ。ごめんなさいね」

「いえ、かまいませんわ」

「本当、いい子ねぇ。あっ、今日はね、ソニーさんを着飾らせていただきたいのよ」


 アリア様が笑って言う。


わたくしを、着飾る?」

「ええ!貴方可愛いし、綺麗だから色々な格好させてみたくなっちゃって!嫌なら断っていただいて良いのよ?」


 今まで着飾ることはしてなかった。

 けれど、少し興味はあった。

 だから…


「嫌ではありません。ですので、よろしくお願いします」

「ふふっ、良かったわ!ではまずドレス選びね。この屋敷にあるもの全てを用意させているから、こちらに来てちょうだい」


 アリア様が前を歩いてわたくしを先導される。


「はい、ここよ」


 扉を開けて手招きされる。


「失礼します」


 そこには沢山の煌びやかなドレスがあった。

 姿見も置いてある。


「ソニーさんは、どんな色が好きかしら?」

「えーっと、淡い青色、でしょうか…」


 考えたこともなかったですわ。

 ですが、見ていて綺麗だと思うのは、青色なのですわ。


「それなら—これとかどうかしら?」


 アリア様が取られたのは、淡い青色で柄も派手でなく、シンプルなものだった。


「素敵、ですわ」

「ならこれを着てみましょう!エマ、手伝ってくださる?」


 アリア様は、近くに控えておいたエマを呼んだ。


「はい。ソニー様、失礼致します」


 エマは、わたくしが着替えるのを手伝ってくれた。


「やっぱり可愛いわ!それに綺麗ね〜

 ねぇ、髪もかまわせていただいて良いかしら?」


 アリア様は褒めてくださった。


「髪、ですか?」

「ええ!せっかくだから違う髪型にしてみたくって」

「それなら、良いですわ」


 お母様にも髪型を気にしてもらったことがないのに、アリア様はわたくしの髪型を変えたいと言ってくださる。

 断る理由がありませんわ。


「では、ここに座って」


 鏡が置いてあるところの椅子に座る。


「お願いします」

「えぇ」


 アリア様はわたくしの髪を櫛でといていく。

 人にとかれる感覚は気持ちがいい。


「うーん、ソニーさんにはこの髪飾りが似合いそうね」


 そう言って紫色の石がはめてあるピンをつけてくれた。


「きれい…」

「そうでしょう?わたくしもこれがお気に入りなの」

「お気に入りなのに、良いのですか?」

「ええ!ソニーさんにつけていてほしいの」


 アリア様のお気に入りのものをわたくしにだなんて、恐れ多いけれど嬉しいですわ。


「ありがとうございます」


 微笑んで答えた。

 嬉しさが伝わるように。


「ふふっ、やっぱりソニーさんは着飾るととても綺麗だったわ」

「アリア様が綺麗にしてくださったのですよ」

「素材がいいからよ〜」


 なんだか少しアリア様と仲良くなれた気がしますわ。

 こちらへ来てからいいことばかりで、本当に嬉しくて泣けてきそうですわ…


「ソニーさん⁈どうしたの?」

「え?あ、これは、その…」

わたくしなにかしちゃったかしら⁈」

「い、いえ…アリア様はなにも悪くないのです!ただ、嬉しすぎて…」


 つい、泣いてしまいましたわ。

 アリア様を困らせてしまいました…


「嬉しい?良かったわ!」


 アリア様はわたくしに満面の笑みを見せてくださった。


「本当に、ありがとうございました」

「またいつでもするから、したくなったら言うのよ」

「はい!」


 わたくしも笑顔で答えた—

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